イベントレポート
ニコンのフルサイズミラーレス「Z 7」「Z 6」発表会
究極の“Z”で市場に新しい価値を
2018年8月23日 21:38
8月23日、株式会社ニコンは35mm判フルサイズセンサーを搭載するミラーレスカメラを発表。都内で開かれた発表会「Z New Products Global Launch Event」のライブ映像が、全世界へ向けて発信された。
発表会でははじめに株式会社ニコン代表取締役兼社長執行役員である牛田一雄氏が登壇。その挨拶で発表会は幕を開けた。
ミラーレスカメラ市場に新しい価値を提供していく
まず、1948年のNikon Iにはじまる歴代の同社カメラの系譜が紹介された。
ニコンの本質が「光の可能性に挑み進化し続ける」歴史とともにあったという血脈をうけて、レンズマウントの映像が背景に浮かぶ中、「Z」の文字とともに新型のミラーレスカメラが登場。カメラを手に収めた牛田氏は、これからの未来を見据えて究極・最高を意味するものとして、その名称として「Z」を冠したと説明。新たな価値をミラーレスカメラ市場へ提供していくと力強く宣言した。
来へ向けて映像表現をリードしていくカメラ
続いて、「MIRROORLESS REINVENTED」のキャッチコピーと「Z 7」の映像とともに、常務執行役員 映像事業部長の御給伸好氏が登壇。Zシリーズのポイントを紹介した。
まず既存の一眼レフカメラについて言及した御給氏は、ZとDの両システムにそれぞれに特徴と利点があるとして、引き続き一眼レフカメラシステムの提供を続けていくことを発表。販売好調なD850にもふれて、究極の一眼レフカメラとの評価を得ているとコメントした。
Zシリーズのポイントである大口径マウントの採用は、新次元の光学性能とレンズ設計の幅の拡大をもたらした。これは「開放F値0.95の実現というニコン史上最高の解像力を実現することを目指した」という、その言葉が示すとおり、高品質な映像体験の提供を意図したということだろう。それはまた、将来的にさらに進化していくであろう映像分野への対応力を備えおくことも意味しているはずだ。よい写真を撮りたい人、自分らしいクリエイティビティーを発揮していきたい人など、そうしたニーズへ向けて訴求していくという言葉が続いた。
そして「新次元の光学性能」と「未来の映像表現の進化への対応」、「ニコンクオリティー」という3つの価値でミラーレスカメラ市場に訴求していくと述べた。
また、これからの映像はよりリアルで実在感を伴ったものになると指摘。それらは未だ市場に提供できていないとして、Zが未来へ向けて映像表現をリードしていくカメラであるとコメントした。
結びとして写真愛好家や写真を探究する、ひとりひとりの想いに応え、映像の明日を照らしていくメッセージとして「CAPTURE TOMORROW」という言葉が示された。
Zマウントにこめられたフィロソフィー
続いて登壇した執行役員 映像事業部開発統括部長の池上博敬氏からはZマウント採用の狙いと、Zシリーズの詳細が明かされた。
新マウントとなるZマウントでは、信頼性と優れた光学性能をより高い次元で提供するもので、フランジバックは最短値である16mmで、マウント内径は55mmと大口径化となった。フランジバックが短くなったことでカメラの小型化が実現し、55mmのマウント内径により開放F値F0.95のレンズ開発が可能になったという。
2機種のラインナップで登場
池上氏はZシリーズは高画質モデルの「Z 7」とオールラウンダータイプの「Z 6」の2機種で展開していくと説明した。
Z 7は45.7メガピクセルの撮像素子と新画像処理エンジンEXPEED 6の採用に加え、像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッド式のAFを搭載。静止画と動画双方に強くなっているという。AFポイントの数は493点、ISO感度は64〜25600。約9コマ/秒の連写性能を誇る。
Z 6は24.5メガピクセルと画素数が抑えられており、約12コマ/秒の連写性能を実現した。AFポイントは273ポイント、ISO感度は100〜51200だ。
どちらも撮影者に安心して使ってもらえるよう、ニコンクオリティー(高精度な開発、製造技術・システム互換性・エルゴノミクス・一貫した高い品質・高い画像品質・堅牢性)が凝縮されており、撮影者の高い要求に応えるという。
映像エンジンには新しくEXPEED 6が搭載された。追加された「ミドルレンジシャープ」により立体感ある表現を実現したとのこと。また、EVFは自然な見え具合を実現。歪みが少なく隅々まで明るい視界となっているという。ボディには約5段分の補正効果のある手ブレ補正ユニットが搭載されており、補正機構は従来のレンズにも対応していることが説明された。
また、映像撮影能力として、フルサイズ4K UHDで30P、フルHDで120Pの能力を有していること、10-BIT HDMI出力でN-LOG記録が可能であることが紹介され、動画への強さを訴えかけた。
