新製品レビュー
SONY FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
待望の超望遠ズームの実力をα9 II / α7R IVで徹底検証
2019年12月17日 12:00
ソニーFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS(SEL200600G)は2019年7月に発売された35mm判フルサイズに対応したミラーレスα(Eマウント)用の超望遠ズームレンズで、同時発表された単焦点のFE 600mm F4 GM OSSとともにソニーにおけるコンシューマー向けレンズ交換式一眼カメラ史上で初めて600mm域に達した交換レンズだ。
超望遠ユーザー待望の1本
これまで、Eマウントユーザーが35mm判フルサイズで400mmを越える焦点域を得るには、テレコンバーターの装着や、各種のマウントアダプターを介してAマウントレンズ、他社製レンズを用いる必要があった。連写速度やAF追随性で劣るこれらの方法に縛られていたユーザーにとっても、純正Eマウントのこのレンズはそれらユーザーが追うであろう野生動物や航空機、スポーツシーンに向けた待望の一本である。
このレンズは一眼レフカメラ用で先行していた他社の同レンジ製品が揃って採る前玉が繰り出す直進式ズームではなく、ズームしても全長変化のないインナーズーム方式を採用。ソニーαレンズの中では最多となる17群24枚の構成レンズ内に、EDレンズ5枚、非球面レンズ1枚が入り、ナノARコートが一部レンズの表面に施される。さらに、各部への防滴防塵シーリング、円形ボケが得られる11枚絞り羽根の搭載も特長に挙げられ、ミノルタα時代から受け継がれる高級ライン「Gレンズ」に置かれる。Eマウント「Gレンズ」の中でも白外装の“白レンズ”としてはFE 70-200mm F4 G OSS に続く2本目となり、最高級ラインの「G Master」に引けを取らない存在感がある。
外観デザイン・各部詳細
鏡筒デザインはこれまでの「Gレンズ」や「G Master」白レンズを踏襲する。約31cmの全長はインナーズームのためズーミングでも変化はなく、キヤノンやニコンの200-400mm F4(ニコンの現行製品は180-400mm F4)と比べれば少し小ぶりではあるが、95mmのフィルター径が表す太さもあり、長さ約10cmのフードを装着すれば“大砲”の雰囲気を放っている。
先端からフードが装着されるバヨネット部、「G」バッジがあしらわれる鏡筒前部、ズームリング、フォーカスホールドボタンの環、フォーカスリング、360度回転する三脚座環、そして各種設定スイッチ部があり、最後部はマウントへのくびれとなる。フードはバヨネットでの固定式だが外れ防止のロックはない。「G Master」を含む白レンズの中ではズームリングが初めて先端側に配置され、ファインダーを覗きながらのズーミングが自然なホールド状態のままで行うことが出来る。
マウント側から見て、時計方向9、12、3時の位置に3つのフォーカスホールドボタンがあり、これらボタンはカメラのカスタムキー設定でさまざまな呼び出しが出来る。フォーカスリングはAF設定時、カメラ側でDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)設定を行わなければ、回転させてもフォーカシングされない。FE 70-200mm F2.8 GM OSSとの併用時、ズームリングとフォーカスリングが入れ替わる位置関係から、FE 70-200mm F2.8 GM OSSを構えた際にズーミングのつもりでフォーカスリングを回してしまうことが多々あった。FE 70-200mm F2.8 GM OSSはDMF設定に限らずフォーカスリングを回すとフルタイムマニュアルフォーカスとなる機種のためで、この混同にはその都度、悩まされる。
続いてスライドスイッチ類。上からAF/MF切替えスイッチ。AF時の駆動距離範囲を限定するフォーカスリミッター。手振れ補正(OSS)のON/OFFスイッチ。手振れ補正モードの切り替えスイッチ(ノーマルのMODE1、流し撮り用のMODE2、動体追跡時の画面安定用のMODE3)と続く。スイッチ類が並ぶ上面部には銀文字で浮き上がる銘柄表示がある。
