20周年企画
デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第8回(2011年)
ミラーレスカメラが躍進するも、天災に見舞われた1年に
2024年9月14日 19:30
当サイト「デジカメ Watch」は、本年9月27日(金)をもって20周年を迎えます。皆様のご愛読を長年賜りましたおかげであり、感謝申し上げます。
この小特集では「デジカメ Watch」の過去のニュースを年次で振り返っています。すべてのニュースを網羅できませんが、小生の興味を元に、その年の業界の雰囲気をある程度伝えられる記事をピックアップします。
今回は2011年の記事を振り返っていきます。
東日本大震災が発生 被災状況と復旧を報道
この年の3月11日、東日本大震災が発生しています。東北地方を中心とした地域が大きな被害を被り、カメラ業界でも製造、流通、イベントなどに影響を及ぼしました。
デジカメ Watchでも取り急ぎ、カメラ業界の被災状況や、サポート対応などについての情報を報道。その後は徐々に復旧する様子をお伝えしました。
タイ洪水で供給遅延に
同じ年の秋には、タイ洪水の影響がカメラ業界を襲っています。主に同年の冬商戦に響き、多くの製品の供給遅れの要因となりました。
ペンタックスカメラ事業はHOYAからリコーに。リコーイメージングが誕生
7月1日、HOYA株式会社がペンタックスのデジタルカメラ事業を株式会社リコーに譲渡すると発表しました。2007年ペンタックスを吸収合併、HOYAは約4年でデジタルカメラ事業を手放したことになります(医療関連は保持)。
ペンタックスとリコー。どちらもカメラファンにはなじみ深いブランドということで、当時は歓迎ムードが広がったものです。リコー代表取締役社長執行役員(当時)の近藤史朗氏は記者会見で、「645、K、Qのいずれも存続させる」と明言。競合する点はないとして、ペンタックスとリコーの両方が発展する未来を約束しました。2024年の現在を見るに、このときの事業買収は正しい判断のもと行われたいえるでしょう。
オリンパスで社長解任劇
この年世間を賑わせたのが、いわゆる「オリンパスの不正経理事件」です。
自社の過去の粉飾決算を、当時の代表取締役社長マイケル・ウッドフォード氏が告発。それが原因だったのか、同氏は取締役会で電撃解任されます。その後、当時会長だった菊川剛氏が社長を兼任するも株価は下落し、同社に避難が集まりました。結果、菊川剛氏が退任するに及びます。一時は同社の上場廃止まで取り沙汰されました。
不透明な取引とそれを許した日本の企業統治の実態が明るみに出たこの事件。オリンパスファンは当時、不安な面持ちで過ごしていたことでしょう。
百花繚乱のミラーレスカメラ ついにミドルクラスも
この年のミラーレスカメラで1番のりとなったのは、「オリンパス・ペンライトE-PL2」です。その名の通り「E-P2」の下位モデルという位置づけで、前年末に発売した「E-PL1s」よりは上位という立ち位置になります。液晶モニターの高精細化や、画面上のスライダーで露出などを調整する「ライブガイド」が強化されました。
この頃オリンパスは、エントリークラスをフォーサーズからマイクロフォーサーズへと移行。細かく新製品を発表していました。
6月に発表されたソニー「NEX-C3」は、カジュアルモデル「NEX-3」をさらに軽量化し、「ピクチャーエフェクト」を初めて搭載しました。オリンパスでいうところの「アートフィルター」に相当する機能です。加えてオリンパスの「ライブガイド」やパナソニック「マイカラー」に似たユーザーインターフェースモードを取り入れるなど、レンズ交換式カメラの敷居を下げる工夫が盛り込まれした。
なおこの年、ソニーがEマウントの基本仕様を開示しています。これにより、ソニー純正以外の交換レンズの登場に期待がかかりました。新マウントということでレンズのラインアップ不足が叫ばれていただけに、NEXユーザーにはうれしいニュースとなったことでしょう。その後も現在に至るまで、さまざまなブランドがEマウントレンズを供給しいてるのはご存じの通りです。
同じく6月、パナソニックが「LUMIX DMC-GF3」を発表。こちらもカジュアル層向けの低価格機で、ボディのみだと5万5,000円という安さでした。本体重量は「LUMIX DMC-GF2」の約265gから、さらに軽い約222gを実現しています。
