新製品レビュー

ソニーRX1R II(実写編)

文句なしの描写力。業界初の“可変ローパスフィルター”も検証

先般外観・機能編をお伝えした、ソニーのフルサイズコンパクト「RX1R II」。先に登場した「サイバーショットRX1/RX1R」(以下RX1/RX1R)から、レンズ以外の部分に大きく手が入っている。イメージセンサーはミラーレスのα7R IIと同じ裏面照射型の有効4,240万画素とし、新たにローパスフィルターの効果を任意で選択できる「光学式可変ローパスフィルター」機構を装備。AFは従来のコントラスト方式に加え、より速やかな測距を行う399点もの像面位相差方式も採用する。さらに、高精細でコントラストの高いEVFを新たにボディ内蔵とたのもトピックだ。

発売は2月19日。掲載時の実勢価格は税込46万3,190円前後。今回は実写編として、飛躍的な進化を遂げた本モデルの描写を見ていくことにする。

遠景で描写チェック

撮影時の主要なカメラ設定はデフォルトとしている。詳細については、クリエイティブスタイル「スタンダード」、ホワイトバランスとDレンジオプティマイザー「オート」、可変ローパスフィルターは「OFF」とする。撮影時の天候は晴れ、大気中の水蒸気は少なくクリアに感じられた。なお、絞り開放のF2および絞りF2.8では、シャッター速度が足りず露出オーバーになってしまったことをお許し頂きたい。

F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
F22

階調再現性については、ハイライト部およびシャドー部ともよく粘る。太陽に照らされた白いビルから日陰で暗くなった樹木の部分までしっかりと再現する。高画素機になると画素ピッチが必然的に小さくなるため階調再現性が低下することもあるが、効率よく光を取り込む裏面照射型CMOSセンサーではそのようなことを考えなくてよさそうだ。ホワイトバランスも色の偏りなどなくナチュラル。文句ない描写と述べてよい。

光学系が大きく影響する部分については、まず周辺減光が絞り開放でわずかに見受けられるものの、1段絞ると大きく改善される。解像感に関しては、絞りF2.8までは画面周辺部に僅かに甘いところが見受けられるものの、それ以上になるとキレのあるものになる。高解像度にあることに加えローパスフィルターの効果をOFFにしていることもあり、画像全域で解像感の高い描写が得られる。描写のピークは絞りF8もしくはF11といったところ。しかしながら、それ以外の絞り値でも描写特性は極めて高く、良好な遠景描写といえるだろう。

感度

RX1R IIの通常感度設定はISO100からISO25600まで。拡張設定によりISO50相当のLからISO102400相当のH2まで選択できる。遠景での階調再現性同様、ここでも裏面照射型センサーの高感度特性が気になるところである。撮影では、高感度ノイズリダクションをデフォルトの「標準」としている。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO50(拡張)
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600
ISO51200(拡張)
ISO1024800(拡張)

撮影した画像を見るかぎりISO1600までならノイズレスといって差し支えないだろう。感度が上がるにつれ、解像感はわずか(本当にわずかだ)に低下していくものの、気になるようなものではない。

ISO3200になるとノイズが主張しはじめてくるが、ISO6400まではそれほどでもないと言ってよい。スナップ撮影や記念撮影は当然だが、作品撮りでも十分使えるレベルと言って差し支えないものである。ISO12800ではノイズの発生が顕著になりはじめ解像感の低下も目立つようになるが、それでも色のにじみの発生などほとんどなく実用レベル。

通常の最高感度であるISO25600でも作例を見るかぎりノイズの発生、解像感の低下、色のにじみなどがよく抑えられており、良好な高感度特性と述べてよいだろう。

可変ローパスフィルター

繰り返すが、RX1R IIはローパスフィルターの効果をコントロールできる可変ローパスフィルター機構を搭載する。構造的には2枚のローパスフィルターで液晶層を挟み、その液晶層に電圧を加えることでOFF/標準/強めのいずれかにローパスフィルターの効果を可変させるものだ。

先代モデルではローパスフィルターを搭載したRX1と、ローパスフィルターレスとしたRX1Rが存在し、ユーザーはどちらかのカメラを選択しなければならなかったが、そのような悩みはもうしなくてよいわけだ(どちらも買える裕福なひとは別だが)。