三脚座環にはストラップ用の通し穴がマウント側から見て8時4時の位置に埋め込まれる。三脚座は雲台に据える柄の部分をスライドさせ分離が出来る。座面には手前から3/8インチの大ネジ穴、ねじれ防止のガイドピン穴、1/4インチの小ネジ穴が光軸上に並ぶ。この柄は持ち運びの際に掴むハンドルとして適度な大きさがあるが、固定ノブが右手保持の場合で人差し指の根本に当たってしまうことがレビュー用の個体であった。
では、撮影した画像を見ていただこう。掲載画像はα9、α9 II、α7R III、α7R IVで撮影し、クリエイティブスタイルはスタンダードのデフォルト設定を基本としている。特に記述のないものはJPEGの最高画質で、手持ちでの撮影だ。α9シリーズは電子シャッター、α7Rシリーズはメカシャッターを主に使っている。
周辺減光
空が背景になることが多い航空機の撮影では周辺減光の具合が気になる。
カメラは電子補正でそれを防ごうとするが、ここではカメラ側の補正(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差)をすべて「切」とし可能な限り光学的な特性を見ている。
200mmと600mmで開放絞りと1段絞った計4。いずれも開放絞りでは目立つ減光だが、四隅での急激な落ち込みはなく滑らかなグラデーションを保っている。1段絞った画は補正「切」の画像としては十分に及第点だ。階調補正のDレンジオプティマイザー(DRO)も「切」にした。
周辺減光補正
周辺減光撮影と同じ場所で、α7R IVと組み合わせ、6,100万画素の実力を航空機撮影でどこまで引き出せるかを試した。
カメラ設定の補正系をすべて「オート」とし、DROは「切」に。旅客機撮影の経験から1/1,000秒のシャッター速度優先とし、ISOをAUTOにした。前出の200mm絞り開放の画像では機体の一部分が飽和気味であったため、-0.7段の露出補正で臨んだ。結果として-0.3段で留めてよかったが、白の機体表面の締りは良く、陽炎の影響も少ないので各部の解像が見られる。コントラストが僅かに緩いが、ズームレンズの、それも絞り開放の画にしては満足だ。
ボケ
絞り変化によるボケの違いを見る。200mmと600mmの開放絞りから1段ずつ2段分絞った計6カット。いずれも口径食の影響で開放では周辺の玉ボケが同心円方向に潰れる楕円形になるが、絞るに従い円形が形成され11枚羽根の効果があらわれている。また、開放と1段絞った画でフォーカスの合うクヌギの葉を見比べると、コントラストが向上していることも判別できる。
最短撮影距離
2.4mの最短撮影距離はどれほど寄れるのか。フォーカスを予め至近にセットしマクロ撮影の要領でその付近の世界を覗いた。運河沿いに植えられたローズマリーの花にセセリチョウが止まる。蝶が逃げぬようそろそろと近づくが600mmの最大ズームでも、切り取ったような整った画になかなかならない。
ワンプッシュでAPS-Cフォーマットに切り替えられるようカスタムキー設定を行っていたので、即時に切り替えさらにアップで狙った。絞り開放ながら周辺部を使わないため、玉ボケの潰れも少なく柔らかいボケを背景に置くことができた。α7R IVの6,100万画素はAPS-Cクロップ時は約2,600万画素となり、現在ラインナップされるAPS-C機のα6000番台よりも画素数が多くなる(2019年12月時点の現行最新機種α6600は有効約2,420万画素)。
動物
海辺で回遊するカモメ(ウミネコ)を追った。鳥類を追ったことがある方なら判ると思うが、カモメや鳶など身近な鳥でも飛んでいる時は顔、目といったピンポイントにフォーカスを持ってくるのは難しい。レンズを風下に向け、こちらへと向かってくる個体を狙い続けていると、羽ばたきを終え着地のために近づく一羽がいた。AFエリアをトラッキング拡張フレキシブルスポットに設定し、カモメの顔近辺の形状を認識させシャッターを切った。なお、このカットは撮影時期が本レビュー記事向けの撮影を行った時期とは異なっていたため、RAWデータのみを残していた。そこでソニーの現像ソフト「Imaging Edge」を使い、パラメーターを動かさずにJPEG出力を行うことで他の作例に条件を近づけている。
