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ハッセルブラッドX1D
連れ出しやすそうな身軽さの中判デジタル
2016年10月26日 07:00
初の中判ミラーレスカメラとして注目を集める「Hasselblad X1D」(X1D-50c)について、外観写真を中心に紹介する。
X1Dはミラーレスカメラとして業界初となる、35mm判(24×36mm)を超える面積のイメージセンサー(32.9×43.8mm)を搭載した製品。本モデルの正式名称はX1D-50cで、有効5,000万画素のCMOSセンサーを採用。7月1日にスウェーデンで行われた発表会の模様は、全世界にリアルタイム中継された。
国内の出荷開始予定は、本稿執筆時点で12月上旬とアナウンスされている。店頭予想価格はボディが税別102万8,000円前後、レンズはXCD 3,5/45mm(35mm判換算35mm相当)が24万8,000円前後、XCD 3,2/90mm(35mm判換算71mm相当)が29万8,000円前後の見込み。
100万円と聞けば35mmカメラの感覚ではたいへん高価だが、同社としては300万円を超える中判デジタル一眼レフカメラ「H6D」などに対し、より小型で買いやすい中判デジタルカメラとして位置づけたい考え。
外観はミラーレスカメラらしく、贅肉をそぎ落としたような造形が印象的。フォーマットが大きい分だけボディに高さがあることから、グリップ部分は無理なく小指まで収まる大きさになっている。高級感が漂うアルミボディは、大型センサーをライブビュー駆動させなければいけない中判ミラーレスカメラの放熱を助けつつ、ハッセルブラッドの歴史を感じさせる造形も散りばめた。
一時は他社製デジタルカメラがベースの独自モデルも販売していた同社だが、今後は「HANDMADE IN SWEDEN」の自社製カメラに注力するとしており、その方針のもと初めて登場したのがこのX1Dだ。
操作ダイヤルはグリップ前後に存在。絞り優先モード時には、前ダイヤルで絞り値、後ダイヤルで露出補正、といった操作が可能。シャッターボタン半押しでAE/AFロックをかけた状態でも露出補正操作ができるのは快適だ。
モードダイヤルはプッシュ/プッシュ式で誤動作を防ぐ仕組みになっており、設定状況は画面上にも連動表示される。
AFは中央1点のシングルAFのみ。コントラスト検出式のためAFの追い込みでは細かくフォーカスを前後に動かすが、駆動が速いため遅さを感じることは少なそうだ。もちろん、デジタルカメラであるがゆえに、今後のファームウェアアップデートでより高速化する可能性も大いにある。
レンズマウント横のボタンは、銀色がレンズ着脱ボタン、グリップ側の黒いボタンがプレビュー(絞り込み)ボタン。背面モニター横のボタンで再生モード、画像消去、カメラ設定などを呼び出す。いわゆるINFO画面を表示するには、液晶モニターを上から下にスワイプする。ここで設定したい項目をタップすると、タッチ操作で設定可能だ。
現段階の試用個体は起動に約7秒を要し、メニュー画面の日本語ローカライズや、細部の挙動に若干の不安定さが残る。しかしメニュー操作や再生画面をピンチイン/ピンチアウトする際のスムーズさはかなりのもので、ここに注目すると、今後のソフトウェア面のチューニングで様々なレスポンスが向上することも十分期待できる。
我らが日本製カメラの常識では驚くが、例えば同じように海外メーカーであるライカのデジタルカメラも「発売1年後のファームウェアVer.2.0が本来の姿」などと言われることがあり、特に発売当初は気長な付き合いを求められる印象。このX1Dも、早く導入した人、慎重に検討している人、どちらもこの先1〜2年ぐらいを見据えて気長に付き合っていくのが正解だろう。
ともかくX1Dによって、35mmフルサイズを超える「中判ミラーレスカメラ」という未来が我々のもとにやってきた。今回は試作機のため実写できなかったが、撮影画像を見ると「この階調性・解像感を、この小型システムで得られるなら……」と魅力を感じた。
今後GFXを投入する富士フイルムはAPS-Cミラーレスから35mmフルサイズを飛び越えて中判フォーマットを選び、フィルムメーカーが真っ先に100年来の"ライカ判"から抜け出した点が興味深い。やがては645フルサイズや6×9フルサイズを目指すのか、それともまた別の最適解を探すのか、意外とAPS-Cぐらいに揺り戻すのか。そんなデジタルカメラの行く先までをも、このX1Dを通じて考えさせられた。