インタビュー

EOS Rと同時発表された「RFレンズ」の実力とは

4本すべてを撮影したフォトグラファーに聞く

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF24-105mm F4 L IS USM / 105mm / 絞り優先AE(1/1,000秒・F4.5・-1.7EV) / ISO 100

キヤノンからついに登場したフルサイズミラーレスカメラ「EOS R」。期待の新製品とあって、すでに手にしている読者もいることだろう。

このインタビューに登場いただく南雲暁彦さんは、キヤノン製品の公式作例の数々を撮影しているフォトグラファー。EOS Rもいち早く手にして、海外で撮影を重ねたという。同時発表の4本のRFレンズについてもすべて使って作品を納めたそうだ。そんな南雲さんに、EOS Rシステムの印象、そしてRFレンズの実力についてきいてみたのがこのインタビュー。EOS Rの新しい挑戦と新レンズの実力を感じ取ってほしい。(聞き手:豊田慶記)

10月25日に発売されたキヤノン初のフルサイズミラーレスカメラ「EOS R」。実勢価格は税込26万円前後。

南雲暁彦さん。EOSシステムの作例をキヤノンから依頼されて撮影するフォトグラファーだ。EOS Rについても発表前よりいち早く撮影している。

南雲暁彦

1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。1993年、日本大学芸術学部写真学科卒業後、凸版印刷株式会社入社。TICフォトクリエイティブ部所属。凸版印刷「匠」の称号を持つチーフフォトグラファー。光学機器メーカーのプロモーションなどコマーシャルフォトを中心に写真、映像制作に従事。イベントや大学などでの講師も行う。また海外での撮影を得意とし、世界約300都市での撮影実績を持つ。知的財産管理技能士。日本広告写真家協会(APA)会員。長岡造形大学非常勤講師。


EOS Rの新しい操作系について

——EOS Rには、いままでのEOSとは異なる新しい操作系(例えばマルチファンクションバーやコントロールリング)が採用されています。それらの新しい操作系に対してどんなことを感じましたか?

EOS Rを使って感じたことは「左手の仕事量を増やそうとした設計になっている」ということです。逆にいえば、右手は仕事量を減らすことができます。EOSの象徴である背面ダイヤルがない。マルチコントローラーもなく、右手親指の移動量が減っている。左手はズームとピントとコントロールリングと担当が増えている。これはFDからEFになった時と同じくらいのインターフェイスの変化といえるでしょう。EOSを捨てて、新しいEOSを作ろうとしているように感じました。

EOS Rの背面。

——新しい操作系にどんな機能を割り当てましたか?

あまりにも「EOS」を越えたインターフェイスになっていたので、僕はいったん「何も割り当てない」ところからスタートしました。そうしてEOS Rの自分にあった操作性を見つけていきました。最終的に、マルチファンクションバーに割り当てて便利だなと思ったのは撮影画像の拡大縮小です。コントロールリングについては、露出補正やWBの変更を割り当てました。

RF35mm F1.8 MACRO IS STM

——EOS RとRFレンズで撮影してみて、一番のお気に入りレンズはどれですか?

今回登場した4本のRFレンズはどのレンズも全て個性が際立っているので、どのレンズが一番お気に入りか?というのは簡単には答えられません。しかし、使用してみて楽しかったという理由で常用的にEOS Rに装着していたのがRF35mm F1.8 MACRO IS STMです。

RF35mm F1.8 MACRO IS STM
発売日:2018年11月15日 / 希望小売価格:7万5,000円(税別) / レンズ構成:9群11枚 / 絞り羽根枚数:9枚(円形絞り) / 最小絞り:F22 / 最短撮影距離:0.17m / 最大撮影倍率:0.5倍 / フィルター径:52mm / 最大径×長さ:74.4×62.8mm / 質量:305g

RFレンズ4本のうちこれだけLレンズではないので、あまり目立たないように感じますが、実際に使ってみるとすごく良くできていることが実感できます。例えばレンズの質感もLレンズに見劣りしないし、描写ももちろん良いです。絞り開放から安心して使えるレンズになっています。

この作例では砂漠の水晶の真ん中の芯とその線上にピントを合わせていますが、撮影時はピントがとてもよく見えることに驚かされました。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF35mm F1.8 MACRO IS STM / 35mm / 絞り優先AE(1/500秒・F4.5・-1.0EV) / ISO 100
撮影:南雲暁彦
EOS R / RF35mm F1.8 MACRO IS STM / 35mm / 絞り優先AE(1/1,250秒・F4.0・-0.3EV) / ISO 100

——このレンズをつけると、EOS Rが一眼レフカメラと比べてコンパクト化したことが感じられる組み合わせだと思いませんか?

