交換レンズレビュー

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙紹介【第10回】

シグマ「23mm F1.4 DC DN|Contemporary」

“小さくて軽い” 35mmAF単焦点レンズを一挙に紹介していこうという本連載。第10回となる今回はシグマ「23mm F1.4 DC DN」のレビューをお届けします。

本レンズの特徴は、APS-Cサイズ対応の35mm相当単焦点レンズとしては珍しい、開放絞り値F1.4の大口径レンズであるところ。それでいて、F1.4のレンズとは思えないような、コンパクトネスを実現しています。

外観・仕様

「23mm F1.4 DC DN」は、2023年4月に発売されたAPS-C相当のイメージサークルに対応した単焦点レンズです。実焦点距離は23mmですが、APS-Cサイズ対応ですので、35mm判換算の焦点距離は約35mm相当。今回使用したソニーEマウント用の他に、Lマウント用と富士フイルムXマウント用が用意されています。

最大径×長さはφ65.8×78.9mmで質量は330g(いずれもソニーEマウント用)。本当に絞り開放F1.4のレンズなのか? と思ってしまうほど小さくて軽いのですが、他社製のF1.8~F2クラスのレンズに比べれば、それなりに大きいことが分かります。

ソニー α6700に装着

レンズ単体で見たデザインは、凹凸がほとんどなく、非常にスマートであっさりとしたもの。しかし、カメラに装着してみると、デザイン上のバランスは意外なほど良く、違和感のない組み合わせとなるのですから不思議なものです。ちなみに、本レンズには、他にも焦点距離16mm、30mm、56mmの兄弟レンズがあり(いずれも開放絞り値はF1.4)、揃って同じテイストのデザインが採用されています。

操作性

スイッチ類やボタン類はいっさい装備されていません。まあ軽快に撮ることを意識したレンズですので、なくても困るようなことはほとんどないでしょう。

リング類もフォーカスリングがあるのみ。幅広のゴムローレットは、MFで操作する際に適度なトルクがあって、操作感はなかなか良好です。

「LH554-01」という花形のレンズフードが付属します。これがちょっと、このクラスとしては驚くほど豪華な造りで嬉しくなってしまいます。ブラインドでの着脱のしやすさは抜群で、深みも必要十分にあるため遮光効果も良好でした。

作例

花と遊ぶワンコ(の置物)を、開放絞り値のF1.4で撮ってみました。明るい大口径ではありますが、絞り開放から解像感がきちんと確保されているあたりはサスガの描写性能です。後ボケでなく前ボケのボケ味も優しく自然で、F1.4での写りをどんどん楽しんでみたくなります。

ソニー α6700/SIGMA 23mm F1.4 DC DN|Contemporary/23mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F1.4、+1.0EV)/ISO 400

最短撮影距離は25cmで、最大撮影倍率は約0.14倍。「あれ? 意外に寄れないな」とは思いましたが、これはF1.4という大口径で描写性能を優先した結果でしょう。とはいっても、決して寄れないレンズではなく、本レンズのスペックから考えれば、十分な近接撮影能力だと言えると思います。最短撮影距離でも、シグマらしい切れのあるエッジが健在であることが、何よりもそれを証明しています。

ソニー α6700/SIGMA 23mm F1.4 DC DN|Contemporary/23mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/125秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 100

コンパクトで明るいだけでなく、使い勝手も良好なのが本レンズの素晴らしいところ。AFは気持ち良いくらいに速く正確で、そのうえ非常に静かです。AF駆動系にはステッピングモーターが採用されているとのことですが、それをバランスよく制御する技術の高さに感心してしまいました。

ソニー α6700/SIGMA 23mm F1.4 DC DN|Contemporary/23mm(34mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F2.8、−0.7EV)/ISO 400

まとめ

APS-Cサイズ用のレンズだからということもありますが、開放F1.4とは思えないコンパクトなレンズボディに、確かな描写性能と使いやすさを融合させたのが本レンズ「23mm F1.4 DC DN」です。

特に、エッジの効いた高い解像性能を、絞り開放から実現したところは本当に素晴らしい。シグマらしさを感じさせる鮮烈な描写性能を、希少なAPS-Cサイズ用の35mm相当単焦点レンズでモノにしてくれています。

これほどの性能でありながら、価格が比較的に控えめであるところも魅力です。ある意味純正のLマウントユーザーはもちろんのこと、EマウントやXマウントのユーザーも、35mm相当単焦点レンズの選択肢に加えて損はないと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。