新製品レビュー

LightPix Labs「FlashQ Q20II」

クリップオンでも使える、電波式ワイヤレスの小型マニュアルストロボ

香港LightPix Labsの「FlashQ Q20II」(以下Q20II)は、一風変わった仕組みを持つ小型の汎用クリップオンストロボだ。日本では銀一が5月21日に税別1万2,000円で発売する。

大きさは幅59mm、高さ99mm、厚さ29mm。重さは115g(電池除く)しかなく、シャツのポケットに入ってしまうほどコンパクトだ。気になる光量は最大ガイドナンバー(GN)20(ISO100)。大きさを考えたら大光量と言えるだろう。照射角は35mm判で32mm相当をカバーする。

FlashQ Q20IIは、ストロボとソフトケース、充電用のUSBケーブル、発光部に差し込めむカラーフィルターがセットになっている。

本体の背面には電源スイッチや光量調節ボタンが並ぶ。このストロボはTTLをはじめとする自動調光機能は持たず、マニュアル発光専用。FLASHの左右ボタンで光量を変える。発光量は1/1のフル発光から1/64まで7段階だ。

自動調光がないと難しく感じるかもしれないが、以下の式を知っておくと便利だ。

ガイドナンバー(GN)=距離(m)×絞り値

GN20で撮影距離が5mなら、絞りはF4で適正になる。もっともデジタルカメラなら、まず撮影してみて、背面モニターで結果を見ながら調節するのが手っ取り早い。

Q20IIの背面。電源スイッチ横の太陽マークのボタンはテスト発光ボタン。ストロボ光とLEDライトの調光ボタンの他、スレーブ用のモードボタンを備える。なおモードの文字はランプと同じ色に分かれていてわかりやすい。この写真ではランプは緑なのでS2の状態だ。チャンネル切り替えやグループ分けの機能は持たない。
調光のランプは2段になっていて、上はストロボ用。ランプの色はオレンジだ。FLASHの左右ボタンを押すと光量が調節できる。
下段は動画用のLEDライトの調光用。ランプの色は青だ。VIDEO LIGHTの左右ボタンで調節する。

電池は単3形乾電池を2本。アルカリの他、充電式のニッケル水素電池も使用可能だ。フル発光時のチャージ時間はアルカリ電池では7秒、ニッケル水素電池では6秒。1度シャッターを切るとしばらく待つ必要はあるが、単3形2本なのでこれは仕方がない。とはいえ屋外の日中シンクロのような補助光では、フル発光まで使わないのでチャージ時間は短くなり、スピーディーな撮影が行える。

バウンス撮影のために、発光部は上方90度まで動かせる。メリハリのある動きで楽に角度調節ができる。また7種類のフィルターが付属し、発光部に差し込んでエフェクトを楽しむこともできる。

バウンス機能は上方90度まで。左右や下方には対応せずやや物足りなさを感じるが、ワイヤレス発光で補えるという考えなのかもしれない。
7枚のカラーフィルターが付属する。赤、緑、紫、青、黄色、オレンジ、透明だ。ストロボ光が当たったところにだけ色を付けて、エキセントリックな表現ができる。
フィルターは発光部の下側から差し込む。

FLASHボタン下のVIDEO LIGHTの調光ボタンを押すと動画モードに切り換わり、本体のLEDライトが点灯する。距離1mでの明るさは最大60lux。ストロボと同様に7段階の調光が可能。写真だけでなく動画も撮影する人に嬉しい機能だ。

ストロボ発光部の下にLEDライトを装備。動画モードとモデリングモードの時に点灯する。LEDの色温度は約5500Kだ。

Q20IIの最大の特徴が、ストロボの本体と、ホットシューに差し込む取り付け脚の部分が分離することだ。シュー側の部分はそのままワイヤレス発光用のトランスミッターになる。本体とトランスミッターは2.4GHz帯の無線接続。距離は10mまで届くという。

