キヤノン、「EOS 5D Mark III」を発表。6コマ/秒・ISO102400・61点AFなど
キヤノンは、デジタル一眼レフカメラ「EOS 5D Mark III」を3月下旬に発売する。価格はオープンプライス。直販価格は35万8,000円、「EF 24-105mm F4 L IS USM」が付属するレンズキットが同45万8,000円。
2008年11月に発売した「EOS 5D Mark II」の後継モデル。高感度画質、連写性能、AF性能、ファインダーなどの強化を図った。EOS 5D Mark IIは併売する。
■常用感度が最高ISO25600に
撮像素子は新開発の35mmフルサイズCMOSセンサーで、有効画素数は前モデルの2,110万から2,230万画素になった。高感度性能が向上しており、常用最高感度はISO6400からISO25600になった。また拡張設定では最高ISO102400での撮影が可能。前モデルは同ISO12800までだった。
今回から「ISOオート」時の上限/低速限界設定などのカスタマイズが可能になり、手ブレや被写体ブレ対策に有効だとしている。
オンチップマイクロレンズはギャップレスにしたことで、集光効率が向上した。前モデルはギャップレスではなかった。ローパスフィルターは前モデルと同じ厚みのタイプを搭載している。
撮像素子 | DIGIC 5+を搭載したメイン基板 |
画像処理エンジンは「DIGIC 5+」をシングルで搭載。処理能力を前モデルの「DIGIC 4」から17倍に高め、高感度時のノイズ除去能力などを高めた。また、DIGIC 4では周辺光量補正のみだったレンズ補正が、新たに色収差にも対応。倍率色収差、軸上色収差などによる色滲みに有効だとする。
RAW画像を同梱のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)で高画質化できる「デジタルレンズオプティマイザー」にも対応。EOS-1D Xの発表時には「新レンズ補正機能」と呼ばれていたもので、レンズやローパスフィルターなどの特性データを基に高画質化を図る機能。
デジタルレンズオプティマイザーでは、回折現象によるボケ、フレア、色収差などの低減が可能だとしている。DPP上では効果の強さを1~100のスライダー1本で操作する。レンズの特性データは、レンズごとに別途ダウンロードしてインストールする必要がある。対応レンズはWebで告知する。
■連写は6コマ/秒に高速化。静音モードも
最高連写速度は、EOS 5D Mark IIの約3.9コマ秒から約6コマ秒にアップした。前モデルでは4チャンネルだったセンサーからの読み出しを8チャンネルにしたことと、DIGIC 5+の処理能力が寄与した。連写可能枚数はJPEGラージ/ファインで約1万6,270枚、RAWで約18枚、RAW+JPEGで約7枚(いずれも同社基準のUDMA 7対応CF使用時)。
レリーズタイムラグは「EOS 7D」同等という約59msに短縮。前モデルは“75ms以下”だった。
「静音・低振動モード」も新設した。ファインダー撮影時はミラーを低速駆動させることで静音化を図った。同モードでの連写も可能で、3コマ/秒で撮影できる。振動も低減するので、カメラブレも低減できるとしている。一方ライブビュー時は、ミラーの低速駆動と電子先幕シャッターを併用し、ファインダー撮影時よりもさらに静音と低振動を実現するという。
■「EOS-1D X」と同等のAFシステムを採用
AFシステムは「61点高密度レティクルAF」を新たに採用した。AFのアルゴリズムも含めて、フラッグシップ機「EOS-1D X」とほぼ同様のシステムとなっている。
AFセンサー | AFユニット |
クロス測距点は最大41点で、うち中央5点はデュアルクロス。中央のF2.8対応センサーの合焦速度を向上させたほか、新採用のF4対応センサーも従来のEOS-1D系のF2.8対応センサーと同等の精度になっている。また、全ラインセンサーで千鳥配列を採用し、被写体捕捉性能と合焦精度を向上させたとする。
測距点選択は、1点、スポット、領域拡大(2種類)、ゾーン、全自動の6パターン。AIサーボAFもEOS-1D Xと同じアルゴリズムで予測精度を向上させたという。測距点の追従表示も可能。AIサーボAFの設定をサポートする6種類のプリセット「AFカスタム設定ガイド」も設けた。
測距点配置 | ファインダー内表示 |
AF可能な輝度は-2~18EVで、前モデルの-0.5~18EVから下限が拡大した。なお、F8対応の測距点は非搭載。また、EOS-1D Xが採用しているAEからAFへの情報フィードバックは行なっていない(逆は行なっている)。
EOS 5D Mark IIの測距点は、9点(+アシスト6点、中央のみクロス)だった。
