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画期的なコンセプトが光る ソニー「DSC-T700/T77用」水中ハウジング

~機能と薄さを両立。こだわりをデザイナーに聞く

水中ハウジング「MPK-THG」(左)とアクティパック「APK-THA」。どちらもDSC-T77、DSC-T700で使用可能
 最近のコンパクトデジタルカメラは、各社が専用の水中ハウジングを用意していることから、手軽に水中の写真を撮影できるようになった。ダイビングなどで本格的な水中写真を楽しんでいる人も多いと思う。

 また、これからの季節、海外リゾートでシュノーケリングなどを楽しむ際、手持ちのデジタルカメラで気軽に水中写真が撮れないかと思案している人もいるかもしれない。

 そうしたなか、ソニーが9月に発売したコンパクトデジタルカメラ「サイバーショットDSC-T77」と「同DSC-T700」専用の水中ハウジング「MPK-THG」(2万4,150円)は、従来のイメージを打ち破るデザインに仕上がっている。


ソニーDI事業部周辺機器ビジネス部門 商品企画部1課の山崎暁史氏(左)と、デザインを担当したソニークリエイティブセンター コンスーマープロダクツデザイングループ PIデザインチームシニアプロデューサーの石井大輔氏
 今回、新型ハウジングの商品企画を担当したソニーDI事業部周辺機器ビジネス部門 商品企画部1課の山崎暁史氏と、デザインを担当したソニークリエイティブセンター コンスーマープロダクツデザイングループ PIデザインチームシニアプロデューサーの石井大輔氏にコンセプトやデザインのポイントなどを伺った。


DSC-T700 DSC-T77

水中ハウジングのデザインに革新を

新デザインは黒を基調にしたメカ的なデザイン
 これまでの水中ハウジングといえば、“丸みをもったプラスチックのケース”という印象で、洗練されたカメラのデザインに比べてどこかおもちゃ的な印象があった。形成が容易で部品点数も少ないため、コスト面で有利だったからだ。

 一方今回のMPK-THGは、耐圧水深40mに対応しながらも、従来モデルから大幅に厚みを減らしたことで、無駄を省いた外観になった。黒を基調としたデザインもいっそう道具感を高めている。

 DSC-T77といえば本体の厚さが15mmと、光学式手ブレ補正搭載モデルとして世界最薄を謳い話題となったカメラ。「水中ハウジングも薄くしなければならない」と、サイズを縮めていったという。

 一般的にこうした水中ハウジングはポリカーボネート製だが、レンズ部分は画質を確保するためにガラスを使用する必要があった。従来のモデルではそうした部分が突出しており、あまりスマートとはいえなかった。


従来モデルの「MPK-TH」
(DSC-T300用、右)との比較。小型化を図っている
従来モデルは厚みに加えて、突出部が多かった

新モデルでは、“おもちゃっぽさ”を感じない
 今回は、ハウジングの前面に大きな強化ガラスを埋め込むことで、デザイン性の高さと薄型化を両立させた。石井氏がとくにこだわった部分の1つだ。

 米国で開催しているダイビング用品のイベント「DEMA SHOW 2008」で公開したところ、来場者からは、ハウジングに入れたデジタルカメラではなく、こうしたデザインの水中カメラではないのかという声も聞かれたほど。コンパクトさに大きな反響があったという。

 しかし、変ったのは大きさと外観だけではない。石井氏が「水中でいかにアクセスしやすくなるかを考えた」と述べるように、細かい部分にまで使いやすさの工夫を施している。

 シャッターレバーは従来モデルが真横に伸びていたのに対し、手前に曲げたことで押しやすさが向上した。また背面の操作ボタンは、台形のボタンを互い違いに配置している。さらに、キートップも斜めに仕上げた上、これも互い違いの方向にカットにすることで、限られたスペースでの押しやすさを確保した。


