ニコンZ × NKKOR Zレンズ 写真家インタビュー
軽量ボディに高い描写性能 ミラーレスならではの恩恵も…山梨将典さん
2019年12月25日 12:24
カメラファンにとって一眼レフカメラのイメージが強いニコンが放つ、本格的なフルサイズミラーレスカメラ「Z 7」「Z6」。昨年の発売から交換レンズの充実も進み、さらに今年はDXフォーマットの「Z50」が投入されるなど、Zシリーズはその世界を広げつつある。
この連載は、Nikon Zを使いこなす写真家に登場いただき、Nikon Zに惹かれた理由や、そのきっかけなどを聞くインタビュー企画だ。
今回は山梨将典さんに、Z 7とNIKKOR Z 24mm f/1.8 Sについて聞いた。(聞き手:中村僚、作品キャプション:山梨将典)
ニコンとは独立当初からの付き合い
——山梨さんが写真家になられたきっかけはなんですか?
父が風景写真家で、私が小さいころはたまに撮影現場に連れて行ってもらっていました。中学や高校になると、アシスタント的に同行したりもして、写真に触れる機会は多かったです。大学も父と同じ東京工芸大学の芸術学部に入り、僕の代から4年制になって、そこで写真のイロハを学びました。
ちょうど社会人になるころにデジタルカメラが流通しだしました。僕は広告制作会社に2年半ほど勤めて、車の写真を合成したりイメージ写真を作ったりする仕事をして、合成や補正のスキルを身につけて、2000年に退職して本格的に写真家としての活動を始めました。
——ニコンのカメラはいつごろから導入していたのでしょうか?
独立当初からです。まだまだデジタルは浸透していない時代でしたが、これからはデジタルの時代がくると思っていたので、当初からデジタルカメラを導入していました。最初はフィルムとの併用でしたね。2007年にフルサイズセンサーを搭載した「D3」が出てからは、他の写真家の方々も一気にデジタルに移行したことを覚えています。ニコンは他のメーカーに比べて抜け感がよかったので、風景に向いているカメラだと思いました。
——カメラを買うときに重視するポイントはなんでしょうか?
基本的に画素数です。撮影した写真が広告で使われることを前提に考えると、駅などで貼られるような大きなポスターでも耐えられる写真は、やはり画素数にかかってきます。画素数が大きい方が、クライアントさんに選ばれる可能性も高いんですよ。
——山梨さんは主に風景写真を撮られますよね。
そうですね。自然風景がメインで、鉄道や都市風景も撮影します。デジタルカメラになってから夜景も増えました。フィルムでは撮れなかった風景も撮りたいと思い、星空や夜景も撮影するようになりました。
操作の効率化が作品を高める
——Z 7はこれまでのカメラとの1番の違いはなんでしょうか?
もともとはD850を使ってそれで十分と思っていたのですが、Z 7を使うとそれ以上にきれいで驚きました。僕は夜景を多く撮るので特にノイズに目が行くので、Z 7のノイズの少なさには感動すら覚えました。
それと、「ローライトAF」という、暗い撮影環境の中でも高精度でAFを合わせてくれる機能があります。一眼レフカメラの場合ははライブビューにしてからMFに切り替えてピントを合わせます。原密にピントを追い込むので、普段ならピント合わせだけで10〜15分くらいかかるのですが、なぜかZ 7で撮ると暗い中でもAFが合う。後で調べてみると、知らないうちに「ローライトAF」が動作していたとわかりました。
——AFなど、撮影の準備段階がスムーズになることで、作品に良い影響はありましたか?
普段だとフレーミングや露出の設定に時間が取られることもありますが、Z 7ならすぐにフレーミングを決められますし、早く撮影を始められれば縦位置にしたり露出を変えたりするなど、他の撮影に時間を割くことができます。
また、EVFのおかげでファインダーを覗きながら構図や露出を考えて、ファインダーを覗きながらピント位置を拡大して確認することができます。露出情報がEVFに反映されているので、画角内のいらない被写体も見落とさずに取り除くことができます。
これは光学ファインダーではできなかったことで、背面モニターで確認するしかありませんでした。背面モニターでもライブビューにすれば可能ですが、どうしても周辺の景色も目に入ってきてしまうので、完全に集中できるわけではありません。その点、EVFなら視野内の情報に集中できるのがいいですね。
——時間が経つごとに景色が移り変わっていくので、自然風景は時間勝負な面があります。サッと撮影に集中できるのはかなりプラスになりそうです。
現場に着いた瞬間の条件が一番良いことはかなり多いのです。雲の濃さや太陽の光など、刻々と状況が変わる中では、レスポンスが速く無駄な時間を費やさないで済むのは非常にありがたいです。それは作品の質にも直結すると思います。
——Z 7の操作感やボディの質感も、準備時間の短縮に一役買っていますか?
