新製品レビュー
SONY α7R III(実写編)
連写、AF、操作性が進化 「ピクセルシフトマルチ撮影」の実力はいかに?
2017年12月12日 07:00
α7R IIIは有効約4,240万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載するソニーのミラーレスカメラである。α7シリーズの中にあっては高画素モデルに位置づけされる、α7R IIの後継機にあたる。
ただし、後継機とは言っても有効約4,240万画素の撮像センサーはα7R IIと変わらない。α7R IIIはカメラ内部のシステムを一新することで、画質・AF性能・連写性能・操作性など、ほとんど全てを劇的に進化させたフルモデルチェンジのカメラである。
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1090571.html
作品
晩秋の渓谷を撮影しに出かけたうちの1枚。樹木の小さな葉の1枚1枚を描き分けた上に、その中の微妙な紅葉の色具合までも完璧に再現している。
画素数は前機種α7R IIと同じであるが、新世代の画像処理エンジンやフロントエンドLSIが採用され、ディテールリプロダクション技術などの画像処理技術が一新されたことによって、解像感はさらに向上していると感じた。
エリア分割ノイズリダクションなどが働き低ノイズ性にも寄与。中感度においてはα7R II比で約1段分のノイズ低減に成功しているという。
下の写真はISO400で撮影したものであるが、この程度の増感ではノイズの発生による画質低下は皆無といってよいレベルだった。風のある日などはISO100では木の枝などが揺れてしまい被写体ブレを起こす危険性があるため、多少の増感ならほとんど変わらない高画質で撮影できるα7R IIIの性能進化は有難い。
常用ISO感度が最高ISO32000まで広がっただけあって、高感度でのノイズ耐性もかなり高い。ISO12800で滝を撮影した写真を確認したところ、暗部に色ノイズが全く見られないことに驚かされた。
水に濡れた岩肌などは、輝度ノイズのせいかわずかな質感低下が見られるが、それも画像を100%に拡大してようやく気付くレベル。A3サイズ程度のプリントではまったく問題なく使用できる非常に優れた高感度特性と言ってよいだろう。
しっとり濡れた植物の群落を、背面モニターを引き出したハイアングルで撮影した。上下チルト式の液晶モニターだと、このようなちょっとした俯瞰撮影も気軽にできるので便利だ。
焦点距離は70mm、シャッター速度は1/20秒と、ハイアングルの不安定な姿勢で狙うには厳しかったが、効果が5.5段分に進化した5軸手ブレ補正のおかげでシャープに撮影することができた。
次はローアングルで水面に浮かぶカエデの葉を撮影。とはいっても、こちらは背面モニターでなくEVFを覗きながら屈んで撮影したものである。
35mフルサイズで大口径レンズを開放絞りで使うと、被写界深度が相当に浅くなるため、ミラーレスカメラならではのファインダーでのピント拡大機能を使い、MFで慎重にピントを合わせた。
α7R IIIは、小型軽量なミラーレスカメラの高画素モデルでありながら、最高約10コマ/秒の高速連写が可能であるところも大きな特長の1つ。飛躍的に向上したAF性能と相まって、アオサギの飛翔を確実に捉え続けてくれた。
ただし、最高約10コマ/秒は連続撮影モードを「H+」にした場合の話。この状態では背面モニターまたはEVFで被写体の動きがリアルタイムに反映されない。
そのため、自然なライブビュー方式で違和感なく被写体を追い続けることができる約8コマ/秒の連続撮影モード「H」の方が、動きの激しい被写体には向いているだろう。
α7R IIIで新たに搭載された「ピクセルシフトマルチ撮影」の効果も面白い。ピクセルシフトマルチ撮影とは、撮像センサーを1画素分ずつ正確にずらしながら4枚の画像を連続撮影することで、約1億6,960万画素相当という途方もない情報から画像を合成する機能。
連続撮影による合成画像なので、三脚などによる確実なカメラの固定と、わずかな動きもない静物の撮影であることが条件だ。
新ソフトウェア「Imaging Edge」で実際に合成される画像は、約1億6,960万画素でなく約4,240万画素なのであるが、落ち葉の質感、特に細密な葉脈の再現性など細部を確認するにつけ、ピクセルシフトマルチ撮影による画像がただの高画質な画像とは一線を画す特別なものであることがわかる。
ピクセルシフトマルチ撮影は、1つの画素がRGBすべての色情報を取得するため、色の再現性においてもより忠実であることが特徴なのである。
同時に撮影した通常撮影の画像と比べると、細部の質感に歴然の違いがあることがわかる。
ピクセルシフトマルチ撮影は合成処理に専用ソフトImaging Edgeが必要であったり、一切のブレを排除したカメラの固定と被写体選びが必要であったりと、撮影成功への道のりには険しいものがあるが、条件さえ適うのであればぜひ使ってみたい機能である。
4K動画機能(XAVC S、3,840×2,160ピクセル、30p、100Mbps)も試してみた。画素加算のない全画素読み出しにより、5K相当の豊富な情報量を凝縮して4K映像を出力しているというだけに、非常に高い動画画質である。
まとめ
α7R IIIは、前モデルのα7R IIより画質が向上している。とは言っても、α7R II自体が高解像・高画質であっただけに、よくよく比較をしてみなければ明確な違いを感じることはあまりないであろう。画質だけに目を向けるなら、α7R IIユーザーは急いでα7R IIIに買い替える必要はないと思う。
ただ、画像処理システムのスピードが圧倒的に速くなっているため、連写性能やAF性能は段違いに“使える”カメラへと変貌を遂げているのは事実である。
その性能は、同クラスの他社デジタル一眼レフカメラに勝るとも劣らないものがあり、α7R IIIなら、何より画質を求める比較的スローな撮影だけでなく、高いレスポンスが要求される動態撮影やポートレート撮影にも余裕で対応するマルチ撮影カメラとしての力があると確信した。「ミラーレスカメラも遂にここまで進化した」ということを如実に感じることができるカメラであるとも言える。
また、今回の試写で強く感じたことは、α7R IIより操作性も格段によくなっていることである。
ボタンやダイヤル類の配置を(実質)上位機種のα9に倣うことで、実際の撮影でも小ささが逆に手に余ってしまうようなことは確実に減った。個人的にはレンズのバランスを考えて、もう少し大きくすることも許されると思うのであるが、それもミラーレスカメラがここまで到達したからこそ起きる要望なのだろう。
このカメラが今後、プロやハイアアマチュアの撮影世界に浸透していくであろうことは想像に難くない。