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【フォトキナ】インタビュー:「Lマウントアライアンス」の経緯と今後
ライカ、パナソニック、シグマに聞く
2018年10月2日 16:38
フォトキナ2018における発表で話題を呼んだ、業界3社による戦略的協業「Lマウントアライアンス」。この立ち上げに参加したライカ、パナソニック、シグマ(社名は公式資料での記載順)の3社に話を聞いた。
応じていただいたのは、ライカカメラAG社主のアンドレアス・カウフマン氏、株式会社シグマ代表取締役社長の山木和人氏、パナソニック株式会社アプライアンス社イメージングネットワーク事業部の山根洋介事業部長。ライカカメラAGのプロ用カメラシステムを統括するシュテファン・シュルツ氏も同席した。
——いつ頃から協業を考え始めたのですか?
山根:2017年の1月〜2月です。35mmフルサイズのLマウントを共有することについて、パナソニックからまずはライカさんに、そのあとシグマさんに打診しました。
当社とライカカメラ社は、デジタルカメラに関して17年に渡る協業関係にあります。ここ4年近くは技術アライアンスも結んでいて、その中にはLマウントに関するものも一部あります。そこで、フルサイズ機を出すなら、協業の中でライカカメラ社のサポートをいただこうと考えました。それを打診したのが昨年の1月から2月という時期です。
フルサイズ機を出すならレンズラインナップも強化しなければなりません。ライカさんやシグマさんに比べると当社はブランドの歴史も浅く、ブランドイメージも強くないため、先行する2社のようなしっかりとしたブランド力のあるメーカーと新しいフルサイズカメラシステムを作っていくには、レンズを強化していくのが条件だと考えました。
山木さん(=シグマ)は、素晴らしく魅力的で高品質・高性能なレンズをたくさん出されていて、社内に哲学がしっかりと根付いています。そんな素晴らしい会社だと聞いていたので、フルサイズ機をやるなら一緒に取り組めたらと思い、ライカさんの翌月に打診しました。
シュテファン・シュルツ(ライカ):長い協業関係にあり、技術的協業も深くやっていて、ライカからパナソニックへの信頼度は高いです。そのベースもあったので、こういうコラボレーションもできるかなと思いました。シグマについても、そのパナソニックが信頼する相手ということで、問題なくアライアンスに参加しました。
カウフマン:3社はフレンドリーな関係にありますが、それぞれは今まで通り独自に「強い商品」を出していきます。それらがLマウントを共有することで、共通システムが広がるというメリットをカスタマーに提供できます。
山根:本アライアンスでは、各社の特徴を反映しながら製品を出していけます。これがパナソニックの自前マウントだったら、市場に受け入れられないと思います。システムカメラの市場では、将来に渡ってサポートするという下地がないと支持されません。競合ではありますが、この3社でLマウントを守っていくという結束が、ユーザーの信頼獲得に繋がると考えています。
山木:各社とも互換性を保つためにしっかり話し合って、情報交換をします。セールス的にはアライアンス内で競合する可能性もありますが、他のアライアンスに比べると可能性は低いのではないかと考えています。例えばライカはドイツの会社だったり、それぞれにキャラクターも違います。
カウフマン:ライカはユニークなビジネスモデルの会社です。ライカストアのように独自の販売網も持っています。これはまったく個人的な考えですが、ライカのお店で他の2社の製品を売る可能性も考えられますし、うまくアライアンスの特徴を活かしたビジネスをしていきたいと思います。
山根:協業関係にあるとはいえ、競合会社と事業内容を共有することはコンプライアンス上許されないので、Lマウントの製品であっても他社の新製品については、その発表をもって知ることになります。
——ライカにとって、Lマウント製品が他社からも出ることに対する期待は?
シュルツ:本当に必要なものを選ぶ機会が増えるので、ユーザーメリットが大きいです。ブランドやレンズ、カメラを制限なく選べることは、業界でも今までに例がないと思います。
——この3社以外がアライアンスに加わる予定はありますか?
カウフマン:まずは3社でしっかりと築き上げます。あとはそれからです。
——レンズ専業のメーカーでもLマウントアライアンスに参加できますか?
カウフマン:はい。このアライアンスはLマウントのインターフェースを規定するだけなので、レンズとボディを両方扱っていなければいけないということはありません。
——異なるメーカーの製品を組み合わせた場合の互換性はどのように保ちますか?
シュルツ:3社でLマウントの規定を共有していきます。「フォーマットコミッティー」という会に技術者が集まって、製品の予定は話さずに、こういったパラメーターや技術が欲しい、といったやり取りをします。それを採用する製品については直接知らないまま、必要なデータだけを提供するようなイメージです。そしてそれをフォーマット化していくようなことを、十分に時間を取って行います。
山木:将来の拡張性についても話し合われます。それにはカメラとレンズの通信に使われる信号が変わったり、アップデートしていったりということも含みます。そこで共有された情報を元に、3社それぞれで製品作りをしていきます。