立ち位置から10mほど離れた堂の屋根で毛繕いをする、高崎山のニホンザル親子だ。親猿の目にフォーカスが来るよう検出対象を動物として瞳AFを試した。猿に対しさまざまな角度から動物対象の瞳AFを試みたが、なかなか検出には及ばず、このような横顔に近い角度では耳を瞳と認識することもあった。顔、瞳は検出せずとも、設定していたフレキシブルスポットAFで陽の当たる左目にフォーカスすることができた。
母猿から離れ陽の当たる岩の上で佇む子猿にフォーカスした。ここでも瞳AFを試す。ファインダー内では時折、瞳を捉える枠が子猿の目と重なって出ていたが、定常的に出続けることはなかった。しかし、フレキシブルスポットAFで瞳近くの形状を認識し追い続けていた。子猿までの距離は3〜4mほど。ピクセルとしての倍率が変わらないことは判っていてもAPS-Cクロップでアップにしたくなる瞳であった。
レンズを三脚に据え、10mほど離れた池の水面を見下ろす枝で休むカワセミにレンズを向けた。何度か捕食のために飛び立つ瞬間を狙ったが、私の技量ではその飛翔の姿をブレもなく、フォーカスが合った状態で捉えることができなかった。負け惜しみで、絞りを絞って羽毛のディテールをクリアに写し出そうと試みた。シャッタースピードは1/160秒。
三脚に付けても僅かな風が吹くだけで映し出されるライブビューに微振動が発生する。ファインダー画像を安定させるためにも手振れ補正のOSSはMODE1に。取扱説明書では三脚使用時のOSSはOFFを奨めるが、この時を含め三脚使用時の静物撮影ではONにした。特に問題はなかったが、場面によってON/OFFを使い分けることが望ましいだろう。
風景
本レンズの開放F値は広角端の200mmでもF5.6、600mmではF6.3と、決して明るいとはいえない。そのためISO感度を極力下げようとすれば、身近な風景や動物への撮影でも絞り開放の画が多くなってくる。よって開放時の画像に見る解像、コントラスト、補正具合にどれだけ満足できるかが要だ。以降の画像ではカメラ側の補正系はすべて「オート」とし、DROは「入(オート)」に設定している。
紅染まった東の空を背景に埠頭に立つコンテナクレーンにレンズを向けた。手持ち撮影のため手振れ補正(OSS)を「ON」の「MODE1」にセット。600mmの画では最低感度のISO 100を維持できる1/125秒を選んだ。中心部の解像は言うに及ばずで、下方隅で僅かに流れるものの不満まではない。200mmの画では下方隅でやや滲みが出た。10月下旬の朝、日の出前の暖かくない時間ながら、大気対流による「もやもや(陽炎)」が画に出ていることが手すりの直線部分で判るだろう。光学性能による像の流れや滲みもさることながら、画に現れるこの大気の揺らめきこそが、望遠撮影時の難敵だと判っていただけるだろう。
補正、倍率色収差
穂の背後からハイライトが当たるすすきに寄った。毛の縁と背景の間に滲みが出やすい状況のため、カメラの補正系はすべて「オート」として臨む。毛の一本一本を見ると各種のフリンジ発生はなく、すっきりと白に輝くすすきの尾花を再現できた。
スポーツシーン
10月下旬に行われた箱根駅伝の予選会、ハーフマラソンの距離を走り終えてのフィニッシュシーンだ。予選会で1位となった東京国際大学の伊藤達彦選手(4年生)が日本人トップとなる個人5位でゴールラインを過ぎる。画面一杯になるように徐々にズームアウトをさせながらシャッターを切ったが、このズーミングでの連写中、AFは顔認識で顔周辺の輪郭を追い続けていたため、安心して画角に集中できた。この画では現われていないと判断できるが、同じく陸上競技でズーミングしながらの連写ではズームブレが原因と思われる、解像不足の画像もあったので、ズーミング中の撮影はズーミング速度を考慮して行うべきだろう。
同じく箱根駅伝予選会でひとコマ。会場となった立川防災基地内の直線道路を南下する中段の選手たち。複数の選手が横にならび、顔認識を表すいくつもの枠が選手の顔に重なって出る。414番、東京大学3年の桝村浩行選手へのフォーカスであるが、このような複数人への顔認識では、例えば最至近の選手を優先するなど、細かい設定が欲しいところだ。
馬術の障害競技を撮影。競技場内に設置されたハードル状の障害物を次々に飛越していく競技だ。競技アリーナは4方が柵で囲まれ、近い障害物で3〜4mメートル、遠い障害物では70〜80m先で、各障害物の飛越を狙うにはこの望遠ズームが打って付けだ。
