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ハッセルブラッドX1Dのレンズセットモデル「エクスペリエンス・パッケージ」を見てきた

レンズ、カメラバッグ、ラッピングクロスなどで構成

ハッセルブラッドは4月27日、中判ミラーレスカメラX1D-50cの「エクスペリエンス・パッケージ」を発表した。カメラボディ、45mm単焦点レンズに加え、ハッセルブラッドのオリジナルカメラバッグ、ラッピングクロス、クリーニングクロスの3点がセットになっており、購入した足でそのまま撮影に出かけられるようになっている。

36mm相当のレンズが付属するお得なセット

X1Dは、広いダイナミックレンジを持つ、32.9×43.8mmのイメージセンサーを搭載するミラーレスカメラ。本体のデザインは、往年の名機「Vシステム」にインスパイアされたもの。2013年に製造中止が発表されたが、根強い人気を誇る1台の面影を残したものだ。グリップ部分や角に出っ張りがないなどのつくりは、人間工学に基づいた設計にもなっている。実際に握ってみても持ちやすい。

カラーはシルバーとブラックを用意。それぞれシルバーは50セット、ブラックは15セットと、数に限りがある。

付属のレンズは「XCD 3,5 / 45mm」。35mm判換算で36mmという、やや広めの標準レンズ。スナップ写真はもちろんのこと、最短撮影距離は40cmと近距離なので、料理や小物などのテーブルフォトも対応できる。単焦点でコンパクトな設計は、持ち運びも苦にしない。

カメラバッグは、ハッセルブラッドジャパンのオリジナル仕様で、世界中でも日本でしか購入できない。表面は消防車のホースなどに使用される素材で作られており、耐久性に優れる。

内装はオレンジ色のデザインで、レンズを取り付けたカメラが1台と、もう1本レンズが入る大きさだ。裏面にはタブレットも収納できる。

大きな面積の肩パッドには、よく見ると「HASSELBLAD」と印字されており、これまた粋なデザインとなっている。

ラッピングクロスも、バッグ同様に外装が黒、内装がオレンジというカラー。バッグとの親和性は高い。こちらはダイビングのウェットスーツなどに使用される素材と同じもので、伸縮性と柔らかさを兼ね備えている。四隅にはマジックテープがあり、自由な形に包むことができる。

大きめのクリーニングクロスも同梱。ここにも「H」のロゴマークが印字されており、日常アイテムとしてもオシャレに使えそうな一品だ。

販売価格はシルバーが115万7,000円(税別)、ブラックが130万円(税別)。ボディ、レンズそれぞれを単体での購入することを考えると、かなりお得な設定になっている。

キャッシュバックキャンペーンも行なっており、エクスペリエンス・パッケージに加えて「XCD 3,5/30mm」「XCD 3,5/45mm」「XCD 3,2/90mm」「XCD 3,5/120mm Macro」のいずれかのレンズを購入すると、5万円がキャッシュバックされる。期限はなんと無期限で、これから発売されるレンズも対象になるという。

写真展の解説も

「エクスペリエンス・パッケージ」発表の場となったハッセルブラッドストア東京では、写真家 ロレンツォ・バラッシさんの写真展「RECURRENCE – 回帰」も行われていた。最終日の9日には、パッケージの発表と合わせてトークショーが開催された。

バラッシさんはミラノのデザイン学校を卒業後、1995年よりカメラ業界に。98年にはミラノでスタジオを構え、広告などの撮影を行う。02年よりフリーへ転向し、08年より拠点を東京に移す。

「RECURRENCE – 回帰」は、ハッセルブラッドとパラッシさんが共同で行う最初のプロジェクト。日本人モデルの山口小夜子から着想を得て開催された写真展だ。

パラッシさんにとって、山口小夜子は近代の日本の中でも特に重要なモデルのようだ。日本人モデルの中では、世界に対して一番最初に大きな影響を与えた人物であり、日本の美というもたらした功績がある。もともとあった和に加え、新しい日本人の美しさを世界に発信した人物であると、パラッシさんは解釈している。

当時の写真は、フォトグラファーとモデルだけでなく、デザイナー、スタイリスト、ヘアメイク、エディターが、それぞれ最大限のスキルを持ち寄って一丸となり、1枚の写真を作り上げていた。

もちろん、Photoshopなどでのレタッチもない。今回の写真も、レタッチをすることなくすべて撮って出しで展示されている。パラッシさん個人がそれにチャレンジしたかったのと同時に、山口小夜子と当時の撮影スタッフへの敬意の表れでもある。

そうして完成した写真は、衣装の繊維の質感、髪の毛の1本1本まで鮮明に描写されており、まるで人形が額の中に飾られていて、手を伸ばせば触れそうだと思うほど繊細な写りになっている。

モデルの髪型も、美しく伸びた黒髪に前髪はおかっぱにカット。山口小夜子を強く意識させる風貌だ。パラッシさん自身も作品の出来栄えに満足そうだった。

今回の写真展にX1Dを使った理由は、撮って出しの写真で勝負するからこそ。ハッセルブラッドのカメラは、1枚1枚の撮影に全力を注がなければいけないと思わせる「何か」があり、すべての写真に集中できる。それを引きださせるのが、X1Dの描写力も原因の1つかもしれない。

最後にパラッシさんの今後の展望として、建築分野での撮影プロジェクトを語り、この日のトークショーは終了。その後は懇親会や撮影体験会も開かれ、高級機に触れられる贅沢な時間となった。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。