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触ってきました「ニコン Z 7」

発表会場で、気になった仕様も確認

ニコン Z 7

ティザー動画による1か月の“チラ見せ”期間を経て、いよいよニコンのフルサイズミラーレスが正式発表された。4,575万画素の高解像モデル「ニコン Z 7」(9月下旬発売。税込44万円前後)と、2,450万画素のオールラウンドモデル「ニコン Z 6」(11月下旬発売。税込27万円前後)の2機種だ。

「35mmフルサイズで約2,400万画素」というのは一般使用に好ましいバランスと言われており、かつZ 6のほうが価格的にもエントリーしやすい。しかし、Z 7より発売時期が2か月遅いので、早く欲しい人はとりあえずZ 7を買うしかないという、絶妙なスケジュールになっている。

Z 7とZ 6の違い。株式会社ニコン 映像事業部開発統括部長の池上博敬氏のプレゼンより。

発表会のあとにZ 7の実機を短時間ながら試せたので、印象などをお伝えする。9月1日から始まるニコンファンミーティング2018でもニコン Z 7は展示されるそうなので、気になる方は足を運んでみてほしい。

レンズキャップ。NIKKORの文字が入る。

操作感など

筆者はタッチアンドトライの前にD750+28-300mmの組み合わせで発表会を取材していたが、Z 7+24-70mmF4に持ち替えた途端、小型フォーマットのカメラに持ち替えたかのような身軽さがあった。

それでいて、手に馴染むグリップの持ち心地、ニコン中級機以上のように必要十分なダイヤル類、違和感のないファインダー像、精細な背面モニターなど、およそミラーレスカメラにありがちな不安要素はクリアされていた。「ニコン」のブランドを冠するカメラとして、よい意味で“普通に使える”ことが大事にされているように感じた。

具体的には、D850を基準として、ニコンのデジタル一眼レフカメラDシリーズのユーザーが自然に併用できることを目指したという。実際に、メニュー構成もお馴染みの並びで安心感があった。操作性のルールもDシリーズ同様だ。画像削除も削除ボタンのツータッチで可能。

メニュー画面ではタッチパネルが使えるため、スワイプでスクロールしたり、タブをタッチで選ぶこともできる。デフォルトでは前後のコマンドダイヤルやジョイスティックを使ってのメニュー操作ができなかったが、それぞれカスタマイズにより可能になるので安心した。

背面モニターはチルト式。タッチ操作の設定は、「オン」「再生画面のみ」「オフ」の3通りから選べる。

露出補正ボタンとISOボタンはシャッターボタン付近にあり、それぞれ押しながらコマンドダイヤルを回して操作する。肩の部分にあるサブモニターに設定値が表示される。AE時に空いているコマンドダイヤルで露出補正を直接操作できる設定も、Dシリーズ同様に備わっていた。

シャッターを切った雰囲気を動画で撮ってみた。会場が騒がしく、録音もスマートフォンのマイクなので、音色の傾向だけでも参考になればと思う。電子シャッターだけを使ったサイレント撮影も選べる。

全体として、筆者がイメージする「ニコン的な使い心地」は十分に意識され、実際に達成しているように感じた。“絶対に光学ファインダーが欠かせない”というユーザーを除けば、小型化のメリットもあり、Zに馴染むのは早いのではないかと思う。

細かな操作仕様

被写界深度を厳密にチェックするとき、一眼レフカメラではプレビューボタンを押して、実絞りの状態でファインダー像を確認する。

Z 7のライブビュー画面には、絞り優先AEなどで設定している絞り値が(F5.6以上は)ライブビュー像の被写界深度に反映されない。Fn2キーなどをプレビューボタンに割り当てれば、一眼レフカメラのように被写界深度を見ながら撮影できる。

Fn2にプレビューを割り当てたところ。実際の被写界深度を確認できる。
レンズマウントわきにFnボタンが2つある。

また、再生画面でDISPボタンを押しても撮影情報が表示されなかったが、メニューから設定すると、Dシリーズ同様に再生画面で上下キーを押すことで確認できた。

再生画面の情報表示。方向キー上下で表示できる(デフォルトでは出ない)。
メニュー内で「再生画面の追加」を選ぶと、上の情報画面が出せる。
再生関連のメニュー。カメラ内RAW現像機能などがある。

ファインダー

EVFのファインダーとしての品位は、接眼レンズ部分の光学設計が大きく左右する。ニコンによれば、スペックのみならず品位の部分も強く意識しているとのことで、ストレスのない見え具合が実感できた。

一部には、瞳の位置がズレると途端に見えにくくなったり、視度補正によってファインダー像が大きく歪曲するようなEVFもあるが、本機では良好に抑えられていた。視度補正ダイヤルは引き出して回す方式なのも、中級機以上の一眼レフカメラを連想させる。

Z 7のファインダー横にはビューモードの切り換えボタンがあり、表示を以下の4モードから選べる。
・アイセンサーでモニター/EVFを自動切り替え
・背面モニター消灯。接眼時のみアイセンサーでEVFが点灯
・背面モニターのみ表示
・メニュー操作や再生画面のみ背面モニターに表示される“一眼レフカメラ風”のモード
また、モニターとEVFの明るさ・色味はそれぞれ独立して調整できるので、色味の差異によるストレスも回避できる。

レンズ展開

NIKKOR Z 24-70mm f/4 S(沈胴時)
撮影状態

今回の試用はNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sで行った。フルサイズのレンズでありながら望遠端でもかなり寄れるところに驚きがあった。沈胴式だが、Nikon 1のレンズのようにロックボタンはない。ズームリングを掴んでそのまま回せば撮影状態になるので、急いでいても安心だ。

