ニュース

パナソニック、「LUMIX S1R」「LUMIX S1」を日本初披露

カメラ/レンズの実機写真を掲載 銀座にギャラリーを開設

LUMIX S1R+LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

パナソニックは2月14日、35mmフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S」シリーズ(3月23日発売)の製品発表会を実施した。海外で先行発表されており、日本国内で初披露となる。記事後半には、会場に展示されていた実機写真を掲載している。

左からパナソニック株式会社 執行役員 アプライアンス社 副社長の渕上英巳氏、パナソニック株式会社 アプライアンス社 イメージングネットワーク事業部 事業部長の山根洋介氏。

パナソニック製品の「インプット」を担うLUMIX

発表会の最初に、パナソニック株式会社 執行役員 アプライアンス社 副社長の渕上英巳氏が登壇。パナソニックにおけるLUMIXの存在を改めて説明した。

パナソニックは2018年に創業100周年を迎え、今後のビジョンを「くらしアップデート業」という言葉で定義。その中でいわゆる家電事業を担当するアプライアンス社は、「一つひとつのくらしアップデート」をキーワードとしている。

LUMIXのデジタルカメラも、そのアプライアンス社の領域。2008年に世界初のミラーレスカメラを発売してから、「(カメラ業界の)チャレンジャーとして先端技術に磨きをかけて挑戦してきた」と振り返る。ライカカメラ社との協業は17年になり、ライカの高い光学技術および物づくりの力と、パナソニックのデジタル画像処理技術の融合で、数々の世界初を送り出してきたと話す。

ドイツのライカカメラ社との協業。
同社製品の中で、LUMIXはインプット部分の重要な役割を担う。
2008年からの歩み。
インプットの一例。HDR動画を静止画に応用した「HLGフォト」は、対応するテレビとの組み合わせでSDR比3倍のダイナミックレンジを得られるという。

2018年9月に発表したLUMIX Sシリーズは、同社いわく「静止画/動画の両面に有利」というLマウントを採用。ライカカメラ、シグマとの3社協業による「Lマウントアライアンス」に加わるというニュースも注目を集めた。将来的には、Lマウントがミラーレスカメラのトップランナーとなることを目指しているそうだ。

LUMIX Sシリーズは「プロの体の一部になる」ことを目指しており、サポート体制の充実も図る。LUMIXとしては初めてとなるプロサポートブースを東京2020のメインプレスセンターに設置することが発表されている。

LUMIX S1R/S1の概要

LUMIX S1Rを手にする山根氏。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 イメージングネットワーク事業部 事業部長の山根洋介氏が登壇し、LUMIX S1R/S1の概要を紹介した。

プロの作品づくりに使用されることを目指したLUMIX S1R/S1。絵作りはLUMIX G9 PROで訴求した「生命力・生命美」の思想を継承しつつ、フルサイズセンサーならではの階調特性などを活かして発展させた。イメージセンサー、画像処理エンジンともに新開発のものを搭載している。

LUMIX S1R/S1の本体サイズについては、山根氏も当初は「大きい」と感じたそうだ。しかし、このサイズゆえにカメラがブレにくく、操作性が高められ、高品位のEVFや防塵防滴性能も持たせられるため、"これがいい"と感じるユーザーが必ずいると信じて、まずはそこに届けたいと話していた。

LUMIX S1R(有効4,730万画素)とLUMIX S1(有効2,420万画素)の棲み分け。
マイクロフォーサーズ機「LUMIX G9 Pro」で評価を得たという絵作り思想を継承し、フルサイズセンサーならではの階調特性を活かして発展。
イメージセンサー、画像処理エンジンともに新開発。
8枚を連写合成する「ハイレゾモード」では、LUMIX S1Rで1億8,700万画素、LUMIX S1で9,600万画素の高解像記録が可能になった。
35mmフルサイズミラーレスカメラとして初の4K60p動画記録に対応。有償アップデートにより、4:2:2 10bitでのHDMIスルー出力などが可能になる。
LUMIX S1ではHDR動画、LUMIX S1Rでは8Kタイムラプス動画も。
カメラボディ側とレンズ側の手ブレ補正機構を協調させる「Dual I.S.2」に対応。高速AFと組み合わせ、暗所での撮影にも強いとアピールする。
AFは、顔・瞳と人体の検出に加え、動物(イヌ科、ネコ科、鳥類)にも対応。人体や瞳を検出しつつ、動物の検出だけをオフにすることも可能。
EVFはフルサイズミラーレス最高解像度の576万ドット。倍率は0.78倍。
記録メディアスロットはXQD/SD。CFexpressにも対応予定。USB PD高速充電や3軸チルト対応の背面モニターなども含め、今後の基本装備になるであろうポイントを押さえている。
防塵防滴に加え、-10度対応の耐低温仕様。シャッター耐久は40万回。

LUMIX SシリーズのLマウント交換レンズについては、「レンズの味というべき印象的な立体表現と美しいボケ味を実現」したといい、動画対応についても「4Kの先までも見据えている」とした。中でもハイグレードカテゴリとして提供するLUMIX S PROレンズは、ライカカメラ社の基準をクリアした証として「Certified by LEICA」を冠する。

