新製品レビュー

OM SYSTEM OM-1の新機能を実写でおさらい

OMデジタルソリューションズ(以下OMDS)が3月に発売した、同社初のマイクロフォーサーズ・フラッグシップ機。発売直後にも実写レポートをお届けしましたが、今回は改めて、新製品レビューとして主な新機能を検証・解説します。

何よりOM-1という製品名、フィルム時代のオリンパスが1972年に発売した一眼レフカメラ「OM-1」と同じであることからも、OMDSの気合いのいれようが感じられますね。そして実際に、スペックや操作性、画質に関してもハイレベルでまとめられた、非常に出来の良いカメラでありました。と言うことを、初めに宣言しておきながら話を進めていきたいと思います。

実はかなり変わった魅力的なデザイン

2つのフラッグシップ、「OM-D E-M1 Mark III」と「OM-D E-M1X」をラインナップしていたオリンパスですが、今回登場したOMDSの新フラッグシップモデルは、その両方を統一したモデルと言えるでしょう。

具体的には、被写体認識AFを搭載したハイスペックだけどグリップ一体型で大きかった「OM-D E-M1X」と、「OM-D E-M1X」ほどではないけどやっぱりハイスペックでオリンパスらしく小型軽量な「OM-D E-M1 Mark III」の特徴をあわせもっているということです。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」と組み合わせたイメージ

つまり、「OM-D E-M1 Mark III」の小型軽量さで、「OM-D E-M1X」並みのハイスペックを達成しているということ。「OM-D E-M1X」並みとしましたが、実際には「OM-D E-M1X」のスペックを大きく凌いでいます。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」と組み合わせたイメージ

全体的なデザインのイメージは大きく変わりました。「フィルム時代のOM-1」を含め、従来のOM-Dシリーズの多くの機種はどこか角ばった男性的なイメージだったのですが、本機「OM-1」では、随所に艶めかしい曲線を取り入れた力強くも優しいイメージになっています。

シャッターボタン周りは、いわゆるスプーンカット的な造形に変更されました。歴代OM-Dシリーズを愛用していた筆者としては、シャッターボタン同軸で配されていたダイヤルの廃止に少しの寂しさを感じないでもないですが、ハッキリいって大変押しやすくなっています。あわせて、フロント/リアダイヤルも一般的な配置と形状に変更されています。
造形にこだわりを感じさせる、凹形状の「AF/測光モードボタン」と「連写/セルフタイマー/フラッシュボタン」、および「ON/OFFレバー」。

実のところ、こうした形状変更は「OM-D E-M1X」から取り入れられたものです。それでいて全体的なサイズ感は縦位置グリップ部のないE-M1 Mark IIIを継承。カメラ全体において、これまでの縛りに囚われず良いものは取り入れていこう!という前向きな姿勢が感じられます。

生まれ変わった「OM-1」のデザインに、惚れ惚れとしてしまうのは、筆者だけではないと思います。

背面のボタン配列も進化しました。特徴的なFn(ファンクション)レバー、その中に配置されたAEロックボタンなどは変わりないのですが、新たにAF-ONボタンが追加されています。ここも「OM-D E-M1 Mark III」と「OM-D E-M1X」のイイトコ取りで、ボタンが少なく機能を割り当てきれなかった「E-M1 Mark III」と、ボタンが余り気味で何の機能を割り当てるか迷ってしまう「OM-D E-M1X」の中間といった印象です。新設のAF-ONボタンは使ってみるととても便利です。

「OM-D E-M1X」と「OM-D E-M1 Mark III」に搭載されていたマルチセレクターは、本機にも継承。AFの測距点数とカバー率が大幅に増加した(後述)「OM-1」ですので、マルチセレクターによる操作は必須と言えます。
背面液晶モニターはバリアングル式で162万ドットになり、従来モデルより詳細感が高くなっています。「OM-D E-M1X」と「OM-D E-M1 Mark III」はどちらも104万ドットでしたので、他社の上位モデルと比べるとやや粗さを感じるのが残念なところでした。

