交換レンズレビュー
“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第6回】
ニコン「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」
2024年8月12日 09:00
第6回となる今回は、ニコン「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」のレビューをお届けします。Zマウントレンズのなかでは比較的古参にあたる本レンズです。
発売当初、その優れた描写性能に大変感激した記憶があります。独自の設計指針と品質管理をさらに厳格化した「S-Line」の本レンズ、優れた性能を改めて確認していきたいと思います。
外観・仕様
「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」は、2018年9月に発売された35mmフルサイズ対応の35mm単焦点レンズです。名称に「S」が付く通り、本レンズはZシリーズ登場時に設定された、独自の設計指針と品質管理をさらに厳格化した「S-Line」のレンズになります。つまりは高性能ラインのレンズと言うことですね。
最大径×長さは73.0mm×86.0mmで、質量は約370g。同クラスのレンズの比べると、わりと大柄ということになりますでしょうか? 光学性能を突き詰めたレンズらしいサイズと重量とも受け取れます。とは言っても、今回組み合わせた「Z6III」との試用でも、特段バランスの悪さを感じるようなことはありませんでしたので安心してほしいと思います。
最近のミラーレスカメラ用レンズは凹凸が少なく、全体的にスマートな印象の外観デザインが多いと感じていますが、本レンズはそれを突き詰めたかのようなシンプルさがあります。発売当初は高性能レンズらしからぬシンプルさに戸惑ったものですが、時が下り、今は案外自然に受け入れていて、むしろ好ましささえ感じるのですから不思議なものです。
操作性
鏡筒の左側面には、AFとMFを切り換えるスイッチが備えられています。スイッチやボタン類の装備はこれだけという、やっぱりシンプルな仕様。
リングの類もフォーカスリングが備えられているだけ、に見えますが実はこれ、さまざまな機能を割り当てられる「コントロールリング」になっています。AF時でもリングの操作によって瞬時にMFフォーカスリングとなる「M/A」機能の他、「絞り値」、「露出補正」、「ISO感度」のいずれかを割り当て可能。AF時には以上のように機能しますが、MF時にはあくまでフォーカスリングとして働いてくれるフレキシブルさも頼もしいです。
「HB-89」という花形のレンズフードが付属します。わざわざ別売りのレンズフードを購入しなくても良いのは親切ですね。
作例
「S-Line」のレンズだけに、描写性能は絞り開放から極めて高く、安心して使うことができます。高度な設計技術が駆使されているうえに、EDレンズを2枚使うという贅沢さで、軸上色収差も皆無と言って良いほどスッキリとした画質を楽しむことができます。2組のAF駆動ユニットで、フォーカス群をミクロ単位で制御しているという制度の高さも功を奏しているのでしょう。
最短撮影距離は25cm、最大撮影倍率は0.19倍となっています。35mmフルサイズ対応の35mm単焦点レンズとしては十分な近接撮影性能なのですが、ここ最近になって登場した新型の35mm単焦点レンズのなかにあっては、少し物足りなさを感じるかもしれません。
これは描写性能を重視したレンズで間々あること。しかし、最短撮影距離の撮影でも「さすがS-Line!」と言いたくなるほど高品質な画を見せてくれるのですから、全然まったく許せてしまいます。
「Zf」から搭載された、本格的なモノクロモードのピクチャースタイルである「ディープトーンモノクローム」で撮影してみました。35mm単焦点レンズはモノクロとの相性が良いと個人的に思っています。そして、絞り値をF4まで絞ったことで、モノクロならではの質感描写の高さを際立たせることができたと感じています。本当に描写性能が高く、使う醍醐味が味わえるレンズです。
まとめ
F1.8という開放絞り値は特別な大口径というわけでないこともあって、このクラスの35mm単焦点レンズは廉価版としてソコソコの性能が与えられることが多かったと思います。
しかし本レンズ「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」は違います。「Zシリーズ」の高性能ラインである「S-Line」に属するレンズとして、非常に高い描写性能が与えられているのが特長。これは少し考えすぎかもしれませんが、本レンズの登場後、同クラスの他社製フルサイズ対応35mm単焦点レンズも、基本性能の底上げが成されたかのように感じます。
性能が性能だけに、“小さな” 35mmAF単焦点レンズと言うにはやや大きめかもしれませんが、それでもF1.4クラスに比べれば格段に小さく扱いやすいのが良いところです。「Zシリーズ」のカメラユーザーならぜひ押さえておきたい名レンズだと思います。