特別企画

自然光にストロボを足して作品力アップ!Profoto Connect活用術

簡単操作でオフカメラライティングを身近に

ハイエンドなライティング製品で知られるプロフォトだが、最近は小型ストロボ「Profoto A1」などの投入で一般のカメラユーザーにも手が届きやすい存在になっている。そんなプロフォトのストロボがさらに身近なものになるアイテム「Profoto Connect」が登場した。

Profoto Connectとは、同社のストロボを制御するための新型コマンダーだ。シンプルな操作で、簡単にプロフォトクォリティの撮影ができるという。今回、フォトグラファーのSHUN(三好俊治)さんにProfoto ConnectとProfoto A1を使って、「自然光+ストロボ」という条件で撮影を披露してもらった。

使用した機材

今回は、女性モデルを街中でスナップ的に撮影するというケースを想定。そのため、ストロボはクリップオン型のProfoto A1を1〜2灯とし、機動性を重視した。プロフォトで最小となるProfoto A1は、従来のクリップオン型ストロボと同じような使い勝手ながら、円形の発光部を採用することでスタジオ用ストロボ並の光の質を実現している製品だ。

Profoto Connect(左)とProfoto A1(右)。

Profoto A1は充電式の専用バッテリーを採用しており、チャージが速いのも特徴。各種のアタッチメントがマグネットで簡単に装着できるといった利便性もあり、同社によると発売以来ヒットを続けているそうだ。なお、カメラ各社のTTL調光に対応している。

ところで、ストロボのテクニックの1つとしてカメラから離した場所で発光させる「オフカメラライティング」がある。カメラに直付けする「オンカメラ」よりも自然なライティングができることから最近流行している手法だ。

Profoto A1でTTL調光のオフカメラライティングをする場合、これまではコマンダーとして「Air Remote TTL」を使う必要があった。「Air Remote TTL」は上面に調光補正などの操作部を備えているが、カメラ初心者には操作が煩雑という面があった。

そうした部分をカバーするコマンダーが、このほど発売されたProfoto Connectになる。Air Remote TTLにあった操作部材やディスプレイなどをなくして操作をシンプル化した。TTL調光に対応しているため、基本的にはTTL任せでの使用が想定されている。

プロフォトによると、「さほどカメラに詳しくないがProfoto A1で良い写真を撮りたい」という人が増えており、そうした人でも簡単に使えるコマンダーとして開発したとのこと。Air Remote TTLより小型化されているほか、価格が2万円以上安くなっているのもポイントだ。バッテリーはUSB Type-Cコネクタによる充電式で、今風のデザインと言える。

Profoto Connect自体の操作部は「MANUAL」「AUTO」「OFF」のスイッチだけ。基本はAUTOにしておけばTTL調光で撮影できる。調光補正はカメラの調光補正機能でも可能。MANUALにすると、スマホアプリ「Profoto app for iPhone」で細かいセッティングができる。

Profoto app for iPhoneでは、ストロボの各種設定を確認できるほか、調光やチャンネルの設定が可能。Profoto Connectとの組み合わせでは、「大方はTTL任せでどんどん撮影していき、たまに補正が必要な場合はアプリでコントロールする」といった使い方が想定されている。また、TTL調光した値をそのままマニュアルモードに移すというプロフォトのストロボではおなじみの操作も可能だ。なお、Profoto app for iPhoneは無料である。

Profoto app for iPhone

自然光+ストロボが今回のテーマ

冒頭にも述べたとおり、今回は「屋外での自然光+ストロボ」による女性ポートレートの作品を狙った。実際のところ、自然光のみでも素晴らしいポートレート写真を撮ることは可能である。しかし、そこにストロボを追加することで作品をよりよいものにすることができるのだ。

撮影をお願いしたSHUNさんは、自然光をメインとしたウェディング写真を得意としているフォトグラファーだ。ストロボはProfoto A1をメインに使っているそうだが、日中はほとんど自然光のみで撮影することが多いそうだ。日が落ちてからProfoto A1を併用するのが自身のスタイルという。

今回は日中からProfoto A1を活用してもらい、ストロボの有無でどのように作品が変化するのかを確認した。撮影機材は、単焦点レンズを中心とした35mmフルサイズの一眼レフカメラ。レフ板は使用せず、Profoto A1はほとんどのカットでTTL調光のままで撮影している。

SHUN(三好俊治)

1984年愛媛生まれ。
3年間スタジオCUE(大阪)にて勤務。
ラヴィファクトリー 入社後、京都、上海、東京を拠点に国内外のウェディングフォトを撮影。
Profotoトレーナー、CP+2018,2019登壇、その他セミナー多数。

著書 ウエディングフォトマスターBOOK(玄光社)


