特別企画
フルサイズミラーレス使いの女性写真家3名が語る“本音”カメラトーク
2018年11月9日 19:42
小型軽量なミラーレスカメラが高性能化し、利用シーンをどんどん広げています。今回、いち早くフルサイズミラーレスカメラを使って活躍中の女性写真家3名をお呼びし、プロになった経緯、愛機について、作品に対する想いなどをお聞きしました。
集まっていただいたのはこの方々。3名ともソニーのフルサイズミラーレス一眼、αを愛用されています。
大村祐里子
写真家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。クラシックカメラショップの店員を経て、写真の道へ。福島裕二氏に師事後、撮影のほか、雑誌・書籍・Webでの執筆など、さまざまなジャンルで活動中。趣味はフィルムカメラを集めて、使うこと。
Kyon.J
中国広東省生まれ。2008年秋に来日し、現在は東京で働く会社員。2015年に北海道の雪原で出会った美しさに魅了され、その感動を人に伝えたいと風景写真を撮り始める。2017年夏、ソニーイメージングギャラリーで個展「Amazing Moments」を開催。 2018年11月、初の写真集「GRACE OF LIGHT」を日経ナショナル ジオグラフィック社より出版。
wacamera
東京生まれ、大阪在住のフォトグラファー。金環日食を指輪に見立てた写真がSNSやテレビで反響を呼んだ。現在インスタグラムのフォロワー数は14万人を超え、世界各国の企業とのコラボレーション企画やマスコミの取材などを受け、国内だけでなく海外での撮影も行なっている。2015年に写真集「今宵、空で会いましょう〜shall we jump〜」出版。プライベートでは1児の母。
果たしてどんな話が飛び出したのでしょうか。座談会当日に収録した動画とともに、お楽しみください。これから本格的にカメラを始める方にお勧めの機種や、写真力を上げるためのアドバイスも語ってくれています。
なぜα? お気に入りポイントは?
小さくても画質は本格派
——本日はお集まりいただきありがとうございます。まず、みなさんのお使いのカメラを教えてください。
大村祐里子:α9とα7R IIIです。使用頻度は同じくらいで、どちらも仕事で使っています。
Kyon.J:最初のカメラが初代α7でした。その後もα7シリーズしか使ったことがありません。現在のメインはα7R II。カメラ雑誌の仕事でα7R IIIを使っています。
wacamera:留学するにあたってコンパクトなカメラが欲しかったので、そのときα7S IIを入手しました。動画も撮りたかったし、高感度に強いところにも惹かれました。アイスランドのロケでは、α7 IIIを使っています。
——大村さんは仕事のとき、いつもその2台持っていくのですか?
大村祐里子:はい、1台で仕事に行くというのは不安だし、万が一を考えると2台あって欲しいです。でも歩き回るロケだと、大きな一眼レフカメラを1台しか持っていけないこともあります。それがαにしてからは、当たり前のように2台持っていけるようになったんです。レンズの数にもよりますが、ボディを2台持っていくことは苦にならないですね。
Kyon.J:レンズは何本持って行くのですか?
大村祐里子:少ない時でも最低2本、多い時は5、6本です。ボディが小さくなったので、その分、レンズのバリエーションを増やせています。
——Kyon.Jさんは風景写真なので、旅先で結構歩かれますよね?
Kyon.J:山に登るときは、目的地にたどり着くまで4〜5時間といったところです。やはりカメラは2台持っていきます。岩などにぶつけてカメラが使えなくなると困るので。レンズは本当は1本に絞りたいのですが、広角、標準、望遠の各ズームレンズに加えて、さらにひょっとすると遠くの被写体を撮りたくなるかもしれないので、2倍のテレコンバーター(SEL20TC)も持っていきます。なのでボディは軽い方がありがたいのですが、写真展で使うかもしれないことを考えると画質は妥協したくない。ボディの大きさと画質を、ちょうど満たすのがαでした。
大村祐里子:ちっちゃくてもちゃんと撮れるんですね。
wacamera:そこ大事ですよね。
——Kyon.Jさんは最近ロシアのバイカル湖にロケに行かれ、そこでα7R IIIを使いましたよね。どうでした?