作例では、筆者がいつも検証に用いる“モアレ壁”(画面中央近くのグレーの壁)を被写体としている。もちろん解像感が一番高かったのはローパスフィルターの効果をOFFにしたときのカットだが、壁一面にモアレが発生。ローパスフィルターの効果を強めにした画像ではほぼモアレは解消されているが、解像感は低下していることが分かる。被写体の状況に応じて積極的に使い分けたい機能である。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
可変ローパスフィルター:オフ
可変ローパスフィルター:標準
可変ローパスフィルター:強め
以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
可変ローパスフィルター:オフ
可変ローパスフィルター:標準
可変ローパスフィルター:強め

最短撮影距離

RX1R IIの最短撮影距離は通常0.3mであるが、鏡筒のマクロ切り換えリングの操作によりワンタッチで0.2mとなる。最短撮影距離0.2mというと、小型センサーを積むコンパクトデジタルカメラであれば“寄れないカメラ”に分類されてしまうが、35mmフルサイズセンサーを搭載する本機の場合では“寄れるカメラ”と言って差し支えないだろう。

ISO100 / F2 / 1/500秒 / ±0EV

元々RX1/RX1Rから継承した評価の高いレンズであるが、0.2mの近接撮影時の描写についても良好な描写力は同様。さらにボケ味の美しさは特筆すべきものである。

まとめ

RX1R IIに対し、唯一欲を言わせてもらいたい部分としては、NDフィルターを内蔵してほしかったこと。レンズシャッターの機構上、このカメラの持つ最高速1/4,000秒はF5.6以上に絞った場合に限られており、開放絞りでは最高1/2,000秒になるからである。遠景描写の作例撮影でもそうであるように、これでは絞りを開いた撮影は晴天屋外では難しい。現時点ではNDフィルターの内蔵は構造的に厳しいのかもしれないが、今後に期待したいところである。

とはいえ、このカメラの素性を知ると、いわゆる“フルサイズ原理主義者”でなくとも欲しく思えてしまうはずだ。高解像度あることはいうまでもないが、階調再現性や高感度特性など圧倒的な描写力だし、さらにEVFを内蔵するなど使い勝手も隙を感じさせるところがない。先代RX1/RX1Rでもそのプライスには驚かされたものだが、さらに上をいくこのカメラで撮影の楽しめるユーザーがとても羨ましく思える。

作品集

ダイナミックレンジが広く、黒ツブレ・白トビをよく抑えている。想像以上の階調再現性を誇る。EVFによって露出補正などの結果もより正確に把握できるのもよい。

ISO100 / F5.6 / 1/1250秒 / -1EV

実焦点距離が長く、大きなボケが得られやすいのもフルサイズセンサーのメリット。写真は絞りF2.8。小型センサーに慣れたユーザーは、想像していた以上にボケるので驚くはずだ。

ISO100 / F2.8 / 1/1600秒 / -0.7EV

絞りは開放F2。マクロ切り換えリングを使い、被写体にぐっと迫ってシャッターを切っている。浅い被写界深度と柔らかく大きなボケは、フルサイズならでは。

ISO100 / F2 / 1/200秒 / -0.3EV

日陰のある標識を被写体としているが、背景の陽の当る部分はさすがに白トビしているところもある。しかしながら、トーンジャンプしたような違和感あるものではなく、どちらかといえばナチュラルな印象。

ISO100 / F4 / 1/200秒 / +0.7EV

こちらも開放F2で撮影。合焦面からのボケはじめは自然に感じられる。絞り値から弱い周辺減光が発生しているはずだが、作例を見るかぎりさほど気にならない。

ISO100 / F2 / 1/320秒 / +0.3EV

作例などではお馴染みとなった北品川の運河。鮮鋭度が極めて高く、遠くのビルやマンションの壁や窓の桟など鮮明に再現する。ちなみにこの撮影は手持ち。

ISO100 / F5.6 / 1/320秒 / -1.3EV

船体のリベットやボルトなど緻密に再現している。有効4,240万画素の解像度をフルに活かした撮影を楽しもうと思うと、やっぱり三脚がないと不安。

ISO100 / F8 / 1/320秒 / -0.7EV

ハイライト部からシャドー部までよく粘っている。小型のイメージセンサーでは得られないダイナミックレンジの広さだ。逆光でもAFに迷うようなことは少なく感じた。

ISO100 / F2 / 1/2,000秒 / -1.7EV

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。