イベントレポート
【CP+2019】阿部秀之さんのフォト&ムービーステージ「ニコンZを8ヶ月使ってわかったこと」
Zマウントレンズの優秀さを紹介 マウントアダプター使用も「まったく問題なし」
2019年3月5日 14:22
CP+2019のニコンブースで盛況だった、写真家・阿部秀之さんのステージを紹介する。風景、ポートレート、広告撮影など、幅広いジャンルで活躍する阿部さんが、「ニコンZを8ヶ月使ってわかったこと」と題して、Z 7とZ 6の魅力を存分に語ってくれた。
このステージでは、Z 6およびZ 7の設計や開発思想に触れながら、作品とあわせてその性能を説明する形で行われた。
阿部さんが最初に触れたのは、Zシリーズ最大の特徴でもあるZマウントだ。
「Fマウントは口径が小さく、後玉を大きくできませんでした。それからずっと同じマウントできましたが、マウント径を大きくすれば後玉が大きくなり、収差が少なく明るいレンズを作りやすい」
「不利な今まででもすごいレンズを作れていたのだから、大きくできれば今まで以上の性能が発揮できるんです。そうしてマウント径を大きくし、フランジバックを短くしたのがZレンズです」
これまでのレンズ設計やマウントの歴史を振り返りながら、具体的にNIKKORレンズのすごみを説明した阿部さん。印象に残ったのは、ニコンの光学設計者のエピソードだった。
例えば「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」に寄せられた批判のひとつが「なぜこんなにディストーション(歪曲収差)が大きいのか」というもの。それに対して設計者は「僕が補正したいのは、像面湾曲なんです」と答えたそうだ。
「像面湾曲とはピント面がお椀を伏せたようになることです。中央にピントを合わせると周辺はボケてしまい、周辺にピントを合わせると中心がボケてしまいます。この収差は画像処理では簡単には直せません。歪曲収差はすでに画像修正で簡単に直せるものなのに、それをレンズ性能に組み込んでしまうと、像面湾曲が増大してしまうんです。であれば、像面湾曲を直した方がいい。それが彼の回答でした」
「Zのレンズはその考えをより進化させています。NIKKOR FとNIKKOR Zの決定的な違いは、軸上色収差、像面湾曲など、光学設計でできることは徹底的に補正し、その上でディストーション補正などカメラ内で補正したほうが効率が良いものはカメラが担当します。これ
を実現したのがNIKKOR Zです」
その後阿部さんは、タイで撮影したZ 7、Z 6の撮りおろし作品を公開した。4月発売の新レンズ「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」で撮影した作品も含まれている。
「ラーマ9世の大きな寺院です。タイの人にとっては憧れの場所で、いつか訪れたい場所だそうです。これは内部を写した写真。すべてが真っ直ぐに写り、かつシャープ。1/15秒で撮影して、シャープに写りまったくブレない。カメラとレンズが非常にうまく連携をとって写真を写している証です」
「これはピンクガネーシャです。青空を入れて周辺光量がどのくらい落ちるかを見たのですが、まったくありませんでした。自然な青空が出ています」
一方で、Zシリーズで気になるのはやはりマウントアダプターFTZを使用した時のFマウントレンズの性能だ。Zマウントレンズのラインナップがまだ充実していない分、既存のFマウントレンズとの親和性は重要になる。また、マウントアダプターを使うことに抵抗があるユーザーも多い。しかし阿部さんは「まったく問題がない」と話す。
「フランジバックが短いことのありがたみは、広角レンズを使うことでもっとも受けることができます。しかし、Zでももちろん望遠は必要です。そこでオススメなのはAF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VRです。安価なレンズですが、マウントアダプターFTZとの相性は抜群です」
「FTZはまだまだ誤解されている点も多いと思います。使用しても暗くなりませんし、AF速度も落ちません。テレコンバーターのようなデメリットはないんですよ」
他にも、5月のファームアップ予定の「瞳AF」の説明や、Z 6における超高感度撮影、XQDカードを使うことによる信頼性などを述べて、このステージを締めた。
マウントアダプターとの相性や、XQDカードのシングルスロットのみになったことなど、Z 7とZ 6が発表された当時指摘された不安を一蹴する内容になっていたように思う。このステージを聞いて、Zシリーズに乗り換えた人もいたのではないだろうか。