記録メディアスロットはSDメモリーカードのダブルスロット。SDメモリーカードはSDXC(UHS-I・UHS-II、ビデオスピードクラスV90)まで対応します。

端子類は、「USB Type-C(USB3.0 SuperSpeed)」と「HDMIマイクロコネクター (Type-D)」がそれぞれ1つずつ。USB端子はPCやスマートフォンとの通信のほか、USB充電・給電にも対応しています。その他に、「リモコン端子(2.5mmミニジャック)」、「外部マイク入力端子(3.5mmステレオミニジャック)」、「ヘッドホン端子(3.5mmステレオミニジャック)」など。

そして、メニュー画面のデザインと構成が一新されました。非常に分かりやすく整理分割されていて、フロントダイヤルでタブを、リアダイヤルでページを選べる(十字キーでの操作も可)など操作性も上々です。

オリンパスのデジタル一眼レフ創世記からミラーレスカメラに至るまで、ひたすら使い続けていた筆者ですが、初めて見たときは少し戸惑ったものの、使ってみるとすぐに慣れ、その後は便利に使わせていただきました。このメニュー画面、かなり良いと思います。

受け継がれた伝統の「スーパーコンパネ」、「Lvスーパーコンパネ」も整理され見やすくなりました。

バッテリーも新型の「BLX-1」が採用されています。CIPA準拠で520枚の撮影が可能となっており、「OM-D E-M1 Mark III」(BLH-1)の420枚より大幅にバッテリー容量が増えました。実際に撮影してみても「OM-1」のスタミナの良さは実感できます。

別売のパワーバッテリーホルダー「HLD-10」を装着した場合、パワーバッテリーホルダー内にもうひとつ多くバッテリーを装填できるので、さらに撮影枚数は増加します。

ファインダー性能は従来モデルから大きく進化

内蔵のファインダーはというと、「E-M1 Mark III」や「OM-D E-M1X」の236万ドットを遥かに超え576万ドットに。実に2.5倍弱という驚きの大進化です。

しかも、ファインダーの倍率も非常に高く、「EVF表示スタイル1」または「EVF表示スタイル2」のときは約1.48倍という高倍率。これはフルサイズのファインダー倍率に換算すると約0.74倍となります。

さらに、「EVF表示スタイル3」のときは約1.65倍。フルサイズで換算すると、実に約0.83倍という非常に高いファインダー倍率を誇っています。

「OM-D E-M1X」も撮影倍率は同等でしたが、約576万ドットとなったことでミラーレスカメラのフラッグシップモデルに相応しい、最高レベルの心地よい見え具合になっています。

撮像センサーと画像処理エンジンも大進化

デジタルカメラの要とも言える撮像センサーと画像処理エンジンについて。撮像センサーの有効画素数は2,037万と、この数値は「E-M1 Mark III」や「OM-D E-M1X」と同じです。同じなのですが……

撮像センサーは従来の「Live MOSセンサー」から「裏面照射積層型Live MOSセンサー」になりました。積層型のCMOSセンサーは、1層に並んでいた画素と回路を2つの層に分けることで画素ごとの受光面積を広く取れるようになり、ダイナミックレンジが拡大するというものです。

そして、画像処理エンジンは最新の「TruePic X」(トゥルーピック・エックス)に進化。具体的には、従来機で採用されてきた「TruePic IX」の約3倍の処理速度を手に入れているそうです。目に見えるものではないので分かりにくいのですが、「3倍速い」と言われると、妙に心にグッと響くものがありますね。

撮像センサーと画像処理エンジンが進化したことで得られるメリットとしては、ダイナミックレンジの拡大、ひいては高感度画質の向上があげられます。

下の写真はISO 1600で撮影したものですが、このくらいなら個人的にA3サイズくらいのプリントなら余裕、A2サイズや、撮影内容な見せ方によってはA1サイズでも大丈夫だと思います。センサー&エンジンの刷新による全体的な能力アップを感じられる部分で、明らかに従来機とは一線を画す高画質だと実感しました。

