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触ってきました「ソニーα9」

実機写真を掲載 アクセサリーにも注目

日本時間の4月19日深夜、突如として海外発表されたソニーの「α9」。驚愕のスペックを誇るカメラに対する注目度の高さは、本誌記事へのアクセスの多さからも伺える。4月21日には日本での発売日と価格も決まり、5月26日に税別50万円前後で発売されることが明らかになった。

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そんななか、昨日の今日で実機を触る機会を得たので、現場で得られた情報や外観写真をお届けする。わずかな時間、室内で実機を手にしてみた印象としては、いわゆる上級機種のカメラを象徴する「大きく迫力のあるカメラボディ」「武器のような連写サウンド」が全くないため、わかりやすい驚きがないところが新鮮だった。以下の動画を見ていただきたい。

この通り、秒20コマ連写を試しても、画面内のAFエリア表示がチカチカとして、被写体を淡々と追尾するのみ。振動も動作音も一切なく、しかし確実に撮影されているのは恐怖すら感じる。約2,420万画素のRAWデータを10秒以上も止まらずに撮影できるのも、桁外れだ。小型ゆえ見た目の威圧感はないが、しかし、手放しで「すごい」と言えるカメラであることは間違いない。

さらなる詳報やプロカメラマンによるインプレッションは、また後日期待してほしい。

マグネシウム外装

想定ユーザーは「スポーツ/報道撮影のプロ」

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

ミラーレスカメラがプロの使うカメラになって数年、「やっぱり一眼レフカメラでないと」と言われていたジャンルに、高速移動する被写体を追従撮影するスポーツ写真のジャンルがある。α9は新しい「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」レンズとともに、スポーツの分野を見据えている。ライバルとして、ニコンD5やキヤノンEOS-1D X Mark IIといったフラッグシップ一眼レフを意識しているのは間違いないだろう。

AFカバー範囲。35mmフルサイズ一眼レフとのカバー率の差は歴然
撮影データを有線LAN経由でFTP転送するなど、スポーツ/報道のシーンに向けた装備。下はシンクロターミナル

ちなみにα9は、同社プレスリリースなどにも記載がないように「フラッグシップ」や「最上位機」という位置づけではない。確かにα9はインパクトのあるカメラだが、風景撮影であればより高解像力を持つα7R II、動画メインであればLog対応のα7S IIがそれぞれ最適だろう、との考えからだ。

しかしα9の"9"という番号に、かつてミノルタがフラッグシップ機として送り出した銀塩一眼レフカメラ「α-9」の姿を思い出すベテランαファンには、いくらか思うところがあるのも理解できる。

ファインダーまわり

約369万ドットの有機ELパネルEVFは、現在のミラーレスカメラ市場において高い水準の解像度。パネル同様に見やすさに大きく影響する接眼光学系も、α7R II以降は品位が向上していて見やすい。メガネをかけた状態で目の位置が多少センターからズレても、ファインダー中央部分が歪んでしまうようなことがなく、ストレスがなかった。ちなみに、接眼レンズの最前面にはフッ素コーティングも施されているという。

新規アイピースはα7 IIシリーズとも共通。ロック機構が備わり、カメラを提げている時に体などに触れて脱落してしまうことを防ぐ。

またα9では、ライブビューのフレームレートを60fpsと120fpsから選べる。APS-C機の一部から受け継いだ機能で、より滑らかに表示できるのが120fpsの特徴だが、60fpsにも「より精細なライブビュー表示になり、バッテリー消費も抑えられる」というメリットがある。ファンクションボタンに割り当てて使い分けるのも便利そうだ。なお、連写時は60fpsになる。

メインボード

ボタンやダイヤルにもこだわり

シャッターボタンは、表面形状をリファイン。押し心地も、プロユースを想定して2段目(全押し)を少し浅くしているという。

全体的なイメージはα7R IIなどと変わらないα9だが、ボディの金型も全て新規で、共通の部分は多くない。背面のホイールは大型化し、クリック感もはっきりとした使いやすいものになっていた。

露出補正ダイヤルは、常に操作感のチューニングで悩むところだという。今回は±0位置にロックは設けなかったものの、±0部分の抵抗をわずかに強くし、ゼロリセットをやりやすくしたという。商品企画担当者のこだわりが強く反映された場所だ。触ってみると、ハッキリとわかるほどの感触の差ではないが、慣れれば狙って操作できそうな気もする。※試作機のみの仕様で、製品版には反映されないことが判明しました。(4月26日)

また従来通り、露出補正は独立ダイヤルのほかに電子ダイヤルでも操作可能だ。

ジョイスティックの搭載も歓迎されるポイント。Aマウント機でのノウハウを反映し、さらに操作性を向上させたという。AF-ONボタン、AELボタンの配置は、背面ダイヤル操作時に誤操作しないよう、慎重に検討された。録画ボタンはグリップの外側からファインダー横に移動。

上面に新設されたAFモードダイヤルと、ドライブモードダイヤル。これらは従来ファンクションメニューの中にあり、直接操作できるダイヤルがなかった(Aマウント機にはあったが)。

MRモードの一時的呼び出し

メモリーリコールを、ファンクションボタンで一時的に呼び出せる機能が付いた。類似機能は他社カメラでも珍しく、イベント取材をする筆者にとっては心躍るポイントだった。例えば「ステージ登壇者を1/125秒・F8でストロボ撮影」「スライド画面を絞り優先・ストロボ発光オフで撮影」という切り換えは、なかなかワンアクションで行えない。

