特別企画

小型軽量「Profoto A1」を生かした“迅速・軽快”ポートレート撮影

ガンガン撮ってその使い心地を徹底リポート

今年9月に発表され、世界に衝撃を与えた世界最小のスタジオライト「Profoto A1」の発売がいよいよ近づいてきた。もうすでに予約をし、今か今かとその到着を心待ちにしている人もいるのではないだろうか。

ここでは今大注目のストロボ、Profoto A1を1日使い倒してみた感想をレポートしていく。

Profoto A1とは?

スウェーデン、ストックホルムに本社を置くストロボメーカーProfoto社が「世界最小のスタジオライト」と称し、満を持して発売する最新のストロボ機材だ。

具体的な特徴や機能については、すでに詳しく解説された記事があるので、こちらを参照していただきたい。

Profoto A1はクリップオンとワイヤレスでの両方の使用が可能なストロボだが、その内容は従来のクリップオンストロボとは一線を画す。というか、まったく異なるストロボと考えたほうがいい。

シンプルな操作性やリチウムイオンバッテリーの採用など野心的な仕様で魅力は満載だが、特に注目したいのが、優れた配光特性だ。

新開発のラウンドヘッドを搭載することで、ハイライトからシャドーまでの描写が非常に滑らかで美しい。ハイライト側の質感の残り方もフォトグラファーとしては目を見張るものがある。光らすだけで、ドラマチックなのだ。

Profoto A1は、小型化を実現するためフラッシュチューブは直線型を採用。よく見ると、前面のレンズは複雑な模様をしているが、これは6つの異なるパートで構成されているという。この構成にすることで、すべての照射角で円形の滑らかな光が作り出せるようになっている。こうした細部にProfotoのこだわりが垣間見える。

実際のロケで実力を試す

今回はこのProfoto A1の能力と底力を改めて確認するため、渋谷、原宿、青山近辺で1日ポートレート撮影を実行した。

撮影は10時から18時までの約8時間。ストロボはProfoto A1を2灯用意。予備バッテリーはあえて使わない。最大光量で約350回発光できる仕様だが、実践の場面で、どこまでひとつずつのバッテリーで撮り切れるか確認していく。

また、今回のロケは1人で撮影を行うことを前提にしている。つまり、アシスタントを使わず、どこまで幅広く表現できるか、その機動力と表現力も合わせて見ていく。

ライトシェーピングツールとしては付属品のほか、専用アクセサリーとなる「ソフトバウンス」と「カラーフィルターキット」を用いる。

「ソフトバウンス」を装着したところ。

アンブレラなどの他のアイテムは使わない。ミニ三脚を携帯したが、一般的な撮影スタンドは使わない。バック1つに収まるように撮影機材は最小限にとどめ、これらのアイテムのみでどれだけ描写できるかも確認した。

今回の撮影機材は次の通り。カメラはキヤノンEOS 5D Mark IV。レンズは広角ズーム、標準ズーム、望遠マクロの計3本を用意。ミニ三脚はProfoto A1をワイヤレスで使用するときの固定に使う。他にも中型のレフ板も携帯した。

これらの機材は全てバックパックに収まった。この機動力がProfoto A1の大きな特徴。

Profoto A1であれば、バッグにコンパクトに収まる。今回は2台のProfoto A1を使うため、1台はカメラに取り付け、もう1台はすぐに取り出しできるように同梱の専用ケースに入れて肩がけにした。

10:00 撮影開始!

ロケは渋谷のハチ公前からスタート。まずは、渋谷を象徴するスクランブル交差点を背景に撮影した。

この日は雲1つない快晴。モデルを日陰に立たせ、Profoto A1をカメラにセットしてダイレクトに照射。非常にメリハリの効いたインパクトのある描写になった。

ここでは背景をボカしたくてハイスピードシンクロに設定しているが、ハイスピードシンクロはパワーが必要になる。これだけ明るいシーンでもProfoto A1はしっかり被写体を明るくできている。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/3,200秒 / F2.8 / −2/3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

ちなみにProfoto A1は14-105mmまでの画角に対応するが、32mm以下で使用する場合は、付属のワイドレンズを装着しないときちんと周辺まで光が回らない。ここはぜひ押さえておこう。

上の作例では、これを踏まえた上で、あえてワイドレンズを使わず、マニュアルで照射角のズームを望遠寄りにしてスポット的に照射している。顔周辺が明るく、洋服の下のほうの光量がスコンと落ちているのはこのためだ。こうした光の作り方もあるのだ。

10:30 いろいろなアクセサリーを試してみる!