大口径レンズの解像イメージを一新する
Zマウントのレンズでは、開放からの高い性能が特徴だとしており、大口径レンズのイメージを一新するレンズ群だという。
まず登場したのが、「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」だ。中心から高い解像力を実現しており、新採用の沈胴機構を採用。動画撮影にも配慮がなされているという。
単焦点レンズでは、開放F値F1.8の「NIKKOR Z 35mm f / 1.8 S」と「NIKKOR Z 50mm f / 1.8 S」がラインナップ。どちらも開放F値F1.8の描写を一変させる仕上がりになっているという。抑制された色収差と自然でなめらかなボケ味が特徴とのことだ。また、それぞれのレンズの特徴として、35mmはマルチフォーカスを採用。50mmでは軸上色収差の抑制と近距離でのとろけるようなボケ味を有しているとした。
3本のレンズはどれもAFと光学性能を向上させたもので、グレードランク「S-Line」に位置付けられるものだとしいう。
また、従来のFマウントとの互換性を確保するマウントアダプターとして「FTZ」が登場。既存の360本のレンズとの互換性を確保したとしている。
このほか、現在開発中のレンズとして「NIKKOR Z 58mm f / 0.95 S NOCT」が発表された。ニコン史上最高となるF0.95と高い解像力、そして美しいボケ、卓越した点像再現性を実現しており、S-Lineの最高峰に位置づけられ、Zマウントを象徴するレンズとなるのだという。
レンズロードマップも紹介された。大口径F1.2のほか、望遠系も充実させていくとのことだ。
ニッコールFレンズも同時発表
Fマウントレンズとして「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」も同時に発表された。PFレンズの採用により小型・軽量化を実現したもので、質量は同クラスの半分近くとなっているという。マウントアダプターを用いて、Zシリーズでも使用できる。
プロにも幅広い人にも使用してもらい、新しい世界を発見していってほしいというコメントで、新製品発表は幕を閉じた。
静止画と動画の両面からZシリーズの魅力が語られたトークライブ
気になる製品価格と発売日が発表された後(後述)、舞台はトークライブに移った。フォトグラフィーのタマラ・マッキー氏とロブ・ウィットワース氏が登壇。大きな拍手とともに登場した両名からは、静止画と動画の2つの側面からZ 7の魅力が語られた。
まず登壇したのは、子どものポートレートや慈善活動の写真を撮影しているタマラ・マッキー氏。メキシコでの撮影の感想が披露された。使用したレンズは「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」。これまでは軽くて便利という利便性をとるか、重量のある高画質な一眼レフカメラを選ぶかのどちらかしか選択肢はなく、利便性をとるとダイナミックレンジや解像感に問題があったと述べた。
そうした問題に対して、Z 7は軽量で操作性もよく、そこに画質も加わっているとシステムバランスを評価。NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sもこの上なく素晴らしかったと絶賛した。
紹介された作品は、強い光源下のものやミックス光の夕暮れシーンのものもあったが、いずれのシーンでも空や自然の色、美しい自然の色が表現できたという。
また、ポートレートでソフトな表現が欲しいシーンでは、浮き立つようなディティールを備えており、逆光時でもゴーストやフレア、白とび、色収差がなく、まるで魔法のような描写だとコメント。マクロレンズのようにして使用した作品も紹介され、クロップしても高い画質が得られるとした。
タマラ氏の作品に対して、ロブ氏は「美しい画像。レンズの妥協がなく、エキサイティングな写真がとれる」と賞賛の声をあげた。
複数台運用でも持ち歩ける
ロブ・ウィットワース氏からは、東京を舞台にした映像作品『東京シームレス』が紹介された。Z 7と複数のレンズを用いて制作された作品とのことで、主人公アリスが着ぐるみのうさぎから手紙を受け取り、都内複数箇所をめぐり田園風景のひろがる地で差出人と思われる人物に会うという構成だ。
風景を大きく切りとることがコンセプトだったというロブ氏は4つの映像から作品がつくられているとメイキング場面を紹介。14mmや105mmなど既存のNIKKORレンズで都内を撮影していったのだと説明した。撮影では複数台のZ 7が用いられており、同時に持ち歩くことができる軽量性を評価した。
作品に対してタマラ氏は毎回見るたびに新しい発見があると述べ、顔認識機能は「私もつかいたい」とのコメントがあった。
今後どのような作品をつくっていきたいかとの質問に対して、タマラ氏はトラベルフォトを続けていきたいと回答。ロブ氏は今後ももちろん使っていき、クリエイティビティに活かしていきたいと述べた。