AEシステムはEOS 7Dで採用されている「iFCL測光システム」を新採用した。63分割のデュアルレイヤーを使用したシステムで、AFと色の情報を利用するもの。露出安定性が向上したいという。ただし、EOS-1D Xが採用している顔追尾機能は非対応となっている。
AEセンサー |
露出補正段数は前モデルの±2段から±5段にアップした。オートブラケット(AEB)は2/3/5/7枚の設定が可能になった。前モデルは3枚のみだった。
■HDR撮影機能をEOSで初めて搭載
「HDR(ハイダイナミックレンジ)モード」をEOSとして初めて搭載した。露出の異なる3枚を撮影してカメラ内で合成し、HDR画像を自動生成する機能。加えて、表現意図に合わせて「絵画調標準」、「グラフィック調」、「油彩調」、「ビンテージ調」の各仕上がりから選択することもできる。
素材画像の位置合わせ機能を有しているが、同社では三脚の使用を推奨している。なお、素材画像を残すかどうかは選択可能。同梱のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)でもHDR合成が可能になる。
EOS-1D Xと同等の多重露出機能も搭載した。合成方法は、加算、平均加算、比較(明)、比較(暗)から選択可能。加算平均は重ねても明るくない過ぎないモードで、比較(明)は天体撮影などに利用できるとする。ライブビューに重ねる画像をスルーで表示できる機能も有する。
EF 24-105mm F4 L IS USMの装着例 |
■視野率は100%に。2画面再生など新機能も
ファインダー視野率は、EOS 5D Mark IIの約98%から約100%になった。倍率0.71倍とアイポイント約21mmは前モデルと同じ。
ガラス製ペンタプリズムを採用 |
撮影機能の設定状態をファインダーに透過表示する「インテリジェントビューファインダー」を採用。AF表示や測距点追従状態が表示できる。また、EOS 5D Mark IIIは、前モデルになかった電子水準器(2軸)を搭載しており、傾き具合もファインダー内で確認できる。
ファインダースクリーンの交換はできなくなり、グリッドはインテリジェントビューファインダーで表示する。新たに、対角線付きの9分割グリッド表示をも可能になった。
なお従来機は「方眼プレシジョンマット」と、F2.8より明るいレンズでピントが合わせやすくなる「スーパープレシジョンマット」スクリーンへの交換ができた。
撮影時のアスペクト比は3:2、4:3、1:1、16:9に対応する。
再生モードでは、「2画面比較再生機能」をEOSで初めて搭載した。異なる撮影画像を液晶モニターの左右に分けて表示し、比較できる機能。片方の画像を固定して、もう片方の画像を送りながら比較できる。5段階のレーティングも設定可能。
カメラ内RAW現像、JPEGのリサイズといったEOS 5D Mark IIに無かった機能も搭載した。
2軸の電子水準器を装備 | 2画面再生も可能になった |
■CFとSDメモリーカードのデュアルスロットを採用
ボディはEOS 7Dに似たフォルムになった。背面には「クリエイティブフォトボタン」をEOSでは初めて設け、撮影時に押すとHDRモード、多重露出、ピクチャースタイルの設定に行ける画面が表示されるようになった。再生時は、2画面比較再生機能が起動する。
ボディはマグネシウム合金製。引き続き防塵防滴構造を採用する。新たにボディ上面の防滴構造を強化した。シャッター耐久回数は15万回。前モデル同様内蔵ストロボは非搭載。
液晶モニターはワイド3:2で3.2型の約104万ドットパネルを採用。カバーは強化ガラス製。外光反射の原因になっていた空気層を排除した「クリアビュー液晶II」になっており、見やすさが向上したとしている。
同時発表のクリップオンストロボ「600EX-RT」やトランスミッター「ST-E3-RT」の電波によるシンクロ機能にも対応する。
記録メディアはSDXCメモリーカードとCFが利用可能 | 新たにヘッドホン端子を搭載した |
記録メディアスロットはCF(UDMA 7対応、Type Iのみ)とSDXC/SDHCメモリーカードのデュアルスロットを採用した。SDメモリーカードを採用している下位モデルユーザーのステップアップと、従来機などCF採用モデルからの乗り換えユーザーの両方に配慮した。スロット間において、自動切り替え、振り分け、同一書き込みが可能。無線LAN機能付きSDHCメモリーカード「Eye-Fi」にも正式対応している。
バッテリーは、EOS 5D Mark IIと同じ「LP-E6」。
■EOS-1D Xとほぼ同じ動画撮影機能を搭載
動画はフルHDに対応。新たに720pの60p記録が可能になった。圧縮方式はEOS-1D Xと同様、編集に適した「ALL-I」と高圧縮が可能な「IPB」(前後参照フレーム間圧縮)に対応。いずれも記録形式はH.264(MOV)。従来モデルの圧縮方式は「IPP」のみだった。