◇   ◇   ◇

撮影開始

SHUNさんによると、普段の撮影でもほぼTTL調光の補正無しで使用しているそうで、今回のProfoto ConnectでもTTLのオートでほとんど問題は無かったとのこと。

「調光補正が必要になった場合はカメラ側からでも行えるので、初めての人も使いやすいと思います。考えることが少ないので作画に集中できるのが良いですね」(SHUNさん)。

シチュエーション1

撮影を開始して最初に撮ったカットで、時刻は14時40分。オフィス街のビルの谷間に差し込む午後の光を活用したショットだ。コンクリートに囲まれた場所ながら、樹木の木漏れ日も使って柔らかい人物を演出している。

ご覧の通りストロボ無しでも十分成立しているが、ここではモデルの正面左側から、Profoto A1を直射している。

ストロボ無し
ストロボ使用

「ストロボ無しもかっこ良いのですが、ここにストロボの光を乗せる事で顔や首の影を和らげることができます。髪も光、全体的にコントラストが上がるのもストロボのメリットです」(SHUNさん)。

ストロボONの作例を見ると、一見ストロボを使ったとわからないほど自然な仕上がりだ。これはSHUNさんが普段心がけていることで、「いかにもストロボを使いました」という風にならないようにしているとのこと。

なお絞りを開き気味にしていることもあり、日中はハイスピードシンクロを多用しているが、Profoto A1はチャージが早いためチャージ待ちのストレスは無かったそうだ。

シチュエーション2

続いては別のオフィス街のひらけた場所。時刻は15時15分。陽はまだ高いが、この時は薄い雲があって光はまわっていた。ここも狙いとしてはシチュエーション1と同じで、ビル街の中でできるだけ自然にモデルを引き立たせるというものだ。

こちらも自然光だけで問題ないように見えるが、ストロボを使ったものと比べると肌の発色が異なっていることがわかる。このときProfoto A1は近くの地面に置き、その前にトランスルーセントの傘(Profoto アンブレラ トランスルーセント S)をかざして光を拡散させている。

ストロボ無し
ストロボ使用(Profoto アンブレラ トランスルーセント S併用)

「ここではレフ板がわりに低い位置から発光させました。ストロボを1灯加えるだけで肌の色の濁りが取れて、発色が俄然クリアになります。こちらでも首などにできる強めの影が緩和されるので、被写体をより美しく見せることができます」(SHUNさん)。

SHUNさんが言うとおり肌、髪、服の発色が良くなり、また明るくなるため、少々目立ち気味のパステルカラーのビルを背景にしてもモデルが引き立っているのが印象的だった。

シチュエーション3

いわゆるピロティ部分での撮影。大きな柱と天井によって光と影を演出できるシチュエーションだ。時刻は16時5分。この場所は既に日陰に入っており、画面右側からの自然光は直射光では無い。

自然光だけでも作品としては全く問題ないといえるが、外光が直射光ではないので全体的にコントラストの低い仕上がりとなっている。そこで、自然光と同じ向きとなる画面右側からProfoto A1を直射し、あたかも直射光が入っているかのようなシーンを狙っている。

ストロボ無し
ストロボ使用(グリッド併用)

「Profoto A1にグリッドを装着してハイライトを入れています。これによって肌色がクリアになり、また適度な陰影が生まれてコントラストが向上するのです」(SHUNさん)。

グリッドとは内部に仕切りが格子状についたアタッチメントのことで、ストロボ光の広がりを抑えて、狭い範囲に照射するアクセサリーだ(オプション品)。これによって顔以外の部分を過剰に明るくすること無く、顔を明るくできるためモデルの存在感が増している。

シチュエーション4

砂浜で広い画角の中に自然体のモデルを置いた。時刻は17時19分で陽もだいぶ傾いてきた頃だ。
夕方で雲もうっすら掛かっており、さらにハーフNDフィルターで画面上部の明るさを落としているが、それでも逆光となるとやはり人物が暗めになり立体感も乏しい。そこで、モデルの体の正面方向からドームディフューザーを付けたProfoto A1を照射した。

ストロボ無し
ストロボ使用(ドームディフューザー併用)

「カメラの方向に対して横から発光させることで被写体のアクセントにしています。自然に仕上げるため一般的な日中シンクロの一歩手前くらいの発光量に抑えていますが、肌の色もすごく綺麗になりました。Profoto A1は光の質が良く、自然光との相性が良いですね」(SHUNさん)。

おそらく、言われなければこれがストロボを使った写真とは気づかないのでは無いだろうか。アタッチメントも無しに直射してもこの自然さというのは、SHUNさんが言うように光の質が優れているということなのだろう。