ISO 1600で撮影
OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(F5.6・1/4秒)ISO 1600

ISO 1600から2段上げてISO 6400にしてみました。ノイズが少なく、解像感や階調性の喪失がほとんど気になりません。ちなみに「E-M1 Mark III」や「OM-D E-M1X」では、このISO 6400が常用最高感度でした。

ISO 6400で撮影
OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(F5.6・1/15秒)ISO 6400

もちろん、ISO 1600と比べればそれなりに劣化しているのは当然ですけど、数年前に写真展でOM-D系で撮った作品を展示した際、ISO 6400で撮影した写真のレタッチにかなり慎重になった経験のある筆者としては、もう本当にOM-1の基本性能の高さが羨ましくなるばかり。「あのときこのカメラがあれば……」なんて思ったりしてしまいます。

さらに2段分感度を上げて、ISO 25600で撮ってみました。ここがOM-1の常用感度の最高になります。さすがにノイズは目立ってくるものの、画像処理能力が高いからでしょう、PCやスマホの画面上で見る分にはほとんど気にならないレベルに仕上がっています。これであれば、よほど拘るシーンを除いてはISOオートでバンバン撮ってもいいのかも?とさえ思えたくらいです。

ISO 25600
OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(F5.6・1/60秒)ISO 25600

それにしても、画素数は従来機と同じはずなのに、「OM-1」で写真を撮っていると妙に画像の解像感が高く感じられることが不思議に思えていました。同じレンズを使っても、明らかに「OM-1」の方が高画質だと感じられます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II(F5.6・1/640秒)ISO 200

筆者ははじめ、単純に「画作りを見直したのかな?」とだけ思っていまして……、それはそれで間違いではないのですが、正確には撮像センサーのダイナミックレンジが大きく向上し、それを最大限活かすため、これまた進化した画像処理エンジンで高度な処理を施したことで、結果的に従来機を超える高い解像感が実現したそうです。

どうしても2,037万画素以上が必要だという場合は、「ハイレゾショット」が便利です。ハイレゾショットは8枚または12枚の写真を合成することで、撮像センサーの有効画素数を超えた高画素写真を記録する機能。8,000万画素まで撮れるけど三脚が必要な「三脚ハイレゾ」と、画素数は5,000万までになるけど手持ちで撮れる「手持ちハイレゾ」があります。

ハイレゾショットで撮影
OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II(F5.6・1/640秒)ISO 200

猫、いや……「動物」が追加された先進のAI被写体認識AF

ディープラーニング技術を活用し開発されたAI被写体認識AF。人物以外でいわゆる被写体認識AFを初めて正式に採用したのがオリンパスの「OM-D E-M1X」でした。「フォーミュラーカー・バイク」、「飛行機・ヘリコプター」、「鉄道」、「鳥」などに的確にピントを合わせた後、被写体を正確に追尾し続けてくれるので、撮影者は安心して構図に専念できるという優れものです。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(F6.3・1/1600秒)ISO 3200

そして「OM-1」では、検出対象に「動物(犬・猫)」が追加されました。猫大好きだけに「OM-D E-M1X」に動物がないことを口惜しく思っていた筆者は大喜びです。

被写体認識AFの先駆者であるオリンパスの系譜をひくOMDSだけに、その検出性能と捕捉性能は、さすが抜群に完成度が高い。正面からはもちろん、横顔でも迷うことなく瞳にピントを合わせてくれます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8(F1.8・1/2000秒)ISO 200

「動物(犬・猫)」となっていますが、自己責任の範囲内では、かなり広範な動物をカバーしているようです。手前に鉄格子があるワオキツネザルでも、惑わされることなく正確・迅速に瞳をキャッチしてくれました。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO(F4・1/1600秒)ISO 200

撮像センサーのすべての画素で位相差検出できる「オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF」を採用しているので、AFエリアのカバー率は100%、測距点は1,053点にもなります。

