20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第9回(2012年)

ミラーレスカメラにあの大物が参入 一眼レフはフルサイズ時代へ

2004年に開設した当サイトも、本年9月27日(金)に20周年を迎えます。長らくご愛読をいただきありがとうございました。感謝を申し上げます。

この小特集は、過去のニュースを年次で振り振り返る企画として用意しました。その年のニュースのうち印象深かったものや、現在の業界の状況につながるようなトピックを独断と偏見でとり上げています。

今回は2012年の記事を振り返ります。

デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/


参入が相次いだミラーレスカメラ

この年もミラーレスカメラで大きな話題が続きました。一方でラインアップの細分化が進んで新機種が増加。レンズ交換式カメラの中での存在感が着実に上がってきた年です。

まず1月、富士フイルムが「X-Pro1」の国内発売を発表。これをもって、同社はミラーレスカメラへの参入を果たしました。ローパスフィルターレスの「X-Trans CMOS」や、装着レンズに合わせて倍率が変化する「ハブリッドマルチビューファインダー」など搭載。マグネシウム合金の金属ボディを採用するなど、いきなりの高級路線に驚かされました。

X-Pro1

ペンタックスは前年、初のミラーレスカメラとして「PENTAX Q」をリリースしていますが、2012年にはさらに変わり種の「PENTAX K-01」を発表しています。ミラーボックスや光学ファインダーこそありませんが、マウントは一眼レフカメラのKシリーズと共通。つまり機構的には、一眼レフカメラのKシリーズのコントラストAF専用モデルというわけです。

ボディデザインはマーク・ニューソン氏の手によるもの。キットレンズの「smc PENTAX-DA 40mm F2.8 XS」ありきのデザインと思われますが、後にボディ単体でも発売されました。

K-01(ブラック×イエロー)

これまでEVFを内蔵していなかったオリンパスのマイクロフォーサーズカメラ。しかしここにきて、センターファインダースタイルの「OM-D E-M5」が3月に発表されました。現在の「OM-5」(OM SYSTEM)の元祖に当たる製品です。

防じん防滴ボディでかつ縦位置グリップも用意するなど、同社マイクロフォーサーズモデルのフラッグシップとして登場。往年のフィルム一眼レフカメラ「OM」シリーズを思わせるスタイリングも話題になりました。

OM-D E-M5(シルバー)

4月にはパナソニックが「LUMIX DMC-GF5」を発表しています。前年の「LUMIX DMC-GF3」の後継機。ラウンドフォルムに手が加えられ、4/3型Live MOSセンサーも低ノイズの新型に切り替わっています。

LUMIX DMC-GF5(ホワイト)

ソニーのエントリーモデルも代替わりしました。「NEX-F3」は、前年発表の「NEX-C3」を引き継いだ外観に、Aマウント機の「α57」と同様、「オートポートレートフレーミング」を実装。「NEX-7」以外で省略されていた内蔵ストロボも搭載するなど、どちらかといえば、デジタル一眼レフカメラのエントリーに寄せてきた印象を受けました。

当時ソニーはAマウントも積極的に展開しており(この年もα57、α37をリリース)、しかしこれは、エントリークラスを求める消費者からすれば、どちらを選択すれば良いのか判断に迷う要因にもなります。せいぜい、ファインダーを覗きたいか否か、グリップは深い方が良いか浅くても良いか、くらいしか判断の基準がなかったのではないでしょうか。とはいえコニカミノルタからユーザーを引き継いだAマウントを凍結するのは短慮でもあり、時期尚早でもありました。

NEX-F3(ホワイト)

そして7月。キヤノンがついにミラーレスカメラに参入しました。APS-Cサイズ相当のCMOSセンサーを搭載する「EOS M」です。直前に像面位相差AFを搭載する「EOS Kiss X6i」を発表したとき、「ん? ひょっとしてこれは?」と思っていたのですが、想像以上に早いミラーレス入りとなりました。

かなりエントリーユーザーに振ったモデルでしたが、一眼レフ用のEFレンズを使用できるマウントアダプターを用意するなど、既存ユーザーへの配慮も厚かったのです。

EOS M

同年「X-Pro1」でミラーレスカメラに参入した富士フイルムは、この年9月に「X-E1」を発表。下位モデルという位置づけながら、質感の高いフラットボディを採用し、マニュアル操作を意識したシャッター速度ダイヤルなども装備。今後のXシリーズの方向性を示しました。

