赤城耕一の「アカギカメラ」
第21回:オリンパスOM-D E-M1Xで撮る、ご近所散歩写真
2021年5月5日 07:00
さる4月3日のことですが、この日は「フォーサーズの日」だそうで、これを記念してOMデジタルソリューションズさんに呼びつけられ、じゃなかったお呼びいただいて、オンラインでマイクロフォーサーズの将来についてあれこれ好きなことを喋ってきました。つい口がすべって、いらんようなことを言ったような気がしますが、本人は忘れています。視聴いただいた皆さんにオトナな対応をしていただいたようで感謝します。
2月に大きな過ちを犯してしまい、オリンパスOM-D E-M1Xをウチにお迎えしたことは以前ここで告白をしました。あれほど大きく重たいマイクロフォーサーズ機はイヤと言っていたのに、手のひらを返すように褒め称えています。ええ、本当は欲しかったのですが、素直ではないので言えなかったのです。信用のならないやつとは私のことです。
それから、はや2か月が過ぎました。E-M1Xは主にアサインメントで、すばらしい活躍をみせています。屋外でもスタジオでもバシバシ使用していますので、私にしては珍しく、早いうちにモトが取れたカメラになりました。
とはいえ、そこそこ図体が大きいものですから、プライベート撮影で持ってゆく場合は気合いと使う理屈が必要です。でも紆余曲折の末、せっかくお越しいただいたのですから、最近ではなるべくE-M1Xを持ち歩くようにしています。
もっともプライベートでの撮影はアサインメントではなく、人にカメラを見せびらかすという重要な目的もありますので、状況にもよりますが、「カメラとレンズは小型軽量が正義」であるとする私でも、カメラ、レンズの大きさと重さは気にならなくなることがあります。はい。矛盾だらけの人生です。
先日もニコンF2 Photomic AS+MD-2+NIKKOR Auto 180mm F2.8(Ai改)という装備でプライベートでスナップを撮ってきました。撮影はとても楽しく、周りに見せびらかすのもうまくいったのですが、重たい装備なので撮影中に脇腹を痛め、今でも体をひねると少し違和感があります。楽しさと、重量装備のトレードオフということになりました。
本題に入ります
こんにちは。そういうわけで還暦をすぎました運動不足のアカギです。一部の地域では緊急事態宣言下のGWでしたが、お元気でお過ごしでしょうか。またどうでもいいプロローグが長くなってしまいましたが、さて、仕切り直して、今回の本題であるOM-D E-M1Xの話をします。
昨年11月のことです。突如としてOM-D E-M1Xの値下げが発表され、オンラインショップでは37万1,800円から19万5,800円となりました。
この値下げの理由は話題の超望遠ズーム、M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROのポテンシャルを最大限に引き出すためにOM-D E-M1Xが必要であるということから値下げに踏み切ったのではないかと想像しています。両者の組み合わせでは、35mm判換算画角で1,000mm相当でも、強力な7.5段相当の手ブレ補正を効果を利用すれば手持ちでも撮影できるみたいです。すごいなー。
でも、カメラとレンズ両者を同時に購入していただくにはちょいと高すぎるんじゃねえのかということで、値下げされたのでしょうか。
最近のミラーレス機って、カメラそのものが売れないからなのか、ボディもレンズもえらく高いものばかりになり、職業カメラマンが使う機材コストとしては見過ごせない価格設定になっています。そんな中にあって、OMデジタルソリューションズは本当に素晴らしい決断をしました。
私も今回のこの値下げでは驚いたクチです。この超望遠ズームも仕事さえあればいつか欲しいですね。なかなか美しい仕上げだし。ただこのレンズで何を撮るのかという大問題は永久にクリアできないと思いますけど。
それにしてもOM-D E-M1 Mark IIIよりも、E-M1Xのほうが廉価に販売されていたりするわけですから、これは私にとっては見過ごすことができなくなりました。なぜならば、重たいけどエラソーに見えるカメラは、プロには時として必要になることもあるからです。ええ、以前言われたことがあるんです某スタジオで。「オリンパスを使っているカメラマンは初めて見ました」って。
