交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第9回】

富士フイルム「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。

第9回となる今回は富士フイルム「GF45mmF2.8 R WR」のレビューをお届けします。なんと、ここにきてラージフォーマットミラーレスカメラ用レンズの登場です。

意外なチョイスに見えるかもしれませんが、スナップ撮影でも意外なほど使い心地が良く、親近感のもてる頼もしいレンズでした。奥深いラージフォーマットならではの描写を堪能できます。

外観・仕様

「GF45mmF2.8 R WR」は、2017年11月に発売されたラージフォーマットミラーレスカメラ・GFXシリーズ用の35mm単焦点レンズです。実焦点距離は45mmですが、GFXシリーズ用ですので、35mm判換算の焦点距離は約36mm相当となります。

最大径×長さは約φ84.0mm×88.0mmで質量は約490g。“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを紹介しようという本企画ですが、なにしろラージフォーマット用のレンズですので、ちょっとイレギュラーな気がしないでもないですが……。でも、開放絞り値がF2.8の明るさでラージフォーマット用なら、これでもかなり小型・軽量な方です。

全体的なデザインは、先に紹介したXシリーズのレンズ「XF23mmF2 R WR」にどこか通じるものを感じますが、やはりラージフォーマット用だけあって、重厚感は圧倒的です。特に、GFレンズシリーズに共通する、厚く立体的なフォーカスリングのゴムローレットは大いに存在感の高さを意識させてくれます。

操作性

操作性についても「XF23mmF2 R WR」に似通っています。スイッチ類はいっさい装備されておらず、フォーカスリングと絞りリングだけが並んだシンプルスタイル。

わずかに「XF23mmF2 R WR」と異なるのは、絞りリングに「絞りリングロック解除ボタン」と「Cポジション」があるところ。

「絞りリングロック解除ボタン」はF2.8からF32の絞り目盛の範囲からからA/Cポジションに合わせたい場合、あるいはその逆にしたい場合に、ロックを解除するためのもの。

「Cポジション」は、絞りリングでなくカメラ本体のコマンドダイヤルで絞り値を設定したい場合に使います。

花型のレンズフードが付属します。ラージフォーマットミラーレスカメラ用のレンズフードというだけあって、相応に立派な造りで遮光効果も高いです。ブラインドでの着脱のしやすさにも、ちゃんと対応した造りになっていることに好感がもてました。

作例

スモールサイズのイメージセンサーの方が、レンズには高い解像性能を求められるという話はわりと知られたことだと思いますが、そうは言ってもラージフォーマットミラーレスカメラ用の本レンズの描写性能は非常に高いと感じざるを得ません。GFXボディのポテンシャルを最大限に引き出すために、さぞや高度な光学設計がなされているのでしょう。APS-Cサイズやフルサイズとはまた一味違った、ラージフォーマットならではの解像感と立体感を楽しめます。

富士フイルム GFX50S II/GF45mmF2.8 R WR/45mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/140秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 400

最短撮影距離は45cmで、最大撮影倍率は0.14倍。下の作例は普通にネコの全身を撮ったかのように見えますが、実は寄り切れなくて諦めた、最短撮影距離での撮影です。まあ寄れないのは確かですが、ラージフォーマットカメラのレンズとは大体このようなものだと思います。しかし、ラージフォーマットならではの得も言われぬ立体感でウチの可愛いネコちゃんが撮れたものですから、筆者としては大満足だったりします。カメラ&レンズの特性に合わせた撮影を心がけたいところです。

富士フイルム GFX50S II/GF45mmF2.8 R WR/45mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/35秒、F3.6、+0.3EV)/ISO 800

風景撮影や商用撮影に利用されることが多いと思われるラージフォーマットカメラですが、せっかくの35mm相当(36mm相当)単焦点レンズですので、スナップ撮影的に撮ってみました。かなり薄暗い撮影条件で、F2.8の開放絞り値でもてこずりましたが、それでも「GFX50S II」の優れたボディ内手ブレ補正機構と高感度性能に助けられ、なんとか手もちでイメージ通りの写真が撮れました。時代はラージフォーマットでのスナップ撮影を歓迎しているのでは!? と思えた瞬間です。

富士フイルム GFX50S II/GF45mmF2.8 R WR/45mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/20秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 1600

まとめ

以前より進化しているとはいえ、ラージフォーマットのミラーレスカメラは、速写性や撮影効率を求めるようなカメラシステムでは決してありません。が、得られた画像から見る余裕たっぷりな描写性能には、素直に惚れ惚れとするばかりです。

本文中でも述べていますが、ラージフォーマット用の35mm相当(36mm相当)単焦点レンズだけに相対的には大きくなってしまうものの、ラージフォーマット用として絶対的に見れば、よく考えられて設計された小型・軽量なレンズであるのは確かです。

APS-Cサイズや35mmフルサイズとは、とにかく一味も二味も違った奥深い写真が撮れるのがラージフォーマットの魅力です。ちょっと構えて捉えられがちな存在ですが、本レンズのように身近さを感じさせてくれるレンズがあるのなら、選択肢としても案外現実的なのではないかと思いました。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。