確かにミラーレス化によるダウンサイジングを実感できる組み合わせですね。見た目のマッチングについてもとても良いように思います。

——私も今回登場した4本のRFレンズを全て実写していますが、一番好きだったのはRF35mm F1.8 MACRO IS STMでした。とにかく使いやすく感じました。EOS Rの絵作りの進化と併せて、とても使いやすい。IS(手ブレ補正)も効きが良いですよね。

そういう意味で「優しいレンズ」ですね。普通の人が使おうとする場合に手ブレ補正は必須の機能になっていて、いまスマートフォンですら手ブレ補正が入ってますからね。

そういう、ユーザーに「優しいシステム」がスマホになります。一眼システムカメラらしさを画像でアピールしつつユーザービリティではスマホと勝負しないといけない。だから、RF35mm F1.8 MACRO IS STMは「小さい」というのが武器になるし、「寄れて・明るい」というプラスαが明確ですね。僕はこの類のレンズがもっと充実して欲しい。RFレンズにも50mmのマクロや、もう少しワイドのマクロも欲しい。

——分かります! 僕も24mmや28mmくらいの焦点距離でF1.8で寄れるレンズが欲しい。

マクロレンズというのはほとんどの撮影者の欲求を満たしてくれるレンズだと思います。普通の一眼レフカメラのレンズや大口径レンズで撮影すると、ある程度離れて撮ることになりますよね。かたやスマホだとガンガン寄れる。このレンズなら明るいし寄れる。マクロなのにF1.8の口径比がある。なのでユーザビリティが高い。

——価格についてはどう思いますか?

性能を考えれば安いですが、まぁ迷ったらコレ買っとけば? というレンズですね。RFになってからレンズの質感が良くなって操作性も含め高級感がましている。だから6万円だして「高いな」と不満を感じることは無いと思います。

RF24-105mm F4 L IS USM

——では標準ズームレンズともいえるRF24-105mm F4 L IS USMについてお話を聞かせてください。

描写性能はEF24-105mm F4L IS II USMと同等ということでしたが、EOS Rからは画像設計のシャープネスの考え方が少し変わっていますので、撮影してみると総合力で描写性能が進化していることがすぐに分かりました。例えばEOS 5D Mark IV + EF24-105mm F4L IS II USMのセットと、EOS R + RF24-105mm F4 L IS USMのセットで同じものを撮り比べると、やはり違う。EOS Rのセットの方がシャープネスがより繊細になっていると言えば伝わりやすいでしょうか。コントロールリングのような新しいギミックも装備されたにも係わらず、小型化されたことも実感できます。

RF24-105mm F4 L IS USM
希望小売価格:15万5,000円(税別) / 発売日:2018年10月25日 / レンズ構成:14群18枚 / 絞り羽根枚数:9枚(円形絞り) / 最小絞り:F22 / 最短撮影距離:0.45m / 最大撮影倍率:0.24倍 / フィルター径:77mm / 最大径×長さ:83.5×107.3mm / 質量:700g

仕事で使うとしてEOS Rシステムでどのレンズを初めに選べばいいの? と聞かれれば、EFと比べて小さくなっていますし、描写や使い勝手など総合力でもシステム刷新の恩恵を最も感じられるRF24-105mm F4 L IS USMが安心して使えるレンズだ、と答えられます。言うなればEOS Rの”標準レンズ”ですね。

——EFと比べて進化や改善を感じられるところや、反対にEFの方が良かったと感じるところなどあったら教えてください。

EOS RとRF24-105mm F4 L IS USMの組み合わせで、今までの機材と比べて何が一番変わったのか? ということを考えた時に、それは空撮の時の使い勝手かな、と思ったんですね。今回このレンズを一番使ったシーンはナミビアの空撮でした。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF24-105mm F4 L IS USM / 53mm / 絞り優先AE(1/640秒・F10・-1.3EV) / ISO 200

