新製品レビュー
Profoto A1にデュオ(2灯)キットが登場!活用法を徹底解説
新製品グリッドキットの使い方も紹介
2018年9月28日 12:45
「Profoto A1」はスウェーデンに本社を置くProfoto社が、昨年暮れに発売した革新的な新型ストロボだ。世界最小のスタジオライトとして、発売以来多くのフォトグラファーに注目され、愛用されてきた。光が均等に、そしてムラなく照射されるように発光部が円形になっているのが特徴で、小型ながら72Wsの大光量を誇る。TTLやハイスピードシンクロ、ワイヤレス発光にもしっかり対応し、シンプルで扱いやすい操作性も大きな魅力だ。Profoto社の他のストロボと組み合わせた利用もできる。
今回、そんなProfoto A1を2灯セットにしたProfoto A1デュオキットが新たに発売となった。また、専用アクセサリーとしてグリッドキットも登場。ここでは前半でデュオキットならではの使い勝手の良さについて解説し、後半でグリッドキットの特徴とライティングテクニックについて取り上げる。
デュオキットで購入するメリットついて
まず、デュオキットは1灯で購入するよりも安価だ。1灯売りでは税込11〜12万円前後で流通しているところを、20万円前後で購入できるようになる。
ちなみに、1灯キットにはドームディフューザー、ワイドレンズ、バウンスカードの3種類のアクセサリーが1個ずつ付属する。デュオキットではバッテリーチャージャーは1台の同梱にとどまるので、2台同時に充電を行いたければ、もう1台は別で購入する必要があることに注意したい。
しかし、デュオキットを利用する最大のメリットは、やはり2灯使うことで可能となるライティングのテクニックだろう。とくに2灯あると、ワイヤレス発光による表現の幅が飛躍的に広がる。一般的にこの手のアイテムは、カメラに取り付け、オンストロボで使用することも多いが、Profoto A1のポテンシャルはワイヤレスでの使用時にこそ引き出される。デュオキットであれば、ワイヤレスでのストロボ発光がより身近になるはずだ。
作例1 ワイヤレス1灯+オンストロボ1灯で撮る
では、どのように表現の幅が広がるのか。いくつかの作例とともに見ていこう。下の作例1枚目は、1灯をオンストロボでそのままモデルに向けて照射したものだ。1灯キットに付属するバウンスカードを使った(デュオキットにバウンスカードは付属しない)。
バウンスカードは天井バウンスなどができない環境下でも、気軽にバウンス光を演出できるのが魅力のアクセサリー。ここでは直当てよりもやわらかい光質になったが、正面からのストレートな光源しか利用できないため、どうしても光の当たり方は淡白に見える。
2枚目は2灯使用。1灯をワイヤレスで発光し、もう1灯は非発光に設定、トランスミッターとして使用した。ワイヤレスで発光することで、照射にバラエティーが生まれる。ここではモデルに対し左斜め上から照射。できた陰影により立体感のある描写になった。
3枚目も2灯使用したが、2枚目でカメラに取り付けトランスミッターとして使ったProfoto A1を、非発光から発光に切り替え、暗部を補う補助光として弱めに使用。つまり、2灯ライティングにした。暗部が起こされ、立体的でありながら透明感も演出できた。このように複数灯で使用する場合、カメラに取り付けた1灯はトランスミッターとしてのみの設定と、トランスミッターとストロボ発光を同時に行う設定のふたつから選択できる。デュオキットがあれば、このような3パターンが気軽に表現できるのだ。
作例2 Air Remote TTLを使って2灯ライティングする
Air Remoteはカメラのホットシューに取り付けて使用するトランスミッターだ。これを使えば、デュオキットの2灯をそれぞれワイヤレスで使用可能になる。ここでは別売のソフトバウンスを装着したProfoto A1をメインライトとし、モデルに対し左前方から照射。もう1灯を、付属のドームディフューザーをつけて右後方から照射した。Air Remoteを使うことで、仮に1灯でもワイヤレス発光は楽しめるが、2灯あればよりライティングの嗜好性が広がる。
