20周年企画
デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第7回(2010年)
勢力を拡大するミラーレスカメラ 撮影用品も活性化
2024年9月13日 18:00
「デジカメ Watch」は9月27日(金)に、サイト開設から20周年を迎えます。長きにわたるご愛読、誠にありがとうございます。
この小特集は「デジカメ Watch」の過去のニュースを振り返る企画です。
今回は2010年の記事からピックアップしていきます。
順当な進化を見せるデジタル一眼レフカメラ
この年の2月、キヤノンはエントリークラスのデジタル一眼レフカメラ「EOS Kiss X4」を発表。このシリーズはほぼ年1回のペースでリニューアルしています。今回は有効画素数が約1,510万から約1,800万へと増加したほか、動画用の外部マイク端子を搭載。
キヤノンはこのクラスでも30fpsのフルHD動画での記録が可能でした。この機種からは動画のマニュアル露出も可能に。また、SDXCメモリーカードへの対応も果たしています。
同じく2月に発表されたのが、シグマの「SD15」。「SD14」に続いて「Foveon X3ダイレクトイメージセンサー」を搭載。画像処理エンジンを「TRUE II」に置き換え、画質を向上させました。
8月にはニコンがエントリークラスの「D3100」を発表。前モデル「D3000」から約1年でのモデルチェンジになります。これまで720pでの記録にとどまっていたニコンですが、本機で初めてフルHDでの動画記録に対応。ただし24fpsでしたが。
さらに8月、ソニーが「α55」「α33」を発表します。すでにソニーは5月にミラーレスカメラの「NEX-5」「NEX-3」を発表していましたが、この段階でAマウント機での展開が続くことを無事確認できました。
また、この機種から「トランスルーセント・ミラー・テクノロジー」が投入されています。透過光ミラーを使用することで、ミラーを動かすことなく位相差AFが可能。「クイックAFライブビュー」の弱点であった視野率の低下も見られず、同時に連写速度も高速化するという技術でした。実際、「α55」は当時としては先進的な10コマ/秒での連写が可能になっています。
その他、フルHD動画記録への対応やGPSを内蔵するなど、同年のキヤノンやニコンのエントリークラスに比べて、攻めた内容が印象的でした。
前年、APS-Cミドルクラスの決定版ともいえる「EOS 7D」を投入したキヤノン。2010年にはその下位モデルとして「EOS 60D」を世に送り出しています。EOSシリーズ初のバリアングル液晶モニターを採用しました。カメラ内RAW現像もこの機種からです。
9月にペンタックスが発表したのが「K-r」。前年の「K-x」に続くエントリーモデルです。今回もオーダーカラー受注サービスを実施し、全120通りのカラーパターンが選べるようになっていました。
本体そのものは「K-x」から各所をチューンアップしたモデルといった印象ですが、1点、内蔵する対戦ゲーム「フォトチャレンジャー」がぶっとんでいます。撮影画像のExifデータに基づいたパラメータが生成され、それをもってK-r同士で戦うというもの。K-rの高速赤外線通信(IrSimple/IrSS)を活用した機能と推測されますが、K-r以外でゲームを実装したレンズ交換式カメラを、後にも先にも知りません。
前年からマイクロフォーサーズが絶好調のオリンパスですが、フォーサーズシステムのデジタル一眼レフカメラも新製品を投入しています。しかもフラッグシップの「E-5」です。「E-3」の後継機で、本格的な撮影についてはまだ一眼レフカメラには及ばないのが実情でした。
ニコンが9月に発表した「D7000」は、「D300S」と「D90」の中間に位置するハイミドルモデル。「D3100」に続きフルHD動画に対応したほか、有効1,620万画素という高画素モデルでもあります。そして視野率100%のファインダーを搭載。SDXCメモリーカードのデュアルスロットもハイミドルにふさわしい装備で、隙のない中級機といった印象でした。
同じく9月、ペンタックスも中級機の「K-5」を発表。前年に発表した「K-7」の後継機です。連写性能を約7コマ/秒に、常用感度をISO 12800へと引き上げ、さらに「645D」と同じAFセンサーを装備。AFの精度・速度ともに向上しました。こちらも堅実な進化を見せています。
大きく勢力を伸ばしたミラーレスカメラ
この年の1月、Samusungが「NX10」でミラーレスカメラに参入しました。しかもAPS-Cセンサーを搭載するのだから驚きです。ただし国内では最後まで未発売でした。
ペンタックスと技術提携をしていた同社ですが、一眼レフカメラからは手を引き、ミラーレスカメラへと移行した模様。コントラストAFをはじめとした使用感は悪くなく、交換レンズの性能にも目立った不満のないものでした。
さらに同社は9月、第2弾となる「NX100」を発表します。こちらはペンタ部のないフラットボディで、EVFは外付け。交換レンズのロードマップも充実しており、この時点ではかなりミラーレス事業への高い本気度が高く見えていたのですが……
前年にマイクロフォーサーズに参入したオリンパスは、第3弾の「E-PL1」を2月に発表しました。「E-P1」「E-P2」よりも廉価な設定で、ファミリーなどさらにカジュアル層を狙った製品です。発売時の実勢価格は7万円前後。おそらくデザイン的な理由で「E-P1」「E-P2」では省略されていた、内蔵ストロボも新設されました。
加えてダブルズームキットには、フォーサーズレンズを装着するためのマウントアダプターを同梱。フォーサーズからマイクロフォーサーズへの移行期であったことを物語っています。