ペンタックスからも異色のミラーレスカメラが登場します。1/2.3型CMOSセンサーを撮像素子に採用する「PENTAX Q」です。コンパクトデジタルカメラをレンズ交換可能にしたような製品ですが、オート110のようなスタイリングをはじめ、随所にカメラ好きの心をくすぐる仕掛けが盛り込まれていました。スマホアプリで一般化する、「ボケコントロール」も搭載されています。
オリンパスは6月、「OLYMPUS PEN E-P3」を発表しました。「E-PL2」の流れを組む主力ラインの製品で、これまで省略していた内蔵ストロボを搭載。コントラストAFにも磨きを掛け、特定レンズでの使用時に世界最速というAF速度を実現しています。「デジタル一眼レフカメラの位相差AFより高速」と謳うなど、技術力を見せつけていました。グリップ交換システムも斬新な仕組みです。
同日には「OLYMPUS PEN mini E-PM1」の発表もありました。パナソニックでいうところの「LUMIX DMC-GF3」にあたるカジュアル路線の機種です。この系列の製品はこ、の後も代を重ねていきます。
カジュアルモデルが目立つこの年のミラーレスカメラですが、8月にソニーが発表した「NEX-7」は、一眼レフカメラでいうところのミドルクラスに相当する製品でした。同時発表のデジタル一眼レフカメラ「α77」と同じ、APS-Cサイズの有効2,430万画素CMOSセンサーを採用。内蔵EVFや汎用のホットシュー、独自の3ダイヤル操作系など、ミラーレスカメラへのソニーの本気度がうかがえました。
同時に「NEX-5N」も発表。こちらは初代機「NEX-5」のリファインモデルで、画素数アップや外付けEVFへの対応を実現しています。
この年、ニコンもついにミラーレスカメラに参入します。「Nikon 1 V1」「同J1」は、コンパクトなボディに1型CMOSセンサーを搭載。特に「Nikon 1 V1」は、これまでのニコン一眼レフカメラとは異なるデザインテイストに驚かされました。
どちらかといえば、エントリークラスをミラーレスカメラで展開していたパナソニックですが、この年の11月、ハイアマチュア向けの「LUMIX DMC-GH2」を発表しました。一眼レフスタイルだった「LUMIX DMC-GH1」に対し、今回はフラットボディを採用。ボディも金属外装とし、高級感を前面に出しています。もともとパナソニックには「LUMIX DMC-LX」シリーズという人気の高級コンパクトデジタルカメラがあり、そのデザインテイストを取り入れたものとなっていました。
若干おとなしかった? デジタル一眼レフカメラの新製品
キヤノンは3月に、エントリークラスのデジタル一眼レフカメラの「EOS Kiss X5」。新たにバリアングル液晶モニターを搭載、ライブビューの使い勝手と相まって、カジュアル層へのアピールに務めました。
ちなみに同時発表の同時発表の「EOS Kiss X50」は若い男女向け。台頭しつつあったミラーレスカメラに対し、ラインアップと細かなターゲティングで対抗していたように感じます。
一方ニコンは4月に「D5100」を発表。こちらもバリアングル液晶モニターを搭載したモデルで、「D5000」の縦開きスタイルから一般的な横開きになりました。縦開きは三脚利用時の雲台に干渉するということで、廃止になった模様です。
5月にはシグマから「SD1」が正式発表されています。「SD15」からFOVEON X3ダイレクトイメージセンサーを刷新し、画像処理エンジン「TRUE II」をデュアル搭載するなど強化を図りました。ネックだった画素数も、約1,536万相当まで引き上げられています。
8月に発表されたソニー「α77」は、同時発表の「α65」と同じく、前年の「α55」に続いてトランスルーセントミラーテクノロジーを採用しています。画素数は、当時クラス最高水準の有効2,430万画素。連写性能は約12コマ/秒となりました。
同じイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラ「NEX-7」が同時発表されていますが、「α77」はコンベンショナルな操作性や連写性能、位相差AFによる動体対応などに重きを置いていたようです。
その一方でソニーは10月、「α900」の国内生産終了を明らかにします。一眼レフカメラでトランスルーセントテクノロジー採用機を、ミラーレスカメラで「NEX」を推進するソニーにとって、当時唯一の純然たるデジタル一眼レフカメラだった「α900」。その後も現在に至るまで、後継機種は発表されていません。