X-E1

オリンパスの下位シリーズ、E-PL系列にも新モデルが登場しています。「PEN Lite E-PL5」は、上位の「E-P」シリーズになぞらえたボディデザインとなった他、SNSブームに対応するべく自分撮りが可能な背面モニターを装備しています。この自分撮り対応モニターはその後、他社にも波及していきます。

PEN Lite E-PL5

前年に「Nikon 1」でミラーレスカメラに参入したニコン。この年は新たに2機種を発表しています。そのうちの1つが「Nikon 1 V2」。ペンタ部を思わせるEVFの突出部や深いグリップを備えることで、「Nikon 1 V」から一転、一眼レフカメラのような見た目になりました。

また、あえて搭載しなかったモードダイヤルを装備するなど、既存のカメラユーザーが親しみやすい路線に変更されています。

Nikon 1 V2

パナソニックは10月、フォトキナ2012で発表した「LUMIX DMC-GH3」の国内発売を発表しました。

久しぶりにリリースされたGHシリーズは、金属ボディを採用し、バッテリーグリップを装着可能になるなど、他社でいうミドルクラスの性格を強めました。操作性にも配慮し、幾分大柄なボディになっています。フルHD60fpsの動画記録にも対応するなど、この頃から動画ユースに強い製品でした。

LUMIX DMC-GH3

同年10月には、ソニーが「NEX-6」を発表しています。最上位モデルの「NEX-7」と、これまでミドルラインとして設けられていた「NEX-5」系列の間に位置する製品です。

「NEX-5」系列と違い、EVFと内蔵ストロボを搭載するのが特徴でした。「NEX-7」の操作系が特殊だったため、より一般的な操作の上位機を求める声に応えたのかもしれません。

NEX-6

なおこの年の「CP+2012」で、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)がそこそこ大きな発表をしています。

CIPAとは、国産カメラの出荷台数の統計発表や、技術規格などの策定を行う団体。カメラメーカーで構成され、CP+の主催団体でもあります。

そのCIPAが、いわゆるミラーレス構造のカメラを今後「ノンレフレックス」という呼称で呼ぶ、と発表したのです。統計資料の中で正式に使用することを、記者会見で告げました。

それまでも「ミラーレスカメラ」という呼称については、一般レベルでも正誤について議論を呼んでおり、「何でもいいから権威のあるところが用語を定義してくれ」というのが、報道する立場のデジカメ Watchスタッフの総意でした。

当時のCIPAは、あくまでも統計上の呼び名であり、各社の呼称をこれに統一するものではないとを強調。それもあってか、一時期、メーカーのスペックシートに「分類:ノンレフレックスカメラ」のように使われていましたが……通りが悪かったのか、語感がよろしくなかったのか、徐々に見かけることがなくなりました。

デジカメ Watchでも当初、記事内で「ノンレフレックスカメラ」を積極的に使用していましたが、あまりにも一般化しなかったため、いつしか自然と「ミラーレスカメラ」に戻ってしまいました。CIPAもいまでは統計内で、この用語を使っていません。

フルサイズが熱かったデジタル一眼レフカメラ

前年に発表されたキヤノン「EOS-1D X」に続き、ニコンからもプロ向けのFXモデル「D4」が1月に発表されました。新開発の「アドバンストマルチCAM3500FX」をAFセンサーに搭載。有効1,620万画素・約10コマ/秒の連写に応えるXQDメモリーカードをメモリーカードに採用するなど、高速性能に振った内容でした。フルHD動画も24fpsから30fpsへと進化しています。

D4

さらにニコンは2月、フルサイズセンサー搭載の「D800」を発表。「D700」から約4年、ついにモデルチェンジしたミドルクラスということで、ファンの喜びは相当なものでした。

有効画素数はクラス最多の3,630万となり、拡張感度は最高ISO 25600。視野率100%のファインダーや「D4」と同じAFセンサーモジュールを採用するなど、待たされただけあって納得の内容です。光学ローパスフィルターを省略した「D800E」を同時に発表されるなど、話題を振りまきました。

D800

シグマが2月に発表した「SD1 Merrill」は、前年に投入した「SD1」かリファインした「Merrillセンサー」を搭載するモデル。仕様は「SD1」と同じですが、製造方法を一部見直して価格を下げることに成功しました。当時の実勢価格にして「SD1」の61万円前後から20万円前後へとなり、その価格差に衝撃が走ったものです。