動画撮影時に録音音声を確認できるヘッドホン端子をEOSで初めて搭載した。またEOS-1D Xと同じく、サブ電子ダイヤル内側に触れるだけで録画に操作音を記録せずに設定ができる機能も採用した。
動画の画質面では、従来よりモアレを低減したとしている。動画時の感度はISO100~ISO12800で、拡張設定時は最高ISO25600まで増感できる。
録音レベルは撮影前/撮影後とも64段階のマニュアル調整が可能となっている。録画中に録音レベルを表示することもできる。
ファイルサイズが4GB以上になった場合に、ファイルを自動分割して長時間録画ができる機能も設けた。タイムコードもEOS-1D X同様、レックランとフリーランでの記録に対応している。
同梱品 | システムマップ |
■バッテリーグリップとワイヤレストランスミッターも新型に
専用バッテリーグリップ「BG-E11」を4月下旬に発売する。価格は3万450円。握りやすいという大きく絞ったグリップ形状を採用した。マルチコントローラーやM-Fnボタンを新設し、横位置撮影時と同等の操作性とした。本体はマグネシウム合金製で、カメラ本体と同様の防塵防滴性能を備える。
装着例 |
専用ワイヤレスファイルトランスミッター「WFT-E7B」を4月下旬に発売する。価格は8万4,000円。802.11.b/g/nに対応した無線LANによるファイルトランスミッター。1000BASE-T対応の有線LAN端子も備える。Bluetooth対応のGPSと連動する通信機能も備えるほか、複数のカメラで同期した撮影や時計の同期なども行なえる。
WFT-E7B |
装着例 |
製品名 | EOS 5D Mark III | EOS 5D Mark II(参考) | EOS-1D X(参考) | |
発売年月 | 2012年3月下旬 | 2008年11月 | 2012年4月下旬 | |
実勢価格(発売時) | 35万8,000円 | 30万円前後 | 65万円前後 | |
撮像素子 | タイプ | 35mmフルサイズCMOSセンサー | ||
サイズ | 35mmフルサイズ (約36×24mm) | |||
有効画素数 | 約2,230万 | 約2,110万 | 約1,810万 | |
感度 | 通常 | ISO100-25600 | ISO100-6400 | ISO100-51200 |
拡張設定時 | ISO50-102400 | ISO50-25600 | ISO50-204800 | |
イメージセンサークリーニング | ○ | |||
ライブビュー | ○ | |||
液晶モニター | サイズ | ワイド3.2型 | 3型 | ワイド3.2型 |
ドット数 | 約104万 | 約92万 | 約104万 | |
ファインダー | タイプ | ペンタプリズム | ||
視野率 | 約100% | 約98% | 約100% | |
倍率 | 約0.71倍 | 約0.76倍 | ||
アイポイント | 21mm | 20mm | ||
位相差AF測距点 | 61点(クロス最大41点) | 9点 | 61点(クロス最大41点) | |
最高シャッター速度 | 1/8,000秒 | |||
最高シンクロ速度 | 1/200秒 | 1/250秒 | ||
連続撮影速度 | 約6コマ/秒 | 約3.9コマ/秒 | 約12コマ/秒(AF/AE追従)、14コマ/秒(AF/AE非追従) | |
動画 | 最大解像度 | 1,920×1,080ピクセル | ||
フレームレート | 30p、25p、24p、60p(720p時) | 30p、24p | 30p、25p、24p、60p(720p時) | |
記録形式 | H.264(MOV) | |||
圧縮方式 | ALL-I、IPB | IPP | ALL-I、IPB | |
記録メディアスロット | SDXCメモリーカード×1 CF×1 | CF×1 | CF×2 | |
バッテリー | LP-E6 | LP-E4N | ||
本体サイズ | 幅 | 約152mm | 約158mm | |
高さ | 約116.4mm | 約113.5mm | 約163.6mm | |
奥行き | 約76.4mm | 約75mm | 約82.7mm | |
本体のみの重量 | 約860g | 約810g | 約1,340g | |
撮影時の重量 | 約950g | 約905g | 約1,530g |
【2012年3月2日】記事初出時、表中でEOS 5D Mark IIIの最高シンクロ速度を「1/250秒」と記載しておりましたが、正しくは「1/200秒」です。
2012/3/2 14:15