同じく10月には、キヤノンがプロ向けフルサイズ機「EOS-1D X」を発表しました。35mmフルサイズの1Ds系とAPS-Hサイズの1D系を統合した製品で、フルサイズながら約12コマ/秒(ミラーアップの超高速連写撮影モードで約14コマ/秒)、最高感度はISO 204800という化け物ぶりです。定評あるAFにも手が加えられ、RGB AEセンサーとAE専用の画像処理エンジンが搭載されています。
ここ数年はミラーレスカメラの話題が豊富でしたが、やはりプロ向けのハイスペックモデルはまだ一眼レフカメラの独壇場、といった状況です。
高級化・個性化が進むコンパクトデジタルカメラ
いわゆる高級コンパクトデジタルカメラのイメージから遠かったオリンパスが、この年「XZ-1」を発表しています。一般的なコンパクトデジタルカメラに近い薄型ボディに、F1.8-2.5の明るいズームレンズを搭載。さらにミラーレスカメラの「E-PL2」と外付けEVFを共用できるなど、独自のポジショニングの機種として話題となりました。
2月には富士フイルムが「FinePix X100」を発表。現在まで続く「X100」系列の初号機です。カメラ然としたスタイリングと趣味性の高さに、当時もかなりの話題を呼びました。ハイブリッドビューファインダーやAPS-Cセンサーの搭載はもとより、光学ファインダー内にデジタルで情報表示するというギミックにも衝撃を受けました。
同じく2月、カシオが発表した「EXILIM EX-TR100」は、デジタルカメラの外側に360度回転式のフレームを設けた製品でした。自分撮りやカムコーダーのような持ち方など自由度の高い撮影スタイルを提供するものでした。フレームをスタンドとしても使用でき、どちらかといえばスマートフォンの普及で広がりだしたSNS用途を見据えた機種にも思えます。21mm相当の超広角レンズもそのようなニーズを先取りしたものでした。
こちらも製品も人気がありました。富士フイルムの「X10」は、「FinePix X100」のズームレンズ版といったようなレンズ一体型モデル。イメージセンサーや光学ファインダーこそ低価格なデバイスや機構を使用していますが、汎用性と機能のまとまりの良さに惹かれた読者も多かったと思います。
ミラーレスカメラの低価格化やスマートフォンの台頭といった諸状況に加え、コンパクトデジタルカメラの低価格化がほぼ限界まで進んだこの年。以後、一部のメーカーはレンズ一体型ラインの高級路線を強めていきます。
GPS搭載モデルが花盛り
この年のキーワードの1つが「GPS」でした。すでにソニーがデジタルカメラとの連動を目的としたGPSロガー「GPS-CS1K」を2006年に、パナソニックがGPS機能内蔵のデジタルカメラ「LUMIX DMC-TZ10」を2010年にリリースしていますが、スマートフォンにより写真と位置情報の親和性の高さが知れ渡ったのがこの頃。こうしたニーズに対応するため、各社からGPS機能内蔵のコンパクトデジタルカメラが発表されました。
また、ペンタックからはデジタル一眼レフカメラに装着するGPSユニットがリリースされています。位置情報記録に加え、後にカメラ内に内蔵される「アストロトレーサー」も機能として利用できました。
ファン歓喜 模造品対策で純正品が登場
この年ニコンダイレクトで発売されたのが、「ニッコールタンブラー24-70」です。タンブラーの外観を「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8 G ED」に似せたもので、もともと無許可の品が海外で回っていたとのこと。対策を兼ねて純正が登場したという経緯です。
意外に好評だったのか、2013年にはリニューアルした新製品が登場。ついでにAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」を模した「ニッコールタンブラー Micro 60(スタンド付き)」もリリースされました。
ニコンは直販サイト「ニコンダイレクト」に加え、この頃はアウトレットモール3カ所に「ニコンダイレクトストア」を出店していました(2019年に閉店)。そのためかグッズ展開に熱心だった印象があります。後にオープンするニコンミュージアムでも、お土産品としてグッズが人気だったようです。
ニコングッズのうち知名度の高い「ニコンようかん」のレビューはこちらです。
ちなみにキヤノンもレンズタンブラーを2020年に発売していたりします。