ったく、いいじゃねえかよと思ったけど。でも小心なものですから、オリンパスでもデカいカメラは必要なんじゃないかと内心思っていたこともあり、値下げで背中を押されたわけです。以前の記事のように、少し大きめのフォーサーズレンズを装着した時の迫力は35mmフルサイズミラーレス機と互角です。
E-M1Xが到着し、箱を開けたら、同梱されている取り説の厚さが長編時代小説の文庫本くらいありまして、すでにそこ時点で読むのを諦めた私なのですが、ええ、まあ、こんなもの読まなくてもOM-D E-M1 Mark IIを愛機として長いこと使ってきたので、おおむね操作設定に困ることはありませんでした。
OM-D E-M1Xを最初に見た時は、マイクロフォーサーズ機にしては、少しいかつくて、攻撃的な面もあり、仕事ができそうなデザインだと思いました。ボディの仕上げやデザインに関しては私的に合格です。
ただ、グリップの上に区画整理後の残地のようなわりと広いスペースがあるのですが、本来はここにはボタンとか何かが付く予定だったんでしょうか。この残地は狭小地の戸建てを建築するのが得意な不動産屋さんに売りたいですね。
ボディをホールディングすると、横位置と縦位置で、ほぼ同じ操作性をとることができるようにUIが考えられています。なかなか素晴らしいですが、私は縦位置でもシャッターボタンを下にしてホールディングしますので、このあたりはあまりこだわりません。
バッテリーはボディ下部に縦置きで2個並べて入ります。チャージャーも2台同梱されていますが、バッテリー2個を同時に充電できるチャージャーが必要じゃないのかなあ。グリップは少々ゴツい感じです。手があまり大きくない私にはちょっと困るけど、全体のバランスは悪くないですね。海外の方向けなデザインなのでしょうか。
で、このグリップは分離できない一体型。このため「マイクロフォーサーズ機」としてはデカく、かつ重たいですが、今回はそのことを覚悟の上でお越しいただいたので、もうこれ以上は言わないことにします。
ファインダーの見え方はとてもいい感じです。視野が大きいです。気持ちよく使えます。面倒なので詳しい仕様は調べていませんが、使い始めて2か月の間で違和感を感じたことはほとんどないので優秀なファインダーです。動体の捕捉とか、明暗差の大きな条件でも視認性に問題ありません。
各種ボタン、ダイヤルの操作感、感触も良好。動作音も心地よい印象です。デジタルカメラでスペックと関係ない部分でこだわるって、お金をムダに使うようなところがあるのでしょうか、勇気が必要ですし、本当はたいへんなことなんだろうとは想像します。
機能面で決定的な進化として感じるのは、背面のマルチセレクターでしょうか。いわゆるグリグリです。AFエリアを瞬時に選べるのがいいってことなんですが、確かに便利であります。必要です。でも私なんかせっかちですし、装着レンズの焦点距離によってはあらかじめ撮影範囲がわかるため、じっくりファインダーを見ないので、AFエリアを選ぶのも面倒な時があります。
こういう時はMFに切り替えて撮影したり、AFロックで撮るんだけど、ダメでしょうか? また背面にこれまで見たことのない意味不明なレバーがあるのですが、おそらくこのまま触れずにおけば、無視していても問題はなさそうです。
スペックについては、お約束として少しだけ触れておくことにします。画像処理エンジンをダブルで搭載したことで実現できたという「インテリジェント被写体認識AF」というのがありまして、モータースポーツ、飛行機、鉄道、鳥の4モードから目的のものを選ぶと、機械学習データによりそれぞれの被写体をAFターゲットとして自動検出するみたいです。私はいずれの被写体もほとんど撮らないので、ありがたみはないのですが、そのうちに役立つ仕事が来ることを、この場をお借りして強く希望しておきます。
搭載されているセンサーは有効約2,037万画素ですが、手持ちハイレゾショット機能により、カメラ内で8,160×6,120ピクセル(約5,000万画素)の画像も生成できます。でも私はおそらく死ぬまで使わないし、そんなに高精細な画像を作って、取り扱いはどうするんですか?