上の作例では、右後方から照射した1灯によって、顔から体全体にハイライトが入り、より立体的な描写になっている。メインで使ったソフトバウンスも、天井バウンスなどが利用できない屋外での撮影で便利。気軽にやわらかい光質が演出できる。ドームディフューザーも同様にやわらかい光質を演出できるアイテムだ。私の場合、ドームディフューザーはほとんどの場面で取り付けて使用している。作例1で使ったバウンスカードと合わせ、Profoto A1の純正アクセサリーはいずれもマグネット式で着脱がも簡単だ。
作例3 さまざまなアクセサリーと組み合わせてライティングする
Profoto A1はカメラに取り付け、オンストロボで使用する際もさまざまなアクセサリーを装着できるが、ワイヤレス発光の場合、より扱えるアクセサリーが増えて楽しい。これは当然、多灯ライティングを組む際も同様だ。2灯でライティングするならば、積極的にアクセサリーの効果を試してみたい。ここではアンブレラを装着したProfoto A1をメインライトに使用。モデルに対して左側から入れた。Profoto A1をワイヤレスで使うならば、アンブレラはおすすめのアイテム。ここでは内面素材がホワイトのものにディフューザーを付けて発光。光を拡散させ、滑らかな光を照射した。
さらにここへもう1灯を加え、2灯ライティングにする。今度はモデルに対して右側からアンバー系のフィルターを付けたProfoto A1をダイレクトに照射。やや暗く落ちた右側面を明るく起こしつつ、フィルター効果で温かみのある肌色が再現できた。2灯両方にフィルターを付けることも可能だが、1灯のみにすることでより自然な仕上がりになるようにコントロールしている。
なお、ここで使用したのは別売の純正フィルターキットだ。アンバー系のCTO1/4を装着した。こちらもマグネット式で着脱が容易に行える。2灯体制だと、こうしたアクセサリーもアクセントライトとして大いに活用できる。
作例4 2灯ライティングでキャッチライトをつくる
Profoto A1が2灯あると、瞳の中へのキャッチライトも2つ入れることができる。キャッチライトはうまく入ると表情をより魅力的に表現できるのが特徴だ。下の作例ではアンブレラとソフトバウンスを使い、左上と右下からProfoto A1をワイヤレスで照射。効果的なキャッチライトで表情がより引き立って見える。
作例5 2灯を使って光量を増やし、ハイスピードシンクロを行う
ハイスピードシンクロ(HSS)は、ストロボ同調速度を超えてもストロボを発光できる機能だ。明るい日中に背景をぼかしながらストロボを照射したい場面などで重宝する。ただ、ハイスピードシンクロはそのぶん大光量が必要となる。下の作例ではProfoto A1を2灯、高さだけを変えた状態で同じ角度からモデルの顔めがけて照射。2灯とも最大出力よりも1.5段ほど少量で発光できた。このようにデュオキットならば、光量不足もカバーできる。
Profoto A1デュオキットまとめ
Profoto A1はクリップオンストロボのように見えるし、実際オンストロボで使うことも多い。しかし、ProfotoA1は小型のスタジオライトだ。今回はロケ撮影に特化したが、2灯構成のほうが圧倒的に表現力は高まった。暗所の室内で使う場合などは、2灯で天井バウンスを行うだけで、より広い範囲に万遍なく光を回し入れることができる。ワイヤレスでの使用を考えるならば、Profoto A1デュオキットは価格的にもお得だし、機動力を生かした実践的なライティングがより気軽に利用できる点でも、おすすめのセットと言えるだろう。
Profoto A1グリッドキット誕生!
ここまでの記事の中でも紹介してきたが、Profoto A1専用のアクセサリーとしては、ドームディフューザーなどの付属品のほか、別売のソフトバウンスやフィルターキットが利用できる。また、アダプターを介せばアンブレラも利用可能だ。ただし、OCFシリーズのアクセサリーには対応しない。そんな中、新たにProfoto A1専用のアクセサリーとして登場したのがグリッドキットだ。10度と20度の2種類がワンセットになったもので、ほかのアクセサリー同様マグネット式で着脱できる。
グリッドとは?
グリッドは光の拡散角度を狭めることできるアクセサリーだ。度数が小さくなるほど、照射範囲が迫り、スポット効果が増す。主にグリッドは特定部分にハイライトを入れたい場面などで使われることが多い。コントラストが強くなるのも特徴で、照射された部分はメリハリのある仕上がりになる。
左が10度で右が20度。通常のグリッドは網目の細かさで照射範囲を変えるのだが、このグリッドは網目の細かさではなく、厚さによって照射範囲が変化するのが特徴だ。厚みのあるほうが度数は小さくなり、スポット効果が増す構造になっている。
グリッドを装着してモデリングライトを点灯したところ。
作例1 グリッド効果の比較
ここでは各グリッドの効果を比較してみようと思う。カメラ設定を揃え、効果の違いを確認してみた。なお、4枚目はオフィシャルな使い方ではないが、2枚のグリッドを重ねて使用した場合の描写だ。ご覧の通り、かなりスポット効果が強まる。光量はなにも付けない状態を基準に、20度で約0.5段、10度で約1段、20度+10度で約1.5段光量が弱まる。
なお、グリッドを20度と10度で重ねる場合はふたつのグリッドで穴を揃えよう。そうしないと明部と暗部の境が滲み、きれいなスポット光にならない。また、20度の上に10度を重ねる。逆ではうまく重ねられないので注意。
グリッドを2枚重ねた状態だ。
作例2 髪の毛にハイライトを入れる
ポートレートの撮影では、髪の毛にハイライトを入れる目的でグリッドがよく使われる。
下の作例では、アンブレラを付けたProfoto A1がメインライトになっているが、モデル右後方からもう1灯を髪の毛に向けて照射している。グリッドを付けずに発光した作例では、体全体に光が回り、さらに少し光量が強かったこともあり、フレアが入ったような描写になっている。
一方、20度のグリッドを付けた作例は、狙った場所にきちんとストロボが照射され、違和感のないハイライトが演出されている。グリッドは漏れ出る不要光が少ない。コントロールしやすい光源なのも特徴だ。
作例3 グリッドをメインライトとして使う
グリッドはアクセントライトとして用いることが多いが、メインライトに使ってみても面白い。スポット効果で非現実的な描写が楽しめる。照射範囲が狭いため、少しの角度調整で光の当たる場所が大きく変わる。効果を確認しながらライティングを行おう。モデルに動かないように指示を出すことも大事だ。ここでは、2灯のグリッドライトでドラマチックなハイライトを演出した。
作例4 グリッド+フィルターでスポット的に色を乗せる
最後にもうワンカット撮影。グリッドは前述した専用フィルターキットと併用できることも覚えておきたい。
今回はモデルに対し左上から20度のグリッドとグリーンフィルターを装着したProfoto A1を照射。少しだが、肌色が緑がかってアクセントになっている。最終的には、さらにオンストロボでバウンスカードを使って正面から補助光としてやわらかい光を照射。人物の光量を全体的に補い、透明感のある描写を狙った。
Profoto A1専用グリッドキットまとめ
Profoto A1は非常に優れたシステムを持つアイテムだが、対応するアクセサリーはまだ限られている。そういった意味でも、専用グリッドの登場は大きな役割を持ちそうだ。ほかのアクセサリー同様、コンパクトで持ち運びしやすいのも魅力だろう。
すでに述べたように、グリッドはストロボの照射範囲を狭め、コントロールしやすい光源をつくり出してくれるアクセサリーだ。ライティング初心者にも扱いやすく、効果もわかりやすい。メインライトだけでは物足りない場面などで、うまく有効活用してみたい。
モデル:EVA(MA-Spanky)
協力:プロフォト株式会社