特別企画
カメラファンのための「iPhone 8 Plus」撮って出しレビュー
新センサーで描写はどうなった? ポートレートライティングもチェック
2017年9月28日 07:00
誕生から10年を迎えたアップルの「iPhone」。カメラ機能に定評があり、多くの人が写真に親しむきっかけを作ったスマートフォンだ。
そのiPhoneシリーズが今年は3機種登場する。すでに販売されている4.7インチRetina HDディスプレイの「iPhone 8」と、5.5インチRetina HDディスプレイとデュアルカメラを搭載した「iPhone 8 Plus」。
そして11月3日発売予定で、前面全てがOLEDディスプレイで覆われデュアルカメラ搭載の「iPhone X」だ。
今回は写真好きが気になるデュアルカメラ搭載のiPhone 8 Plusをインプレッションした。
イメージセンサーが新タイプに
iPhone 8 Plusは昨年インプレッションした「iPhone 7 Plus」の後継モデルで、操作感などは踏襲されている。
カメラ機能を中心にみると、ようやくベータが取れて正式版になったポートレートモードがウリである。Android機のように擬似的なF値を変化させてエミュレーションする機能はないが、iPhoneまかせで適切なボケ味を得られるのがアップルらしいアプローチである。
アウトカメラとなるデュアルカメラは1,200万画素と画素数据え置きながら、イメージセンサーを新しくして高速な信号処理を行うようになり、スピーディーなAFやノイズの低減を実現している。
撮影した画像のExifを確認すると、広角側は35mm換算で29mm相当F1.8、望遠側は35mm換算で57mm相当F2.8となっている。
画面上の「1x」「2x」と書かれたアイコンをタップして2つの焦点を切り替えたり、スライドさせてズームできるのは変わらない(ピンチイン/アウトでも可能)。2つの焦点間はデジタルズームになるのも同様である。
「iPhone X」は望遠側のレンズがF2.4となり光学手ブレ補正機能が搭載されるが、このiPhone 8 PlusはiPhone 7 Plusと同じく、望遠側のカメラに手ブレ補正機能は搭載されない。なので低光量の場合は手ブレ補正機能がある広角側カメラでのデジタルズームに切り替わる。1.8xから2x付近で「カクッ」とカメラがスイッチするのがわかるだろう。
ベータ版から進化した「ポートレートモード」
約1年経って正式版になったポートレートモード。これは「被写界深度エフェクト」と呼ばれるソフトウェアでボケ味を楽しめる機能だ。スマートフォンなのに、大きなセンサーと明るいレンズで撮影したようなボケを味わえるので、iPhone 7 Plusでも重宝しているモードである。
撮影方法は以前と同様で、被写体から約30cmから250cm以内に配置するだけでOK。自動的に背景がボケるのをiPhone 8 Plusのスクリーン上でリアルタイムに確認できる。この状態でのAE/AFロックもなので、上手く使うとイメージどおりの写真が撮れるはずだ。
ベータが取れ正式版になったことで、境界線の処理が向上し、暗所でも使えるシーンが増えたのがうれしい。
通常モードで撮影。以前より記憶色重視の仕上がりになってムーディーな色合いの印象だ。
ポートレートモードで。境界の処理がうまくなった。特に髪の毛と背景の部分のボケ処理が向上し、自然で美しい描写になったと感じる。
通常モードでの撮影。肌の質感や髪の毛の細かい描写が好ましい。ホワイトバランスも良好である。
通称「アホ毛」がうまく処理されており、青空にうまく頭部が馴染んでいる。ポニーテールの部分も先端こそ溶けている描写だが、パッと見だと違和感のない仕上がりになっている。
劇的な効果が得られる?「ポートレートライティング」
デュアルカメラを搭載した iPhone 8 PlusとiPhone Xの目玉機能がポートレートライティング機能だ。
これはデュアルカメラとISP(画像処理エンジン)を用いたシーン解析で深度マップを作成して被写体と背景を明確に分離、AI(機械学習)を利用した擬似的な照明効果のことである。