Kyon.J:バイカル湖というのは平均マイナス30度〜40度の世界です。そこで重要なのは、カメラとバッテリーがどれだけ寒さに耐えられるか。寒さで動かない機材がある中、α7R IIIはしっかり動作しました。バッテリーはたくさん持っていったのですが、だいたい1日あたり2つで足りました。
大村祐里子:確かに、いまの第3世代のα(α9、α7R III、α7 III)になって、バッテリーの持ちはかなり良くなりました。以前(第2世代のとき)は4つも5つも必要でしたが、いまなら2個で十分仕事になります。ミラーレスカメラなのにこんなに持つのはすごいですよ。
——1日の撮影枚数はどれくらいですか?
Kyon.J:流れる雲海を連写するような時は150枚くらいになりますね。
——イメージがなかったのですが、風景やスナップで連写をされるんですか?
Kyon.J:私は使いますね。例えば風景の中に人や船など動くものを入れたい時、ここに止まって欲しいという場所で撮るには、連写でないと切り取れないんです。鳥の位置は良いのに翼が開いてくれてなかったり(笑)。連写した30〜40枚の中から構図と条件の良いこれだ!という1枚を選んでいます。
大村&wacamera:わかる!
大村祐里子:CM現場のスチール撮影を担当しているのですが、CMって撮影が一瞬で終わってしまうんですね。その一瞬に俳優のいい表情を撮らないとといけないので連写するのですが、α9は連写が速くブラックアウトがないので使いやすい。今までできなかったことができるようになりました。撮影の音がしないのもこういう仕事ではいいですね。
Kyon.J:広告代理店の仕事で赤ちゃんのCM撮影に立ち会ったことがあるのですが、赤ちゃんが寝ていると撮影現場は音を出してはいけない、というのは体験しました。
大村祐里子:私が好きなところは、音を出す・出さないを「切り替えられる」こと。電子シャッターは無音ですが、メカシャッターに切り替えればシャッター音を出すことができます。先日もパーティーの撮影をしましたが、主賓の挨拶は静かな電子シャッターで、その後の歓談でテーブルを回るときは(雰囲気を盛り上げるために)カシャカシャっと音がしないと。音がする・しないを使い分けられるのはいいですね。いままで静かにしたい場合はカメラにタオルとか巻いてましたけど(笑)
手ブレを意識しなくなった?
wacamera:αのサイズ感は大好きです。大きなカメラの時は、腱鞘炎にならないようにグリップストラップをつけてましたが、αならこのままで大丈夫です。
大村祐里子:小さすぎても持ちづらいけど、このくらいのサイズと重さのバランスが私は好きです。
——手持ちの場合は手ぶれ補正機構が安心ですよね。
大村祐里子:そうなんです。手ブレは仕事だと許されないのですが、最近は(手ブレするかどうか)あまり考えなくなりました。手ブレというものがあったな、という感じ。手持ちで気軽に絞れるようになりましたし。
wacamera:シャッター速度が遅いのに手ブレしてない自分の写真を見て、「私の腕が上がったのかな?」と思ってしまいましたが、多分手ブレ補正のおかげでしょう(笑)それくらい頼って使っています。
——高感度での撮影もされるのでしょうか。
大村祐里子:室内でストロボが使えないというシーンもあるので、感度を上げるしかないときがあります。そういうときも、結構感度を高くしても大丈夫という印象はあります。以前ならISO 800が限界でしたが、いまはあまりノイズを感じなくなりました。高感度がざらつくという時代でもなくなってきたのかなと。
wacamera:それは感じますね。
Kyon.J:展示会などで大きな作品を展示したい時は低感度で撮影しますが、例えば星空や天の川などを撮るときは高感度にします。α7SならISO 8000、ISO10000でもノイズが少なくてびっくりしました。
大村祐里子:Sは高感度でもきれいですよね。
——wacameraさんはα7S IIをお使いですよね。
wacamera:私も高感度画質を優先でα7S IIを選びました。ただ、α7 IIIの高感度画質はそれ以上でした。だからちょっと悔しかったです(笑)。
大村祐里子:α7 IIIは本当に、今までのαのいいところがバランスよく集められている感じがします。
AFが速い!