ここは高さ300mの世界最大の砂丘で、日の出と日の入りの時間だけこういったコントラストを見せるんですね。

ヘリで空撮するにしても、一瞬しかこのアングルで撮れないんです。キヤノンのオフィシャルフォトはノートリミングが必須で空撮のような限られた撮影ではチャンスは逃せない。しかも基本的に振動している上、ドアから身を乗り出して撮るため、風の中に身とカメラを晒して撮影することになります。その中ではちょっとしたこと、例えばレンズの大きさとか握りの良さや、フードの造りなどが重要です。そういった極限の状況では「持ちやすさ、握りやすさ、レスポンス」といったものが大切です。

そうした中で最もマッチした組み合わせがEOS RとRF24-105mm F4 L IS USMだったということです。明らかにEOS 5D Mark IVの時よりもやりやすかった。だから撮りたかったアングルで、満足のできる写真が撮れました。本当に一瞬の世界です。手の中に収まってコントローラブルになり、撮りやすく纏まっているからこそ可能だったのです。そういう意味での、カメラとレンズのバランスも大変重要だと感じます。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF24-105mm F4 L IS USM / 105mm / 絞り優先AE(1/200秒・F8・-1.7EV) / ISO 100

あと、RFレンズをしばらく使ってからEFレンズを触ると、ちょっと世代の古いものを触っている感じがします。グリップ感やピントリングの操作感など、新しいものはちょっとずつ良くなっていますね。

——わかります。僕は使ってみてピントリングとズームリングの距離が近すぎると感じました。慣れるまではちょっと使い難いな、と。

もちろん新しいものにチャレンジするとそれなりに弊害も出ます。本来、レンズの鏡筒にあって良いリングはピントリングだけだと思うんです。ズームリングがあるだけでも煩わしい。なのにコントロールリングもついて、合わせて3つのリングがある。しかも配置が近いじゃないですか。これ絶対間違えますよ、最初はね。ある程度使いこまないといけない。少し段差がある方がズームリングで、段差が無いのがピントリング、ローレットパターンの違うのがコントロールリング……というのを身体が覚え込まないと間違える。もうこれは使いこなしの部分で、最初から馴染むものはないと発言しているのはそういうことです。

チャレンジしていないものには進化はありません。出たばかりのこのシステムは完成形ではないですから、新しい機能を付けてみて評価を聞こうというキヤノンの姿勢に興味を覚えます。今後どんなシステムになろうとしているのか? どれだけ新しいことにチャンレンジしているのか? に着目したほうが楽しいじゃないですか。

今まで撮れなかったものが撮れるようになり、良い機材を使えば誰でもクオリティの高い画質を得ることができるようになった。だからプロは新しいものを使って新しいものを生み出していく。技師として使いこなすことで新しいビジュアルにチャレンジする。そうしてプロとしての立場を守っていかないと取り残されていくことになります。

RF24-105mm F4 L IS USMを装着したEOS R。フルサイズEOSで慣れ親しんだ標準ズームシステムが実現する。

——EF24-105mm F4L IS II USMにマウントアダプターを付けて使う読者は多いと思います。

II型が出て日も浅いので「まだ使いたい」と思っている人がいらっしゃるでしょうね。高いレンズですし。それにRFと比べてEFレンズでもほとんどのシーンで遜色なく撮れると思います。

でも僕みたいにレンズの長さ1cm、2cmの違いが写真に影響するって人はRFを買ったほうが良い。振り回して撮るとかそういう人は、ほんの少しのことで撮影の精度や疲労感が全然変わってきます。マウントアダプターを付けて1日中撮影していると、もう全然変わってくると思います。

RF28-70mm F2 L USM

——ではRF28-70mm F2 L USMの印象を聞かせてください。

初めて触れた時は戸惑うと思います。ズーム域が狭く、どう使っても28-70mmは28-70mmでしかない。そういう視点で使っていると、明るいことは明るいですが、ただただ重くて使うのが辛いだけです。

僕も正直最初に一番苦戦するレンズだなと思いました。依頼を受けてレンズの説明を聞いて、開放F値が大きくて、絞り開放からシャープなので天体を撮りたいという話がありました、ただ天体を普通に撮るならもっと広角側が欲しい、それでちょっと変わった撮り方もしてみました。

