ニコンZ × NKKOR Zレンズ 写真家インタビュー

良好な画質と小型軽量ボディ 用途と操作性が自分にフィットした…石田卓士さん

Nikon Z 7 & NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

標高2,172mから望む春の雪山と天の川を14mmの超広角で狙う。嫌われがちな車のヘッドライトも捉え方によっては良いアクセントになる。開放F値でも画像周辺部のコマ収差が少なく、Z 7の優れた高感度耐性によって、レンズの描写力を存分に引き出している。
Z 7 / NIKKOR Z 14-30mm f/4 S / 14mm / マニュアル露出(F4・20秒) / ISO 4000

ニコン初のフルサイズミラーレスカメラ「Z 7」「Z 6」が発売され、写真家の間にも浸透してきた感がある。しかし、我々にとってニコン=高性能な一眼レフカメラのイメージがいまもなお強い。そうしたニコンを愛する写真家が、どのような考えでミラーレスカメラZの所有に至ったのか、気になるところだ。

この連載は、Nikon Zを使いこなす写真家に登場いただき、Nikon Zに惹かれた理由や、そのきっかけなどを聞くインタビュー企画。お気に入りのNIKKOR Zレンズについても話をしていただく。

今回は風景写真家の石田卓士さんに、愛用するZ 7とNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sについて聞いた。(聞き手:編集部、作品キャプション:石田卓士)

石田卓士

1971年生まれ。新潟県上越市在住。地元の棚田の美しさに惹かれ、総合病院で内科医として働く傍ら、2016年から風景写真を撮り始める。その土地に対する想いと独自性を大切にしている。また花火を撮ることも多く、花火では風景と絡めた情景花火をテーマにしている。


Nikon Z 7。2018年9月28日に発売。実勢価格は40万円前後。

地元目線で大切に風景を撮る

——カメラで本格的な撮影をはじめたきっかけを教えてください。

子どもの行事やスポーツ大会など撮るため、D300を購入したのが最初です。その後、地元の知人に風景写真を勧められたのです。当初は動く子どもをうまく撮ることに熱中していましたから、「動かない風景なんて」と思っていましたが、知人の一人に「いつもその風景に接している地元民でないと撮れない風景もある」との考えを聞かされ、「子どもを撮るのと一緒だ」と思い至り、風景写真に興味を持ちました。それを機にフルサイズのD700を購入、風景写真にのめり込んでいったのです。

田植えを待つ棚田と雲海を切り取る。フレアやゴーストが少ないため、逆光でも躊躇はない。暗部はもちろん明部の階調もしっかり保たれており、深い描写が得られる。
Z 7 / NIKKOR Z 14-30mm f/4 S / 30mm / マニュアル露出(F8・1/100秒) / ISO 64

——医師としてのお勤めと撮影の両立は大変かと思います。

撮影には出勤の前や後に行ってますので、それほど難しいわけではありません。もちろん、撮影に時間を割けない時もありますが、出勤の前後に撮影地に立ち寄ることで、私の好きな朝焼けや星景が撮れるのです。

——Z 7を購入した理由・きっかけとは?

東京カメラ部さんの企画で初めてZ 7を試用しました。そのときメインだったD850も大変気に入っているのですが、Z 7はD850の良さをそのままに小型で軽量、操作性も自分にぴったりくる。「これだ!」と思いました。東京カメラ部さんにZ 7を返却するとほぼ同時に、自分でも購入して今に至っています。

——もともと三脚に装着しての撮影がほとんどでしたよね。一眼レフカメラにあえてこだわる必要はなく、ミラーレスカメラへは自然に移行できましたか?

そうですね。素早く動く動体を撮るわけではなく、私の作品は風景がメインです。ミラーボックスやプリズムファインダーがなくなることで小型軽量になるなら、そちらの方がありがたいです。

——Z 7のファインダーは光学式ではなくEVFになります。そこに不満は生じませんでしたか?

最初は不安でした。でもいざ使ってみるととてもきれいで見やすい。撮るときに大きく違和感を覚えることはありません。背面モニターと同じデザインの水準器がファインダー内に表示されるのも便利ですね。縦位置用のファインダー内表示もありがたいです。

一瞬風が止み、湖面が水鏡になった。慌てて手持ちでカメラを構える。電子ビューファインダーに水準器を表示できるため、手持ちでも水平が取りやすく、速やかに構図が決まる。
Z 7 / NIKKOR Z 14-30mm f/4 S / 14mm / マニュアル露出(F7.1・1/125秒) / ISO 100

——操作系もZ 7とD850とではかなり違います。乗り換える障害になりませんでしたか?