——wacameraさんはスナップですから、AFはよく使われますよね。
wacamera:9割5分くらいはAFです。第3世代の瞳AFが良くて、「自分の腕が上がったかな」と思うくらい、瞳を追いかけてくれるんです。
大村祐里子:しかもフレームの端の方でも合います。
——基本的には瞳AFをONにしている?
wacamera:ええ、瞳だけでなく、AF全般が速い。アイスランドでは時間がなくて、動いている車中から撮りましたが、外の羊などに速攻で合うんですよ。
大村祐里子:人間の認識より速い気がします。気付く前にもう合っている(笑)
Kyon.J:今後は動物の瞳にも対応するそうですね。犬を飼っているのでとても楽しみ。
wacamera:本当にAFの速さには助かっています。プライベートで娘の運動会も撮るのですが、1枚も外しませんでした。感謝しています(笑)
作品を見せてください!
FE 16-35mm F2.8 GMが好き
——αで撮った作品を大村さんから見ていきましょう。
Kyon.J:これは仕事の写真ではなくご自分の作品?
大村祐里子:そうです。α9にFE 16-35mm F2.8 GMです。
wacamera:発色がすごい!
Kyon.J:壁のザラザラ感もしっかり出ていますね。
大村祐里子:そうなんですよ。色がすごく出てるしシャープ。このレンズは階調の表現にも優れています。
wacamera:私持っているんですけど全然使っていない(笑)
大村祐里子:そうなんですか?もったいない!
大村祐里子:春に撮った写真ですね。これも含めて(今日お見せする作品は)全部FE 16-35mm F2.8 GMです。
wacamera:このレンズはこういう作品も撮れるんですね。スナップにも良さそう。見たままの色ですか?
大村祐里子:見たよりも鮮やかになっています。でも全然いじってないですけど。
大村祐里子:洗濯物に風がふわっと来ているシーンです。
Kyon.J:月島?
大村祐里子:そう、月島(笑)。こういう輝度差があるところでFE 16-35mm F2.8 GMをつけて撮るのが好きです。だいたい飛んだり潰れたりするものですが……
wacamera:洗濯物が白とびしていないですね。右奥の影の自転車のところもちゃんと出ているし。
大村祐里子:そこも後から影を起こしているわけではないです。普通なら撮るのを躊躇する場面ですが、ちゃんと撮れました。
Kyon.J&wacamera:すごーい!
Kyon.J:緑もすごくきれい。私はソニーの緑が好きで、黄色と緑系の色は鮮やかに出ると思います。
大村祐里子:階段で影の中、一筋光が入っているシーンです。
——トーンが残っていますね。
大村祐里子:ええ、そういう微妙なところが出て欲しいのです。αはうまく出してくれます。
大村祐里子:川に桜の花びらが散って流れているところです。これもFE 16-35mm F2.8 GMで焦点距離は20mmです。粒をしっかり写したかったので、シャープに再現されてよかったです。
wacamera:まるで星空みたいじゃないですか。発色も綺麗ですよね。
大村祐里子:青とピンクと緑、それぞれしっかり出ていますね。
Kyon.J:αは小さいので持ち歩きたくなりますよね。
wacamera:そう、(歩きながら気になったものを)ぴゃっと撮れますね(笑)
大村祐里子:うん、それ大事(笑)ぴゃっと撮れないカメラは持っていかなくなる。ぴゃっと撮れて描写もよくないとだめなんです。
絶妙なコントラストとシャドウの表現
——ではwacameraさんの作品を見て見ましょう。
大村祐里子:こういうのはソニーの色ですね! 夕暮れですよね?