あまりにも価格差があったことから、「SD1」の購入ユーザーには40万円相当のポイントを進呈する措置もとられました。

SD1 Merrill

ニコンの「D800」を追う形で、キヤノンは3月に「EOS 5D Mark III」を発表します。ハイアマチュアの支持が厚かった「「EOS 5D Mark II」の後継機です。「D800」と同じく、約4年ぶりのモデルチェンジとなりました。

35mmフルサイズCMOSセンサーは新型の有効2,230万画素に、拡張感度は最高ISO 102400までとともに強化。連写性能も約6コマ/秒に引き上げられた上でAFシステムが「EOS-1D X」並になるなど、当時としては万能感の高い満足のいくスペックでした。約98%だったファインダー視野率も約100%になっています。

EOS 5D Mark III

ソニーは3月、Aマウントカメラの「α57」を発表。おなじみのトランスルーセントミラーテクノロジーを搭載した製品で、人物を認識すると自動でトリミングをしてくれる「オートポートレートフレーミング」を特徴としていました。顔認識を利用し、顔を識別するとそれをもとに3分割法に基づくトリミングを行う、というものです。

人物の姿そのものを認識しているわけではないのですが、現在の認識系AFに至るまでの機能の1つとして興味を覚えます。

α57+DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM

ニコンからは4月に「D3200」が発表されています。有効画素数はクラス最高の約2,416万画素。画像処理エンジンが最新の「EXPEED 3」になるなど、「D3100」から2年の間を置いただけあって、かなりの進化を見せています。

後述するように、この年に各社はスマートフォンとの連動に注力し始めています。本機はUSB接続のワイヤレスモバイルアダプター「WU-1a」でそれを実現。カメラへの内蔵が当たり前になるまで、2015年くらいまでの過渡期のオプションとして役割を果たしました。

D3200

5月にはこのクラスとはしては珍しい、防じん防滴性能を有した「K-30」がペンタックスより発表されました。「K-r」よりは上位ですが、ボディサイズはエントリーモデルのそれであり、それでいて視野率100%のファインダーを搭載。このジャンルの成熟期の到来を予感させるものでした。お約束のカラーバリエーションも健在です。

K-30(クリスタルイエロー)

像面位相差AFといえば、いまではミラーレスカメラに実装されるものとのイメージが強いですが、実はデジタル一眼レフカメラが先でした。

キヤノンの「EOS Kiss X6i」が搭載した「ハイブリッドCMOS AF」は、レンズ交換式カメラで初めて、ライブビュー時の像面位相差AFを実現しています。

当時はまだコントラストAFを併用しての合焦ではありましたが、AIサーボAFがライブビューで使えるようになるなど、使い勝手が向上しました。特に動画でのサーボAFが実用的になったのは大きかったと感じます。

EOS Kiss X6i

ソニーはこの年、Aマウント機を2モデル発表していますが、そのうちの1機種がフラッグシップの「α99」でした。「α900」から途絶えていた35mmフルサイズセンサー搭載モデルです。もちろん、トランスルーセントミラーテクノロジーが採用されています。

面白いのはトランスルーセントミラーテクノロジーに加えて、像面位相差AFも併用していたことです。ソニーでは世界初の「デュアルAFシステム」と呼んでいました。また、このモデルから今に続く「マルチインターフェースシュー」が採用されています。

α99

9月に発表されたニコン「D600」は、「D800」より小型軽量の35mmフルサイズセンサー搭載モデル。「D800」より一回り小柄とはいえ、視野率100%、倍率0.7倍(50mmレンズ使用時)のファインダーを搭載するなど、主要スペックに抜かりはありません。フォーカスポイントもが39点になるなどの進化も見られます。

D600

時を同じくして、キヤノンも小型軽量の35mmフルサイズ機「EOS 6D」を発表しました。EOS 5Dシリーズの下位ラインとして位置づけられ、フルサイズセンサー搭載モデルを幾分身近な存在にしてくれました。

「EOS 6D」と「D600」の登場は、デジタル一眼レフカメラにおけるフルサイズのミドルクラスが2ラインとなったことを示します。それによりミドルクラスの主流が、APS-Cからフルサイズへと転換することを予感させました。