画面の全領域をクロスタイプの高精度な位相差センサーが高密度にカバーしているので、被写体が画面の隅にいても何の問題もなくピントを合わせられます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO(F8・1/1600秒)ISO 800

対象の多い被写体認識AFは、ジャンル違いだと思っていた被写体でも思わず撮りたくなってしまうくらい、楽しさと信頼感があるのがイイところです。「OM-D E-M1X」は大きく重いサイズで被写体認識AFを実現していましたけど、軽く小さな「OM-1」で、さらに高度な撮影ができるようになったのは本当にスゴイですね。

プリ連写の先駆者が贈る最新の「プロキャプチャー」機能

さて、オリンパス(OMデジタルソリューションズ)のデジタルカメラでは、「プロキャプチャーモード」という撮影機能もお馴染みです。シャッターを半押しした状態で待ち構え、次にシャッターを全押しすると、全押しした瞬間からさかのぼって過去の数十枚(最大70コマ)を記録してくれるという機能です。オリンパス以降、他社も似た機能を搭載してきているので「プリ連写」の通称でお馴染みでないでしょうか。

鳥や昆虫などが飛び立つ瞬間を狙っていても、飛び立つ瞬間はあまりに一瞬のため、人間の反応ではなかなか追いつかないのですが、プロキャプチャーモードを使えば「あっ!」と思った次の瞬間にシャッターを全押しするだけで、失ったはずの瞬間がカメラに記録されます。

そんなプロキャプチャーですが、歴史あるだけに、「OM-1」には「プロキャプチャー」、「プロキャプチャーSH1」、「プロキャプチャーSH2」と、3種類があります。

下の写真は最も標準的な「プロキャプチャー」で撮影しました。「プロキャプチャー」は連続撮影枚数の最高が25コマ/秒で、シャッター半押し/全押し中でもAF・AEが追従します。最も標準的なプロキャプチャーで、難しいことを考えなくても良いモードと言えるでしょう。ウミネコくらい大きな鳥の着地や離陸なら結構簡単に撮れてしまいます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(F8・1/2000秒)ISO 1600

「プロキャプチャーSH1」で撮影しました。「プロキャプチャーSH1」は連続撮影枚数の最高が120コマ/秒と、プロキャプチャー史上(?)驚きの速さを誇りますが、シャッターの半押し/全押中は、常にAF・AEが固定されます。超高速で撮影できるメリットがある分、動く被写体が常に被写界深度内に収まるよう、あらかじめ被写体の動きを予測するといった、撮影者の経験も必要になってきます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(F7.1・1/2000秒)ISO 1600

「プロキャプチャーSH2」で撮影しました。「プロキャプチャーSH2」は、連続撮影枚数の最高が50コマ/秒と「プロキャプチャーSH1」には及ばないものの、「プロキャプチャー」と比べると倍のスピードで撮影でき、それでいて、AF・AEもちゃんと追従してくれます。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II(F6.3・1/2000秒)ISO 1600

「それなら全部プロキャプチャーSH2でイイぢゃないか!」と思いたくなるのですが、実は「プロキャプチャーSH2」の50コマ/秒を使うためには、以下の対応レンズでなければならないという制約があります。

・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO Ⅱ
・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC 1.25x IS PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO

非対応レンズの場合、シャッター速度は25コマ/秒に制限され、それだと結局は「プロキャプチャー」と同じスペックになります。しかし、「プロキャプチャーSH2」のAF/AE追従50コマ/秒は、本当に魅力的な優れた機能ですので、早く対応レンズのバリエーションが増えるといいなと思います。

なお、プロキャプチャー系の機能、すなわち「全押しした瞬間からさかのぼって半押し中だった過去数十枚を記録する」機能は、「OM-1」がもつ高速連写機能を利用している状態になります。

つまり、「OM-1」のプロキャプチャーは、本来の「OM-1」高速連写機能があってこそ。例えば連写の「SH1」ならシャッター速度の最高は120コマ/秒で、AF・AEは固定。連写の「SH2」ならシャッター速度の最高は50コマ/秒(対応レンズ必要)で、AF・AEは追従など、スペックとしては同じです。