シチュエーション5

17時47分、間もなく日没というタイミングで夕景を狙った。西日の逆光なので本来、人物はシルエットになる状況だが、ハーフNDフィルターを使うことでストロボ無しでも人物のディテールが見えるレベルとなっている。

ストロボ無しの作品もこれはこれで良いが、モデルの表情をもう少し見せたいといった場合にはストロボが役立つ。ここではモデルの正面、やや海側から1灯で照らしている。その際、Profoto A1にオレンジ色のフィルターを付けて、夕陽と色を合わせた。

ストロボ無し
ストロボ使用(オレンジフィルター併用)

「露出決定の難しいシーンでしたが、補正無しのTTL調光で撮影できました。陽が落ちてきてからは、モデルよりも高い位置から発光させるのがポイントです。昼間やったように下から光らせてしまうと不自然になるからです。また、モデルの正面ではなく横から光らせると輪郭のエッジがはっきりして立体感が生まれます」(SHUNさん)。

このシーンではストロボによってモデルの顔がはっきり描写されたわけだが、一方で背景の写りにも注目したい。ストロボによってモデルの明るさが確保できるため、露出を切り詰めることができるのだ。結果、ストロボ無しではトビ気味だった空のディテールがはっきりして、より印象的な作品となった。

シチュエーション6

時刻は日没後の18時21分。場所は先ほどと同じ砂浜だ。背景の海をトバさない露出だとご覧のように人物も暗くなってしまう。日没直後という雰囲気がある作品になったが、ストロボで顔の表情を見せるライティングにも挑戦した。

このシーンはバストアップのため、モデルに近づけたProfoto A1にトランスルーセントの傘をかざして拡散光を当てている。ストロボの位置はやはりカメラからみてサイドからだ。さらにここではもう1灯のProfoto A1を地面に向けて発光した。この反射で首などの強い影を和らげている。

ストロボ無し
ストロボ使用(Profoto アンブレラ トランスルーセント S併用)

「『いかにも当てました』という感じを防ぐために、ストロボの角度に気を遣っています。顔にちょうど良い陰影を生む場所を探して、その場所から照射するのが良いでしょう」(SHUNさん)。

この作品もストロボ光が主張しすぎることは無く、とても自然な写りに感じた。オンカメラでは狙えない、正にオフカメラならではの作品と言える。

シチュエーション7

夜景をバックにしたポートレートだ。夜とはいえ、この場所はビル街で街灯も多いため、超高感度にすれば明るく写すことはできる。ストロボ無しのでもモデルの表情が分かるが、さらにストロボを加えて、モデルを引き立たせることにした。

モデルの右横(ほぼ真横)にスタンドを立て、高い位置からトランスルーセントの傘とともにProfoto A1を設置した。ここでモデルには、髪の毛が舞うように頭を動かしてもらい動きのある作品を狙った。

ストロボ無し
ストロボ使用

「ストロボ光だけにすると不自然になるので、ある程度地明かりも入れてそこにストロボ光を馴染ませるようにしています。Profoto A1は光が上品なので、嫌らしくならないのが良いですね」(SHUNさん)。

これも非常に自然な仕上がりで、まるで街灯の光で撮ったかのようである。だがストロボの光なので変な色が被ることも無く肌色が綺麗に出ている。サイドから光を当てた事による顔の陰影も適度で、モデルのアンニュイな表情と相まって効果的になっている。

まとめ

注意して欲しいのは、今回挙げたストロボ無しの作品もそれぞれ雰囲気のあるものであり、決して「NGの例」では無いこということ。言うなればストロボを活用することで「より多くのバリエーションをものにできる」ということだ。

今回SHUNさんは「自然さ」にこだわって撮影していたが、そのさりげないストロボの光が大きな効果をもたらしたことは一目瞭然だ。1〜2灯のオフカメラライティングで、ここまでできるということに筆者も驚いた次第。

オフカメラライティングは難易度が高そうに感じるが、技術の進歩でTTL調光任せでもほとんど撮影できるほどになってきている。そうなればハイレベルな作品を目指すユーザーとしては、光の質に優れるProfoto A1でのオフカメラライティングが気になるのではなだろうか?

そう思ったなら、まずはProfoto Connectでのオート撮影から入門してみるのは良い手だと思う。本体が小型なので流行のミラーレスカメラとのマッチングも良いだろうし、もっと高度なコントロールがしたければ、スマホアプリで実現できるのもこれからステップアップしていく上では都合が良い。

また、Profoto A1を持っているがコマンダーを買おうか迷っている人もProfoto Connectは価格面でも魅力だろう。この機会にオフカメラライティングの世界に踏み出してみてはいかがだろうか。

制作協力:プロフォト株式会社
モデル:川口紗弥加

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。