そうですね。D850の方が高さと厚みがありますが、Z 7の軽いボディはやはりそれ以上の魅力です。気安くカバンに忍ばせて出かけたりできます。この大きさ、この軽さで、この写真が撮れるとわかれば、いまカメラの買い替えを考えている人や、これからカメラを買おうとしている人が、ためらいなく購入できると思います。
絞りこんでも損なわれない立体感
——画質や色の描写はいかがですか?
ニコンは機種によって発色にばらつきがあると感じていました。Z 7はマゼンタが出る印象で僕はとても好きです。例えば青空を写すと深みのある色になる傾向があります。青の発色は意外と難しいので、ナチュラルに出てくれるZ 7は僕好みです。
——夕景の色にも影響しそうですね。
夕景はハイライトとシャドウのバランスが難しい撮影ですが、僕は基本的にハイライトを残すように撮影します。アンダー目に撮影して、のちの補正でシャドウ部を持ち上げます。
Z 7はシャドウ部の階調もしっかり残っていて、本来だったら情報が少ないところでもしっかり残っています。持ち上げても不自然な描写になりません。
Zになってマウント径が大きくなったのも影響していますよね。フランジバックが短くなったこともあり、広い範囲から情報を集められるので、レンズの良さを活かそうとするニコンのこだわりが窺えます。
最大でもF10程度で撮ることが多いのですが、これまでのカメラはF10まで絞るとフラットな印象になっていました。Z 7だとそれが、前景から遠景までのディテールがしっかり出るんです。画像処理やレンズの力が向上しているのだと思います。
小型軽量で写りも良い「NIKKOR Z 24mm f/1.8 S」
——作品の撮影で使われた「NIKKOR Z 24mm f/1.8 S」はどんなレンズでしょう。
夕焼けの撮影では逆光耐性を発揮してくれました。描写性能は素晴らしく、画面の中央はもちろん、四隅までくずれず写し取ってくれます。
光耐性も素晴らしく、ゴーストやフレアもまったく見えません。9枚の絞り羽根による18本の光芒をきれいに出してくれました。値段以上の価値があるレンズだと思います。
ボケも素直で綺麗です。これまで使っていたレンズの場合、パソコンソフトでぼかしフィルターをかけたような、階調のないカリッとしたボケになっていました。しかしこのレンズは被写体のテクスチャを活かしたボケになっているのが印象的です。ボケはボケとして表現しつつ、奥行き感があるんです。最短撮影距離が短く、ワイドマクロ的な撮り方もできるのもボケを生かしやすい要因のひとつでしょう。
そしてうれしいのがコンパクトなサイズ。Z 7とあわせて小さく軽くまとまるのはうれしいですね。雨の日の撮影は億劫になるものですが、機材の軽さや表現の幅広さがその気持ちを乗り越えて「撮りに行こう」と思わせてくれます。総合的にとても完成度の高いカメラとレンズだと思います。
——これからの季節だと、イルミネーションの撮影にもピッタリ合いそうです。
最近は三脚が使えない場所も多いので、軽く持ち歩いて手持ちで撮影できるのは非常に気が楽です。このレンズは都会を撮影するのにも非常に有利で、収差もほとんどないし、F8まで絞っても手持ちで撮影できます。単焦点の広角レンズは周辺の歪みがなるべく抑えられるようになっていますが、その中でもNIKKOR 24mm f/1.8 Sは際立って歪みが感じられません。
——これからNikon Zに望むことはなんでしょうか?
超広角レンズがほしいですね。14mm程度の単焦点レンズがあればな、と思います。現行のZレンズは「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」が最広角ですが、同じような画角でもう少しバリエーションがほしいですよね。そのあたりの充実を期待したいです。
山梨将典さんがNikon Z 7 & NIKKOR Z 24mm f/1.8 Sのテクニックを解説
12月20日発売のデジタルカメラマガジン2020年1月号では、山梨将典さんがZ 7とNIKKOR Z 24mm f/1.8 Sを使用したテクニックを紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン