交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第4回】

ソニー「FE 35mm F1.8」

第4回となる今回はソニー「FE 35mm F1.8」のレビューをお届けします。ソニーのフルサイズ対応の35mm単焦点レンズは4本がラインナップされています。GMレンズやZEISSレンズがひしめき合うなかで、いわゆる無印な本レンズの実力は如何ほどのものなのか、気になるところです。

外観・仕様

「FE 35mm F1.8」は、2019年8月に発売された35mmフルサイズ対応の35mm単焦点レンズになります。意外にもけっこう新しいレンズなのであります。

ZEISSのように金属外装を纏っているわけではなく、GMレンズやGレンズのようにメリハリのある勇ましいデザインというわけでもない、特に目立ったところもない極めてオーソドックスなデザインが特徴と言えば特徴なのかもしれません。

ただしこのレンズ、最近は特に著しいミラーレスカメラシステムの小型・軽量化の潮流には良く対応しており、最大径×長さが約φ65.6mm×73.0mmで、質量は約280gと、なかなかのコンパクト化を達成しています。おかげで「α7シリーズ」では最軽量クラスの「α7Cシリーズ」や、APS-Cボディの「α6700」などとの組み合わせでも相性はバッチリです。

操作性

鏡筒左側面には、好みの機能を割り当てられる「フォーカスホールドボタン」、およびAFとMFを切り換えられる「フォーカスモードスイッチ」が並んでいます。

「フォーカスホールドボタン」は名称こそフォーカスボタンですが、「フォーカスエリア」や「ピント拡大」など好みに合わせてさまざまな機能を割り当てることができるため、実は大変便利です。外観デザインこそスッキリしたものですが、操作性にかんしては、なかなか充実したものですね。

一方でリング類はフォーカスリングのみと、こちらはシンプルな構え。ただ、このフォーカスリングの操作性が優秀で、MF時のリングの回転操作にスムーズに反応してくれるうえ、微妙なピント合わせにも精度よく応答してくれます。

また、「ALC- SH 159」というレンズフードが付属します。このクラスの35mm単焦点レンズには、なぜかレンズフードが同梱しないものもありますので、これは地味に嬉しいことです。

画像:sony02_35mm_007

作例

比較的新しいレンズだけあってAF性能は相当にシッカリしたもの。暗い部屋のなかでも、「α7C II」の動物瞳AFに良く追従し、正確にネコの瞳を捉えつづけてくれました。駆動音も非常に静かですので、動画での使用でも満足できそうです。

ソニー α7C II/FE 35mm F1.8/絞り優先AE(1/80秒、F1.8、+0.3EV)/ISO 1000

最短撮影距離は22cmで、最大撮影倍率は0.24倍。第2回で紹介したキヤノンRF35mm F1.8 MACRO IS STMまでとはいきませんが、35mmフルサイズ対応の通常35mmレンズとして考えると、これは優れた近接撮影性能と言えます。実際に使ってみると「こんなに被写体に近づけるのか」と驚くことと思います。ボケ味も良好ですので、テーブルフォトなどでも大いに使い出があることでしょう。

ソニー α7C II/絞り優先AE(1/500秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 100

草影に隠れるネコを強調したく、あえて絞り開放のF1.8で撮影してみました。小柄なレンズながら大口径ですので、被写界深度の選択肢が広く、いろいろな表現を試すことができて楽しいものです。というところで気づきましたが、このレンズ、開放絞り値からピント面は驚くほどにシャープで切れがあります。無印とはいえ、描写性能に抜かりはありません。

ソニー α7C II/絞り優先AE(1/400秒、F1.8、+1.0EV)/ISO 100

まとめ

ZEISSでもG/GMレンズでもない、いわゆる無印の「FE 35mm F1.8」ですが、サイズ感や操作性は大変に良好です。現代的「α」との相性もよく、しかも絞り開放から使える高い描写性能を持ち合わせています。使い勝手の良さと写りの良さのバランスが素晴らしい。

優れたAF性能や、フォーカスホールドボタンの装備、実用的な近接撮影性能は、動画撮影も意識しての進化だと想像できますが、動画撮影を視野に入れて設計されたことで、静止画撮影にとっても多くの恩恵が得られています。

高級ブランドのレンズがひしめくソニーの35mm単焦点レンズではありますが、本レンズのような、無印とはいっても優れた純正レンズが存在してくれていることは、多くのユーザーにとって有難いものなのではないでしょうか。


曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。