続いて再開発が進む渋谷ヒカリエ付近、首都高3号線の高架下に移動。ここでは手持ちのワイヤレス1灯に挑戦。付属のドームディフューザーでやわらかい光を演出した。

カメラに付けた1灯はトランスミッターとして利用。設定も非発光にした。美しい陰影が入り、とてもドラマチックな描写になった。自然光のみの作例と比較すると、ストロボ効果の大きさがよくわかる。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/125秒 / F8 / −1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
ストロボなし。

続いて雰囲気のある路地裏に入り、ポートレートスナップをしてみた。オンカメラ1灯に付属のバウンスカードをセットし、あえて明るめに発光。ハイライトをアクセントにした。バウンスカードは気軽にバウンス光が演出できて便利なアイテムだ。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 28mm

次は落書きの入った壁を背景に、寄りで撮影。ここではソフトバウンスを使用。肌の質感がやわらかく描写できた。このアイテムは被写体に対し近めから照射するのがおすすめ。被写体に近いほど光がやわらかくなる。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 50mm

バウンスカードやソフトバウンスは気軽にバウンス光を演出できるのが大きな魅力だ。屋外での撮影では非常に大きな役割を発揮する。

11:00 ランチまでガンガン撮る!

予想以上に撮影は順調。そのままランチまで撮影を続けていく。建物に入る陰影に惹かれ、広角20mmで全身を入れ込み日中シンクロさせた。直当てで光量も最大。非常にパワーが必要になる場面だったが、狙い通りに撮影できた。

EOS 5D Mark IV / EF17-40mm F4L USM / 1/200秒 / F9 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 20mm

下の作例は、左側面の暗部を補うのにProfoto A1を使用。ドームディフューザーを付けた1灯を手持ちワイヤレスで照射している。カメラ側のストロボは非発光にし、トランスミッターとして使用した。

EOS 5D Mark IV / EF17-40mm F4L USM / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 40mm

今度は階段に座ってもらい、ハイスピードシンクロでの2灯ライティング。メインの光源はカメラに取り付けたProfoto A1。表情を明るく描写するために使用した。

もう1灯は左後方からワイヤレスで照射。これは付属のスタンドで固定した。スタンドを利用すれば、気軽にワイヤレス撮影が行える。なお、ここではカメラに取り付けた1灯が、通常発光とトランスミッターの2つの役割を担っているのもポイントだ。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 61mm
ストロボなし。この場面は自然光のみでも格好いいが、ストロボを照射したほうがメリハリもあって印象的だ。
付属のスタンドで階段に置いた。

なお、今回Profoto A1の光量の決定はTTLを基本にしている。自らが動かないのであれば、TTLで素早く調光しマニュアル発光に切り替え、光量を固定して撮るのもいいだろう。

Profoto A1はTTLで行った調光が、そのままマニュアル発光にも引き継がれそのまま固定できる。ここも従来のクリップオンストロボとは大きく異なるポイントだ。

調光補正やマニュアル発光の光量調節は、背面のダイヤルで行えるので使いやすい。

12:00 カフェでランチしながら撮る!

ランチはおしゃれなカフェ風のお店へ。店内の雰囲気がとてもフォトジェニックだったため、お店に許可をいただき撮影を試みた。

ここでは、モデルに対し左の窓際から入る自然光を生かしながら、右側面の暗部をワイヤレス発光で補った。やわらかい光源になるようにソフトバウンスを使用。

また、店内照明が黄色かったため、色温度を合わせるためにオレンジのフィルターをセットしてストロボ光を馴染ませた。カメラに付けたProfoto A1は非発光。トランスミッターとしてのみ使用した。

EOS 5D Mark IV / EF100mm F2.8L マクロ IS USM / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 100mm
ストロボなし。
カラーフィルターなしでストロボ撮影。色味が合わず、ストロボ光がやや青く見えている。
ソフトバウンス、ドームディフューザー、オレンジのカラーフィルターを重ねて装着している。
オレンジのフィルター。これもマグネットで装着できる。

下の作例は2灯ライティングで撮影した。カメラに取り付けたメインライトは自然な雰囲気を演出したくて、天井バウンスにしたかったのだが、天井が黒く、かつ高かったため、バウンスカードを使用した。

もう1灯はモデルの左手前から背景に向けて照射。背景とモデルの背中の両方の光量を補う目的でセットしている。ここでも2灯とも、オレンジのフィルターをセットし色味を合わせた。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 50mm
メインライトのみで撮影。
ストロボなし。

13:00 原宿、青山でポートレートスナップする!

ランチを終え、腹ごなしに渋谷から原宿へ歩きながら撮影することに。下の作例は、遊歩道で逆光を利用して撮影したもの。

ソフトバウンスは複数を使ってライティングするのもおすすめだ。ここでは逆光で陰りがちなモデルに対し、ソフトバウンス装着の2灯を正面から照射した。非常に自然なやわらかさで明るくできた。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 70mm

撮影日はちょうど紅葉の季節だったこともあり、地下鉄を乗り継ぎ青山の神宮外苑へ向かった。

まずはイチョウ並木を背景に、ローアングルからオンカメラで撮影。ここではTTLの調光補正で−2/3段ほど光量を抑えて照射し、自然な風合いを狙った。また、背景の色味に合わせ、オレンジのカラーフィルターを使用。暖かみのある肌色に仕上げた。

