交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第8回】

富士フイルム「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。第8回となる今回は富士フイルム「フジノンレンズ F23mmF2 R WR」のレビューをお届けします。

コンパクトながら金属外装を纏った高級感のある外観ですが、そのスペックや光学性能は極めてオーソドックス。ところがそれは、現代のレンズでは見られなくなった、昔ながらの描写のクセを味わえる貴重なレンズと言いかえることもできます。「これってわざと!?」と勘繰りたくなってしまうのが、本レンズの魅力なのかもしれません。

外観・仕様

「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」は、2016年10月に発売されたAPS-Cサイズ対応の単焦点レンズです。実焦点距離は23mmですが、APS-Cサイズ用ですので、35mm判換算の焦点距離は約35mm相当となります。

最大径×長さはφ60.0mm×51.9mmで質量は約180g。先日紹介したニコンの「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」ほどではないものの、APS-Cサイズ用の35mm相当単焦点レンズとしては、これまた納得できるコンパクトさです。

小柄なレンズながらも、外装のほぼ全面に金属パーツが用いられているため、高級感と堅牢性を兼ね備えたスタイリッシュなデザインとなっています(ちなみにレンズ名称の「WR」はウォーターレジスタンスの意味)。今回は「X-H2S」との組み合わせで使いましたが、「X-T5」や「X-T50」といった、ダイヤルオペレーションのボディと合わせて使えば、よりシックリと気分が盛り上がりそうです。

操作性

ボタンやスイッチの類は装備されていません。したがって、基本的な操作系は、例によって至ってシンプルになっています。

しかし、リング類は充実したものがあり、フォーカスリングの他に絞りリングも備えています。Xシリーズレンズの多くは絞りリングを備えていますが、これはXシリーズカメラが登場当初より、ダイヤルオペレーションを主体としたボディを中心としてきたことによるものと思われます。

専用設計のフジツボ型レンズフードが付属します。これだけ樹脂製なのが少し残念なところですが、レンズボディとのデザイン的なマッチングは上々。レンズフードの先端にレンズキャップを装着することも可能です。

作例

富士フイルムと言えばフィルムシミュレーション。35mm相当の単焦点レンズと言えば、個人的にはモノクロ写真です。というわけで、フィルムシミュレーションの「ACROS」でネコを撮らせてもらいました。ちょっと固めのボケ味は現代的な評価基準としては難点とも受け取られますが、昔ながらのオールドタイプな雰囲気であるとも感じられますので、本レンズの場合は納得できたりします。

富士フイルム X-H2S/フジノンレンズ XF23mmF2 R WR/23mm(35mm相当)/絞り優先AE(1/20秒、F2.0、+0.3EV)/ISO 3200

最短撮影距離は22cmで、最大撮影倍率は0.13倍。被写体に寄って大きく写すことは、はっきり言って苦手なレンズです。しかも被写体のエッジ周辺はシャープ感がいまひとつ。しかし、このエッジにまとわりつくようなハロがフワリと幻想的にすら見え、筆者としてはむしろ魅力的に感じてしまいます。昔ながらのオールドタイプな雰囲気のレンズ、あるいは意図的なものなのかもしれませんね。

富士フイルム X-H2S/フジノンレンズ XF23mmF2 R WR/23mm(35mm相当)/絞り優先AE(1/400秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 400

開放絞り値をF2と控えめにしたこともあってか、非常にコンパクトでスタイリッシュなデザインなのは、本レンズの特長のひとつです。F1.7やF1.8に比べて数値上は劣るかもしれませんが、その差はわずかに0.3EV程度でしかありません。優秀な高感度性能をもつ現代のデジタルカメラなら、ISO感度の設定で簡単に解消できる程度の話です。

富士フイルム X-H2S/フジノンレンズ XF23mmF2 R WR/23mm(35mm相当)/絞り優先AE(1/10秒、F2.0、−0.3EV)/ISO 1600

まとめ

2016年発売のやや古めなレンズと言うこともあってか、スペックとしては他社製レンズに比べて見劣りしてしまうこともある「XF23mmF2 R WR」です。

ただし、昔ながらのオーソドックスなスタイルを今も現行レンズとしてラインナップしているところが、逆に本レンズの魅力であるように思えます。見ようによってはレンズのクセも、失われつつある昔ながらの懐かしい写りと捉えることができます。しかも富士フイルムに限っては、わざとそうした設計特性を活かしている疑惑があるのでは? と思えます。

富士フイルムは本レンズの他にも、焦点距離18mm、35mm、50mmにおいて、同様なコンセプトのレンズをシリーズ化しています。レンズの更新が激しく進んでいる現状ですので、いまこそ貴重な往年の写りを確保しておくというのはアリでしょう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。