パナソニックのLマウントロードマップ。「2020年までに10本以上を揃える」という。
ライカ、シグマとともに「Lマウントアライアンス」に属するパナソニック。
海外発表時に行われたプレゼンテーションでの各社コメント。ライカはLマウントの優位性を、シグマはカメラ史における同アライアンスのインパクトを語った。
各社の予定。
LUMIXエコシステムとして、多くのブランドでLUMIX Sシリーズアクセサリーが検討されている。期待してほしいと山根氏は語る。
プロサポートは日本・米国・欧州で始まり、今春からグローバル修理サービスを開始。

東京・銀座にLUMIXのショールーム/ギャラリーを開設

ユーザーとの絆を深めることを目的として、"写真文化のメッカ"という銀座にショールームを設置すると発表。LUMIX Sをはじめとする同社カメラ製品を体感できるほか、写真や映像でLUMIXの世界観を感じられる密度の高い空間にしていくという。これに伴い、プロサービスも秋葉原から銀座に移転してサポート体制を強化するそうだ。

4月下旬に東京・銀座にLUMIXのショールームとギャラリーを開設。

綾瀬はるかさんの写真集をLUMIX Sで撮影

LUMIX Sのマーケティング関連では、「LUMIX CHALLENGE」として女優の綾瀬はるかさんを世界各地で撮影し、10冊の写真集を講談社から出版すると発表された。

第1弾は、写真家の佐内正史氏が台湾で撮影。佐内氏にとってデジタルカメラでの撮影は初だそうで、この撮影を通じて感じたLUMIX Sの「良かった点」「改良すべき点」なども、素直なインプレッションをWebサイトで公開していくという。

「値段以上の所有感が出てくる」

「LUMIX S1R、至福の写真のため」というテーマで話す相原正明氏。

すでにLUMIX S1Rで3か月にわたり撮影を行った、写真家の相原正明氏が登壇。作品を示しながら印象を語った。

現在は「写真機」というより「情報デバイス」のようなデジタルカメラが多いと感じる中、LUMIX S1Rは所有感が高く、久々に写真機だと思ったという相原氏。フルサイズならではの階調再現で作品性が高まる点も特徴としていた。

夜間や早朝の高感度撮影でも、AF性能が高いためフレーミングとシャッターチャンスに集中でき、目の前のカメラの存在を忘れさせてくれる点がよいと評価。レンズのコーティングがしっかりしているため、逆光/半逆光のような過酷な環境で使うとポテンシャルが発揮されるという。レンズは特に50mm F1.4を高く評価し、「この50mmを使うためにLUMIX S1R/S1を選んでも損はないと思う」と語った。

また、「(LUMIX S1R/S1は)スペックに出ないところが素晴らしい」として、特にファインダーを高く評価。操作フィーリングについても「値段以上の所有感が出てくる」と好評価だった。

実機に触ってきた

発表会場でLUMIX S1R/S1および交換レンズ3本を手に取ることができた。まだ試作機の段階のため、発売まで細部のチューニングは続くという。なお、発売後に寄せられた意見を取り入れたファームウェアアップデートでの改善・機能追加も積極的に続けていきたい考え。

シャッターを切った際の動作感触は、マイクロフォーサーズのLUMIX G9 PROに通じるキレの良さがあった。音量は控え目だが、ボディの重量感・剛性感と相まって密度を感じた。

人体認識のレスポンスを試してみたところ、モデルがこちらを向いていないとき(画面内で顔が小さいか、顔が隠れている時)は人物全体にAF枠が表示されているが、顔を認識すると瞬時にマークが切り替わり、カメラに近いほうの瞳に十字のターゲットが出た。

EVFは、これまでのLUMIXから大きく飛躍した高品位な仕上がり。メガネを掛けていても全体を見渡せ、周辺部が滲むようなこともなかった。接眼レンズの設計によっては瞳の位置が少しでもズレると像が歪んでしまうものや、視度補正の度合いによって四角いファインダー像がタル型/イトマキ型に歪んでしまうものもあるため、LUMIX S1R/S1の接眼レンズはとても高品位といえる。

同社の技術担当者に聞いたところ、今回の新製品でファインダーの品位などが飛躍的に改善された背景には、LUMIX G9 PROでの経験が大いに活きているそうだ。ファインダー像に情報表示が重ならない配置など、細かく検討を重ねたという。

EVF接眼部。
USB Type-C端子から充電可能。一番上はリモコン端子。
新規のバッテリー。
同梱のバッテリーチャージャー。
電源供給にUSB Type-C端子を用いているのが珍しい。
記録メディアスロット。XQDスロットはファームウェアアップデートでCFexpressにも対応予定。
背面モニターは3軸チルトに対応。
レンズマウント。
LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.のみ、通常の10点に加えて反対側にもう2つの接点がある。これはテレコンバーター用とのこと。
LUMIX S PRO 50mm F1.4を装着。
ピントリングにフォーカスクラッチ機構を備える。
手前にピントリングを引くと距離指標が現れ、MFに移行する。
LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.装着例。
別売バッテリーグリップの装着例。
メニュー画面も再構成したという。ここでのタッチ操作はパソコンのプルダウンメニューのように「指を離したところを選択」という挙動のため、画面に触れている指を支点にしながら操作できる。
Q.MENUボタンを押したところ。あらゆる場面でタッチ操作を併用できる。
フォトキナ2018で初公開されたマイクロフォーサーズレンズ「LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7」のモックアップも展示。今回、これに関する新情報はなかった。表現力重視のSシリーズに対し、小型・機動性・スピードを磨いたマイクロフォーサーズのGシリーズも継続。両者の棲み分けを明確にしていく。

本誌:鈴木誠