交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第7回】

パナソニック「LUMIX S 35mm F1.8」

“小さく手軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。

第7回となる今回はパナソニック「LUMIX S 35mm F1.8」のレビューをお届けします。

外観・仕様

「LUMIX S 35mm F1.8」は、2021年12月に発売されたフルサイズ対応の35mm単焦点レンズ。本レンズは外観デザインをはじめ、さまざまな仕様を統一した「F1.8単焦点シリーズ」のうちの1本にあたります。

最大径×長さはφ73.6mm×82.0mmで質量は約295gと、同クラスのなかでは標準的なサイズ感のレンズです。パナソニックは本レンズのことを小型・軽量なレンズとしてアナウンスしていますが、今回使った「LUMIX S9」との組み合わせではむしろ大きく感じてしまうくらいです。

ただ、質量295gは確かに軽く、実際に持ってみてもしっかりと実感できます。その意味では「LUMIX S9」との相性も決して悪いものではありません。「F1.8 単焦点シリーズ」の一翼として鏡筒デザインを統一するため、他の焦点距離のレンズにサイズ感が引っ張られたのかもしれませんね。

また、鏡筒に施された上質感のあるブラック塗装は、同社のSシリーズボディと共通になっています。今回はシルバーの「LUMIX S9」との組み合わせでしたので、その有難味はいまひとつ感じられませんでしたが、ブラックボディを所有している人は意識してみると良いかもしれません。

操作性

今どきの35mm単焦点レンズらしくシンプルな操作系ですが、AFとMFを切り換える「フォーカススイッチ」がひとつ備えられています。

リング類はフォーカスリングのみですが、その幅が広いうえに、適度に弾力のあるスリットローレットが心地よい操作感を提供してくれていることもあって、MFでの操作性は良好でした。

「S-S35」という花形のレンズフードが付属しています。このクラスとしては珍しくロックボタンを備えており、深さがあるので遮光性も非常に高く、ブラインドでの着脱もしやすいという、大変に高機能で素晴らしいレンズフードです。立派過ぎてレンズがさらに大きく見える嫌いもありますが、本当に良いレンズフードなのでぜひ活用したいところです。

作例

肝心の描写性能ですが、さすがに最新の光学設計が投入されているためかとても良好です。というより画面全体で安定感のある自然な高画質っぷりに惚れ惚れとしてしまいました。パナソニックのカメラと言えば、「生命力・生命美」の思想に基づいた高度な絵作り設定が好評を博していますが、その「生命力・生命美」とレンズの描写性能が見事にマッチしているようにも感じます。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 35mm F1.8/絞り優先(1/200秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 400

最短撮影距離は0.24倍で、最大撮影倍率は0.22倍となっています。これについても、いまどきの35mm単焦点レンズとしては標準的な仕様と言えるでしょう。マクロレンズのようにはいきませんが、目に止まった小さな被写体を、周囲の環境を含めながら大きく写すことができます。自然な雰囲気で近接撮影ができるのが35mm単焦点レンズの良いところ。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 35mm F1.8/絞り優先(1/320秒、F2.8、−0.3EV)/ISO 400

フォトスタイルのなかでも「ライカモノクローム」は人気があり、筆者もいたく気にいっております。そしてさらに、「優れたモノクロームモードと35mm単焦点レンズの相性は抜群に良い」という持論をもっていますので、ここぞとばかりに撮ってみました。期待通りにとても満足な結果で、ピントの合ったネコの目の生々しさと、それに続く自然なボケ味のつながりの対比が堪りません。モノクロモードでも「生命力・生命美」の思想は有効です。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 35mm F1.8/絞り優先(1/40秒、F1.8、±0.0EV)/ISO 100

まとめ

外形寸法など仕様を統一したパナソニックの「F1.8単焦点シリーズ」のなかでちょっぴり目立たない本レンズですが、実力は他社製同クラスレンズと比べても、まったく引けを取らない優れた35mm単焦点レンズであることを体感しました。

サイズに比して軽量な造りになっていることもあり、小型・軽量なSシリーズのボディとの相性も思いのほか良好です。

比較的求めやすい価格のレンズながら、3枚のEDレンズと3枚の非球面レンズを含めた贅沢なレンズ構成であり、AF性能にかんしても高速・高精度・静粛なリニアモーターを採用しているなど、かなり気合の入った仕様であることも見逃せません。

パナソニックの提唱する「生命力・生命美」の絵作りを、画面全体で表現できる描写性能の高さも魅力のひとつ。Sシリーズボディをもっている人なら、ぜひ押さえておきたい35mm単焦点レンズであることは間違いないでしょう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。