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シグマ、Web配信で新製品を発表。その配信内容まとめ

ミラーレス用の超望遠"ライトバズーカ"を、商品企画部長が語る

新製品を紹介した、シグマ代表取締役社長の山木和人氏(配信画面より。以下同)

株式会社シグマは6月18日22時から、オンライン配信による新製品プレゼンテーション「SIGMA STAGE Online」を開催。本稿ではその概要をお届けする。

ミラーレス専用設計の"ライトバズーカ"「100-400mm F5-6.3 DG DN OS|C」

同社初となる、ミラーレス専用設計の超望遠ズームレンズ。35mmフルサイズ対応で、Lマウント/Eマウントを用意。7月10日発売、税別12万円。

"ライトバズーカ"を謳う小型軽量さが特徴で、手のひらに収まるように設計したという。2017年に発売された一眼レフカメラ用の「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」とは異なる新設計としている。

詳しくはこちら→シグマ、ミラーレス専用設計の“ライトバズーカ”「100-400mm F5-6.3 DG DN OS|C」

同社は現在のミラーレスカメラシステムの問題として「超望遠レンズのラインナップ不足」があると考えた。400mm以上の超望遠ズームレンズはLマウントでは初、ソニーEマウントでは純正2本を含め、本レンズが3本目としている。

本レンズは、プロや写真愛好家の高い要求に応える光学性能を標榜し、MTFや耐逆光性能の高さにも触れ、このカテゴリーで最高性能のレンズの一つと自信を見せる。

鏡筒側面にはAFLボタンやフォーカスリミッタースイッチも装備。
カメラ側の瞳AF機能に対応する。
ズーム機構は、回転式、直進式のそれぞれの操作が可能な「デュアルアクションズーム」とし、様々な撮影に対応する仕様とした。
三脚座TS-111は別売。一眼レフ用の"ライトバズーカ"には三脚座が用意されなかった。

Lマウント用のテレコンバーターとSIGMA USB DOCKが登場

この100-400mm DG DNに対応するテレコンバーターとして、1.4倍と2倍を用意。それぞれ焦点距離は140-560mm、200-800mmとなる。発売は100-400mmと同時。

詳しくはこちら→シグマ、Lマウントの100-400mmに対応するテレコンバーター

オリジナルのレンズの光学性能を極力損ねないことを狙ったといい、装着/非装着時のMTFを示した。

Lマウント用の「SIGMA USB DOCK」は、今夏の発売を目指して開発中の新製品。100-400mm DG DNの場合、MF時のフォーカス繰り出し速度を最適化できるという。価格は未定。

詳しくはこちら→SIGMA USB DOCKに、Lマウント/EF-Mマウント用が追加

APS-Cミラーレス対応の単焦点3本にLマウントを追加

APS-C対応の"DC DN"シリーズ3本をLマウントにも展開する。3本とも7月10日に発売。

詳しくはこちら→シグマ、APS-C用のLマウント交換レンズを発売

ミラーレス用ライトバズーカを"大曽根、語る。"

シグマ商品企画部部長の大曽根康裕氏。

続けて、同社商品企画部部長の大曽根康裕氏が登壇。大曽根氏は20年間にわたり機構設計エンジニアとして、同社のレンズおよびカメラの機構設計を担当。レンズ開発部門の責任者を経て2013年に商品企画開発部長となり、Lマウントアライアンスではプロジェクトリーダーを務めている。現在はWebコンテンツ「SEIN」のコーナー、「大曽根、語る。」でも知られる。

同社では1995年以降、11本のAF対応超望遠レンズを開発。「これほどの本数のAF超望遠レンズを出しているところは他にない」と語る。大曽根氏は初代となる135-400mmも担当しており、繰り出しによる100mm近い移動量やカム補正に苦労したという。

こうした超望遠レンズには開発・製造にノウハウが求められ、その蓄積がシグマの強みであると話す。最新の60-600mm|Sportsもその蓄積で生まれた。

だが、これらは一眼レフカメラ用であり、カメラ市場の約半分がミラーレスとなった今は、ミラーレス用の超望遠レンズが必要として、100-400mm DG DNは企画された。このレンズもまた、同社の蓄積が生きたレンズだと強調。ミラーレスカメラの交換レンズには、コントラストAFやウォブリングなど、一眼レフカメラ用レンズとは異なる要求がある。

ミラーレスカメラのAFは、イメージセンサーから得た様々な情報を利用できるのが特徴。大曽根氏はこれをミラーレスカメラによる"オートフォーカス革命"と呼ぶ。コントラストAFの高い合焦精度、顔検出および瞳AFが、「(ミラーレスが)一眼レフを凌駕した一番のポイント」と語る。

また、ミラーレスカメラの交換レンズは、当初から軽めのフォーカスレンズをモーターで直接動かす方式のものが多いという。"山登りAF"と言われるコントラストAFなどに対応すべく生まれた技術だが、これにはフォーカスレンズが軽い必要がある。軽いほど制御しやすく、動かす・止める、といった駆動の精度も高いという。ここで、同社がこれまでインナーフォーカス方式の超望遠レンズを開発してきたノウハウが生きたそうだ。

ミラーレスカメラの構造上メリットとして語られる「ショートフランジバック」は、一般に広角レンズの小型化に効くと知られているが、望遠レンズにもメリットがあるという大曽根氏。鏡筒内にレンズを配置できる場所が多くなることは、設計上の恩恵となる。

また、カムの動きをモーターで代用できることは、カム構造のシンプル化や広角側の最短撮影距離短縮に寄与するほか、調心機構の改良も可能となる。加えて、鏡筒のスリム化、軽量化にも効果があるという。

今回の100-400mm DG DNでは、フォーカスレンズを1枚にし、軽くできたことで、ミラーレスカメラの最新AF機能が存分に使えるようになったという。大曽根氏は特に本レンズのテレ側付近で見られる、色収差の少なさが気に入っているという。

続けて、近年のシグマにおけるフレアやゴースト対策についても紹介があった。かつてのレンズ設計では、鏡筒内部にできる限り溝を付けるなどの反射防止を施していればよかったそうだが、いまでは社内に、内面反射や面間反射をシミュレーションするゴースト対策の専門チームがあるという。

その"ゴーストバスターズ"は開発の初期段階からフレアやゴーストの検証を行い、効果的な反射防止のみならず、イメージセンサーに反射光が届かない内部形状の工夫もできるようになったという。また、試作後も様々な角度からテスト撮影を行い、可能な限りフレアやゴーストを減らす。

100-400mm DG DNと、同等スペックの製品のゴースト比較。
試作が進むごとに抑えられていくゴースト。

最後に大曽根氏は100-400mm DG DNについて、「このサイズならSIGMA fpやAPS-Cミラーレスカメラにも似合う」とコメント。ミラーレスカメラは一眼レフカメラに比べてボディが小さいことから、今回は別売で三脚座も用意したという。

こうしたスリムな望遠レンズは大曽根氏の好みであり、フィルム時代の500mm F7.2 APOを思い出すという。現在のミラーレスカメラならレンズの開放F値に関わらずファインダーが暗くならないため、こうしたコンパクトな望遠レンズが使いやすいと話した。

大曽根氏がお気に入りの、三脚座を取り付けたスタイル。

なお今回の配信内容は、後日に同社YouTubeチャンネルで字幕付きで見られるようになるという。

※6月19日11時40分:YouTube動画を記事内に追加しました。

本誌:鈴木誠