交換レンズレビュー

小さくて軽い28mm特集【第1回】ソニーFE 28mm F2

シンプルなデザインかつギミックが楽しい「お手軽αレンズの原点」

この連載では、散歩や日帰り旅行に最適なAF対応の28mm単焦点レンズを順次紹介していきます。カメラメーカー各社がミラーレスカメラ用としてラインアップする28mmレンズのうち、比較的小型軽量なものをピックアップしてみました。

今回はソニーの「FE 28mm F2」のレビューをお届けします。

外観・仕様

本レンズが発売されたのは2015年4月です。前年の2014年12月に「α7 II」が登場し、フルサイズミラーレスカメラとしての「α」が本格的に軌道に乗り出した頃でした。レンズラインナップの拡充が求められるなか、ツァイスでもGレンズでもない(当時はG Masterは未発表)、手頃な価格の「ソニーレンズ」として登場したのが本レンズです。NEXシリーズを彷彿とさせる、ストレートでシンプルなデザインにどこか懐かしさを感じます。

本レンズの外形寸法はφ64×60mm、質量は約200gです。開放F値F2という大口径ながら、このサイズは十分に小型・軽量と言えるでしょう。

シンプルなデザインで、操作系はフォーカスリングのみと簡略化されています。とはいえ、気軽に撮影する分には全く問題ありませんでした。

花形のレンズフード「ALC-SH112」はしっかりと同梱されており、最低限必要なものはサポートするという姿勢がうかがえます。

ワイド/フィッシュアイコンバーターに対応

本レンズの特徴としては、別売で専用のコンバージョンレンズが2種類用意されている点が挙げられます。どちらもレンズ先端に取り付けるタイプですが、専用設計のため描写性能は高次元に保たれています。

また、レンズ後端に取り付けるテレコンバーターと違い、開放F値が暗くなることなく、本レンズの明るさをそのまま生かせるのも利点です。本レンズの可能性を広げるアクセサリーであり、導入を検討する価値は十分にあるでしょう。

ウルトラワイドコンバーター「SEL075UWC」

レンズ先端にバヨネット式で装着することで、手軽に焦点距離21mmの超広角撮影が可能になるコンバージョンレンズです。

フィッシュアイコンバーター「SEL057FEC」

同じくバヨネット式でレンズ先端に取り付ける製品。こちらは対角180°の魚眼撮影が楽しめます。

作例

風景を撮るためF8に絞って撮影しました。画面の隅々まで解像しており、完璧といいたくなる素晴らしい描写です。強い光源である太陽を構図に入れていますが、逆光への耐性が高く、描写に破綻がありません。GレンズやG Masterが賞賛される現在ですが、このような標準の「ソニーレンズ」の実力にも改めて目を向けたくなります。

ソニー α7C II/FE 28mm F2/絞り優先AE(1/320秒、F8.0、+0.7EV)/ISO 100

「α7R V」の被写体認識AFを生かした作例です。「AIプロセッシングユニット」の搭載により、人物や動物に対する瞳AFの追従性は非常に高く、本レンズでもその恩恵を十分に得られます。最新レンズのような超高速リニアモーターは非搭載ですが、フォーカス群の移動量が少ないため、AF速度が問題になる場面はほとんどありませんでした。

ソニー α7R V/FE 28mm F2/絞り優先AE(1/50秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 100

最短撮影距離はAF時で0.29m、MF時で0.25mです。 十分な性能ではあるものの、一眼レフ時代の28mmレンズと比較して、特に近接撮影性能が高いというわけではありません。10年前のフルサイズミラーレス黎明期に発売されたこのレンズ。驚くほど寄れるわけではありませんが、自分の使い方では被写体に十分近づけると感じました。

ソニー α7C II/FE 28mm F2/絞り優先AE(1/80秒、F5.0、−0.3EV)/ISO 400

まとめ

躍進を続けるフルサイズ対応αレンズのなかで、明確なブランド名を持たない本レンズ。さらに専用のワイドコンバーターまで用意されている点を考慮すると、いまとなっては特殊な位置づけのレンズと言えるでしょう。

ミラーレスカメラ用レンズとして10年の歴史を持つという点は、特に注目に値します。そこには、現代のレンズでは失われつつあるかもしれない、実直な魅力が宿っているように感じられます。実際に使用して、どこか懐かしい本レンズならではの良さを強く実感しました。価格も含め、標準的な「ソニーレンズ」が持つ素直なキャラクターも、魅力の1つといえるでしょう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。