赤城耕一の「アカギカメラ」
第52回:これぞ、“シン・OM-1”と呼ぼうではないか!
2022年8月20日 09:00
はい。8月20日になりました。学生のみなさんは、夏休みも残り少なくなり、宿題に追われる日々かと思います。リミットが近づいておりますね。大丈夫ですか?
社会人のみなさん。残暑厳しきおり、汗水、鼻水を垂らしながら、すでに労働に励む日々を送っているかと思います。お仕事ご苦労さまでございます。
底辺で生きているアカギは、夏休みシーズンは本業の撮影仕事が減りますので、自宅の狭い仕事場の片隅で膝を抱え、天井を見つめて、静かに来し方と行く末を考えながら、日々を過ごしておりました。はたして年末まで生きて行くことができるのでしょうか。
こんにちは。あらためまして気を取り直し、前回に引き続き、OM SYSTEM OM-1を考える後編をお送りしたいと思います。今回もおつき合いのほど、どうぞよろしくお願いします。
OM SYSTEM初のフラッグシップ・ミラーレスカメラが、かつてのオリンパスフィルム一眼レフカメラと同じ名称である“OM-1”名を冠したということは、古くからのオリンパスユーザーにとっても大いに刺激になりました。
これはマーケティング的にも戦略があったのでしょうけど、若い人は“OM-1”の栄光の時代はご存じないと思うので、「おまえ、こんな大胆な名前をつけて本当に大丈夫なんだろうな? あ?」とか、ジジイは少し心配になりましたよ。
しかも筆者はフィルムのOM-1を半世紀近く、今もまだ現役で愛用していることもあり、その布幕横走りのトロンとしたフォーカルプレーンシャッター音を聞くと天にも昇る気持ちになります。もう人生を振り返る年齢ですから仕方ありません。
そういえばライカやペンタックスにも、フィルムカメラ栄光の時代と似た機種名を冠するデジタルカメラがあったりしますよね。私以外は皆さんオトナなんで、素直に受け入れます。いずれも同名であることの心配は杞憂に終わっています。
でもね、昔を知るジジイは、これらの古いカメラの名前を街頭で耳にしたりすると、思わず脊髄反射で振り向いてしまうわけです。まるで犬ですね。
今後、筆者にOM-1の話をするときは気をつけてくださいね。筆者は必ず「OM-1? 古い方か新しい方か、はっきりさせてから話をしてくれ!」とかクレームを入れたりする可能性がございます。ええ、年寄りなんでわりとウザいです。いずれにしろこの新しい「OM-1」は大きな責任を担い、かつユーザーの強い期待を集めるものとなりました。今ふうに言えば「シン・OM-1」と名づけたいくらいでありますね。庵野監督すみません。
筆者がこういう気持ちになっているのは、OMDS(OMデジタルソリューションズ)としては“してやったり”ですね。ジジイ相手にはこの「昔の名前を使用しています作戦」は間違いなく成功しましたが、それだけではありませんでした。かつてのOM-1を知らない世代を含め、老弱男女を問わず多くの人に歓迎され、受け入れられました。これには長年にわたる“OM-1”ユーザーの筆者も感激で、大成功であると言って良いと思います。このあたりもシン・ウルトラマンと同じです。
ちなみにカメラ本体に「OLYMPUS」のエンブレムがついたカメラは、このOM SYSTEM OM-1で最後となるそうです。そういう意味では歴史に残るエポックな機種にもなります。開発陣も、この責任とプレッシャーを相当に感じているはずです。また、安易に続編を作ってしまうと“シン・OM-1”ではなくなってしまいますので、ここで釘を刺しておきますね。
でもね、今後のカメラに付けられるエンブレム(銘板)は大丈夫なのかなあと、いらん心配をしそうになります。「OM SYSTEM」は長いですし。「OM707」みたいなエンブレムになったらどうすんねん(知らない人はググってね)とか思いませんか?
いっそのこと、カメラ名のないカメラにするとかダメですかねえ。1960年代の初頭には「ノーネームコンタックス」あるいは「ノーネームキエフ(キーウ)」と呼ばれたカメラが売られていましたね。あるいはエンブレムを真っ黒にするとか。あ、これもライカとペンタックスがやってるのか。
さて、最新のデジタルカメラとして蘇ったOM-1のチャームポイントはどこにあるのでしょうか。
パッと見のデザインに、それほど新鮮味は感じません。コンサバと言ってもいいくらいでしょうが、洗練されていると思います。手にした感じで素晴らしいのはグリップ感がとてもいいことです。手の大きい人にもこれなら大丈夫じゃないのかな。
デジタルOMの初号機であるOM-D E-M5と同様に、OM-1は“一眼レフスタイル”を踏襲しました。ミラーレスという新しい分野のカメラなのに何故、こうしたデザインになったのか。筆者は意地悪ですし、カメラに関しては保守的な傾向ですから、少々抵抗感を持ってOM-D E-M5を見ていました。ミラーレスなのだから、PEN E-P1のような、フラットタイプデザインを発展させてゆくのが筋ではないかと個人的には思ったからです。
ところが冷静に考えてみると、これは逆かもしれないのです。本格的なミラーレスカメラとしての仕様を考え、機能的な発展を目指したら、一眼レフに似てきてしまうのは、むしろ必然となるのかもしれません。これはOMだけには限らないわけですけれども。
EVFの性能を高めようと考えるならば、大きめのLCD/OLEDパネルと、設計に無理のない接眼光学系を収めるスペースが必要ですから、どうしても一眼レフに似たスタイリングになってしまうわけですね。一眼レフデザインの特徴はファインダーアイピースが光軸上に位置し、高性能の大きなEVFを採用していることですが、これでやっとファインダーを覗きやすく、長焦点レンズを装着してもホールディングバランスに優れたカメラが仕上がるわけです。機構としての“一眼レフ”はもう数が少なくなりましたけれど、これ、カメラのデザインとしては永遠に生き残っていくのかもしれないですね。
でもね、最近になってあらためて思うのですが、OM-1は一眼レフスタイルのミラーレスカメラの中でも美しいデザインだと思います。これは筆者がミラーレス黎明期に登場したOM-D E-M5に抱いた印象と真逆という印象です。人間の価値観も変わりますが、どうも最近はブサイク、じゃない、筆者の好みではないスタイリングのカメラが増えてしまい、とても選択が悩ましいわけです。筆者はカメラの価値はデザインが全てだと思っておりますのでなおさらです。