ストロボをカメラから離して発光できるため、ライティングの自由度が飛躍的に高まる。しかもトランスミッター側にも左右ボタンを持ち、ワイヤレスで光量調節ができるのも驚きだ。ただしトランスミッター単体では光量がいくつになっているかわからないため、本体を設置した時点の発光量を覚えておくとコントロールしやすい。

背面のリリースボタンを押すと、Q20II本体とトランスミッターが分離する。本体はスタンドなしでも自立する。
ホットシューに残る部分はそのままトランスミッターになり、本体とペアリングすることでワイヤレス発光が可能になる。
トランスミッター正面には電源ボタンを備える。電源がオンになると背面のランプが青く光る。
背面は左右ボタンとランプを装備。右ボタンは長押しでテスト発光も兼ねる。左右のボタン長押しと、本体のVIDEO LIGHT左ボタンの長押しでペアリングができる。
Q20II本体の底面には、三脚やスタンドに固定するための三脚ネジ穴も備わる。
Q20IIを三脚やスタンドに装着すれば、様々な角度から発光でき、クリエイティブなライティングが楽しめる。

そしてユニークなのがバッテリーの充電方法だ。付属のUSBケーブルは先がmicroUSBの二又に分かれていて、本体側にニッケル水素電池を入れれば本体側とトランスミッター側の両方を同時に充電できる。ちなみにQ20IIの前モデル、Q20には本体側に充電機能を持たない。

本体電源は単3形乾電池を2本。アルカリより発光間隔が短いことやUSB充電ができるため、ニッケル水素充電池の使用がおすすめだ。
本体側面にmicroUSB端子がある。ニッケル水素電池を入れれば、付属のUSBケーブルで充電可能だ。
トランスミッター側面の充電用端子。本体と異なり、トランスミッター側には端子カバーはない。
付属のUSBケーブルは二又に分かれていて、片方を本体(ニッケル水素充電池使用時)、もう片方をトランスミッターのmicroUSB端子に接続して同時に充電できる。

Q20IIはいわゆるスレーブ機能も搭載しているので、多灯発光も可能だ。背面右下のモードボタンを1回押すとランプが赤く光りS1モードになる。これはオーソドックスなスレーブのモードだ。さらにモードボタンを押すとランプが緑色に変わり、S2モードになる。これはマスター側のストロボがプリ発光する場合に設定するモード。S2モードはプリ発光には反応せず、本発光のみ同調する。

またモードボタンをさらに押すとランプが青に変わり、モデリングモードになる。LEDライトが点灯し、被写体の反射や影を確認するのに便利な機能だ。動画モードと異なりストロボ光の発光量が調節でき、テストボタンを押すと動作確認が行える。

モードボタンを3回押して青ランプにするとモデリングになり、LEDライトが点灯する。またVIDEO LIGHTの左ボタンは、Q20II本体とトランスミッターをペアリングする際にも使用する。

今回はこのストロボの小ささと機動性に注目して、自宅でのテーブルフォトや庭先や身近な場所でのスナップに使ってみる。テーブルフォトならこうした小型のストロボでも十分実用的だ。ここでは特別なスタジオ用品は使用せず、身の回りのものだけで撮影した。被写体の背景は、自宅にあるもので工夫してみよう。

ここでおすすめなのがレフ板だ。コピー用紙を厚紙に貼るだけでも構わない。影になる部分にストロボ光を反射させたり、写り込ませてハイライトを作ったり、いわゆる"ブツ撮り"では欠かせないアイテムだ。また白レフではなく黒いケント紙を使った黒レフも便利。余計な映り込みや反射を抑えることができる。特にグラスの撮影では、輪郭を出すのに黒レフは必需品だ。

天井が白ければ、天井にバウンスさせると柔らかい光が作れる。ただ光量が落ちるので、Q20IIはフル発光を多用することになるはずだ。それでも必要な絞り値に届かなければカメラ側のISO感度を上げていこう。被写体に直接照射させたりバウンスさせたり、逆光にしてみたり、様々なライティングを試してほしい。

