新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M1X(外観・機能編)

新たなるプロフェッショナルモデルの細部をチェック

OM-D E-M1X。掲載時点の実勢価格は税込36万5,040円前後(ボディのみ)。

創業100周年、オリンパスの先進性がとどまるところを知らない。これまでオリンパスOM-DシリーズはE-M1 Mark II、E-M5 Mark II、E-M10 Mark IIIの3ランクでラインアップされていたが、さらにE-M1 Mark IIと並ぶプロフェッショナルモデルに位置づける「OM-D E-M1X」が革新的な機能をひっさげ2019年2月に登場した。

E-M1Xのライバルは?

OM-D E-M1Xにおいて単純にライバル機種を挙げるのは難しい。縦位置グリップ一体型のボディ構造からすればライバルはニコンD5やキヤノンEOS-1D X Mark IIのような動体撮影に特化したモデルともいえるし、マイクロフォーサーズの上級機という見方ではパナソニックLUMIX G9 Proなど。はたまた5,000万画素相当の画を描き出す手持ちハイレゾショット機能は、35mmフルサイズ機種のニコンZ 7やキヤノンEOS 5Ds R、さらには中判の富士フイルムGFX 50Sもライバルなのかもしれない。

握ればわかる、この大きさ

デザインはオリンパスで初めて縦位置グリップ一体型を採用した大型ボディ。「いやいや、マイクロフォーサーズ機種に比喩でも大型ボディは言いすぎだろう……」なんてことはなく本当にデカい。E-M1Xは約144.4×146.8×75.4mm(幅×高さ×奥行き)、重さは997g。なんと重さが約1kgもある。ちなみに上にも挙げたプロ用一眼レフカメラのニコンD5は、約160×158.5×92mm、1,405g。

しかし重いとは言ったが、E-M1Xはプロ仕様であり、ただ数値だけを見て重いだの軽いだの言うのは野暮というものだ。カメラを実際に使用する際は、握り心地の良し悪しがキモとなる。この点E-M1Xは、しっかりと握り込むことのできる大きくガッシリしたグリップ形状だ。望遠レンズを付けて持ってみても、手首への負担は少ないように感じた。

それに重いと言ってもボディ単体での話で、レンズはマイクロフォーサーズ用であるからやはりトータルのシステムとしては極めて軽量だ。ただし、平均よりは手の大きい筆者でもグリップは少し大き目に感じられ、手の小さなユーザーには少々大変かもしれない。

シャッターボタン周辺の見た目はこれまでのOM-Dシリーズと大きく違う。一体型だったシャッターボタンとフロントダイヤルはそれぞれ独立し、ボディ上面に配置されていたリアダイヤルもボディ背面側へビルトインされた。ハイライト&シャドウコントロールのマークが書かれていたFn2ボタンがなくなり、替わりに露出補正ボタンとISOボタンが新規追加された。動画ボタン含め、各ボタンの割り当て機能はカスタマイズできるのでこれまで同様の使い方も可能だ。

なお配置的には露出補正ボタン、ISOボタンはやや遠く感じる。こうした点は誤操作防止の意味合いもあることが想像でき、あくまでもプロフェッショナルの現場用カメラといった印象を受ける。

縦位置グリップ側は動画ボタンを除き、同じようにボタンが配置されている。横位置、縦位置でグリップの握りやシャッターボタンの押しやすさはほぼ変わらず、構図変更もスムーズだ。

ボディ前面には横位置と縦位置それぞれにワンタッチホワイトバランスボタンとプレビューボタンが配置されている。この4ボタンもカスタマイズが可能だ。

ボディ左上面にはフラッシュ/連写/セルフタイマーボタン、AF/測光ボタン、ブラケットボタンが並ぶ。ファインダー部分の上部外装が別パーツで組み込まれているが、ここにはストロボではなくGPSモジュールが埋め込まれている。

ボディ背面には、オリンパスとして初めてマルチセレクターが採用された(INFOボタンの上)。大きく操作性が良く、フォーカスポイントをスムーズに移動できる。十字ボタンは深い彫り込みで立体的にデザインされ、操作性の向上とともに美しさもある。カメラをホールドする際の親指位置も深く彫り込まれグリップを良くしている。

背面下部にはメニューボタン、消去ボタン、カードセレクトボタン、ホワイトバランス/シェア予約ボタン、再生ボタンが並ぶ。また、ロックレバーが新規採用されているが通常の縦位置ロックに加えて、任意のボタンなどをカスタマイズしてロックできるC-LOCK も搭載する。

C-LOCKの設定画面。ボタンの誤操作を避けるため、使わないボタンを任意に選んでロックできる。

EVFは約236万ドットの液晶パネルを採用。表示パネルこそE-M1 Mark IIと変わりないが、ファインダー光学系を一新し、0.83倍(35mm判換算)の大型ファインダーとなった。120fpsのフレームレート、0.005秒の表示タイムラグと相まって視認性は非常に良い。

背面モニターはタッチパネルを搭載したバリアングル式を採用。横位置、縦位置に関わらずローアングルやハイアングルを自在に撮影できる。ただしボディのモニター収納部が深めにできており、冬季用グローブでの操作時にはモニターを引き出せなかったのが少々残念な点だ。

ダブルTruePic VIIIで高速化&新撮影モードを実現

E-M1 Mark IIとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROの組み合わせで最大約6.5段分という強力な手ブレ補正で世界を驚かせたオリンパスだが、E-M1Xは12-100mm F4.0 IS PROとの組み合わせで驚愕の約7.5段の手ブレ補正を実現。また、ボディ単体での補正段数も約7.0段だという。E-M1 Mark IIのボディ単体が約5.5段だったことからも、どれだけ強力になったのかがわかるだろう。