実はZ 7を気に入った点のひとつが操作性だったのです。特に操作ボタン類が右手側に集まっているのが良いですね。いろんな操作を片手で自然な流れで行えます。そんなに難しいものではなく、ニコン一眼レフカメラのユーザーでも、1日あれば覚えられるのではないでしょうか。

タッチパネルも使いやすいですね。タッチシャッターに設定していますが、ピントを合わせたいところに指を合わせ、そのあとそっと離すとブレずに撮れます。レリーズケーブルやリモコンがいらないのでは? と思うほどです。

——Z 7の画質はいかがでしょう。

D700から機種を乗り継いできて、D850でたどり着いた画質にはかなり満足しています。しかしZ 7はD850よりさらにシャープですし、D850のような階調の豊かさもあります。マウント径の大きなNIKKOR Zレンズの力もあるでしょうし、シャープネスや階調といった絵作りに対する考え方も、D850より変化しているのかもしれません。

それに、高感度ノイズが少ないのがうれしいですね。感度を高めにして星景写真を撮ることがあるのですが、ノイズがあるのかないのかわからないくらいです。

——Z 7はカスタマイズできるボタンが多くあります。ボタンカスタマイズの内容を教えてください。

ほとんどデフォルトのままです。U1〜U3のダイヤル、iメニューも購入したままですね。ただ、Fn1(マウント脇上側のボタン)に、再生モードへの切り替えを割り当てています。このFn1ボタンは押しやすいので、とても助かっています。

——Z 7の記録メディアはXQDですが、同じくXQDを採用するD850をお使いでしたので、抵抗はなかったわけですね。

はい。D850の頃からXQDを使っています。これまでトラブルに遭遇したことはなく、シングルスロットのZ 7でも不安は感じていません。現在は128GBと120GBの2枚を併用しています。

花火の高さを予想して構図を決める。横位置が選べるのは超広角の特権だ。花火が白飛びしないように低感度で絞り込み、なるべく暗部のディテールを写すため、長めに露光した。
Z 7 / NIKKOR Z 14-30mm f/4 S / 16mm / マニュアル露出(F14、25秒) / ISO 64

完成度の高い広角ズーム「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」

——Nikon Z用のレンズ、NIKKOR Zレンズは何をお使いですか?

「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」の2本です。

——このページではNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sで撮影された作品を紹介しています。このレンズのどんなところがお気に入りですか?

2019年4月19日発売。メーカー希望小売価格は18万3,060円(税込)。

沈胴式でとにかく小さくて軽く、持ち運びもしやすい。マウントアダプター FTS経由で「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」も使用していますが、このレンズの方がZ 7に似合っていると思います。

画質面にも問題はありません。解像力が高く、四隅の描写も崩れていません。主に明るさの面から、星景を撮るときだけ開放F4のスペックに物足りなさを感じますが、そうでないシーンならこのレンズの良さが引き立ちます。逆光によるゴーストもほとんど出ません。

ナノハナの黄色と残雪と雲の白、そして青空という3層のカラーをバランス良く入れるには、24mmがベストだった。画角の自由度が高く、コンパクトなボディは敏捷性を高める。
Z 7 / NIKKOR Z 14-30mm f/4 S / 24mm / マニュアル露出(F6.3・1/640秒) / ISO 100

——操作性はいかがでしょう。

NIKKOR Zレンズはフォーカスリングとズームリングがはっきり分かれており、手探りでも間違えることがなくなりました。それに造りも良いです。一度決めたフォーカスを動かないように、フォーカスリングにテープを貼っていますが、テープを貼ってなくてもこのレンズは不用意に動くことがない。しっかりした設計だと思います。レンズ前面にフィルターをつけられるのも、D850で使用している「AF-SNIKKOR14-24mmf/2.8GED」にないメリットですね。

——今後出てほしいNIKKOR Zレンズはありますか?

70-200mmF2.8ですね。FTZを利用して「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」をつけていますが、発売ロードマップに記載されてる「70-200mm f/2.8」に期待したいです。

デジタルカメラマガジン最新号も要チェック!!

デジタルカメラマガジン2019年7月号では、石田卓士さんによるNikon ZおよびNIKKOR Z 14-30mm f/4 Sのテクニック解説が掲載されています。あわせてご覧ください。

デジカメ Watch編集部