EOS 6D

付加機能・デザインで進化が進むコンパクトデジタルカメラ

ソニーが1月に発表した「サイバーショットDSC-TX300V」は、無線LAN機能を搭載した防水デジタルカメラです。無線LAN搭載モデルはこれまでにもありましたが、この年くらいから各社とも通信相手を明確にスマートフォンと想定。そのための専用アプリを用意しています。

この流れはレンズ交換式カメラへも波及していきます。ただし初期の接続方法やアプリがまだこなれておらず、各社とも使い勝手が今ひとつでした。結果、多くの人が「カメラで撮るよりスマホで撮って送った方が早い」と感じたのではないでしょうか。

デジタルカメラ側・スマートフォン側の性能がともに未成熟だったこともありますが、スマートフォンとの連携がもっと早いタイミングで洗練されていたとしたら、いまとは違った未来が待っていたのかもしれません。

サイバーショットDSC-TX300V

キヤノンが2月に発表した「IXY 1」は、「IXYの原点を受け継ぐ」というシンプルなデザインを採用したモデル。曲面を組み合わせたデザインが主流となっていた当時のコンパクトデジタルカメラのトレンドの中で、独自の存在感を放っていました。

IXY 1(ホワイト)

どちらかといえば、兄弟機の「IXY 3」の方が世間的には受けていたのかもしれません。スピンドル加工が新鮮でした。

IXY 3(レッド)

高級コンパクトデジタルカメラにも新しい流れが。キヤノンが2月に発表した「PowerShot G1 X」は、撮像素子に1.5型のCMOSセンサーを採用していました。マイクロフォーサーズに類似したサイズであり、28-112mm相当の固定式レンズと組み合わせた画質を売りにしていました。

PowerShot G1 X

これまでも、そしてこのあとにも見られなかったコンセプトのコンパクトデジタルカメラがこちら。オリンパスの「VG-170」は「クラス最高のビッグフラッシュ」をうたい文句に、ガイドナンバー約8.7(ISO 100)のフラッシュを内蔵。見た目にも大きなフラッシュが特徴的でした。

VG-170(レッド)

同じくオリンパスが3月に発表したのが「SH-25MR」です。画像処理エンジンを2基搭載し、静止画と動画など2系統の同時記録が可能でした。他にもFacebookやFlickr向けの「SNSアップロード予約機能」を搭載するなど、時代を見据えた意欲的な製品でした。

SH-25MR(ホワイト)

いまでも子供用のデジタルカメラはトイデジカメのジャンルで見られますが、この年発表された「COOLPIX S30」は天下のニコン製。タフネス性能はもちろん、「ふんわりさせる」「好きな色を残す」「キラキラさせる」「魚の眼で見る」「ミニチュア風にする」「色を変える」というエフェクト名が良いですね。単3電池2本で240枚撮れました。

COOLPIX S30(ブルー)

この年の6月にソニーが発表したのが「サイバーショットDSC-RX100」。今に続くRX100系列の初代機になります。

1型センサーをズームレンズと組み合わせ、極小ボディにパッケージングするという主軸はこの頃から変わっていません。RAWやフルHD60fpsの記録にも対応するなど、レンズ交換式カメラのユーザーがサブに持ち歩きたい性能を備えています。ソニーから他のサイバーショットが消えたあとも、シリーズは存続し続けました。

サイバーショットDSC-RX100

Android OSを採用したデジタルカメラもこの年に登場しています。ニコンの「COOLPIX S800c」は、Android 2.3を搭載し、背面のタッチパネル式モニターで操作するというものでした。背面だけを見るとまるでスマートフォンのよう。アプリのインストールも可能でした。もちろん、Wi-FIも搭載されています。

COOLPIX S800c

まるで一眼レフカメラのような見た目の光学26倍ズームモデルが「PENTAX X-5」です。機能性や小型化を突き詰めると、同じ製品ジャンルでもどうしてもデザインが似通ってくるものですが、ここまで精緻かつあからさまに一眼レフカメラに寄せたところは、見事なセルフオマージュといって良いでしょう。

PENTAX X-5(シルバー)

「サイバーショットDSC-RX100」に続き、ソニーが9月に発表したのが「サイバーショットDSC-RX1」でした。コンパクトデジタルカメラのサイズ感のボディに、35mm判フルサイズのCMOSセンサーを搭載。画素数も当時最高クラスの有効2,430万画素、レンズも35mm F2.0のカール・ツァイスゾナー T*ということで、マニアの注目を一身に集めました。

