新製品レビュー

ソニー α7R V

“αシリーズ史上最高の解像性能機” AIによる被写体認識の性能は如何に

11月に発売されたソニーの「α7R V」は、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ。α7シリーズのなかでも高解像モデルに位置しており、名称の「V」が示す通り、5世代目にあたる最新機種になります。

高解像モデルですので、解像性能の高さはもちろんなのですが、それだけでなく、AF性能も新次元といえるくらい高くなっていることも、本モデルの大きな特徴です。

ファットになった外観デザイン、そのわけは?

α7R Vの、高さ×幅×奥行・質量(バッテリーとカード含む)は、96.9×131.3×82.4mm・約723gとなっています。前モデルのα7R IVと比べると全体わずかに大きく重くなっていますが、いまどきの高画素タイプのミラーレスカメラとしては標準的、むしろ小さく収めている方だといえるでしょう。

とはいっても、厚み(奥行き)が大幅に増しており、いくぶんファットになった感は否めません。ファインダーが突き出しているデザインなので分かりにくいかもしれませんが、「グリップからモニターまで」の厚みをα7R IVと比べると、67.3mmから72.3mmまで増大しています。

厚みが増したと感じる大きな要因は、モニターの厚みが増したこと。でもこれは決してマイナス要因ではありません。α7R Vには新開発の「4軸マルチアングル液晶モニター」が搭載されているのです。

3軸で光軸をズラすことなく縦位置撮影と横位置撮影に対応したモニターはこれまでにもありましたが、4軸で自撮り位置にまで対応した可動式モニターは同社初となります。

縦位置撮影でも光軸上からモニターがズレることなく撮影できるのはありがたい限り。しかも、グリップを握った右手が、上にくる構えにも下にくる構えにも対応してくれます。本当にありがたい。

また、チルト式にバリアングル式を組み合わせるという思い切った発想はパナソニックの「LUMIX S1H」に先例がありますが、「α7R V」はモニターを横に広げなくても上下にチルトさせられます。その状態でローアングルだけでなくハイアングル撮影もやりやすいところが便利です。

動画配信などで便利なモニター位置も当然普通にできます。この仕様なら静止画撮影中心のユーザーも、動画撮影中心のユーザーも納得というものでしょう。ちょっとくらいカメラの厚みが増したことなんて、まったく問題でなくなってしまいます。

最新世代中トップクラスの操作性

操作性に関しては、基本的に前モデルの「α7R IV」を踏襲しています。初期のころの「α7R」、「α7R II」、「α7R III」に比べると、ボタンやダイヤルなどの配置やサイズが改善され、ずいぶん使いやすくなっています。

それでも、他のα7シリーズにあわせ変更された箇所も、いくらかあります。例えば、「モードダイヤル」と同軸下には「静止画/動画/S&Q切換ダイヤル」が新設されました。「α7R V」は、動画機能も高いものがありますので、当然の変更といえるでしょう。

「α7R IV」では「露出補正ダイヤル」だったのが、本機では「後ダイヤルR」になっています。もちろん露出補正ダイヤルとしても働きますが、撮影モードごとに必要な設定を変更できるようになりました。これも他の現行α7シリーズと同等です。

ファインダーは、0.5型約576万ドットから0.64型944万ドットへと、大きな進化を遂げました。もちろん視野率は100%で、倍率に至っては約0.9倍を達成しています。約944万ドットで、約0.9倍の倍率というと、あのフラッグシップモデル「α1」と同じ。あの奇跡のように見やすく美しいファインダーが「α7R V」に継承されているとは驚きです。

カードスロットはダブルスロットで、両スロットともにCFexpress Type A カードに対応しています。CFexpressの2枚挿しとか、もうこれフラッグシップといってイイのではないかとすら思えてきます。ちなみに、「α1」と「α7S III」がダブルスロットの両方がCFexpress対応で、「α7 IV」はダブルスロットのうち片方だけ対応する仕様になっています。

