特別企画
ポートレート撮影の巨匠、山岸伸さんの撮影現場を見学しました
そこで活躍する1台のノートPCとは……
2018年4月6日 12:00
広告から雑誌まで幅広い活躍で知られるポートレート撮影の第一人者、山岸伸さん。先日も写真展「瞬間の顔 Vol.10」を成功されたばかりの山岸さんですが、そのキャリアの偉大さと活動の深さについて、業界で知らない人はいないでしょう。詳しくは以前公開したこちらの記事もご覧いただければと思います。
幸運にも先日、そんな山岸さんの撮影現場を間近で見られるチャンスが到来! 貴重な体験をレポートしたいと思います。
撮影現場入り!
3月某日午前中。今回の撮影は、グラビアアイドルの荻野美央さん、あおいさんを山岸さんが撮影するという内容。加えてアシスタント3名(近井沙妃さん、佐藤直大さん、山口幸治さん)にメイク1名(高橋優さん・FRINGE)という陣容で、集まった面々は着々と準備を進めます。
山岸さんのカメラはOLYMPUS OM-D E-M1 Mark II。撮影中、山岸さんはEVFを使わず、背面モニターで構図を決めていました。フィルム時代からの巨匠にしては意外ですが、これがいつものスタイルとか。
頻繁にモデルとアシスタントへの指示が飛び、華やかでありながらも緊張感漂う現場。スタッフ全員が役回りを把握し、最高の1枚のため無駄なく的確に動きます。山岸さんの指示にもまったく迷いがない。それでいて山岸さんはジョークでスタッフを和ませることも。
撮影現場につきそうことは仕事柄数多いのですが、近年は5名以上のチームの現場を見学することはほぼありませんでした。さすがフィルム時代を含めてキャリアの長い山岸さんの現場だと、しばらくは何を見ても感心することしきりでした。
撮影結果をスピーディーに確認
ここで興味深いのが、山岸さんのかたわらにある2 in 1 PCです。E-M1 Mark IIとノートPCはUSBで接続され、いわゆるテザー撮影が行われています。テザーといえば古くからMac ProやMac Book Proというイメージがありますが、山岸さんが使うノートPCは薄く、それらとはデザインが違います。マイクロソフトのSurface Book 2です。
Surface Book 2とは
マイクロソフトが発売した2 in 1 PC。前モデル同様、スリムな筐体でハイパフォーマンスを実現するコンセプトはそのままに基礎体力が強化された。
クアッドコア処理能力を備えた第8世代インテル® Core™ i7-8650Uプロセッサ、NVIDIA® GeForce® GTX 1050単体GPU(2GB GDDR5グラフィックスメモリ搭載)の13.5 インチモデルに加えて、同プロセッサにNVIDIA GeForce GTX 1060単体GPU(6GB GDDR5 グラフィックス メモリ)を搭載した15インチモデルも選べる。
スリムノートPC離れした高速性能と、タッチパネル対応でかつ広色域のディスプレイは、以前よりフォトグラファーから高い評価を得ている。
ご存知の通りテザー撮影とは、カメラで撮影した画像が自動的にPCに送られ、その結果その場でセレクトやレタッチが可能になるというもの。スタジオ撮影では頻繁に見られる手法です。ただし転送された画像を即座に表示するには、PC側にある程度のマシンパワーが必要。高画素なカメラが増えた現在はなおさらです。実際、撮影のリズムに関わることから、クライアントの要請がない限り使いたくないというカメラマンも知っています。
で、現場にあったSurface Book 2はというと、これがかなり速い。大量の撮影画像を次々と表示する様に驚きました。しかも途切れることなくスムーズ。安定しています。時には撮影した画像をSurface Book 2の画面でモデルに見せて、コミュニケーションの一助とすることもあるそうです。今回の現場でも「いつもよりきれい!」「雰囲気がちょっと変わったね!」と、撮影の合間にモデルと盛り上がる場面も見られました。
テザーに使われていたソフトはカメラメーカー純正の「OLYMPUS Viewer 3」なので、それほど特殊なものではありません。連写を多用する現場ではなかったものの、モデルのポートレート撮影だけあってショット数はそれなりにありました。それが次々にSurface Book 2に送られ表示される様は圧巻です。しかもノートPC1台というシンプルさ。
その後も背景を変えながら、ハウススタジオでの撮影は続きました。その間もSufare Book 2もキャスター付きのラックに載せられ、山岸さんのそばに寄り添うように離れません。もはや撮影機材の一部といってよい印象を受けました。
タッチペンで直感的にレタッチ
撮影の合間、Surface Book 2を覗き込む山岸さん。画像を確認するとアシスタントに、「影を薄くして」「シワを目立たないように」と指示します。撮影時、どうしてもフォローできない細かな修正が出てくるのは仕方がありませんし、こうした確認を現場ですぐにできるのもテザー撮影の強みです。
が、今回は少し違いました。指示を受けたアシスタントはSurface Book 2のペンを取り出し、即座に修正に入ります。それを見守る山岸さん。「いいね、それでOK」。指示を出す方も受ける方も指差しつつのコミュニケーションとなり、直感的かつ確実だと感じました。
Surface Book 2の画面はタッチパネルなので、拡大表示もこの通り。見たい箇所を素早く確認して次の撮影に移ります。
タッチペンで編集作業ができる点も重要でしょう。山岸さんが指差す場所を、アシスタントはそのままペンで範囲指定。細かい作業もスピーディに行われていました。
アシスタントの佐藤さんによると、こうした作業は日常的だとか。事務所に戻ってからじっくりレタッチするのが基本ですが、ブログやSNSにすぐ投稿することもあるため、今回のような現場でのレタッチも当たり前だといいます。
加えて現場の空気の中、山岸さんの即断をアシスタントが受けてレタッチを行い、次のカットに生かすという、一連の流れが生まれていました。それを画面を通して見ることで、スタッフ皆が山岸さんが目指す最終目的を共有するという、大きな意義がそこに込められているようにも感じました。
いまやPCは撮影で大切な存在に
今回はハウスタジオ内の3ヶ所で撮影がありました。それぞれを拝見しましたが、さすが山岸さんの撮影現場だけあって勉強になりました。何よりも完成形という同じ目的に向かって、スタッフ全員が一丸となり山岸さんを中心に動いている姿に感動。カメラなど機材が進化したことで、フィルム時代に比べると個人での裁量が増えてきている現在、ともすると撮影は個人の技量に帰するものと思われがちですが、こういうチームでの制作だからできることもあるのだなあと、いまさらながら感動した次第です。
そしてチームの一員として、Surface Book 2もしっかり役割を果たしていました。山岸さんの事務所では、このSurface Book 2を3台所有しているとのこと。「Surface Book 2を選んだ理由は、撮影のスピードを上げるため」という山岸さん。もはやなくてはならない機材の一つとして、高い信頼を得ているようです。
どのように写っているかをすぐに確認し、その場でレタッチする。そのワークフローをスタッフ全員が共有しながらそれぞれの役割を果たし(ときには臨機応変に役割をチェンジしつつ)、キビキビと撮影が進んだことが強く印象に残りました。
制作協力:日本マイクロソフト株式会社
現場撮影:佐藤倫子