RF28-70mm F2 L USM
発売時期:2018年12月下旬 / レンズ構成:13群19枚 / 絞り羽根枚数:9枚(円形絞り) / 最小絞り:F22 / 最短撮影距離:0.39m / 最大撮影倍率:0.18倍 / フィルター径:95mm / 最大径×長さ:103.8×139.8mm / 質量:1,430g

クイーバーツリーというナミビアにしかない変わった樹で、星の形をした葉っぱを持っている。それで葉っぱにガリガリにピントを合わせて星を贅沢にも背景ボケに使ってみました。バリアングルモニターを使って地面すれすれから撮っています。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF28-70mm F2 L USM / 28mm / マニュアル露出(30秒・F2) / ISO 3200

実はEOS-1Ds Mark IIIの作例の時も同じナミビアで撮っています。そのため、EOS Rの撮影時は「どれだけ進化したのだろう?」と期待していました。当時はバリアングルモニターではなかったため、今回のようなアングルの写真は非常に苦労しました。カメラの高感度画質も全然良くなっている。

でもそういった条件に加えて、明るくて絞り開放から周辺まで画質の良いレンズでなければこういうギリギリの表現は難しい。絞りを開けられるからシャッター速度が稼げる。描写についても単焦点レンズと同じか、並の単焦点レンズを凌駕する描写力をもっています。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF28-70mm F2 L USM / 45mm / 絞り優先AE(1/800秒・F2) / ISO 100

つまり、28mmから70mmまでのそれぞれの焦点距離の、開放F2の高画質単焦点レンズを持ち歩いている、という視点が生まれます。例えば「単焦点レンズでじっくり狙って撮る」というスタイルの人にもオススメできます。単焦点派が使うズームレンズというか、そういう意味で、撮影していてとても面白かった。いままでと違うアプローチができるズームレンズです。

スタイルとして、パッと持った時にすぐ馴染むというものではないので、そこはフォトグラファーが合わせていく、つまり使いこなしていく必要がある。つまり使いこなせる人のためのレンズ、と言えるかもしれません。

RF50mm F1.2 L USM

——RF50mm F1.2 L USMについての印象を聞かせてください。

50mm F1.2というスペックはEFでもありましたが、RFではレンズの性格付けが180度変わっています。レンズの設計思想が著しく変わったなというのをまざまざと見せつけてくれたレンズですね。EF50mm F1.2L USMは太くて短いけど、あれより細くて長い。何これ? と思ったんですよ。

RF50mm F1.2 L USM
発売日:2018年10月25日 / 希望小売価格:35万1,000円(税別) / レンズ構成:9群15枚 / 絞り羽根枚数:10枚(円形絞り) / 最小絞り:F16 / 最短撮影距離:0.4m / 最大撮影倍率:0.19倍 / フィルター径:77mm / 最大径×長さ:89.8×108mm / 質量:950g

キヤノンに聞いたら光学の主点をレンズの前方に出した。最新の設計思想がこういう方向性だとのことで。それにしても立派だなと思いました。質感も凄く良くなってます。とてもチャレンジングなレンズです。

EF50mm F1.2L USMは絞り開放にするとすごくキレイな水の中で覗いているかのような、瑞々しいボケ感というか、掴めるような空気感というような描写をするレンズです。多分「ボケ」が好きな人はハマるレンズです。ピントの芯を立てないシーン、例えば動画などに適したレンズだと言えます。ただし、甘い部分もあって、カチッとした描写が欲しいと思っても、絞りを開けていると期待通りのシャープネスは来ないので、少し絞り気味で撮影しないといけない。どちらかと言えば「味」を重視したレンズです。

RF50mm F1.2 L USMは? というと、絞り開放で使った時のピント面のシャープネスは最強。僕はこのレンズ以上にカチッと写るレンズをまだ見たことがありません。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF50mm F1.2 L USM / 50mm / マニュアル露出(1秒・F2.5・-1.0EV) / ISO 100

この50mmの風景写真で画面全域をシャープに撮影してみようと思いました。普通は回折現象と収差低減、被写界深度のバランスでF8ぐらいがバランスのピークになることが多いのですが今回はほとんど絞っていない。

