特別企画
「Profoto A1」は正に“小さなスタジオライト”だ!
試してびっくり 配光性や連写追従など従来品と大きな差
2017年9月27日 15:22
世界最小のスタジオライト「Profoto A1」がついに発表になった。Profotoと言えば、スウェーデンのスタジオストロボのパイオニアであり、世界のスタジオのレンタルストロボのシェア約7割というプロフォトグラファー御用達のストロボメーカーである。
Profotoはこれまでも、業界に衝撃をもたらしてきた。ロケーション撮影のゲームチェンジャーであるProfoto B1やB1X、機動力を重視したProfoto B2などバッテリーストロボをいくつか発売している。
そして今回世界最小のスタジオライト、Profoto A1を発表した。「クリップオンストロボ」ではなく、「クリップオンも可能なスタジオライト」だ。このProfoto A1の発表により、スタジオやコマーシャルの現場だけでなく、ウェディング、報道、そしてアマチュアなど様々なジャンルのフォトグラファーからも注目されるはずだ。
円形ヘッドには訳がある
まずはProfoto A1の機能から見てみよう。重量は560gと軽量で今まで通りクリップオンタイプのストロボを使っている感覚とほとんど変わりない。
最大光量は76WsとB1XやB2に比べると光量は劣るがこのサイズのストロボとしては十分な光量がある。ガイドナンバーではなくWsで表示されている点もスタジオライトらしい。コントロールできる光量は9段と幅広い。
また、世界最小のスタジオライトと言っているには理由がある。形はたしかにクリップオンタイプではあるが、機能性に違いがある。
まず1つ目はヘッドが円形であることだ。一般的なクリップオンタイプは長方形だが、ヘッドの形状が円形になっている。そのため、光りが隅々まで行き渡り均一なライティングが可能になっている。
実際に数台のクリップオンストロボと比較したが、ムラのない光りはProfoto A1のみだった。実際の作例を見ていただけるとわかると思う。作例は露出計を使用し、顔の露出が同じになるよう各ストロボの出力を調整している。
※共通設定:D750 / AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 58mm
もちろん撮影する画角に応じてズーム機能も搭載しており、14-105mmまでの画角に対応している。14mm、18mm、24mmで使用する場合は付属のワイドレンズを装着する必要があるので覚えておこう。32-105mmまではワイドレンズは必要ない。
ズーム機能はオートでも使用でき、またマニュアルでズームリングを回して操作することもできる。また、メニュー内からも任意の画角になるように調整することもできる。
Profoto A1にはLEDのモデリングランプが搭載されている。陰影の出方などを確認できるのでとても便利だ。モデリングランプはズーム機能に連動しているので、効果を見ることができる。この辺も一般的なクリップオンストロボとは違い、スタジオライトに近い。
リサイクルタイムは驚異的で、0.05秒から1.2秒とストレスを感じさせない。パワー7や8の大光量でもある程度の連写にはついてくるので驚きだ。最大光量であるパワー10でも1.2秒なのでテンポ良く撮影できる。
スタジオライト同様にばらつきは殆どなく、0.2段以内の安定性を誇っている。連写しても明るさのばらつきや色温度のばらつきがほぼないので安心だ。
晴天の逆光でも背景を落とせるパワー
晴天の逆光で背景を落とす日中シンクロを試した。出力は最大の10で、モデルから1.5mほどの場所(画面右方向)からオフカメラで発光させた。
空を暗めの青色に写せる絞りのF22に設定。ストロボ無しだと被写体がシルエットになってしまう状況だ。
日中シンクロでは、レフ板代わりの補助光的な使い方も可能。下はアクセサリーを付けないでダイレクトに発光させたものだが、自然な雰囲気に仕上がった。
ハイスピードシンクロにも対応
さらにProfoto A1は、ハイスピードシンクロ(HSS)にも対応している。ハイスピードシンクロは1/8,000秒まで対応し、HSS時でもパワーコントロールは9段に対応している。
シンクロ速度(例えば1/200秒)よりも速いシャッター速度が使えるため、絞りを開けて背景をボカした作品を撮るといったことが可能。
無線機能を内蔵 多灯撮影も容易
Profoto A1にはAir Remoteが内蔵されている。そのため、通常使用で最大300m、HSSとTTL時では最大100m離れてもストロボを発光可能だ。トランスミッター機能とレシバー機能両方を備えているので、マスターとしてもスレーブとしても操作できる。
多灯ライティングでも最大で4グループのストロボをリモートで調整できる。B1XやB2などと一緒に多灯ライティングする際でもトランスミッター機能があるので簡単に多灯ライティングできるのも魅力だ。
こちらは背後にセッティングしたProfoto B2とオンカメラのProfoto A1による多灯ライティングの例。窓から差し込む光のイメージを作った。