Kyon.J:そう、ソニーの色(笑)。わたしもこれではまったんです。
——どこで撮ったんですか?
wacamera:長崎県のハウステンボスです。地面がつぶれず足まで抜けていて、人間の眼の再現に近くなっていません? あちこちいじらないと再現できないものが再現できている。素晴らしいと思います。
wacamera:手持ちで1/60秒、しかも片手持ちで手を伸ばして上から撮りました。ブレていません。
大村祐里子:ぶれる要素しかないのに(笑)。チルト式液晶モニターを動かして撮りました?
wacamera:いえ、EVFもモニターも見ていません。ノーファインダーです。
Kyon.J:水平がちゃんと出ている(笑)
wacamera:レンズはDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAです。大好きなレンズです。
大村祐里子:結構大きなレンズですね? それで片手撮りを?
wacamera:はい(笑)。このレンズに出会ったら、他のレンズが使えなくなりました。あらゆるところでこのレンズが良いと触れ回っています(笑)
Kyon.J:私も35mm F1.4を持っています。
大村祐里子:このレンズ使ってない……
Kyon.J&wacamera:えー、使ってー!(笑)
——ちょっとお高いですけど、価値ある1本です。
wacamera:アイスランドの白夜10時30分頃に撮った作品なので、肉眼での見た目はもう少し暗かったです。
大村祐里子:女性が好きそうな色の出方ですね。
wacamera:これもアイスランドです。DRO(ダイナミックレンジオプティマイザー)を+5まで上げていますが、コントラストがしっかり出ています。
Kyon.J:JPEG撮って出しでも全然大丈夫ですよね。
wacamera:RAWとJPEGを一緒に撮っていますが、結局JPEGを使います(笑)。撮影したらすぐにWi-Fiでスマホに飛ばしてSNSにあげるスタイルなので、JPEGの画質が良いのは重要です。「旅に出てます」とSNSでいっているのに3日後に上げたら、「もういいや」って思われそう(笑)すぐに公開するため、RAW、JPEGのどちらでも撮っています。
大村祐里子:私もパーティーの写真などその場ですぐに写真を渡すことがあります。しっかり色やコントラストが出ているので、JPEGのままで大丈夫です。
——みなさんダブルスロットはどのように使われていますか? RAWとJPEGで振り分けたりしていますか?
大村祐里子:スチールはRAWとJPEGで分けています。JPEGだけ先に納品することもありますから。
wacamera:第3世代になってダブルスロットになったのはとてもありがたいです。
Kyon.J:第2世代はシングルスロット……
wacamera:進化がすごい。
大村祐里子:欲しかったものがどんどん入ってきています。
wacamera:これもアイスランドですね。たまたま結婚式をやっていたので撮らしてもらいました。影になっている男性のスーツの一部が、全然つぶれていない部分に注目していただきたいです。
大村祐里子:コントラストははっきりしているけど、シャドウがつぶれていないのがすごい。
wacamera:撮っているときは感じないけど、後で見返したときに気づいて、「あ、すごいな」と思いました。人間の眼に近いですね。
Kyon.J:白いドレスも(階調が)残っている!
wacamera:足場の悪い崖の上でしたが、カメラが軽いのでバランスを崩さずに撮れています。
wacamera:福井県の東尋坊です。青の出方が本当にすごくて。目で見たのと全く同じ色なんです。普通、レンズやカメラを通すと色は変わるものですが……
大村祐里子:空は特に浅くなるというか。これはいろんな青が出ていますね。
wacamera:波が岩に当たってしぶきになっているところ、ツブツブがしっかり出ています。
Kyon.J:ディテールがしっかり出ている。
大村祐里子:そいういうところがすごいんでよすね。ツブツブは大事(笑)。
氷の世界を見事に写し取る
——次はKyon.Jさんです。これは例のロシア・バイカル湖での作品ですね。
Kyon.J:FE 12-24mm F4 Gの広角側でとりました。実はそんなに大きな氷ではありません。氷の手前で伏せて、太陽が上がるのを3時間くらい待っていました。
大村祐里子:えー!伏せて? 冷たくはないの?
Kyon.J:冷たいですよ(笑)日が昇ったばかりのときは氷の芯まで太陽の光が届きません。10時くらいの光にならないと強さが出ないので待ちました。
大村祐里子:日の出の方が光がきれいなのかと思っていました。
wacamera:下の粉雪、ツブツブがしっかり出ている!