——おぉ……周辺部までカリカリに写ってますね。スゴイです。

被写体との距離が遠い場合、絞って被写界深度を稼ぐ必要な実はあんまりないのですが、収差とか周辺画質の甘さとかも考えてとりあえずF8っていうのが多かった。RF50mmF1.2は開放から周辺に到るまでシャープ、この距離ならF2.5で橋自体は被写界深度の中に入ったのでこの絞りで撮影しました。F2.5と言ったら普通のレンズの開放より明るい普通は周辺画質とか収差とか怖くて使いませんが、ご覧の画像が取れています。シャッタースピードも速く出来るメリットもでてきます。このような撮り方をするとピント面の平坦性も良くなっているのも実感できました

とにかく絞り開放を積極的に使えるんです。画角や開放口径のスペックこそ今までと変わりませんが、既存のレンズの焼き直しというわけではなく、明らかに世代が違っていて新しさを実感できる。使ってみてビックリした1本です。

撮影:南雲暁彦
EOS R / RF50mm F1.2 L USM / 50mm / マニュアル露出(1/30秒・F1.2・-0.3EV) / ISO 400

——ボケ味はどう思いましたか?

焦点距離なりといいますか、85mmや100mmなどと比べてボケそのものは小さいですが、ピントのピークが立っているので、その分ボケもはっきり感じるんです。それでも35mmとか50mmって絞り開放で撮っても背景がボケすぎないので、何が写っているか分かるんですね。だから街の中を夜に絞り開放だけで撮ってみると、本当に絶品。街の雰囲気を内包している。そういう意味では本当に良い。85mmみたいに「大きくボケてスゲー」という感じではなくて、その場所の雰囲気をボケが包んでいる。

——僕も使ってみて、ヌケの良さと絞り開放からカリカリにシャープなところが印象的でした。仕事でたくさんのレンズを評価してきましたが、僕の中では最高の50mmです。

僕も買えれば欲しいんですけれど、こっち(RF35mm F1.8 MACRO IS STM)を買いました(笑)。でも50mmの中では久しぶりにビビッと来たというか「これだ!」みたいなモノがありました。

——普通の対称光学系の50mmも欲しくないですか?

そうそう! 広角系でそういうのが出てくるといいですね。対称光学系のデメリットでは周辺光量落ちが主な事だと思いますが、周辺光量が自然に落ちるレンズって魅力的ですよね。スマホでソフト的に落として使っている人もいるくらいで、でも光学的に綺麗に落ちるのってレンズの味としてはすごくいい、直そうと思えば逆にソフト的に補正できるし。

鋭い提案の新システム レンズラインナップにも期待

——システムとしてのEOS Rは、ライバル機と比べてどんな特徴があると思いますか?

今回登場した他社のフルサイズミラーレスカメラを見てみると、ここまで革新的な変化を求めたメーカーはキヤノンだけです。それ以外のメーカーはスタンダードな操作系でコンサバティブ。いままでの一眼レフカメラの良さを組み込んだミラーレスカメラを提案をしているように見えます。EOS Rは完全にEOSをブチ壊している(笑)。そこにEOS Rの面白さを感じます。

だから登場したばかりのEOS Rを前に使いやすいとか使いにくいといった話をするのではなくて、完全に新しいものとして使いこなして、自分自身を馴染ませないといけないと思います。

プロが「馴染む」と言っているのは、限界まで使い込んで身体に染み込ませた上で「馴染む」と表現しているのであって、新しいものに対してパッと使ってみて使いやすいから「馴染む」と表現しているのではない、というのは多くの人に理解してほしいところです。

僕の撮影スタイルとして、どんなカメラが来てもすぐに使いこなせるようにしていますので、EOS Rのような新しい提案は結果オーライというか、とても楽しめます。自分の好みから外れすぎてもないし、今後自分好みの方向に変化する可能性も秘めている。違った視点に立ってみると、操作系が進化してない道具を使うということは、撮影者の進化も写真の表現の進化も期待できない、という見方もできます。新しいものを使って、どういう撮影スタイルを生み出していくのか? という事を考えることで表現も進化するからです。今までの焼き直しでは面白くないですよね。

多分、やってみてダメだと思えば、次のカメラで採用されてないものもあるかもしれない。でも、その次には必ず新しい提案をしてくる。その可能性が高いのがキヤノンだと思います。

EOS Rはスタートであって、ゴールではないので、まだ全てを語るようなものでは無いと思います。それよりもRFレンズは今回のラインナップが凄かったので、カメラももちろんですが、それ以上にこれからのレンズの展開にワクワクしています。

制作協力:キヤノンマーケティングジャパン

豊田慶記

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。