ちなみにプロキャプチャーか普通の高速連写かにかかわらず、「SH1」と「SH2」はブラックアウトフリーでもあります。

「OM-1」で記録できる動画モードの最大は「C4K 60p」(4,096×2,160)。もちろん一般的な「4K 60p」(3,840×2,160)も記録できます。「E-M1 Mark III」、「OM-D E-M1X」は「C4K 24p」および「4K 30p」が最大でしたので、フレームレートが上がった分、同じC4Kや4Kでも動画の動きが滑らかになります。

「OM-1」で撮影した「4K 60p」の動画サンプルを作ってみました

なお、動画の連続撮影可能時間は約90分となっていますが、「ズームなどその他の操作をしない場合」には約160分まで撮影可能となるようです。また、これらはバッテリー「BLX-1」を1個使用した場合のことになります。

その他作例を交えながら

NDフィルターなしでデジタル的にスローシャッター効果を実現する「ライブND」で撮影しました。効果の度合いをライブビュー上で確認できるのでとても便利です。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(F22 1.0秒)ISO 200

ボディ内で合成処理を完結する技術はOMDSの得意とするところで、他にも「ハイレゾショット(上述)」、「ライブコンポジット」、「深度合成」、「HDR撮影」などが「コンピュテーショナル撮影」としてまとめられています。

同じことを繰り返すようで申し訳ありませんが、ダイナミックレンジも高感度性能も階調再現性も本当に素晴らしく、驚くほど高画質になりました。撮った画像をPCで大きく見るたびに嬉しくなりますし、撮るときの安心感にも格別なものがあります。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(F4・1/2000秒)ISO 400

今回は「OM-1」の大きな特徴であるスピード性能を主にとり上げましたが、高画質でレスポンスが良く、それでいて上質なファインダーをもち小型軽量とくれば、スナップにも最適であることは言うまでもありません。筆者は残念なことに、まだこのカメラを持っていませんが、所有できたら間違いなくスナップしまくるだろうなと思います。

OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO(F4・1/6秒)ISO 200

まとめ

オリンパスの系譜をひくOMDS(OMデジタルソリューションズ)のデジタルカメラを筆者が使い続けている理由は、4/3型の撮像センサーを搭載した「フォーサーズ」ひいては「マイクロフォーサーズ」規格を採用していたからです。「フォーサーズ」はデジタル一眼レフ用で、「マイクロフォーサーズ」はミラーレスカメラ用の、4/3型撮像センサー採用規格です。

この規格の痺れるところは、作品を創るのに十分なセンサーサイズをもちながら、他のラージサイズセンサーでは成し得ない、深い被写界深度を得ることができるところ。被写体に近接するマクロ撮影や、遠い被写体を引き寄せる望遠撮影では、目的とするピント面を獲得しながら、必要とする写真の明るさを得ることが、非常に容易になります。

OMDSとしては、そのマイクロフォーサーズ機の長所を、この「OM-1」で最大限に発揮せしめん!としたのではないかなと思います。マイクロフォーサーズならではの連写機能、マイクロフォーサーズならではのプロキャプチャー、マイクロフォーサーズならではの被写体検出AFの進化は、それらを端的に現わしていると言えるでしょう。

さらに、マイクロフォーサーズならではの被写界深度の深さは、スナップ撮影にも有効。何でもかんでもボカせばイイいわけでない、という想いをさりげなく救ってくれます。もちろん、大口径のレンズを使えば比較的大きなボケも得られますよ。そして、センサーとエンジンの進化で大きく向上した高画質、画作りの良さは、それを力強く保障してくれます。

そうした難しいことは抜きにしても、「OM-1」の実力は、すでに多くの人に受け入れられているところ。デザインをはじめ、全体にわたって地道な進化を成し遂げている本機にとっては当たり前の反響ではないかと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。