ちなみにオンカメラにしたA1をトランスミッターとして使用する場合、A1のフラッシュを非発光にすることで、トランスミッター単体としても利用できる。
そして、TTLからマニュアルにシームレスに移行できるのが、プロフォトの魅力だ。
通常TTLで撮影すると、背景の明るさや衣装の色などによって明るさにばらつきが出てしまう。そういった場合、明るさを固定するためにマニュアル発光にして光りを安定させるのが一般的。
しかし、一般的なクリップオンストロボはTTLからマニュアルに切り替えると、光量の情報は移行されず1から露出を決める必要がある。しかし、Profoto A1はTTLで得た発光量を保持したまま、ワンタッチでマニュアル発光に切換られる。
TTLは適正露出を得るのに使い、その後マニュアル発光にすることで、背景や衣装の色などにも影響されず同じ明るさで撮影可能だ。
専用充電池なので交換が素早くできる
次の注目点は、専用のリチウムイオンバッテリーを採用している点だ。一般的なクリップオンストロボは単3電池を採用しているが、Profoto A1は専用のバッテリーになっている。
専用バッテリーは非常に小さく、交換も楽々だ。急いでいるときでも、ワンタッチで着脱できるので、交換は単3電池に比べ早く簡単だ。
バッテリーはフル発光で350発と多く、1日のロケでも殆ど1つのバッテリーでカバーできた。2つあれば多くの方は安心だろう。バッテリーの充電時間は専用のチャージャーを使い約80分で完了する。
他のProfoto製品と共通の使いやすい操作性
Profotoのストロボは簡単に操作できる点も魅力。説明書を読まなくても使える点が重要視されている。個人的な意見にはなってしまうが、一般的なクリップオンストロボは多機能ではあるが、操作が少し複雑な印象。
一方、Profoto A1はシンプルに使える。ボタンやダイヤルは極力少なく設計されており、簡単に使いこなせる。よく使うボタンはTESTボタン兼スイッチボタンと、ダイヤルと中央のメニューボタン、モデリングランプボタンだけ。親指だけで操作できるので使いやすい。
また、液晶モニターは大きく視認性抜群、屋外でも見やすい。メニューボタンを押した時もメニューが整理されておりとても使い勝手がよい。
あまりにも大きな液晶画面なので、ついタッチしてしまうかもしれないが、タッチパネルではないので注意しよう。基本操作はその他Profoto製品と同じでB1XやB2、D2などのユーザーは同じ感覚で操作できる。
専用のディフューザー類も充実
Profoto A1には専用のアクセサリーが用意されている。今のところ、従来のOCFなどのライトシェーピングツールはアダプターなども用意されてないので使用できない。しかし、新たに発売または付属しているアクセサリーを使えば機動力のある撮影が行える。
付属のアクセサリーは「ドームディフューザー」、「ワイドレンズ」、「バウンスカード」の3種類。
アクセサリーはマグネットで取り付けが可能となっている。ワンタッチで着脱ができるので時間のロスも少ない。アクセサリーは専用のポーチに収納できるので持ち運びも便利だ。
なお、Profoto A1には三脚穴付きのスタンドも付属している。
また、別売にはなるが「ソフトバウンス」というディフューザーは、さらに柔らかい光を作るのに向いている。
Profoto A1の光は比較的柔らかいが、やはり光源のサイズが少し小さいので硬めではある。光源を大きくできるソフトバウンスなどを使うことで柔らかな光りをつくりだすことが可能となっている。
色温度変換フィルターを日中シンクロで活用
ストロボの色温度を変更できる「カラーフィルターキット」も別売で用意される。樹脂製のフィルターをマグネットの枠で挟んで簡単に装着できる。
カラーフィルターキットを使って日中シンクロを行った。オレンジのフィルターを装着してカメラの色温度設定を下げて撮ることで、ストロボ光が当たっている人物はニュートラルな色になり、ストロボ光が影響しない空を青く描写することができた。
※共通設定:D750 / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 1/200秒 / F22 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 26mm
アンブレラも活用できる
下のように社外品(マンフロット製)のアダプターを使えばスタンドにアンブレラと共にセッティングすることもできる。
今回はプロフォト製のトランスルーセントのアンブレラを装着し、光の拡散を狙った。
まとめ
今回、Profoto A1を使用してみて、一般的なクリップオンストロボとはかけ離れた性能だと認識させられた。光源の質はもちろんのこと、リサイクルタイムの短さ、露出や色温度の安定性など写真の画に影響する部分が明らかに違う。
使用した感覚はスタジオライトとほぼ同じという印象。まだライトシェーピングツール(アクセサリー)は少なめではあるが、これから様々なアクセサリーが登場することも楽しみだ。
プロフォトの製品の中でも最も小形軽量なストロボなので、ぜひこの機動力を活かした、クリエイティブな撮影を行っていただきたい。
制作協力:プロフォト株式会社
モデル:甲斐琴珠