交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第1回】

OM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」

毎日暑くて写真撮るのも大変ですね。そんななかではありますが、今年正月にお届けした「40mm単焦点レンズの素晴らしさを伝えたい!」という企画に引きつづいて、再びちょっと変わった連載をお届けしたいと思います。

50mmレンズと並んで単焦点レンズの基本とされることの多い、焦点距離35mm(もしくは35mm判換算で35mm相当前後)の単焦点レンズ、なかでも程よいサイズ感と使い勝手の良さを提供してくれる、”小さな” 35mmAFレンズを1製品ずつレビューしていきましょう。

35mmレンズの良さとは

スナップ撮影などで好まれる単焦点レンズの焦点距離と言えば、35mmまたは50mmに人気があると思います。50mmレンズは言わずと知れた標準レンズの王道なのですが、35mmレンズはと言うと……標準と言うには広すぎますし、広角と言うには狭すぎるような気がするのではないでしょうか。カタログなどにある単焦点レンズの区分としては、標準あるいは準標準などと分類されることもあれば、広角に入れられることもあるといった曖昧なことも、35mmレンズの正体が掴みにくいからなのかも知れません。

標準とも広角とも分類しにくい35mmレンズは「広い視野で見たときの自然な画角」と言えるかもしれません
OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/絞り優先AE(1/400秒、F1.8、+1.0EV)/ISO 400

しかし、35mmレンズはフィルムカメラの黎明期からデジタルカメラ全盛の今に至るまで、スナップや記念撮影などでは、変わることなく絶大な人気を誇る単焦点レンズの画角です。それは標準とか広角と言う分類に囚われることなく、「広い視野で見たときの自然な画角」だからだと思います。見た目通りに撮れて背景はちょっと広めに入れられるというところが醍醐味なのです。

ズームレンズばかり使っていると、意識されることもなくスルーされてしまいがちな画角ですが、単焦点レンズとして自らの意思で選択すれば、これほど心強い画角もそうはない、そう思わせてくれることでしょう。

35mmレンズは単焦点レンズのサイズ感として、カメラボディとのバランスがとても良いのも特長です。フードを付けても全体的なデザインが崩れにくいことが多い

というわけで第1回の今回は、OM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」を取り上げます。焦点距離は17mmですが、マイクロフォーサーズ規格のレンズですので、35mm判換算での焦点距離は34mm相当となります。

外観・仕様

「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」は2013年9月に登場したマイクロフォーサーズ用のレンズです。ミラーレスカメラ用とは言え、2013年の発売と言うと結構古めの設計、古参のレンズと言うことになりますが、当初からその性能の良さに対する評価は高く、筆者も永らく愛用している実力派。

シルバーとブラックの2色が用意されています。今回はシルバーをチョイス

金属外装の上質な質感は、同じく高級感を大切にするオリンパス/OMDSとのボディとデザイン的にもよく合い、高い満足感が得られるところがポイント。オリンパスがOMDSとなってからも「OLYMPUS」のロゴが入れられていますが、もちろん現行最新機種である「OM-1」や「OM-5」でも、なんの問題もなく使うことができます。

操作系

最大径×長さは57.5mm×35.5mm、質量は120gとなっており、外観の上で感じる小型・軽量は、数値の上でも相当に軽くて小さいことが分かります。実際に、レンズ交換を伴う撮影で本レンズを外套のポケットに入れていても、なんの支障も感じることがないほど。マイクロフォーサーズ用のレンズとしては、開放絞り値をやや控えめなF1.8としていることが、功を奏しているのかもしれません。

OM-5に装着

スイッチやボタンの類は装備されていない本レンズではありますが、独特な機能として「スナップショットフォーカス機構」があります。

この機構がどういうものかと言いますと、フォーカスリングを手前にスライドさせると、レンズ鏡筒に刻まれた距離目盛が現れ、被写界深度目盛が有効になると同時に、フォーカスモードが自動的にAFからMFに切り換わるというもの。

AF
MF

11年前に発売されたレンズながら、小型・軽量であることはもちろん、高級感の高い意匠とオリジナルな機構を備えた独自性は、今でも堂々通用するというものです。

作例

最短撮影距離は0.25mで最大撮影倍率は0.08倍。今となっては月並みな近接撮影性能ですが、当時は「よく寄れる」35mm相当(34mm相当)のレンズでした。しかし、最短撮影距離でも優れた解像性能を見せてくれているあたりは、さすがM.ZUIKO DIGITALの単焦点レンズと言ったところ。真夏の太陽の光でもゴーストを発生させない「ZEROコーティング」の強い耐性も心強い。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/絞り優先AE(1/400秒、F3.5、+0.7EV)/ISO 200

被写体との程よい距離感を保ちながら撮れて、それでいて適度に広く背景を写せるのが35mm相当(34mm相当)レンズの良いところです。微妙に警戒して距離をとるネコでしたが、ちょうど良い構図と配置で、個人的に満足できる写真が撮れました。今回は「OM-5」との組み合わせで使いましたが、被写体認識機能のある「OM-1」なら、こうした写真もさらに撮りやすいことだと思います。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/絞り優先AE(1/60秒、F1.8、+1.0EV)/ISO 250

水面に映り込む夕日と岸辺に佇むアオサギが印象的でしたが、敢えて手前の樹木の幹にフォーカスを合わせて構図をつくってみました。長年このレンズを使っていて、筆者が特に気に入っているのが、開放F1.8での適度なボケ味と柔らかさ。ともするとシャープネスが強すぎる嫌いのあるマイクロフォーサーズ規格のカメラシステムですが、本レンズの絞り開放ですと、常に心地の良い画作りになるので信頼感が高いです。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8/絞り優先AE(1/100秒、F1.8、+1.0EV)/ISO 200

まとめ

早い段階でミラーレスカメラを本格化させたOMDS(当時はオリンパス)だけに、人気の35mm相当(34mm相当)単焦点レンズも、相当に早い段階でラインナップしていました。それでも手を抜くことがなく、高級感のある金属外装の小型・軽量レンズに仕上げているところはサスガの一言です。

開放絞り値で見せてくれる適度な柔らかさとボケ味の妙は、スナップ撮影やネイチャー撮影を本貫とする人には、ぜひ一度味わってもらいたいと思うほど素晴らしいものがあります。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」のような上位クラスのレンズが登場しても、また違った方向性で魅力を放ち続けているのが良いところ。35mm相当(34mm相当)の単焦点レンズとして、ロングセラーとなっている理由にも納得がいくというものです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。