ダブルスロットは両方とも、CFexpress Type AカードとSDカード(SDXC、UHS-I・UHS-II、ビデオスピードクラスV90まで対応)に対応するマルチスロットですので、SDカードの2枚挿し、あるいはCFexpress Type AカードとSDカードの共用といった使い方も可能です。

ここは、CFexpressでもType Aのメモリーカードを採用したソニー機の強みで、CFexpress Type B カードを採用したデジタルカメラには真似できないところです。転送速度ではType Bに劣るType AのCFexpressカードですが、SDカードとの共用を考えると、意外に大きな実用性がありますね。

その他、現行最新機種が搭載している、「電源OFF時にシャッターを閉じる」機能も搭載されています。カメラの電源をOFFにすると、シャッター幕がシールドのようにイメージセンサーを覆ってくれるため、レンズ交換時のホコリの侵入などで安心感があります。初期設定では、機能がオフになっているので注意しましょう。

α史上最高を謳う解像性能

搭載するイメージセンサーは、有効約6,100万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSセンサー。

有効約6,100万画素の裏面照射型CMOSというスペック自体は、前モデルの「α7R IV」と同じなのですが、本機「α7R V」は画像処理エンジンが「BIONZ X」から最新の「BIONZ XR」へと進化し、さらにその「BIONZ XR」が2基搭載されています。

従来比で最大約8倍の処理能力をもつ「BIONZ XR」が2基、これもフラッグシップモデルの「α1」と同じ仕様になります。当然、画像処理能力は大きく向上していますので、高画素センサーの解像性能を最大限に引き出すことができ、ひいては被写体の質感描写も向上しているというわけです。

ソニー α7R V FE 24-70mm F2.8 GM II(F8・1/20秒)ISO 100

「α7R IV」でも十分に解像感は高く綺麗で「これ以上の解像性能ってあるの?」などと思ていましたが、「α7R V」で撮影した画像を見ると、さすが処理能力が大幅に上がっただけあって、非常に隙のない高画質を提供してくれていることが分かります。まさにG Masterレンズの高い描写性能を最大限に発揮できるカメラといえるでしょう。画像処理エンジンの性能が画質に与える影響って大きいのだなあと感心しました。

一方で、常用ISO感度はISO 100~32000と変更はありません。低感度時のダイナミックレンジは15ストップと、かなりの広さを実現していますが、これも「α7R IV」と同じです。

ソニー α7R V FE 24-70mm F2.8 GM II(F11・1/3,200秒)ISO 32000

もともと、「α7R IV」の高感度性能が高画素機とは思えないほど優れていましたので、「α7R V」の高感度性能が据え置きとなっても、さほど問題を感じることは少ないと思います。どうしても高い高感度性能が必要というのであれば、兄弟機の「α7S III」という選択肢があります。

専用ユニットを搭載したリアルタイム被写体認識AF

「α7R V」は解像性能だけでなく、AF性能も優れているのがスゴイところ。AF性能の何がスゴイかというと、新開発の「AIプロセッシングユニット」を画像処理エンジンとは別に搭載することで、「リアルタイム被写体認識AF」の精度が大きく向上しているところです。もはや、前モデルに搭載されていた「瞳AF」とか「動物瞳AF」の次元を超えています。

設定できる認識対象は、「人物」、「動物/鳥」、「動物」、「鳥」、「昆虫」、「車/列車」、「飛行機」となりますが…

認識対象で注目したいのが、「動物/鳥」が追加されたこと。従来は「動物」と「鳥」を個別で認識対象としていましたが、「動物/鳥」が追加されたことで、同じ設定で動物と鳥を認識できるようになっています。もちろん、対象となる被写体がハッキリしている場合は、特定の対象にした方が認識精度が上がると思いますが、いちいち切り換えなくてもよくなったのは便利なことです。