金属感を強調したデザインを随所に施した。シャッターレバーは、背面に曲げたことで押しやすさが向上 背面ボタンは、台形を互い違いにすることで、水中での操作性に配慮

右はデザイン初期の検討用モックアップ。デザインの方向は、早い段階で決定していた
 自身スキューバダイビングが趣味という石井氏は、デスクにダイビング用品を置いて眺めながらデザインを検討していったという。「ダイビンググッズ自体が持つ機能性といった要素を反映したデザインにしたかった」(石井氏)。

 前面カバーに滑り止めとなるシリコンラバーを装着したのも、機能を反映させたデザインの現れ。実は前面の“SONY”ロゴや“Marinepack”などの文字部分は蓄光になっており、水中で光る。このあたりは、ダイバーズウォッチのデザインがヒントになっているとのこと。


バックル部分もダイビング用品を参考にした意匠になった 前面の文字部分に蓄光塗料を採用。水中で光る

 MPK-THGではバックル部分(ロック機構)をハウジングに埋め込むデザインを採用した。薄くなったことと合わせて、ダイバーからは「BC(ダイビングジャケット)のポケットに入る」と好評という。というのも、ストラップを持って海中を移動すると、知らず知らずのうちに岩などにぶつけてしまうことも多い。ポケットに入ることで、水中から上がる際も両手が自由になるので動きやすい。

 前面の強化ガラスやシリコンラバーなどを始め、部品点数が増えたことでコストは増えているが、価格は従来モデル(MPK-THF)から据え置いている。


内側も極力無駄なスペースを省いた 背面ボタンは、レバーでカメラのタッチパネルを押す仕組み

形状の異なる2つのカメラに対応させるため、アタッチメント式を採用。カメラに合わせて一方を装着する DSC-T77と同T700では、ズームレバーの位置が異なるため、アタッチメントで位置を変換している。「設計者が相当苦労して考えました」(山崎氏)

水中モードで自然な色を再現

 DSC-T700、DSC-T77とも、水中でより自然な色味を再現できる「水中モード」を搭載している。水中ハウジングをつけて潜るときはこのモードを使用することで、水中で撮影した写真特有の緑かぶりなどを低減できる。

 同社の水中モードは、ホワイトバランスを最適にするだけでなく、RGBレベルでの色調整なども行なう。実際に数多くの水中写真をサンプルにして、色再現のシミュレーションを行ない、アルゴリズムを決定している。

 以下に水中モードを使用した場合(左)と、プログラムモードで撮影した場合(右)の比較写真(いずれもソニー提供)を掲載したのでご覧いただきたい。水の色を青くすることが可能だが、主被写体は青くなりすぎない。


水中モード プログラムモード

水中モード プログラムモード

水中モード プログラムモード

 フィルムカメラで水中写真を取るにはある程度の技術が必要だったが、デジタル時代になってほぼオートで撮影可能になった。“水中写真は難しそう”というイメージもあるが、試してみるともっと気軽に楽しめるはずだ。


簡易的な防水需要にも応える

APK-THA
 一方、本格的な潜水はしないがプールや浅瀬などで使用したいといったニーズに応えるのが、アクティパック「APK-THA」(7,350円)だ。

 こちらも、DSC-T77とDSC-T700の両機種に対応する。厚さ31mmという薄さで、水深1.5mまで使用できる。「簡易でよいので防水が欲しい、というニーズに応える製品。価格も抑えました」(山崎氏)。

 MPK-THGと同様に、黒系をベースにしたカラーとなっているが、収納したカメラのボディカラーが透けて見えるように工夫した。さらにミラー状のドットを配するなど、見る楽しさも付け加えた。

 アクティパックは水中以外にも、水しぶきがが掛かる場所や降雪のなかといったケースにも適している。これからの季節、海外リゾートのお供に、あるいはウィンタースポーツに持ち出すのもいいだろう。


前面にミラー状のドットを配置し、デザインのアクセントにした DSC-T77(右)の薄さを活かしたサイズに仕上げている


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/acc/acc.html?cat=0
  トニー・ウーが撮る水中の世界
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/acc/underwater/
  DEMA SHOW(英文)
  http://www.demashow.com/dema-show-2008.html

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( 本誌:武石 修 )
2008/12/18 15:15
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