ライブNDってのもあるみたいです。明るい場所でも川とか滝とかが流れているように写せるそうです。花鳥風月写真を目指すよりも現代アートに応用できるような気もしてきましたが、取り説で設定を解説するページにたどり着く気がしませんのでたぶん使わないと思います。
AF/AE追従最高18コマ/秒やAF/AE固定最高60コマ/秒の電子シャッターによる超高速連写、シャッター全押しから最大35コマを遡って記録できるプロキャプチャーモード。これらもすごい性能なのでしょうなあ。何を撮るとき、どうやって使うんだろう。誰か教えてください。ちなみに私は虫関連は少々弱含みなので、異なる被写体でご指導、ご鞭撻いただければ幸いです。
それにしても60コマ/秒って、撮影後に最良のコマを選ぶときはどうするんでしょうか。大変ではないのですか。すごい謎です。みんな忙しくないんでしょうか? 私は初代OM-D E-M1のころから、意図的に連写速度を落として設定しています。
画像処理エンジン2個ってのもなんか豪華で凄そうですけど、新しい画像処理エンジンを開発すれば1個ですむんじゃないのかなあ、このE-M1Xのほとんどの機能が、E-M1Mark IIIのサイズのボディに入った後継機、OM-D E-M1 Mark IVとかが登場したら私は怒る予定ですので、どうぞよろしくお願いします。
なんか余計なことばかりを申し上げた気がしますが、全体を見渡すとかなり気に入っているOM-D E-M1Xです。安定感といいましょうか、フラッグシップにふさわしい威厳があります。撮影していて心地よい。これすごく大事です。いや、私にはスペックより大切です。これまでの愛機OM-D E-M1 Mark IIがどうも安っぽくみえてきたことには困りました。先に申し上げたとおりアサインメントで大活躍中ですので、とてもありがたいことです。もうちょい仕事があれば、もう1台お迎えしてもいいくらい気に入っております。ほんとです。
作例はE-M1Xに望遠ズームM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROも使用して、珍しく“望遠スナップ”を楽しみました。このレンズはアサインメントにしか使用していないので、プライベートで使うのは初めてです。35mm画角命の私には珍しい装備といえるでしょう。
マイクロフォーサーズのシステムの中だけでみれば特別に小型軽量なレンズではないですが、35mmフルサイズミラーレス機では80-300mm相当の画角にもなりますし、F2.8という大口径にしたら、仮にこうしたレンズが存在しても持ち歩くのには困難な巨大レンズになるのではないでしょうか。
緊急事態宣言下でしたので遠くには行くことができずにご近所を回って、サクサクって撮影してきました。まあ、いつものことなんですが。
もちろん画質的にも満足。マイクロフォーサーズはさらに画素数を増やすと噂されていますが、私は現状で十分です。それにここまでお読みいただいてご理解いただけたと思いますが、私はOM-D E-M1Xの機能を使いこなせておりません。ただひたすら欲しくなったわけですね。カメラクラスタとしては正しい姿勢であると自負しています。画質は35mmフルサイズやAPS-Cの方が……、っていう比較話も却下。撮影条件や表現に応じてフォーマットサイズを使い分けることができるなら、これからもカメラを増やせる理由になるじゃないですか。
OM-D E-M1Xを肩にして近所を歩くと、定年退職したジジイが、写真を趣味にして、自慢のカメラをぶら下げて散歩しているみたいに見えるようです。近所のおばさんが話しかけてきたりします。
小さいカメラを持ってコソコソした態度をとっていたら、怪しまれてしまうこともあるこの時代です。そこそこ大きなカメラを使うことで、日頃から存在感を示しておくことも重要かもしれないですね。