また、新しく「昆虫」が追加されたところもポイント高いです。

チョウやトンボなどは、筆者も比較的よく撮る被写体ですが、なかなか眼にピントを合わせるのは難しいです。

そうしたなかで、今回は「被写体の骨格情報を使ってその動きを高精度に認識する」という、ちょっと信じられないくらい、高度で斬新な技術が搭載された「人物」で試写を行ってみました。

被写体となるモデルが、目を隠すなどの不規則な動きをしても、瞳や顔を適宜素早く捉えていることが分かると思います。瞳を隠している状態であっても、骨格情報や姿勢推定から、瞳の位置を捉えているのには驚きです。動画中にはありませんが、マスクやサングラスをしていても問題なく瞳AFが働きます。

少し画角が異なりますが、同じ場所と条件で撮影した画像です。大量のカットを撮影しましたが、瞳からピントを外した画像はほとんどありませんでした。

ソニー α7R V FE 24-70mm F2.8 GM II(F2.8・1/200秒)ISO 100

被写体への追従性も申し分なく、モデルが前後左右に動いても瞳を捉えつづけ、後ろ向きになるなどで瞳が見えない状態になると、適宜、頭部や胴体を認識しています。そして、再び瞳が見える状態になると素早く瞳をキャッチ。

正確に瞳の位置を把握しているため、被写体深度の浅い大口径レンズなどで撮影しても、ちゃんと瞳にピントを合わせつづけてくれます。通常のAFなら、AFエリア内の距離が近いモノにピントを合わせようとしますので、まつ毛や目じりに合焦してしまいがちなところです。

まつ毛でも目じりでもなく「瞳」にピントを合わせてくれます。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F2.8・1/125秒)ISO 100

というわけで、「α7R V」の被写体認識性能は驚くほど高いことが確認できました。瞳AF自体はそれほど珍しい機能ではなくなりましたが、骨格や姿勢から正確に瞳を検出し、瞳が見えない場合でも、頭部や胴体を認識して追従しつづける速さと精度は抜群に高いと言えます。6,100万画素の高画素機とは思えないほどの優れたAF精度なのですが、それも新たに「AIプロセッシングユニット」を搭載したことで可能になったのでしょう。ソニーらしいパワフルさをカメラから感じました。

8Kも撮れる高精細な動画性能

「α7R V」は、最大で「8K 24p」の動画記録に対応します。実際に8K動画を視聴できる環境はまだ少ないと思いますが、8K撮影素材を切り出してズームアップのようにする4K編集などもできますので、4K派やFHD派でも有効に使えると思います。前モデル「α7R IV」は4K 30pまでしか撮れなかったのでこれは羨ましい。

8K動画となると撮影中の発熱が心配になりますが、上位モデルで培った放熱効果に優れた内部構造を採用しているため、「α7R IV」と比べて約5倍の放熱効果を獲得しているそうです。

一方で、4K動画はというと、これは「4K 60p」まで記録できるようになっています。ただし画角はフルサイズ時の約1.2倍相当になるという、少し変則的な仕様。「4K 30p」や「4K 24p」の場合は、フルサイズ画角になります。…ちょっとややこしいですね。

また、Super 35mmでの6.2Kオーバーサンプリングの撮影も可能で、画素加算のない全画素読み出しから、モアレやジャギーが少なくディテールの再現性や解像感に優れた4K映像を記録できます。この場合のフレームレートは30pまたは40p。

「記録方式」(8K・4K・HDなどを選択)と「記録設定」(フレームレートなどを選択)、「APS-C/S35撮影」(画角を選択)が、メニュー画面上で別々になっているうえ、ある設定を選択すると、別の設定は無効になって選択できないなど、筆者のように動画撮影初心者ですとかなり混乱してしまいます。

裏を返せば、分かる人には分かるハイレベルな設定ができるところが、動画にも強いソニーのミラーレスカメラということになります。だからこそ、本機「α7R V」も多くの人から熱い注目を集めているのでしょう。