α9が想定用途としているスポーツ撮影では、試合の途中でスタジアムのスコアボードを撮るシーンが結構あるそうで、その時に高速シャッターを一時的に遅くして撮れるメリットがあるのだという。

4月24日追記:一時的なメモリーリコール(画面写真の「押す間カスタム設定呼出」)の仕様について、ストロボ発光のオンオフはメモリーリコールに現状設定できないと判明しました。

タッチパネル搭載に

上下チルト式

タッチパネルの用途は、AFエリアの選択をメインとしている。画像再生時はダブルタップで拡大し、ドラッグで表示範囲を移動する。スマホ的なマルチタッチには対応していない。

便利なタッチ操作はメニュー画面でも使いたいところだが、グローブ装用時に使えないことを鑑みて非対応とした。メニュー画面の迅速操作には前後の電子ダイヤルを活用したい。

電子シャッターで歪みは大丈夫?

センサーユニット。5軸手ブレ補正も使える

従来の電子シャッターによる「サイレント撮影」は、高速で動く物体が歪みやすいこととのトレードオフで静かに撮影するための機能だった。α9では積層型CMOSの高速読み出しでローリング歪みを限りなく抑えたため、「サイレント撮影」という機能の見せ方ではなく、基本的に電子シャッターを使い、ストロボ撮影などで必要な時にメカシャッターを使うようなイメージだ。

α9の電子シャッターによる歪みは、フォーカルプレーンシャッターの幕走行によって生じるそれと変わらないレベルだそうで、いわゆる"プロ機"と呼ばれる一眼レフでフォーカルプレーン歪みを気にしたことがないのであれば、α9の電子シャッター撮影に歪みの心配をする必要はないという。

無音撮影ゆえの配慮

便利な電子シャッターだが、これで撮影するとまったく動作音がしないため、撮影しているかどうか自信がもてない。それを見越した機能として、シャッター音(電子音)を鳴らす機能と、レリーズに合わせて画面内でそれを示すインジケーターの点滅が可能。

撮影インジケーターは、枠のような形状と、画面の四隅で四角いマークが点滅するのと2通りが選べる。色も目立つ色・控えめな色があり、合計4パターン。プロの好みがそれぞれだったことから4通りを用意したが、まったくオフにすることも可能だ。

また、連写の1コマ目だけわざとファインダーをブラックアウトさせる機能もあり、シャッター全押しで連写が始まったことを撮影者に知らせる。とにかく細やかなカスタマイズ性を持たせることに注力した印象だ。

グリップの「小指余り」を解消するアイテム

別売アクセサリーの「グリップエクステンションGP-X1EM」を使うと、α7R IIと変わらないα9の小型ボディでも小指が余らずにホールドできるようになる。これまでは小指が余ることに対して縦位置グリップを推奨してきたが、せっかくの小型軽量をスポイルしないように考案された。素材はアルミ削り出しで軽量化に注力。固定ネジを半回転ほど緩めれば、回り止めのピンで固定されているグリップ部分を回して、バッテリー室にもアクセスできる。α7 IIシリーズでも共用できるため、人気のアクセサリーになりそうだ。

縦位置グリップ

これまでは、AFモーター内蔵のAマウントアダプター「LA-EA4」と干渉することを気にして、縦位置グリップのグリップ部分が少し薄くなっていた。現在ではフルサイズEマウントレンズも充実し、モーター非内蔵のAマウントレンズとの互換性より、最新システムでの撮影性を取った。実に現実的な判断と言えよう。

開放F11測距に対応

「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」はテレコンも併用でき、2倍テレコンを付けると望遠端800mm相当になる。α7R IIでは開放F8までが像面位相差AFのサポート範囲だったが、α9は開放F11まで測距できるため、FE100-400mmに2倍テレコンを付けてもAFが使える。

瞳AFが向上

ブラックアウトフリーのメリットとして、ポートレートでも表情を追いやすい。近年のミラーレスカメラには顔検出機能から発展した「瞳AF」が広く搭載されており、ミラーレスカメラならではの高精度AF+瞳AFを活用して、歩留まりの高いポートレート撮影を好むプロも少なくない。α9では瞳の追従性能を従来以上に高めているそうだ。

フリッカー低減機能は?

人工光源のちらつきを検出してレリーズタイミングを微調整し、色ムラなく撮影できる「フリッカー低減」といった機能が、近年の一眼レフに搭載されている。α9ではこれに相当する機能は現状ない。「スポーツ撮影のプロは、フリッカー低減機能でレリーズタイムラグが変わることを好まない人もいる」というのが理由で、しかし要望が多ければ今後対応することは可能だという。

バッテリーチャージャー

単体のバッテリーチャージャー

単体の急速チャージャーが付属する。引き続きカメラ本体内でのUSB充電にも対応。別売の縦位置グリップ装着時には合計2本を一気に充電できる。

microUSB端子(一番下)

また「外付けマルチバッテリーアダプターキットNPA-MQZ1K」は、ヘビーユーザーにお勧めできる多機能アクセサリー。バッテリー4本で連続撮影できるのはもちろん、このアダプターにAC電源を繋げば、バッテリー4本を一気に急速充電できる。

また、このアダプターは先端部を取り替えてα7シリーズで使ったり、2つのUSB-A端子からモバイルバッテリー的に電源を取ることも可能だという。動画用リグに取り付ける固定ネジがあるので、LEDライトなどの電源をここから取るのもいいだろう。

α9本体のバッテリー室
FE 24-70mm F2.8 GM

本誌:鈴木誠