自動調光機能がなくマニュアル発光専用のQ20IIに、もしあると便利なのが、ストロボ光が測定できる単体露出計だ。露出の測定はもちろん、多灯ライティングをした際の光量バランスを確認する際にも役立つ。もちろんなくても、まず撮影してみてカメラのモニターで結果を見ながら調節しても構わない。

撮影していて唯一気になったのは、Q20IIをカメラから離すとチャージの完了がわからないことだ。特にフル発光ではチャージに時間がかかるため、何度かシャッターを切っても発光しないことがあった。チャージが完了すると音が鳴れば嬉しいのだが、それはこのクラスのストロボには望み過ぎかもしれない。焦らずじっくり撮影するのがコツだ。

気軽にワイヤレス発光ができるQ20IIなら、誰でも手軽に本格的なライティングが楽しめる。使いこなしが楽しそうな機能を持ちながら購入しやすい価格なので、すでにストロボを所有している人も、2台目、3台目として注目だ。

コンパクトなQ20IIは、内蔵ストロボを搭載しない小型のカメラによく似合う。これはOLYMPUS PEN-Fに装着した状態。
パナソニックLUMIX G9 PROに装着。
ライカMシステムのユーザーにも注目のストロボだ。
RICOH GRシリーズは、最新のGR IIIで内蔵ストロボが省略され残念に思った人も多いはず。Q20IIは、そんなGR IIIにも最適だ。

撮影例

※テーブルフォトはRAWで撮影し、Camera RawとPhotoshop CCでホワイトバランスの微調整と細かいホコリ等のみ修正。それ以外はストレート現像。

腕時計はテーブルフォトで見栄えのする被写体だ。これは革のシートに10年以上愛用している腕時計を置いて撮影した。Q20IIの発光量は1/4。
撮影の様子。Q20IIを三脚に装着し、時計の左斜め上から照射している。バウンスはさせず、直接光を当てることで精密機械が持つ金属的なイメージを強調した。右側と時計の左下には白レフを置いて明るさのバランスを取ると共に金属製のベルトに写り込ませてハイライトを作った。
クラシックカメラもテーブルフォトの被写体として魅力的。こちらはバウンスで柔らかい光を作り、落ち着いた雰囲気を狙った。
紫色のアクリル板にカメラを置き、カメラの正面側にQ20IIをセットした。このまま発光したら逆光になるが、天井にバウンスさせて光を回した。天井バウンスは光量が落ちるのでフル発光し、ISO 800に設定した。また被写体のカメラとQ20IIの間に黒レフを置き、アクリル板の映り込みを消している。
半透明のプラ板に万年筆を置いた。今回はQ20IIが2台あったので、1台はマスター、もう1台はサブとして赤フィルターを装着し、赤い光が差し込む背景を作った。赤フィルター付きのQ20IIをプラ板の下に置き、スレーブはS1モード。マスターはフル発光に設定し、発光部の上に白レフをかざして光を拡散した。サブは1/32で発光している。
万年筆の撮影の様子。プラ板を浮かせて、下にQ20IIを設置した。また万年筆の後方に余計な光が反射しないよう、黒レフを置いている。
グラスの撮影では様々なライティングの方法があるが、ここでは背景の白壁にQ20IIのストロボ光を当ててバウンスさせ、逆光にしている。そのためグラスとグラスに入れた飲み物の透明感が出た。発光量は1/2。
壁とテーブルの間に三脚に固定したQ20IIを置き、逆光になる角度で発光した。グラスの両脇には黒レフを置いて、グラスの輪郭を作っている。
自宅を出てすぐの場所にある植物。ストロボ光で生々しさを狙った。カメラはRICOH GR IIIでハードモノトーンに設定。Q20IIをカメラから離し、ほぼ葉の真上から発光している。照射角よりわずかに広い28mm相当のおかげで周辺部が暗く落ち、インパクトのある表現ができた。発光量は1/4。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。