続く3月、パナソニックは「LUMIX DMC-G2」の投入を発表。「LUMIX DMC-G1」から見た目はほぼ変わっていませんが、タッチパネルの背面モニターでタッチAFが可能になるなど、操作性に関する進化が目に付きました。超解像技術の採用もあり、コンパクトLUMIXの良い点を取り入れてきた印象です。
そしてソニーはこの年の5月、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレスカメラを発表しました。2月の「PMA 2010」および3月の「CP+2010」で予告していた製品で、名称は「NEX-5」「NEX-3」。
思い切ったデザインの小型ボディが、強烈なインパクトを与えました。特にマウント基部の直径がボディ全高を上回るという、掟破りのスタイリングに驚いたものです。
このとき発表されたEマウントは、フランジバック18mm、マウント径58.9mmというもの。まさかこれがフルサイズセンサーに対応するとは、当時は夢にも思っていませんでした。
中判デジタル一眼レフカメラ「645D」が発進
ペンタックスは3月、中判デジタルカメラ「PENTAX 645D」を正式発表しました。2005年の開発発表から3年後の2008年、いったん開発を凍結していた製品です。中判カメラといっても操作系はKシリーズに近く、扱いやすいものだったことを思い出します。
それまでの中判デジタルは、ハッセルブラッド、フェーズワン、リーフ、マミヤ、ライカSといったファッション系のスタジオ向けシステムのイメージが強かったのですが、フィルムカメラ「PENTAX 645」の流れをくむデジタルカメラの登場により、アマチュアへの広がりを期待させました。
個性際立つコンパクトデジタルカメラたち
ソニーは1月、コンパクトデジタルカメラ「サイバーショットDSC-W380」「同DSC-W350」「同DSC-HX5V」「同DSC-TX7」を発表しました。この製品より、カメラを振りながら撮ることでパノラマ画像が生成できる「スイングパノラマ」が搭載されています。読み出しが速い小サイズのCMOSセンサーらしい機能といえるでしょう。
同様の機能を富士フイルムでは「ぐるっとパノラマ」と命名。7月発売のFinePix F300EXR」などで搭載しました。
ペンタックスが1月に発表した「Optio I-10」は、同社のフィルム一眼レフカメラ「オート110」を思わせる確信犯的な外観で話題になりました。が、ここで取り上げたいのは、犬・猫の認識機能を搭載していたこと。事前に撮影する犬・猫の顔を登録しておく必要がありますが、この時代、すでに動物認識が実装されていたことに関心を覚えます。
この流れは他社にもおよび、富士フイルムが2月に発表した「FinePix Z700EXR」などにも「ペット認識機能」が搭載されました。
その富士フイルムは7月、15倍ズームの「FinePix F300EXR」を発表します。同時発表の「FinePix Z800EXR」とともに、撮像素子内に位相差AF測距センサーを組み込んだことで話題になりました。この撮像素子によるAFを、富士フイルムでは「瞬速フォーカス」というキャッチコピーでアピール。後のミラーレスカメラの使い勝手を大きく変えた像面位相差AFの実用化は、おそらくこのときが最初でしょう。
9月発表のペンタックス「Optio RS1000」がユニークだったのは、カメラ前面のデザインを自作できたこと。着脱可能なアクリルパネルに写真や手描きのイラストなどを挟み込むことで、オリジナルデザインのコンパクトデジタルカメラに仕上げることができます。
さらにペンタックスは、前面にカワダの「nanoblock」を装着してデコレーションするという「Optio NB1000」も同時に発表しています。
高倍率機のズーム比が30倍に達する
富士フイルムが3月に発表したレンズ一体型のデジタルカメラ「FinePix HS10」は、世界初の光学30倍ズームレンズを搭載。35mm判換算での焦点距離は24-720mm相当となります。それを全長130.6mmのボディに搭載していました。最大10コマ/秒の連写性能も有するなど(ただしフル解像度で記録できるのは7コマまで)、万能感の強いカメラでした。
しかしこの年の9月、キヤノンが光学35倍ズームの「PowerShot SX30 IS」で記録を抜きます。熾烈なズーム倍率の争いは、これからもまだ続くのでした。
レンズ交換式カメラの認知が進んだこの頃でも、この手の製品は根強い人気を誇っていました。むしろコンパクトさとまとまりの良さから、その必要性が再認識されたのかもしれません。
大流行の斜め掛けストラップ
この年、斜め掛けができる長めのストラップがやたらと発売されています。
それまでカメラのストラップといえば、「首に掛けて前へ提げるもの」という通念がありました。それとは別に、ショルダーバッグのように片方の肩に引っかけるスタイルも見られましたが、カメラがずり落ちる可能性が高いことから、そちらは非推奨といった扱い。そのどちらでもない方式が、斜め掛けになります。
斜め掛けが流行ったのは、おそらく女性のカメラファンの増加によるものでしょう。流行後は男性もしてましたが。
賑わいを見せる小径フィルター界隈
マルミ光機から4月に発表された「My Color Filter」は、鏡枠が着色されたカラフルなプロテクトフィルター。カラーリングは計7色から選べました。用意された37mm、40.5mm、46mmの3サイズは、当時のマイクロフォーサーズカメラのキットレンズを意識したサイズ展開になります。
この製品に限らず、2010年は小径のレンズフィルターが多数発売されました。この年、ミラーレスカメラはレンズ交換式カメラの3割を占めるに至り、台数全体の底上げに寄与したとされています。強い商材となるカメラが出ると、周辺の撮影用品も活性化する。カメラ業界で繰り返される歴史ですが、その顕著な例となりました。