そのほかのラインナップは、現時点ではNIKKOR Z 35mm f/1.8 S、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sが発表されている。ミラーレスカメラなら物理的にピント精度で一眼レフカメラより有利なため、単焦点は大口径の中望遠レンズを出してくるかと思ったが、あくまで焦点距離の人気で選ばれたような手堅いラインナップだ。もしくは望遠系だとカメラ側のアルゴリズムも含め、もう少し準備期間が必要なのだろうか。

Zレンズの特徴は「解像感を高めていること」だそうだ。Fマウントに比べて新マウントでは物理的制約がかなり減ったとみられ、実際に光学設計の自由度はかなり高まっているとのこと。AF性能と光学性能が大幅に向上でき、S-LineではMTFや品質管理のレベルも一段上なのだという。

D750のニコンFマウント(左)、Z 7のZマウント(右)。

今のところZマウントの規格をサードパーティに情報開示する(マイクロフォーサーズやソニーEマウントのように)計画はないそうだが、従来通りリバースエンジニアリングでZマウント用レンズが出てくる可能性は否定しなかった。ちなみにZのマウント径とフランジバックは、あくまで35mmフルサイズセンサーに最適化して開発されたものだという。

Fマウントより浅く広くなったZマウント。
高級ラインという「S-Line」だが、現状のロードマップでは全てがS-Lineレンズなので、今のところはクラスの差がわからない。
ちなみにS-Lineは全て“ナノクリ”レンズ。“N”のバッジはない。

またAFモードには「ピンポイントAF」という、一眼レフカメラでは見慣れないモードがあった。まだ詳細はわからないが、像面位相差AFとコントラストAFの配分が変わって精度重視になるなどが考えられる。この辺りは時期が来たらプロカメラマンによるレビューでお伝えしたい。

AF微調節のメニューがある。像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッドでどのように活用できるかは、まだ明らかになっていない。
同日発表の「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」も並んでいた。
PFレンズ採用で同クラスの半分近い重量とし、手持ち撮影の可能性を広げるという。

大口径レンズへの強いこだわりを感じた

新マウントの紹介では、常に「F0.95」が目標として語られた。

※8月24日0時10分:NIKKOR Z 58mm f/0.95 S NOCTはマニュアルフォーカスレンズだったため、上記部分を修正しました。

S-Lineの最高峰に位置づけられる「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S NOCT」。

会場にはモックアップが並んでいたが、NOCTは標準域のレンズとは思えないような迫力があり、三脚座も備わっていた。

今後発売予定のレンズのモックアップがあった。
中央がNoct。三脚座がある。

マウントアダプター

マウントアダプターFTZを装着したところ。

現行のFマウントレンズを共用できるように、マウントアダプターが用意される。アダプターはAFモーターを持たないため、AF使用はモーターを内蔵しているレンズに限る。ちなみにマウントアダプターでFマウントレンズを付けた場合のAF速度は「従来と変わらない性能を出せる」(池上氏)という話があった。

物理的制約により、Ai以前のレンズは装着できない。また、電子接点とレンズ情報を持っているレンズ以外は、絞り値が記録されない。Fマウントの“オールドニッコール”を楽しもうという場合は「Df」のような一眼レフカメラのほうが懐は深いだろう。アダプター使用条件の詳細は、ニコンのWebサイトで確認できる。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正機構が入っている。

Z 7はボディ内手ブレ補正を備えている。Zレンズでは5軸、それ以外のレンズでは3軸の補正になるそうだ。上記のアダプター経由で装着できれば、ボディ内手ブレ補正を活用した撮影も可能だ。

電子接点のないレンズを使う際、焦点距離は6〜4,000mmまで手動選択でき、数値は1mm刻みではないが、85mmと86mmが両方存在するのはニコンマニア的な喜びポイントだろう。焦点距離と開放F値を手入力するレンズデータは、20本まで保存できる。

Nikon 1では社外アダプターなどを使うと露出計も動かない仕様だったので、時が経ってだいぶ柔軟になったように見えた。

手ブレ補正のメニュー。レンズ鏡筒にスイッチがないレンズでは、スポーツモードも画面内で選ぶ。

画作り機能

「クリエイティブピクチャーコントロール」を新搭載。テーマごとに適用量を選び、その中でシャープネスの具合などを微調整できる。

クリエイティブピクチャーコントロール。ゼロにするとピクチャーコントロール「スタンダード」相当だという。

ミドルレンジシャープは、細かい部分にかかるシャープネス、粗い部分にかかる明瞭度との間を埋めるパラメーターだという。

ちなみに、Z 7のイメージセンサーおよび画像処理エンジンはD850とは異なるという。センサー製造については「ニコンが仕様を定めて協力会社で生産している」という回答だった。

バッテリー

新製品の「EN-EL15b」が入っていた。形状がEN-EL15と共通なので、「共用できるが、パフォーマンスをフルに発揮するにはbを使うように」という形になりそうだ。Z 7はUSB Type-Cコネクタを搭載しており、この対応バッテリーを使えばカメラ内USB充電(給電は不可)に対応するという。

側面端子。

記録メディア

シングルXQDスロットという馴染みのないスタイル。ニコンも「ニコンオリジナルグッズ」(NOG)扱いで64GBと120GBを用意する。

生産国

試用したZ 7には「MADE IN JAPAN」と記載。Z 6も日本製だという。現行のニコン機で日本製は「D5」「Df」のみなので、注目したいところ。レンズは従来通り日本とタイの工場を使い分けており、ボディ、レンズともに量産が安定してきたら様子を見てタイ生産に移す可能性もあるという。これも、これまでのニコン製品と同様だ。

本誌:鈴木誠