デジタルカメラマガジン

風景といっしょに猫を写すには? 雲の動きを活かして風景を撮るには?

デジタルカメラマガジン2月号特集より

デジタルカメラマガジン最新刊「2016年2月号」は1月20日発売。価格は税別1,000円

1月20日発売の最新刊「デジタルカメラマガジン2016年2月号」の特集1は、「写真家50人のレンズテクニック」です。焦点距離別に各レンズの使いこなしを様々な被写体で解説します。ここではその中から2つのテクニックを採り上げます。

「写真家50人のレンズテクニック」では、超広角レンズから超望遠レンズ、マクロレンズや大口径レンズに至るまでの撮影テクニックをイラストや比較写真を交えて解説します

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【標準:35mm】ほどよい画角で背景を入れて、ネコのいる街の様子を伝える

(写真・文:内山晟)

村の中央部にある広場、そこにはネコも来るし人も来る。かつて、馬車が羽振りをきかせていたころの名残であろう水飲み場は皆の憩いの場所となっているのだ
ニコンD750/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/35mm/絞り優先AE(F3.2、1/800秒、±0EV)/ISO 160/WB:オート
35mmの画角で距離を詰めて想像できる程度に背景をぼかす

南仏プロヴァンスでネコを追った。プロヴァンス・リュブロン地方の村は石畳の細い道や階段が多く車は入り込めない。だから、ネコたちは自由気ままに歩き回っている。ネコたちは人見知りすることなく、すり寄って来るネコに良く出合う。

しかし、ここのネコもネコはネコ、単にネコをアップで撮ってしまっては、日本で撮ってもプロヴァンスで撮っても変わりなくなってしまう。そこで、この地方の特徴として石造りの家々のブルーに塗られたドアや窓枠、村の広場にある小さな水飲み場や石畳をネコとともに写真に写し込むことに努めた。

必要なのは標準ズームレンズだ。標準域で視野に近い35mmを使ってネコに近付けば、ほどよく背景を入れて撮影できる。上の写真では、水飲み場に現れた1匹の子ネコにぐっと近付いて、プロヴァンスらしい雰囲気を取り込んで撮った1枚。

絞り込めば街の様子はもっと写るが、ネコが背景に埋もれてしまうので、開放に近いF3.2で、背景を想像できる程度にぼかした。

【望遠レンズでは背景の情報がなくなる】
望遠レンズ(145mmで撮影)では被写体はくっきりするものの、背景が狭く、ボケが大きくなりどこで撮ったかわからない
【ネコを隅に配置すると街が広く見える】
レストランなどが軒を連ねる街中にもネコはいる。ネコを片隅に配置すれば、街の雰囲気を広く表現できる
ズーミングと撮影距離で背景のバランスを調整

1日1万歩以上歩いてネコを探さなければならないので機材の軽さがものをいう。カメラはD750のフルサイズだからレンズもAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRを選んだ。ズームレンズの良さは、被写体の位置に応じて背景を自由に切り取れることだ。

近寄ることの難しい野生動物と違って、ネコは人慣れしているので、被写体と好きな距離を保ちながら撮影できる。ズーミングと撮影距離の両方をコントロールして、被写体と背景が最適なバランスになるようにした。

【ネコ目線で背景を選びながら撮影】
ネコを見つけたらまずは1枚。次いでネコを驚かさないように静かに動いてネコ目線の低さにしゃがみ込む。背景にも気を配り、ネコの住む街の雰囲気が出るように努めた。1枚の写真を見て、どこで撮ったかがわかるようにしたい
【ニコンAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR】
強力な手ブレ補正機構が付いている。ネコを撮るときの基本はネコ目線で地面に寝そべったり、屈み込んだりすること。そんな不自然な格好でも手ブレがしないから気楽にシャッターが切れる(実勢価格:27万9,000円前後)

【望遠:174mm】雲の動きを生かして迫力のある風景を表現する

(写真・文:木村琢磨)

岡山県の高倉山から望む雲海。雲海が強風にあおられ、まるで生き物のようにうねりながら山の表面をはっていた。ライブコンポジットで1/2秒を120枚分の60秒間撮影して雲海の動きを表現した
OLYMPUS OM-D E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/87mm(174mm相当)/マニュアル露出(F14、1/2秒)/ISO 100/WB:晴天
F14まで絞り込むことで雲海のうねりとなめらかさを出す

雲海を撮影するときは、ただ雲海だけを撮影しても比較対象となる要素が少ないため、いまいちスケール感や奥行き感が伝わりにくい。そのため必ず比較対象物を画面に配置している。

今回は画面の中に鉄塔を配置することで雲海のスケール感が増して力強さが出た。雲海は全体を写しても絵になるが、望遠レンズで必要最小限の部分を切り撮ることで、より一層、撮りたい物を主張することができる。

雲海の動きを出すために絞りはあえてF14まで絞って、シャッター速度を1/2秒まで遅くしている。回折現象も多少出るが逆にそれを利用してディテールを柔らかくしている。

望遠レンズでは雲海のような被写体の動きを生かした作品を撮りやすい。代わりに手ブレの影響も受けやすいので三脚を使ったり、手持ちなら高感度にすることをオススメする。

【雲海はアップにしないと迫力が出ない】
雲海の広がりを出そうと約100mmの焦点距離で撮影。山や地形の光景は伝わるが、風にあおられた雲海の迫力は伝わりにくい
【絞らないと雲のうねりが感じられない】
絞り込まずに撮影(F5.6、1/15秒)すると雲海の流れが止まってしまい、撮影時に感じた風の強さや雲海のうねりが感じられない。絞り込んで雲を流すとダイナミックさが出てくる
倍率の高いズームで荷物の量を減らす

80-300mmをこれ1本でカバーできるので、あとは標準ズーム1本あれば装備は十分。このレンズを使うポイントはなんといっても機動力。望遠側で雲海を迫力あるアップで撮影しつつ、広角側で全景を収めたカットもレンズ交換なしに撮れる。そして全域F2.8という明るさが表現の幅を広げてくれる

【スマホを使ってワイヤレス撮影】
標高458mの高倉山。この日は珍しく突風が吹き荒れ、雲海もすごい勢いで流れている。狙う雲海と鉄塔までの距離は約1km。三脚を使用し、ライブコンポジットで雲海に動きをつけた。強風のため、三脚を高くすると風にあおられてぶれることがあるのでウェストレベルにとどめた。シャッターを切る際のブレも防ぐため、Wi-Fi機能を使ってワイヤレスシャッターで撮影している
【オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO】
このレンズの魅力は35mm判換算で80-300mmの幅広い焦点距離でありつつ、開放F値が全域F2.8と明るいことだ。防塵・防滴でインナーズームなのもネイチャーフォトグラファーには天候を気にせず撮れるのでありがたい。1.4倍のテレコンバーターMC-14との組み合わせでも画質の劣化が少なく、MC-14も防塵・防滴なのでネイチャーフォトグラファーには心強い(実勢価格:17万円前後)

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このほかにも、本誌には旬の情報が盛りだくさんです。

第2特集は、大手量販店4社のバイヤーに聞いた「2015年 カメラ&レンズ年間ランキング TOP10」
発表になったばかりの「D500」や「D5」の詳細に迫ります
新機種「FUJIFILM X-Pro2」の実写レポートも掲載
注目の望遠レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4 IS PRO」の実力は?
「石井寛子の今月のお気に入り!」では、レンズベビーを取り上げます
スペシャルギャラリーでは、深澤武氏が八重山諸島を切り取りました

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(デジカメWatch編集部)