Kyon.J:ピントは氷と後ろの背景の間に置き、F8まで絞りました。そうすると、手前も真ん中も奥もピントがあったようになります。氷の中の筋や模様もしっかり見えてます。
大村祐里子:写りすぎてもはや非現実的に感じますね。私の知っている氷と違う……
——逆光ですがフレアは出てないですね。
Kyon.J:太陽がある程度上にあり、一番フレアが出ないF8だからでしょうか。F8は、このレンズの良さを一番引き出す絞り値だと思います。あとはレンズの角度でフレアが出ないよう調整できます。
wacamera:また手前にツブツブが(笑)
Kyon.J:風に吹かれて削られてできた氷の粉末ですね。ツブツブを前景にして、後ろの山に視線を向かわせる構図です。
大村祐里子:こちらもF8?
Kyon.J:だいたい風景はF8からF10で撮っています。夕日が山の後ろに沈んだところです。バイカル湖には日が沈んだら撤収して去らなければならないルールがあります。これも伏せて撮っています。
wacamera:ファインダーをのぞいて撮るのですか?
Kyon.J:マイナス35度なので、ファインダーを覗くと金属部分と顔の肌がくっついてしまいます。
大村&wacamera:怖い!
Kyon.J:なので、モニターにしか表示されないように設定しています。
wacamera:ではチルト式液晶モニターは便利ですよね。
Kyon.J:はい。超感謝しています。リフレクションを撮る時も水面にカメラを近づける必要があるので、あると助かりますね。
wacamera:これは氷の洞窟の中から撮ったものです。外にちょうど車が来たところを手持ちで撮りました。1/13秒です。
大村&wacamera:えー!! 手ブレしていない!!
Kyon.J:拡大すると車は若干ブレています。でも氷はブレていません。夕日タイムだったので、逆光でつららがきれいに光っていました。最初は自撮りをしようと思ったのですが(笑)、車が来たのでそちらを構図に入れました。連写して撮ったうちの1枚です。
大村祐里子:これこそ連写が生きる場面! いい位置に、真ん中に車がきていますね。
wacamera:しかも氷の青色がすごくないですか? きれい!
Kyon.J:これも太陽が上がった状態で撮ったものです。氷の芯まで光が通っています。
大村祐里子:きれいな色……空の色もまたいいですね。これもソニーカラーかな(笑)。
Kyon.J:最初にお見せした写真の3時間前、朝日が昇る前です。光がふわっとした感じの時ですね。
wacamera:先端に霜みたいなものがついているのが写っていますね。
大村祐里子:またツブツブ(笑)!
wacamera:解像感がすごいですね。
Kyon.J:雄大な景色はマニュアルフォーカスで撮ることが多いのですが、こういうときは余裕がないからDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)にして、オートフォーカスの後にちょっとピントリングを回したりして合わしています。
wacamera:うわーめっちゃきれい……。
Kyon.J:これも夕日タイムです。さっきのつららの写真はこの山の裏側で撮ったものです。車でホテルに向かっているとき後ろを振り返ると、ちょうど沈んだ太陽の光が氷に反射してダイヤのようでした。そこで車を止めてもらって撮った作品です。
wacamera:赤から青へのグラデーションがきれいですね。
Kyon.J:ちょっとオレンジに振られたマゼンタがソニーの(夕景の)カラーだと思います。それが大好き(笑)。
大村祐里子:鳥肌立ちました。
Kyon.J:手持ちで撮っています。太陽を真ん中に入れたので、潰れたり飛んだりしていないかと気になったのですが、RAWデータをみたらセーフ。こういう写真は、今のカメラでしかできないのかもしれません。DROは変えていません。
これから本格的なカメラを使う人へ
今から始める人がうらやましい
——みなさんからお使いのαについていくつもコメントがありましたが、ベーシックモデルのα7 IIIについてはどんな印象を持っていますか? みなさんがおっしゃっていたソニーの絵作りを始め、連写、AF、バッテリーの持ちなど、上位機種から継承していますが。