撮像素子は有効2,037万画素のLive MOSセンサーを採用。これはE-M1 Mark IIのセンサーと同じものであり、基本的な画質は変わらない。だが画像処理エンジンはダブルTruePic VIIIとなり、処理スピードが格段に向上。これによって最先端機能を多く実装し、E-M1Xは飛躍的な進化を遂げたのだ。

AF関連の進化としては、従来の顔・瞳優先AFに加え「インテリジェント被写体認識AF」が初めて搭載された。認識する被写体はモータースポーツ(フォーミュラカー、ラリーカー、バイク)、飛行機(飛行機、ヘリコプター)、鉄道(新幹線、電車、汽車)の3モード。それぞれ被写体を認識しヘルメットやコクピット、運転席にピント合わせを行う。C-AF+TRのAFモードで有効となる。

また、ユニークな新機能としてはカスタムAFターゲットモードの採用がある。縦11点、横11点のAFエリアから被写体に合わせてAFエリアをオリジナルで作る機能だ。縦長でも横長でも自由自在、エリアと同時に移動ステップ幅も縦横3段階で調整できる。スポーツやネイチャーなど動体撮影に向いたモードだ。

風景系フォトグラファーの最注目機能は「手持ちハイレゾショット」だ。E-M5 Mark IIに初めて搭載されマイクロフォーサーズの可能性を飛躍的に高めたハイレゾショットだが、E-M1Xはその使用可能領域を大きく拡大する念願の“手持ち撮影”に初めて対応した。

ハイレゾショットはボディ内手ブレ補正機構を利用して記録画素数をアップさせる機能で、20Mセンサーから50M相当の高解像度データを生成するもの。従来のハイレゾショットはセンサーを0.5ピクセルづつ移動しながら8回連続撮影した画像データを合成していたため、撮影には三脚が必須だった。

しかしE-M1Xに新搭載された手持ちハイレゾショットは、手持ち撮影中に発生するわずかな位置ずれを利用して、16回の連続撮影した画像をもとに合成処理する。なお従来方式のハイレゾショットも三脚ハイレゾショットモードとして継承している。

さてもうひとつ風景系フォトグラファー注目の機能がある。「ライブND」撮影だ。滝や水の流れなどをスローシャッターで描くシーンでは通常、レンズを通して入ってくる光量を減らすためNDフィルターを使用する。しかし、フィルター装着作業が手間だったり、そもそも前玉が大きく突出しているレンズにはフィルターが付けられない。そうした場面で極めて有効なモードがライブNDだ。

これは複数の画像を合成処理して、擬似的にNDフィルターを使ったスローシャッター効果を作り出してくれる。効果はND2から1段ごとにND32相当まで。NDの計算は1/数値の光量ということであり、ライブNDとしては数値分の画像を合成している計算となる。なんだかパソコンでも同じような画像処理ができそうな気がしてしまうが、ライブNDはその名の通り“ライブ”だ。そのスロー効果をライブビュー映像で確認できるため仕上がりイメージが一目瞭然。好みのスロー表現をその場で迷いなく撮影できるのだ。

UHS-II両対応のデュアルSDスロット。バッテリーは2つ装填可能

記録メディアはSDカードのダブルスロット。E-M1 Mark IIではスロット1のみUHS-II対応だったが、E-M1Xでは両スロットとも高速なUHS-II規格に対応。秒間60コマの高速連続撮影や4K/30p動画といった膨大なデータの保存がより行いやすくなった。スロット部分のカバーは防水デジタルカメラのToughシリーズと同じラバーでシーリングされ、開閉部にもロック機構が備わっている。こうした密閉性により、E-M1XはE-M1 Mark IIをも超える防滴性能を実現している。

バッテリーはE-M1 Mark IIと同じBLH-1を2個使用。カタログ値では通常モードで約870枚、低消費電力撮影モードで約2,580枚の撮影が可能となっている。ちなみにBLH-1を1個だけ入れた状態でも撮影は可能だ。なお、BLH-1を2個同時に充電できるような充電器はなく、これまでの充電器BCH-1が2セット同梱されている。ちょっとジャマくさい。

ジャマくさいなどと失礼なことを言って大変申し訳ないが、大した問題ではないので安心してほしい。というのもE-M1XはUSB PD規格に対応しており、カメラ内にある2個のバッテリーを最速2時間でフル充電できるのだ。充電速度は環境によるものの、モバイルバッテリーや車などのUSB電源からカメラのUSB Type-C端子に接続すれば、撮影の合間でも手軽に充電できる。そうした意味では、充電器をほとんど使わずとも撮影が進められるのだ。

まとめ:まぎれもなくプロフェッショナル仕様

まさかこんなにも早くこれほどの性能を搭載した機種が登場するとは思わなかった。手持ちハイレゾショットやライブNDなど、写真の撮影スタイルそのものを変えられるような特別な機能だ。

防塵防滴性能やセンサー面に付着したゴミやホコリを取り除くスーパーソニックウェーブフィルターも従来より効果が高められており、さまざまな厳しい環境での使用にも耐える仕様となった。先進機能と安心の使用感が一体となったE-M1Xは、まさしくプロフェッショナル仕様のカメラに仕上がっている。

次回はE-M1Xの先進的な撮影モードによる驚きの画質をレポートする。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。