新製品レビュー

ソニーRX1R II(外観・機能編)

フルサイズ4,240万画素 EVFも内蔵のモンスターコンパクト

1/1.7型〜1/2.3型クラスのイメージセンサーを搭載するものが多いコンパクトデジタルカメラだが、近年はスマートフォンとの差別化などもあり、1型あるいは1.5型など、より大きなイメージセンサーを積むものが人気だ。そのような中、衝撃的ともいえたのがソニー「サイバーショットRX1」およびローパスレス仕様の「同RX1R」だった。小型ボディに他に類を見ない35mmフルサイズのイメージセンサーを搭載していたからだ。

そのRX1シリーズがこの度さらに大きく進化した。新しい「RX1R II」(DSC-RX1RM2)は、35mmフルサイズ相当で有効約4,240万画素の裏面照射型センサーを採用。RX1/RX1Rと比べて更なる高解像度であることに加え、より広いダイナミックレンジや高感度特性の向上を実現した。加えて399点の像面位相差AFや、ボディに収納されるポップアップ式の有機ELファインダーを搭載するなど、カメラとしての完成度は飛躍的に高まっている。

当初は2015年12月中旬の発売を予定していたが、生産上の都合で発売延期がアナウンスされて以来、発売時期が未定になっていた。このほど2016年2月19日の発売が決まり、改めて注目が集まっていることだろう。今回はその外観と主だった機能を紹介したい。

ちなみに本稿掲載時点での実勢価格は、税込46万3,190円前後だ。

RX1R IIの外観は、RX1/RX1Rと基本的には同じだ。1/1.7型クラスのコンパクトデジタルと大きく変わらないコンパクトなボディに、円筒形のレンズが装着された独特のグラマラスなシェイプとする。ちょっとカメラに詳しい人であれば、遠目でもRX1シリーズであることが分かるはずだ。

ボタン、レバー類に関しても際立った違いはなく、RX1/RX1RではストロボのポップアップボタンであったところがEVFのアイセンサーとなり、ボディ左側面にEVFのポップアップボタンを新たに追加した。そのほかは、カメラ背面にあるコントロールダイヤル周囲の形状が異なる程度である。ボディに関してはキープコンセプト、そう述べてよいだろう。

操作部材についても先代と大きくは変わらない。この画像で見える部分としてコントロールダイヤル周囲の形状、カスタムボタンの表示がCからC1となったところが異なる。
バッテリーも従来と同じNP-BX1を使用。カメラに対し小ぶりに感じられるが、意外に持ちはよく、液晶モニター使用時は約220枚(CIPA準拠)の静止画撮影を可能としている。
マルチインターフェースシューを採用。
インターフェースは上よりHDMIマイクロ端子、マイク端子、マルチ/マイクロUSB端子となる。また、マルチ/マイクロUSB端子の下には、写真では見にくいが、充電ランプが備わる。

ボディサイズと質量は113.3×65.4×72mm、507g(バッテリー、メモリーカード含む)。RX1/RX1Rは113.3×65.4×69.6mm、482g(同)であるが、奥行きがわずかに長いのは後述するバリアングルモニターを新たに採用したためと思われる。

USB充電に対応しているため、USBケーブルとUSB-ACアダプターが同梱される。単体のバッテリーチャージャーも同梱されるとなお嬉しいのだが。

使い勝手のよいポップアップ式EVF

操作感で大きく変わったのが、EVFとバリアングルモニターの採用だ。

前述したとおり内蔵ストロボが廃止され、代わりにワンタッチでポップアップするEVFが搭載された。スペックは0.39型、約236万ドット。接眼レンズには、ガラスモールド非球面レンズ2枚と高屈折レンズ2枚の計4枚の光学系を採用し、ファインダー倍率は0.74倍を実現する。全てガラスレンズで、さらにカールツァイスのT*コーティングが施された贅沢なものである。

実際の見え具合は、コントラストの極めて高い有機ELを採用していることもあり、くっきりとしたクリアなもの。画面サイズも大きく、合焦面とそうでないところの見極めもしやすい。アイピースの形状から、覗いているときに外光が入りやすそうにも見えるが、先のT*コーティングによって映り込みが抑えられている上に、大型のアイピースカップも付属しているので、見にくくは感じないだろう。