wacamera:いまからカメラを始める人は恵まれていますよね。うらやましいです。私のように10年前にカメラを始めた人からすれば、最初からα7 IIIを手にできる方がうらやましい。
大村祐里子:昔だったらまず練習や勉強が必要でした。脇を締めたり(笑)。そういうところをあまり気にしなくてもよくなった。撮りたいものだけに集中できるのが今の環境ですね。
wacamera:チルト式液晶モニターがあるから、(思った通りの)構図もつくりやすい。伏せて撮ったりするとドロドロになりましたからね(笑)。
Kyon.J:私は最初からα7だったので恵まれている人なのですが(笑)、それでもαが3年くらいでここまで進化したのはすごいと思います。
大村祐里子:「もうちょっとここが……」と思っていたところができている。それがとにかく早い。
Kyon.J:この3年間、レンズも充実してきました。α7を買ったときは、まだそこまでラインナップが充実していなかった。
大村祐里子:小さなレンズもあるし、ラインナップが豊富。レンズを選べるって大事じゃないですか。
Kyon.J:α7を買った頃は、周りのカメラマンから「レンズがまだないよね」と言われていました。でもこの3年間で、私の好きなG MASTERのラインナップが、どんどん豊富になっている。
大村祐里子:ボディだけで写真は撮れないですから。レンズがあって初めて撮れる。大体どのジャンルの方でもいけるようになりました。
——α7 IIIは21万円くらいです。
wacamera:ありですね。
大村祐里子:α7 IIIも実は持っていて、連写が必要な時はα9、解像度やトリミングが必要な仕事の時はα7R III、1台でいける・1台でバランスをとりたいときはα7 IIIを使っていて、用途に合わせて選べるよさは一つの魅力なんじゃないかなと思います。
——将来性はあると思いますか?
大村祐里子:他のカメラの仕事もしているのですが、新機種が出たといっても「何が変わったのだろう」と差が少ないこともあります。ソニーは使った瞬間に違いを体感できる。この次どこにいってしまうのだろう?って思うほど。
wacamera:第2世代から第3世代への進化の仕方、やばくないですか? 予想ができないんですよね。進化が早すぎて。
大村祐里子:これができたらいいのに、というのが実現されていく。
Kyon.J:α7を使い始めた頃、まだ周りにほとんどプロのαユーザーがいませんでした。その頃は割とおもちゃ感覚、初心者向けという目で見られていたように思います。最近、トップレベルのランドスケープフォトグラファーと一緒に仕事をするチャンスが増えているのですが、彼らは必ずαを1台持っています。それを聞くと私は「仲間が増えた」ととてもうれしいんです。しかもそれが主流となりつつあります。
大村祐里子:どんどんシェアが広がっていますね。
自分の表現に集中できる
——これからフォトグラファーになりたい方に、メッセージをお願いします。
大村祐里子:機材の技術が上がって、できることが増えました。その分、絵作りや表現したいものに集中できる環境になっています。私たちは機材の進化を受け入れて技術的な心配事を減らし、「自分が一番表現したいもの」に精一杯打ち込んでいく。その考え方が、今後もっと大切にされる時代になると考えています。
Kyon.J:楽しいと思う瞬間が一番大事。「カメラ持っててよかった」「写真をやっていてよかった」「これが撮りたかったんだ」という瞬間を見つけるまで、トライし続けることが大事だと思います。私も色々撮りましたが、結局外に出て、見たことがない風景を見た時、「生きててよかった」「カメラ持ってきてよかった」という感覚を初めて覚えました。それをきっかけに、旅をして風景を求めるようになりました。この繰り返しがモチベーションになり、楽しくなっていくと思います。
wacamera:自分が好きなものを真似していく、憧れのものに近づくため同じようにしてみることをお勧めします。同じようにしても何かが違いますが、トライアンドエラーを繰り返していくうちに、自分のスタイルができるのではないでしょうか。それが私の今のスタイルであったり、仕事になるきっかけでもありました。頭で考えるものではないと思うんですよ。花一つ撮っていても、みんなで撮れば写真はひとそれぞれ。怖がらずに飛び込んで欲しいですね。
協力:ソニーマーケティング株式会社