その他、作例を交えながら

間違いなく瞳にピントを合わせてくれる「α7R V」のリアルタイム認識AFは、ポートレートを撮る際に最強の味方になってくれるなと強く感じました。筆者所有の「α7 IV」にもこの性能があったらと羨ましくなりますが、本機クラスのハイスペックマシーンでなければ難しいでしょう。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F2.8・1/50秒)ISO 100

日没も近い時間帯での撮影。撮影中は日の加減で大きく色温度が変わる条件でしたが、ホワイトバランスオートで、ほぼ文句のない適切なホワイトバランスを得ることができました。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F2.8・1/60秒)ISO 400

カメラ前面に搭載された「可視光+IRセンサー」と「AIプロセッシングユニット」による精度向上とのことですが、実際に歩留まりがとてもよく優秀でした。


「動物瞳AF」のパイオニアであるソニーだけに、動物の瞳を捉える能力も間違いありません。「人物」と同じように、瞳が見えないときは体全体で認識しており、追従性能は明らかに向上しています。

ソニー α7R V FE 24-70mm F2.8 GM II(F2.8・1/125秒)ISO 1600

新しく搭載された「動物/鳥」で撮影した画像ですが、鳥も迷うことなく認識しました。いちいち切り換えなくて良いのは、やはり便利。将来的には全ての対象が自動的に認識されるようになると嬉しいですね。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F2.8・1/800秒)ISO 400

もちろん、ネイチャー写真や風景写真などでも高解像モデルとしての真価を発揮してくれます。質感描写が従来機より優れているので、植物の表情をリアルに捉えることができます。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F5.6・1/100秒)ISO 400

建築物も詳細に写し撮ります。櫓や石垣に樹木の葉など、異質なものが一緒になった写真ですが、それぞれの持ち味を完全に引き出している描写性能は非常に素晴らしい。「高画素機は必要ない」と考えている人にも、一度見てもらいたいと思います。

ソニー α7R V FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(F5.0・1/30秒)ISO 100

まとめ

筆者はいま、「α7 IV」を使っていますが、その前は「α7R IV」を使っていました。その視点から本機「α7R V」について感想を述べさせていただけば、「なにこれ!?まったくの別物でないか!」です。

「α7R IV」はα7シリーズのなかで、最も早く4世代目に突入したカメラでしたが、早かった分いまとなっては機能的に見劣りする部分が増えていたのも事実です。例えば、メニュー画面の構成が前時代的だったり、インターフェースも前時代的だったり、電源OFF時にシャッター幕が閉じなかったり、CFexpressカードに対応していなかったり…etc. だからこそ早々と「α7 IV」に乗り換えたのですが、ちょっとそれは早計だったかもしれません。

まず、「α7R V」の画質・画作りは非常に素晴らしい。同じ約6,100万画素でどうしてこんなに差がつくのかと不思議になりますが、それは主に画像処理エンジンの進化。デジタルカメラにおいて画像処理エンジンの果たす役割の大きさを改めて知ることになりました。操作性も良いです。特に、「4軸マルチアングル液晶モニター」の新搭載は、本文中でも書いた通り「そうきたか!」という驚きと喜びでした。そして何より、リアルタイム認識AFが本当に素晴らしい。認識対象が増加したうえに、瞳AFの精度が格段に向上しています。被写体認識AFはもはやなくてはならない機能ですが、「α7R V」はその信頼性を、またひとつ次世代へと押し上げてくれました。

性能で言えば前モデル「α7R IV」と本機「α7R V」の差は歴然としていると言っても、言い過ぎではないと思います。ただし、価格差もまた歴然としているのが困りどころ。購入を決めるには相当な覚悟が必要になります。それでも、連写性能さえ必要としなければ、フラッグシップモデルの「α1」より上回るところもあるので、ある意味お買い得なのかもしれません。

モデル:Arly

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。