交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第11回】

シグマ「35mm F2 DG DN|Contemporary」

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。第11回となる今回はシグマ「35mm F2 DG DN」のレビューをお届けします。

スペックこそ平凡なのですが、見ての通り、男の子ごころをくすぐるデザインと、それに負けない優れた描写性能が特徴のレンズ。ミラーレスカメラ時代の単焦点レンズとして、シグマが意欲的に提唱する「Iシリーズ」のうちの1本です。

外観・仕様

「35mm F2 DG DN」は、2020年12月に発売された35mmフルサイズ対応の単焦点レンズです。削り出しの金属外装、心地よい操作感触、コンパクトネスの追求、高い描写性能などを融合した、ミラーレスカメラのために開発された「Iシリーズ」の第1弾となったレンズでもあります。今回使用したソニーEマウント用の他に、ライカLマウント用も用意されています。

最大径×長さはφ70×67.4mmで質量は325g(いずれもソニーEマウント用)。金属外装のレンズではありますが、コンパクトネスを追求したと言うだけあって、妥当なサイズ感と重量で、小型・軽量なミラーレスカメラにもピッタリな35mm単焦点レンズに仕上がっていると感じられます。

コンセプトはともかく、このレンズ、ゴツゴツ・メカメカしていて、マニアックな男心を誘う何とも言えないカッコ良さがあります。もうこれだけで、撮る楽しみはもちろん、使う楽しみや、所有する楽しみを満足させてくれるのではないでしょうか。「Iシリーズ」の第1弾である本レンズが、35mmフルサイズ対応の焦点距離35mmというところも憎いですね。

操作性

装備するスイッチ類は、AFとMFを切り換えるための「フォーカスモード切換えスイッチ」だけですが、メカメカしくイカした「Iシリーズ」のレンズだけに、やたら主張が強くて、大きく目立っています。でもこれがむしろ、切り換えやすさを提供してくれているので問題ありません。

リング類としては「フォーカスリング」の他に「絞りリング」を備えており、幅こそそれほど広くないものの、やはり凹凸の主張が強く指あたりが良いため、ブラインドでの操作でも迷うことが少ないです。しかも、「絞りリング」はさらに大きな飛び出しがあるため、親指と中指(あるいは人差し指)での操作がとても分かりやすく、動画撮影でも重宝しそうです。

「LH636-01」という丸形のレンズフードが付属します。なんとレンズフードも削り出しの金属製で、しかもカッコよくて着脱しやすいときました。 遮光効果の高さはもちろんのこと、細部まで手を抜くことなく「Iシリーズ」のコンセプトを貫徹しているところに感心せずにはいられません。

作例

ビルトクオリティの高さに心が囚われがちですが、肝心の描写性能にも重きを置いているのが、本レンズの、そして「Iシリーズ」の特徴です。諸収差の補正はもちろんのこと、SLDガラスの適切な採用によって、大口径レンズで目立ちやすい軸上色収差もほぼ見られない高画質です。さすがのミラーレスカメラ専用設計。

ソニー α7C II/35mm F2 DG DN|Contemporary/絞り優先AE(1/80秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 800

最短撮影距離は27cmで、最大撮影倍率は約0.18倍。特別に近接撮影性能が高いというわけではありませんが、描写性能重視の35mm単焦点レンズとしては十分に寄れるほうだと思います。それにしても、周辺でも円形を維持する玉ボケのかたちや、逆光のフレアによって低下しないコントラスの高さを見ると、本当に素性の良い高画質なレンズだなと思います。

ソニー α7C II/35mm F2 DG DN|Contemporary/絞り優先AE(1/100秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 100

大口径な単焦点レンズだと、思わず開放絞りばかり使いたくなるのは、人としてのサガかも知れません。しかし、本レンズは心地よい絞りリングの操作感触に誘発され、被写体に合わせた絞り値がどこか探ってみたくなります。つまり撮って使って楽しいレンズであるということ。F5.6まで絞り込んで写した写真は、素晴らしく解像感が安定した非常にシャープな画像でした。

ソニー α7C II/35mm F2 DG DN|Contemporary/絞り優先AE(1/20秒、F5.6、−0.7EV)/ISO 100

まとめ

「“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズ」という意味では、非常に的を射た存在であるのが、まさに本レンズだと思います。ただ単に小さいだけでなく、金属外装による質感の高さを前面に打ち出していながら、それでいて描写性能も一級品という仕上りの高さです。

もちろん、外観のデザインや描写性能の傾向には、ユーザーそれぞれの好みがありますので、これが全てというわけでは決してありませんが、本レンズがミラーレスカメラ用の35mmAF単焦点レンズの理想像を、シグマなりの解釈で具現化した製品であることは間違いないでしょう。

さらには、かなり気合の入ったレンズでありながらも、意外に手の届きやすい価格設定になっているところも本レンズの魅力のひとつです。ソニーEマウントかライカLマウントのカメラボディをもっているなら、有力な35mmAF単焦点レンズの選択候補となるのではないでしょうか。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。