使い方はカンタンで、ポートレートモード時に画面下部に現れるアイコンをセレクトするだけだ。
通常では「自然光」だが、レフで起こしたような「スタジオ照明」、エッジと濃淡を際立たせる「輪郭強調照明」、斜め上から一発ライトをを当てたような「ステージ照明」、そのモノクローム版の「ステージ照明(モノ)」が用意されている。
撮影時にリアルタイムに仕上がりを確認しながら撮ることも可能だし、撮影後に効果を適用できるところも使い勝手がいい。
ただこちらはベータ版となるので、うまく被写体と背景を分離できないケースが見られた。今後のアップデートに期待しよう。
カラフルな壁の前でモデルにポーズを撮ってもらった。やや傾き欠けた太陽の微妙な色合いがよく出ている。
上の写真に「ステージ照明(モノ)」を適用した。ステージ上でピンスポットライトを浴びているかのようなカットがワンタッチで得られた。
iPhone 8 Plusの描写は総合的に向上している。的確なホワイトバランス、やや高めになった彩度、緻密な精細感など正常進化していると感じた。
上の写真に「ステージ照明」を適用して背景を潰した。背景がうるさい場合にもこのポートレートライティングは重宝するだろう。
フラッシュの調光精度がアップ
フラッシュも進化している。クアッドLED True Toneフラッシュがスローシンクロに対応した。被写体と背景の光量バランスを解析して、フラッシュ照射に見合ったシャッタースピードをコントロールしてくれるのだ。
これによって背景が落ちてしまうことがなくなり、メイン被写体とバランスがいい写真を手にすることができる。
暗い木の陰でフラッシュを焚いたが、モデルと背景との露出バランスがとれているので自然な仕上がりとなった。
まとめ:カメラ機能がより魅力的に
毎年アップデートされるiPhone。リリースされるたびに「今年は見送ってもいいかな」と思うのだが、一足先に使ってみるとやはり欲しくなってしまう。いつでも持ち歩くスマートフォンだけに撮影するカットも多い。なのでキビキビ感がとても重要なのだ。
iPhone 8 Plusはその要求を軽々とクリアし、注目のカメラも描写に磨きをかけたので言うことがない。特に自然なホワイトバランスと描写、暗所での性能アップには驚いた。
どんな高性能で高価格のカメラでも撮りたいときに手元になければ写真は撮れない。その点、世界で一番シャッターチャンスに強いカメラが「iPhone」だろう。iPhone Xを待つのもいいが、iPhone 8 Plusを手に入れて、早く撮影を楽しむのもオススメである。
今回のiPhoneは「よりヒトの感性に沿った描写」を目指した印象だ。記憶色重視の絵作りは情感豊かで好ましい。色づいた太陽光の雰囲気と、芝の緻密な描写、モデルの肌の写りのバランスがいい。
動作のキビキビ感もスピードアップしていて好ましい。ポケットにiPhone 8 Plusを突っ込んでブラブラ歩いていても、パッと取り出してすぐ撮影状態には入れるのが頼もしい。シャッターチャンスに強く、目立たないカメラ。それがiPhoneである。
正式版となったポートレートモードは実に有用だ。被写体と背景との分離が明確になり、より自然なボケ味を実現している。
腕の前ボケ、カラフルな壁の後ボケともにスムーズだ。
モデルのスキントーンと色合いも品がある描写になっている。緻密な髪の写りも見逃せない。
暗所も確実に強くなった。ISO感度を無闇に上げず、低感度と手ブレ補正機能で乗り切るスタイルなのは変わらないが、新しいセンサーは確実にノイズが減り、光に対する特性がアップしている印象を受けた。
スマートフォンで撮られる被写体ベスト3が「ヒト」「風景」、そして「食べ物」らしいが、そのどれもそつなくこなすのが新しいiPhoneだ。外光が差し込む白熱灯下のレストランでもうまい具合に撮影できた。カジュアルに写真を楽しむ層には大いに受け入れられるだろう。
iPhone 8 Plusは取り出してから撮影に入るまで、オートフォーカス、アプリでの処理、クラウドやSNSへの投稿までと、すべてにおいてキビキビ感があってストレスがない。瞳へのフォーカスもバッチリで、最新型の恩恵をヒシヒシと感じることができた。
モデル:高実茉衣