交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第3回】

ソニー「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。第3回となる今回はソニー「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」のレビューをお届けします。

まだフルサイズミラーレスカメラの「α」が登場する以前の35mm相当(36mm相当)レンズです。当時はAPS-Cサイズ用でZEISS(ツアイス)ブランドのレンズを多く投入していたのですね。

外観・仕様

「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」は、2011年12月に登場したAPS-Cサイズ対応の24mm単焦点レンズです。APS-Cサイズ対応ですので、35mm判換算での焦点距離は36mm相当になります。

最大径×長さは63mm×65.5mmで、質量は約225g。APS-Cサイズ専用で、焦点距離24mm F1.8という仕様の単焦点レンズは、実のところ他にないので比較しにくいのですが、ミラーレスカメラ用のレンズとしては、特に大きくも小さくもないと感じられます。

しかし、質量は225gと確かに軽い。今回は最新モデルの「α6700」との組み合わせで使いましたが、レンズが重くてバランスがフロントローに感じるようなことは、まったくありませんでした。

α6700に装着

外装はアルミニウム合金製で、質感の高い高品位な造りです。当時の「α NEX」シリーズは板(ボディ)と筒(レンズ)をイメージした独特なデザインを採用していましたが、その当時に発売された本レンズにはその名残が見られます。

操作性

スイッチやボタンの類はいっさい備えておらず、至ってシンプルなデザインになっています。シンプルなだけに「ZEISS(ツアイス)」の青いロゴマークが際だっていますね。

リング類もフォーカスリングがただひとつあるだけです。ここ数年で発売されたソニーのGMレンズやGレンズが、いずれも絞りリングや多彩なスイッチ類を多く装備していることと比べると、当時と今ではミラーレスカメラに対するレンズのあり方が随分変化しているように思えてきます。

とは言っても、今回試用している限りにおいて、スナップ撮影を楽しむ分には何の問題もありませんでした。むしろデザインも操作性もシンプルな分、迷いなく被写体と向き合えたような気さえしたものです。

作例

岩のうえで修行(?)するネコを撮らせてもらいました。絞り値はF2.8ですが、ズームレンズの開放F2.8とは違い、1段以上絞ってのF2.8ですので描写性能の高さを実感できます。それにしてもクリアでシャープな独特の写りは、ソニー製であってもやっぱりZEISSなのだなあと感心しました。

ソニー α6700/Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 400

最短撮影距離は16cmで、最大撮影倍率は0.25倍になります。設計の古いレンズですので、正直言ってあまり寄れないかと思っていたのですが、なんのなんの、かなり寄って大きく写すことができました。絞り開放F1.8で撮影していますので、とても大きなボケが得られ、しかも綺麗です。

ソニー α6700/Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F1.8、−0.3EV)/ISO 400

珍しく端正に咲いたハスの花がありましたので、36mm相当の画角を活かし、周りの情景とともに構図をまとめてみました。ボケ過ぎないように、少し絞ったF3.5としていますが、形を残しながらのボケのなかに、繊細ながらも強く存在を主張している、被写界深度内にある被写体の立体感が見事です。高性能な単焦点レンズならではの描写だと思います。

ソニー α6700/Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/80秒、F3.5、±0.0EV)/ISO 400

まとめ

今回試写した限りでの話です。フルサイズミラーレスカメラの火付け役とも言える「α7」シリーズの登場以前に発売されたAPS-Cサイズ用の本レンズですが、ミラーレスカメラの開発に挑んでいた、当時のソニーの力強い姿勢がそこはかとなく感じられる本格的なレンズだと感じました。

あらゆるジャンルの撮影に活用しようと考えると、最新機種の「α6700」と組み合わせて使ってみた場合、わずかながらにある微妙なデザイン上の違和感や、ボディの機能を使いつくせない操作性などに、多少の不満を覚えることがあるかもしれません。

しかし、今は希少になりつつある“(ソニー)ZEISS”の描写がこのレンズに宿っているのも確かなことだと思います。ボディ側のレンズ補正機能に頼り切らない(頼り切れない?)、レンズ本来の描写特性が生きている隠れた名レンズとも言えるでしょう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。