EOS 5D Mark IV / EF100mm F2.8L マクロ IS USM / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 100mm

さらに、イチョウの落ち葉がキレイだったので、これをうまく使って撮ってみることに。ここではProfotoの専用トランスミッター「Air Remote TTL」を使い、2灯をワイヤレスでライティングした。

1灯はソフトバウンスを付け、モデルの左前方、低い位置から照射。もう1灯はモデルの真後ろにセットし、顔周辺にハイライトを入れる。いずれもオレンジのカラーフィルターを付けた。こうした手の込んだライティングもシームレスに簡単に行える。

EOS 5D Mark IV / EF100mm F2.8L マクロ IS USM / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 100mm
ストロボなし。
ミニ三脚を活用した。
トランスミッター「Air Remote」を使用。

神宮外苑を離れ歩いていると、建設中の新国立競技場に遭遇。ここでもワンカット撮影。塀の上にProfoto A1をセットし、そのままダイレクトにワイヤレスで発光。背景を暗く落とすことで、ドラマチックな描写になった。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/200秒 / F14 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 35mm

16:00 夕景や夜景を背景に撮る!

再び地下鉄を乗り継ぎ原宿へと戻り、最後のカットに取り掛かる。ベンチにもたれるように座ってもらい、バストアップを撮影した。

作例の逆光はProfoto A1によるもの。背後の見える位置にストロボをセットし、強めに発光。オレンジのカラーフィルターを付け、夕景っぽさを演出した。手前からもオンカメラで、弱く光を当てている。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 70mm

太陽が落ちても2台のProfoto A1のバッテリーにはまだ容量がある。なんてことだ! そこで、マジックアワーを狙い撮影を敢行した。

ここでは左手前下からレフ板でストロボ光を反射。やわらかいバウンス光をメインライトにした。右前方には、グリーンのカラーフィルターを装着したProfoto A1をもう1灯セット。2灯ライティングで幻想的な仕上がりを狙った。トランスミッターにはAir Remote TTLを使用した。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 70mm

完全に陽もなくなり、原宿から渋谷の街に戻ってきた。夜の街を歩きながら撮影していく。まだまだバッテリーは残っている。カメラに1灯をセットし、そのまま直感的にアクセサリーを変えながらシャッターを切る。

下の作例は、ドームディフューザーを使って撮影。シャッター速度を低速にして、走り去るタクシーをブラして入れ込んだ。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 24mm

交差点を背景に広角でグッと寄って撮影。やわらかい肌質を演出したくて、ソフトバウンスを直感的に選択。スピーディーに撮影した。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 24mm

最後のカット。再び、渋谷のスクランブル交差点に戻ってきた。ソフトバウンスを装着したまま、歩きながら連写で捉えた。チャージが速いため撮りこぼしがない。最後まで望み通りに撮影できた。

EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO640 / マニュアル露出 / 24mm
EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO640 / マニュアル露出 / 24mm
EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO640 / マニュアル露出 / 24mm
EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 1/50秒 / F2.8 / 0EV / ISO640 / マニュアル露出 / 24mm

まとめ

今回の撮影総カット数は800枚あまりだ。日中から日が暮れるまでひたすら撮り続けた。テスト的にストロボを発光していない場面もあるが、それを含めてもバッテリーの持ちは十分だったと言える。

特に今回は快晴でフル発光になる場面も多かっただけに、バッテリー切れを気にせず撮影できたことは最大限の評価に値するだろう。

そして、Profoto A1は想像以上に撮っていて楽しいアイテムだった。最終的に求める画までのアプローチが常に最短で迫れる。これはまさしく、美しい光が簡単に作り出せるためだ。

今回のような街中でのロケ敢行は、時間との勝負でもある。あまり長い時間は撮影にかけられないが、撮り手の直感的な判断にしっかりアイテムが着いてきてくれる。機動力のあるおかげでいろんな場所で撮影ができた。

また、アクセサリーの着脱がマグネット式で簡単なのも実は大きなポイントなのだと身に染みてわかった。アクセサリー交換が、直感的な判断の妨げにならないのだ。

今回の撮影では、Profoto A1の品質がスタジオライトに匹敵するのだと改めて実感できたことが大きい。スタジオクオリティーの小さな光源が、気軽に連れ回せるのはどう考えてもメリットしかない。Profoto A1は光を見る、操ることの魅力を再認識させてくれるアイテムなのだ。

モデル:小野あかね
撮影協力:and people jinnan

河野鉄平

1976年生まれ。明治学院大学卒業後、写真家テラウチマサト氏に師事。写真雑誌「PHaT PHOTO」の立ち上げに参加。2003年独立。著書多数。近著に「もっと撮りたくなる 写真のアイデア帳」(MdN)、「【プロワザ】が身につくストロボライティング基礎講座」(玄光社)など。カメラ雑誌への寄稿多数。Profoto公認トレーナーを務めるなどセミナーも多数開催。