トピック

イメージセンサー&画像処理エンジン一新で大きく進化……「OM SYSTEM OM-1」レビュー

シリーズ再起動を告げるフラッグシップ

新たにOMデジタルソリューションズとして船出をしてから、 初めて登場するフラッグシップ機がOM SYSTEM OM-1だ。

その機種名にオールドファンならフィルムカメラのOM-1を想起するだろう。当時、大柄なボディで大きなシャッター音を響かせるカメラが主流だった中、世界最小・最軽量をうたう一眼レフとして登場して人気を博した。

約半世紀を経て、その哲学を引き継ぐ新生OM-1。OM-Dシリーズでなじみの多機能性や堅牢性がブラッシュアップされ、抜群の機動力を持つボディに詰め込まれている。新たなファンをつかもうとする意欲的なカメラだ。

※本企画はデジタルカメラマガジン2022年3月号より抜粋・再構成したものになります。

オリンパス OM-1。発売 1972年7月 ※発売当初の製品名はM-1

キーデバイスの大幅な進化がもたらす次世代マイクロフォーサーズ性能

OM-D E-M1 Mark IIIとE-M1Xの次世代モデルとしての位置付けになるOM SYSTEM OM-1は、イメージセンサー、そして画像処理エンジンというミラーレス機において最も重要な2つのデバイスが大きく進化している。

新開発の裏面照射積層型Live MOSセンサーは、受光面積の拡大により高感度耐性などが向上し、さらにデータの読み出しも高速化している。また、センサーのフォトダイオードは4分割され、その位相差情報をAFに活用できる仕様だ。イメージセンサーがもたらす画像データや測距情報を生かすには、エンジンの性能も欠かせない。新エンジンTruePic Xは高速処理に長け、それがAF速度や精度、色や階調の再現性に結実している。

試写後、パソコンで画像を確認したとき、ハッとするほどのみずみずしさに驚いた。シャープネス、階調、色合いなどがこれまでのOM-Dシリーズを大きく超えていたからだ。スペックで示される進化に注目されがちだが、このカメラは美しい写真を撮るという基本性能が大きく向上していることに注目してほしい。

もちろん、この高速処理性能が各種機能の向上にも寄与していることは言うまでもない。新エンジンの能力はすさまじく、まだ余力を残していそうで、今後のファームアップも期待できる。

キーデバイス① 裏面照射積層型Live MOSセンサー

受光面積が広い裏面照射型センサーは効率よく光を捉え、ダイナミックレンジを広げ、高感度特性を上げられる。階調がつながりみずみずしい印象をもたらす、小さなセンサー規格の本機には有効なデバイス。

キーデバイス② クアッドピクセルAF

フォトダイオードを4分割したクアッドピクセルで位相差情報を取得してAFに活用。縦線、横線にも焦点をつかめるオールクロス測距が可能。測距点は1,053点で画面のカバー率も100%を達成している。

キーデバイス③ 画像処理エンジン TruePic X

E-M1Mark IIIの画像処理エンジンTruePic IX比で処理能力が3倍に向上。画像処理やAFの高速・高精度化、ディープラーニングによるAI被写体認識AFにも活用される。エンジンの排熱はボディシャーシに逃がす設計だ。

CHECK 1:階調性と立体感が増した新型センサーによる高画質

画素数こそ従来機と同じ2,037万画素だが、新開発の裏面照射積層型LiveMOSセンサーによって、解像感が高まりノイズも抑えられている。

また、シャドウからハイライトまで階調性も高まっていて、体感としても従来機より写真の立体感やトーンの豊かさが増しているように感じた。新型エンジンによる画像処理性能の向上も、高画質に寄与しているのだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO/8mm(16mm相当)/絞り優先AE(F6.3、1/1,000秒、-0.3EV)/ISO 400/WB:オート
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO/63mm(126mm相当)/絞り優先AE(F4、1/2,000秒、-0.3EV)/ISO 400/WB:オート

CHECK 2:常用感度が2段上がった高感度耐性の向上

新型センサーとエンジンにより高感度の性能も向上している。常用感度は2段上がったISO 25600まで対応し、最高でISO 102400まで設定可能だ。

実際ISO 25600までならば十分実用的だという感触を得た。ISO 12800であればノイズも少なく、積極的に使える。

OM-Dシリーズには強力な手ぶれ補正機能があったため暗所でも静物撮影は困らなかったが、感度が上げられることで高速シャッターも使いやすくなった。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/229mm(458mm相当)/絞り優先AE(F5.6、1/8,000秒、±0EV)/ISO 25600/WB:オート
CHECK 3:AF/AE追従連写は50コマ/秒を実現

電子シャッターによる高速連写はAF/AE追従で50コマ/秒を達成。ファインダー像が消失しないブラックアウトフリー表示に対応、動体を追いながら画面内に収めることが容易になった。

画像編集ソフトOM Workspaceを使えば、大量の撮影画像に対してピント確認やブレの検出をおこない、精度の高い写真を並び替えて表示してくれるので、撮影後のデータ整理もやりやすい。

連写のコマ速は設定から変更可能。AFとAEは固定になるが、最速で120コマ/秒の高速連写も可能となる
ブラックアウトしないので1,200mm相当でも被写体を追いやすい。超望遠域での追い写しはフレーミングが難しく、うまくフレーミングできても、鳥の飛形が美しくなかったり、複数羽の重なり方がうまくいかなかったりするが、連写コマ数が多いとどちらも納得のいく写真をセレクトできる
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO+MC-20/600mm(1,200mm相当)/絞り優先AE(F8、1/1,600秒、+0.3EV)/ISO 1600/WB:オート