アイピースカップが同梱される。外光をしっかりと遮断し、ファインダーの見えを向上させるものであるが、装着するとEVFの収納ができなくなる。

同様のポップアップ式EVFは1型コンパクトの「サイバーショットRX100 IV/III」(以下RX100 IV/ RX100 III)にも搭載されているが、こちらはポップアップしたにときアイピースをその都度引き出さなければならず、収納時も元に戻す必要があるなど些か面倒であるのに対し、RX1R IIのものはポップアップさせると自動的にアイピースが飛び出し、即撮影体制となるため便利だ。収納についても、EVFをボディ側に軽く押し込めば自動的にアイピースが引っ込むという優れものである。

EVFのポップアップは左側面にあるFINDERスイッチで行う。ポップアップするとアイピースが後方にわずかに飛び出してくる。EVFの収納は上からボディに押し込むように行うが、飛び出していたアイピースも同時に引っ込む。

液晶モニターは3型、約123万ドットでRX1/RX1Rから変更は無いものの、新たに同社のミラーレスカメラα7シリーズなどと同じスタイルのバリアングルタイプとする。上方向に109度、下方向に41度可動するため、ハイ&ローアングル撮影時のほか、三脚にカメラをセットしたときなどもモニター固定式だったRX1/RX1Rにくらべ使い勝手はよくなっている。

液晶モニターは上方向に109度、下方向に41度可動するチルトタイプを採用。ディスプレイは先代モデルから変更は無く、3型・123万ドット。タッチ操作には対応していない。

高画素化しても、高感度画質をキープ

続いて撮影に関するデバイスをチェックしたい。イメージセンサーはα7R IIと同じスペックを持つ35mmフルサイズ相当で、有効4,240万画素の裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーとする。いうまでもなく、裏面照射型としたことで集光効率が格段にアップし、高感度特性と階調再現性の向上が期待できるものである。

組み合わされるカールツァイスSonnar T* 35mm F2は先代と同じスペックであるが、マイクロレンズとフォトダイオードの間隔の狭い裏面照射型としたことで、画面周辺部の描写がより向上していることは想像に難くない。描写については次回「実写編」で掲載するが、すでにα7R IIで高い評価を得ているイメージセンサーだけに、期待していただいてよいだろう。

レンズも先代モデルと同じで、カールツァイスSonnar T* 35mm F2を搭載。絞り開放時の最高シャッター速度は1/2,000秒(F5.6以上に絞ると最高1/4,000秒)になるため、NDフィルター機能が欲しいところ。

画素数については、ある意味これまで以上に神経を使うことになった。安直にカメラを構えて撮ると手ブレの発生はまず避けられないからだ。カメラの性能をフルに活かそうと思うと、三脚とリモートレリーズの使用が(コンパクトデジタルカメラながら)マストといって差し支えない。画像の記録サイズはフル画素のほか、約1,800万画素のMサイズ、約1,100万画素のSサイズも選べ、取り回しも含め現実的で使い勝手がよいのはMサイズあたりのように思える。

感度の通常設定範囲はISO100からISO25600。拡張設定によりL1(ISO50相当)からH2(ISO102400相当)までの撮影も可能とする。本モデルは先代の倍近い画素数にも関わらず、同じ感度域で撮れることは注目に値する。画素数が増え画素ピッチが小さくなると高感度特性は低下しがちで、設定できる最高感度も抑えられるのが一般的なイメージだが、RX1R IIはそのようなことがなく、これも高感度特性に有利な裏面照射タイプのイメージセンサーによるものだろう。高感度域の描写についても次回の実写編に期待していただきたいが、「高画素イコール高感度に弱い」というこれまでの定説は、RX1R IIには当てはまらないものといえる。

選べるローパス効果

このイメージセンサーのもうひとつのトピックといえば、光学式可変ローパスフィルター機能を搭載していることだろう。この機能は2枚のローパスフィルターで液晶層を挟み、その液晶層に電圧を加え駆動させることでローパスフィルターの効果が切り換えられる、というもの。切り変えはOFF/標準/強めから選ぶことができ、被写体の状況や好みなどに応じてその都度使い分けを可能とする。

ローパスフィルターの効果は、OFF/STD(標準)/HI(強め)から選ぶことが可能。その効果のほどは次回画像編を楽しみにしていただきたい。

例えばモアレや偽色の出やすそうなコスチュームを着用したポートレート撮影ではローパスフィルターの効果をONにし、とにかく鮮鋭度を優先させたい風景撮影ではOFFとできるのである。本機能については比較作例を見ていただければ一目瞭然であるが、その効果は大きく実に有効な機能である。また、この機能に関する「ローパスフィルターブラケット撮影」の選択も可能としており、簡単に効果を比較することができる。もうローパスフィルターの有無でカメラの選択を悩む必要はないのである。