当時は25万円の価格に驚かされましたが、いまならバーゲンプライスといったところですね。

サイバーショットDSC-RX1

ライカならではのモノクロ専用機が登場

モノクロでしか記録できない。しかも撮像素子レベルで……。そんなカメラがこの年発表された「ライカMモノクローム」です。写真の歴史においてモノクロで残された名作は数多く、しかもかなりの割合でライカとの深い関連を持ちます。モノクロでの作品制作を追求している撮影者にとって、またとない製品の登場だったでしょう。

ライカMモノクローム

ライカ製品の話題としては、この年の「ライカM」も外せません。レンジファインダーは残しつつ、背面モニターでのライブビューに対応したのです。

M型ライカといえば、良い意味でアバウトなレンジファインダーによるフレーミングが特徴ですが、その前提がライブビューで変化しました。「これでは普通のミラーレスカメラでは?」と思ったものですが、そもそもレンジファインダーカメラこそ、本来の意味でのミラーレスカメラといえますよね。

外付けEVFを装着したライカM(シルバークローム)

積層型CMOSイメージセンサーが開発発表

この年の1月、ソニーが新型の撮像素子として「積層型CMOSイメージセンサー」の開発を発表しています。ただしこのときは1/4〜1/2.3型での実用化が最適とされ、条件付きで1/1.7型の可能性について触れられている程度。当面はスマートフォンでの利用を想定していたようで、レンズ交換式カメラへの採用はまだ先のこととなります。

ミラーレスをターゲットとしたカメラバッグ

この頃悩ましかったのがカメラバッグ選びでした。小型のミラーレスカメラにシステムを揃えても、カメラバッグが一眼レフ用の大きなものしかないからです。特にマイクロフォーサーズのユーザーにとって、しっくりくる選択肢が限られるような状況でした。

アルティザン&アーティストの「ICAM-210H」はいち早くミラーレスカメラ用を謳った製品。もともと同社はM型ライカ向けのバッグを得意としていたので、小型で高品位なカメラバッグ造りは得意でした。お披露目の場が、「カメラ女子文化祭」というのが当時の雰囲気を忍ばせます。

ICAM-210H。左からレッド、ブラック

ECサイトでの買い物に抵抗が薄れる

この20年は、ECサイトの存在感が増した期間でもありました。デジカメ Watchがスタートした2004年頃はもちろん、長い間カメラの小売としては、リアルの量販店が絶対的な販売力を持っていました。その後コロナ禍を挟んで、ECサイトの存在感が強まっています。

とはいえECサイトの勃興に寄与したのは、インターネットの普及を見据えてECサイトをいち早く構築・運営した、他ならぬ量販店側でした。充実した品数と商品の確かな目利きにより、「Amazonには抵抗がある、でもヨドバシ.comなら安心」という層も多かったのではと思います。実店舗とポイントを共通化した施策もありがたかったです。

写真SNS「Instagram」が流行の兆し

その頃のWebの写真サービスとしては「Flickr」が絶対的な存在でした。容量無制限でアップロードできたのが大きいのですが、Exfiやジオタグの表示、コミュニティ機能など、さまざまな面で他のサービスより一歩先んじていました。

ただしPCのブラウザベースのサービスであり、当然ながらスマートフォンフォトの流行とは別ベクトルで運営されていた模様です。

そんな中、スマートフォンをメインとしたサービスとして脚光を浴びたのが「Instagram」でした。いまや押しも押されぬ写真SNSの雄ですが、2012年の当時はコメント欄などがまだ日本語化されておらず、もっぱら海外ユーザーがメインだった記憶があります。

SNSとしての機能が充実し、なによりスマートフォンのカメラで撮った写真をシェアすることに主眼を置いた作りに、「Flickr」とは違うデジタル写真の世界を感じたものです。

ちなみに弊社インプレスも「GANREF」という写真共有サイトを運営しています。サービス開始はなんと2009年。Flickrには負けますが、Instagramより1年先輩。いまでも稼働中です。

いまも現役で活躍中の「ニコンちゃん」

当時はTwitter(現X)における、いわゆる企業アカウントが話題になった頃でもあります。カメラ業界では、前年にデビューした「ニコンちゃん」が随一ともいえる人気を誇っていました。2024年の現在も日々投稿を続けるニコンちゃん。ここまで長命なキャラクターになるとは当時想像していませんでした。

本誌:折本幸治