CHECK 4:最大8段分に到達した強力な手ぶれ補正性能

これまでもOM-Dシリーズは強力な手ぶれ補正機能を有していたが、さらに補正量が増え、ボディ単体で7段、手ぶれ補正機構付きのレンズとのシンクロで、最大8段分の補正量となる。

また「手持ち撮影アシスト機能」が追加され、スローシャッター時のフレーミングに役立つ。また、ライブコンポジットも手ぶれ補正に対応し、手持ち撮影が可能になった。三脚が必須といえる星の撮影も前述の高感度設定と組み合わせれば、なんと手持ち撮影でも実現できてしまう。

手持ちで4秒間露光して星空風景を撮影した。拡大しても星が点像として写り、ぶれていない。手持ち撮影の領域が大きく広がった印象だ
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO/8mm(16mm相当)/マニュアル露出(F1.8、4秒)/ISO 12800/WB:オート

CHECK 5:主要な動体をカバーするAI被写体認識AF

ディープラーニング技術を活用したAI被写体認識AFは、E-M1Xに装備されていたものを進化させ、バイク・車、飛行機・ヘリコプター、鉄道、鳥、それに動物(犬・猫)が追加されている。新エンジンに搭載した専用回路が高速演算し、精度の高いピント合わせをおこなう。

認識した際には、対象被写体が枠で囲まれる。野鳥で試すと、野鳥の目をカメラが認識しフォーカスしてくれた。

メニューから対象とする被写体を選択する
被写体を認識するとAFフレームが表示されピントを合わせられる
鉄道
飛行機

CHECK 6:デジタル処理の向上で機能が向上したコンピューテーショナル撮影機能

デジタル処理を生かして写真表現を拡張する各種機能は「コンピュテーショナル撮影」機能というメニューにまとめられた。エンジンの処理性能の向上により、従来以上に使い勝手が向上していて、ストレスなく多彩な表現を試みることができる。

ハイレゾショット: 処理時間が大幅に短縮
ライブバルブ: ND64(6段分)まで対応
ライブコンポジット: 手持ち撮影に対応
深度合成: 処理時間が大幅に短縮
HDR: 従来通りに搭載

OM-D E-M1Xから搭載された手持ちハイレゾショットは本機にも搭載されていて、下準備なく5,000万画素で撮影できるようになった。撮影時の画像処理時間が大幅に短縮されて、より常用しやすくなっている。新エンジンの画像処理も相まって一段と高精細に感じられる
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/12mm(24mm相当)/絞り優先AE(F5.6、1/640秒、-1.0EV)/ISO 200/WB:オート
ライブコンポジット使用時も手ぶれ補正に対応し、手持ち撮影も可能になった。また、星へのピント合わせをカメラにゆだねられる星空AFにも対応。ライブコンポジットと星空AFを併用すれば、星の軌跡を描くという華やかな表現も、簡単に実現することができる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO/8mm(16mm相当)/絞り優先AE(F4、50秒、±0EV)/ISO 6400/WB:白熱電球

小型軽量ボディに詰まった多機能性が写真表現への探求心をくすぐる

OMデジタルソリューションズとしての本格始動を告げるかのような本機は、カメラの核心的な性能が磨き上げられ、新会社として力強く船出をしようとする開発者たちの意気込みを感じる1台に仕上がっている。

AFやデジタル処理などのすべてが高速化され、カメラの挙動にストレスを感じることはまずない。AI被写体認識AFは将来を見つめ、長く温めてきた技術だそうで、認識できる被写体が追加されたことはもちろん、ディープラーニング技術を用いた演算能力は前モデルから60倍に引き上げられたそうだ。この機能と50コマ/秒の高速連写を組み合わせれば、瞬間を撮り逃すことがないようにさえ思える。

また、OM-Dシリーズの魅力であったライブコンポジットやライブND、深度合成など、本来はパソコンでの画像処理が必要な表現をカメラ内で簡単に行う機能は、「コンピュテーショナル撮影」機能として集約され、それらも強力なエンジンの処理性能で、より使いやすくなっている。

例えば、ライブNDはND64相当の減光効果を再現できるようになり、ハイレゾショットや深度合成も大幅に処理時間が短くなった。もたつかずに各機能を使用できるため、多彩な表現にチャレンジする意欲がわいてくる。

進化点を並べれば枚挙にいとまがないが、シリーズの特徴でもある小型・軽量性は維持され、耐候性は磨きあげられた。好奇心に任せてどこにでもカメラを連れ出して撮影に没頭し、思い描いたイメージを写真として表現する。撮って表現するという本質的な写真の楽しみを、カメラがしっかりサポートすることを大切に作り上げられているように感じた。

使用レンズは新発売の40-150mm F4 PRO。手前の枯れ草、草を食む馬を克明に描写しつつ、背景の阿蘇外輪山まで自然な写り。開放F4でも周辺光量は十分
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4 PRO/52mm(104mm相当)/プログラムAE(F5.6、1/200秒、±0EV)/ISO 400/WB:オート
霧島高千穂の峰に日が昇る。OM SYSTEMの前身、高千穂光学の名にちなんでこの山を狙った。雲海のなだらかなトーンは新センサーとエンジンの成果だ
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/21mm(42mm相当)/絞り優先AE(F5.6、1/120秒、-0.7EV)/ISO 200/WB:オート
アザミの仲間、ヒゴタイを逆光で狙い露出補正を盛大にプラスにして撮影。ハイライト部が残せる階調の豊さは、OM-Dシリーズを上回る
M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(F1.2、1/800秒、+1.7EV)/ISO 400/WB:オート

制作協力:OMデジタルソリューションズ株式会社