新製品レビュー
ハッセルブラッド X1D-50c(実写編)
老舗が満を持して投入した中判ミラーレスの実力は?
2017年4月24日 12:00
先日公開した機能編では、ハッセルブラッド X1D-50cの機能や外観、使用感について紹介した。ミラーレスになり中判デジタルカメラとは思えないほどコンパクトで気軽に持ち歩けるようになったことは中判デジタルカメラの革命とも言えるだろう。
その結果、スナップやスナップポートレートにおいても気軽に使えるようになった。今回はスナップ、スナップポートレートの写真を見ながら本カメラの魅力を感じていただきたい。
解像感
本機は5,000万画素のCMOSセンサーを搭載している。センサーサイズは32.9×43.8mm。遠景を撮影してみるとそのディテールの描写力と解像感に驚かされる。橋のケーブルの1本1本の解像感、マンションなどの壁のディテール、遠くに見えるコンテナの文字、画面右上を飛行しているヘリコプターの形までしっかりと描写した。
壁の絶妙な凹凸感やペンキの質感まで細かく描写していることがわかるだろう。碇のさびの質感も美しく表現できている。さすがの一言だ。
ダイナミックレンジ
中判デジタルカメラの魅力の1つは大きなセンサーから得られる膨大な情報量だ。ダイナミックレンジの広さは中判デジタルカメラ特有で、輝度差のあるシーンなどで力を発揮する。
スペック表から見るとダイナミックレンジは14ストップとかなりあることが伺える。実際に洋館の屋内から日光が入りこむシーンを撮影した。ハイライトは少しだけ白トビしているものの屋内の暗部は綺麗に表現できている。窓の外の風景などもしっかりと写っていることがわかるだろう。
部屋に差し込む光を撮影。絶妙な光のグラデーションからその場の空気感が感じられる。
高感度
高感度撮影に関しては、中判デジタルカメラの最も苦手な部分。撮像素子がCCDの時代はISO200やISO400でもざらつきが目立ち使えなかったため、スタジオでの使用がメインだった。しかし、CMOSセンサーになり本機でもISO100~25600まで設定できるようになった。筆者が使用してみてISO6400までは実用レベルだと感じた。ノイズ処理によって少しノッペリするが、使用できるレベルと言えるだろう。
ISO1600であればノイズは気にならない。画像自体はクリーンで暗部からハイライトまで美しく表現できている印象だ。長年中判デジタルカメラを使っているが、手持ちで少し暗い屋内を撮影できるようになるとは思わなかった。
ISO800でも暗部のノイズなども気にならない。感度を上げても十分なダイナミックレンジがある。解像感も十分で、画面中央に飾ってある花の画を入れてある額のディテールまでしっかり確認できる。
AF性能
AFはシングルAFのみ対応。とは言え、タッチパネルを採用しており、AFポイントも選択できる。画面全体ではないがかなり広範囲をカバーできる点も魅力。
中判デジタルカメラの弱点はコサイン誤差によるピンぼけが顕著に出る点だ。そのためハッセルブラッド H4D以降のカメラにはTrue Focusを採用し、コサイン誤差による距離のギャップの補正を行っていた。しかし、本機ではTrue Focusは搭載していないが、タッチパネルを採用し、構図を決めた後にピント位置をタッチして撮影できるため、コサイン誤差が気になることもない。
ピント精度も高く、思い通りにピント合わせできる点も本機の魅力。実写画像では人物の目にピント合わせしているが、非常に高い精度でピントが合っていることがわかるだろう。
咲いていた花を画面右端に配置してピント合わせを行った。ミラーレス機になって構図の自由度が増した。ピント位置の解像感はさすがだ。
最短撮影距離付近でウサギの置物を撮影したが、ピント精度は高く置物の表面の質感もしっかりと撮影することができた。ボケも美しく立体感が感じられる。
作品
90mmのレンズを使い、モデルと風景を撮影した。被写体から離れて撮影してもボケを活かした立体感のある写真を撮影できた。
同じ背景でバストアップ撮影。本機はレンズシャッターで最高1/2,000秒を実現している。そのため、ストロボを使用するときもシャッタースピードに制限がない。ストロボ撮影をする方にはレンズシャッターの恩恵は大きいはずだ。
45mmのレンズを使い、橋と背景のビル群を入れてストロボ撮影した。肌の質感までリアルに表現できている。レンズのヌケもよく青空もしっかりと表現できている。
自然光を使い、ポートレートスナップ撮影。手軽に使えるので、ライティングなどせずに撮影してみた。絞りは開放付近のF4ではあるがレンズはシャープで歪みも気にならない。
まとめ
X1D-50cを試用して感じたことは、ハッセルブラッドの本気度を感じられたということ。H6DやH5Dなども非常に優秀なカメラではあるが、アマチュアが使うにはシステムも複雑で、躊躇した方もおられたはずだ。
今回、本機の登場により中判デジタルカメラが一気に身近になった。持ち運びも便利になり、画質は今まで以上に向上している。高感度性能も実用レベルになり、旅スナップ撮影、ポートレート撮影、風景撮影など多くの撮影にオールマイティに使えるだろう。
価格は今までのHシリーズに比べるとリーズナブルになっている点も評価できる。レンズラインナップも今後増えることが予想されるので、中判デジタルの世界に入りたい方は是非候補に入れてみよう。
モデル:高取祐司