像面位相差AFに対応。高解像度に負けないレンズ

AFの進化もRX1R IIの見逃せない部分だ。コントラストAFと像面位相差AFのハイブリッド式となり、測距点は399点(像面位相差AFの場合)。旧モデルはコントラスト方式のみの25点としていたので、スペックを見ただけでも十分期待できるものだ。実際そのスピードは不足を感じさせず、速やかにAFを完了する。

旧モデルRX1/RX1Rもさほど不満を感じないものであったが、それを大きく上回ると述べてよい。より少しでも迅速なピント合わせがしたいスナップ撮影などシャッターチャンスを見逃すようなことはないはずだ。

さらにAFモードにAF-C(コンティニュアス)モードを搭載しているのも目新しい部分。ほぼ画面いっぱいに広がる399点の広いAFカバー範囲で、被写体を追従し続ける。その精度は一眼レフと変わらないといって差し支えないものである。さらに瞳にピントを合わせる「瞳AF」もAF-Cモードに対応しており、アイディア次第では面白いポートレート撮影が楽しめそうに思える。

AFモードダイヤルには新たにC(AF-C:コンティニュアスAF)モードが備わった。筆者個人としては、このダイヤルが不用意に動かないようにロック機能が欲しく思える。

レンズについては先代モデルから変更はない。独自のレンズ構成を持ち、画面の隅々まで優れた描写特性を誇るのも同じだ。通常の最短撮影距離は0.3mであるが、鏡筒のマクロ切り換えリングの操作により0.2mまで寄れるのも同様である。2,400万画素から一挙に4,240万画素と大幅に増えた画素数だが、解像力などまったく問題となる部分はないといってよい。

マクロ切り換えリングの操作で最短撮影距離0.2mを実現するのも従来通り。フルサイズ用の焦点距離35mmレンズの場合、最短撮影距離は0.35m前後とするものがほとんどなので、この機能はありがたい。

また、思いのほかタル型のディストーションが現れやすいのもこれまでどおり。メニューに搭載される[レンズ補正]では、デフォルトの場合に歪曲収差補正がOFFとなっているので、気になるようであれば「オート」に設定するようにしたい。ただし、補正の際は僅かであるが処理時間を要するので、連続撮影時などは気をつけておく必要がある。

Sonnar T* 35mm F2は撮影シーンによってはディストーションが気になることも多い。レンズ補正の[歪曲収差補正]はデフォルトではOFFになっているが、積極的に活用するとよいだろう。

羨望のハイエンドコンパクトカメラ

最新のデジタルカメラではマストともいえるWi-FiおよびNFC機能も新たに搭載する。スマートフォンへの画像の転送に手間がかからないので、SNSなど楽しむユーザーはぜひ活用したい機能である。動画機能については、残念ながら4K記録は未対応だ。これはイメージセンサーの放熱などの問題によるものと思われるが、今後に期待したいところである。

メニューの表示や機能の設定方法など先代モデル同様で、際立った変更は無い。もともとユーザービリティはよく、本モデルにもそれは余すこと無く引き継がれている。さらに高画素機でありながら、その動作はキビキビとしたもので、こちらも不満らしい不満のないカメラである。

撮影時のライブビュー画面。基本的に従来から変更は無い。EVFの表示も同じとする。
フル画素で4,200万画素もあるため、Mサイズでも1,800万画素と十分な大きさ。画像送信などのハンドリングを考えると、通常はMサイズで撮影してもよいのかもしれない。
RAWフォーマットは圧縮と非圧縮が選べる。メモリーカードの容量などから選択するとよいだろう。

唯一あるとすれば、グリップを備えていないためやや右手でのホールドが心もとないことだろう。とはいえ、画素数やレンズの大きさを考えれば、両手でホールドすべきカメラであるし、気になるようであれば高価だが純正のサムグリップ(TGA-1)や、サードパーティ製のグリップなどを用意すればよい。

このようにRX1R IIは極めて魅力的なコンパクトデジタルカメラであるが、その分価格も驚くべきものがある。このカメラを手にできる写真愛好家が羨ましく思える。

次回は実写編として、その画質について作例を交えて紹介する。

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。