ランディングバース号を駆るのは小学6年生の女子、小泉可憐選手(北総乗馬クラブ)。馬が障害を跳び越え着地する直前、馬の背は前に傾斜するが自身の身体は垂直に起こし、すでに次の障害に目を向け、見事に乗りこなす姿を見せている。α9 IIのAFエリアはトラッキング拡張フレキシブルスポット設定とし、障害に迫る遥か前よりヘルメットを被る小泉選手の顔付近の形状を認識させ、フォーカスを追随させた。
同じく馬術競技、障害の高さが格段と上がる中障害というカテゴリーに出場する、鯨岡啓輔選手(東関東ホース&ハウンド)がチャーリーブラウンⅠに乗る。障害物までの距離が50〜60mと離れレンズの焦点域も500mmを越えた。障害を越える前から、トラッキング拡張フレキシブルスポット設定のAFは、連写の結果から鯨岡選手の顔とヘルメット形状を認識し追随を続けていたが、時より馬の首が上がると選手の顔が隠れ、馬の頭にフォーカスすることもあった。
鉄道
α9 IIの電子シャッター秒20コマでのAF追随(バランス重視設定)は上々の安定度を見せていたが、一方の高画素フラッグシップα7R IVのメカシャッター秒10コマでの連写追随(バランス重視の設定として)を、日豊本線を走るソニック号で試した。速度100km/h近くが出ていると思われる曲線の外側から車両正面を捉えた。
1/1,000秒のシャッタースピードとあって僅かにブレが出たようだが、フォーカス追随は概ねどのカットでも達成していたと言っていい。線路のカントに対してソニックの883系が内側に倒れる振り子式車両であることが一目でわかる。
航空機
伊丹空港横のスカイパークから撮影したE-190型機だ。全長36mが広角端となる200mmで収まった。機体までの距離はおよそ200m。右から徐々に近づき、目の前を横切って、左に遠ざかる。機体が浮き上がるまでの一連の動きに合わせシャッタースピードを1/160秒とし、手振れ補正(OSS)をMODE2にして流し撮りを行った。この振り速度での補正具合はご覧の通り良好である。α7R IIIでの撮影だがレビューを意識したものではなかったため、RAWをメインとしJPEGは付属的なSサイズとしていることを了承願いたい。
前カットと同じ場所から600mmとして機体のアップを狙う。このE-170型機はE-190と比べやや短胴になる全長30mだが、200mmで撮影した画との違いは判っていただけるだろう。ここでも流し撮りをすべくシャッタースピードを1/125秒とした。もう少し前方の機首辺りを明確に止めたかったが、600mm F4級のレンズに比べコンパクトなこのレンズでの流し撮りは明らかに有利だった。この画像もα7R IIIのSサイズにあたる約1,000万画素である。
9月、東京湾上に入道雲が現われた。ワイドで雲模様を入れる、遠くを上昇する機体をアップにする等、画角の寄り引きを表現方法として用いられるのは望遠ズームならではだ。
これもα7R IIIのSサイズ画像だ。レンズの話からは逸れるが、別途残しているRAWデータの現像出力で、同じようなメリハリある画に仕上げようとしたが、時間的に上手く追い込むことが出来なかった。「高画質」はRAWから、という意識が常にあったのだが、昨今のカメラが出すJPEGの完成度を思い知らされた一枚でもあった。
航空祭の華、ブルーインパルスの演技をα7R IVで撮影。小牧基地のオープンベースで飛ぶ6機のデルタ隊形だ。基地公開時に見せる曲技飛行や機動飛行はここのところ、最低高度が高くなり、超望遠を駆使して画面一杯に機体が入るような迫力ある画にすることは、実のところ容易くない。APS-Cクロップで900mm相当にして、フライバイする6機を収めた。
ブルーインパルスが使うT-4型機。入間基地航空祭で駐機する6番機の666号機を開放エリアから、手持ちの600mmでどこまでシャッタースピードを落とせるかを試みた。OSSはMODE1にセット。このMODE1は通常のノーマルモードとのことだが、静止物に向けたモードと解釈していい。写真は1/40秒。1/30秒でも撮影したがブレの頻度が高く、この1/40秒が限度と思えた。ブレ防止の最低シャッタースピードは1/焦点距離・秒と言われるが、手振れ補正のないシャッタースピードの下限を1/640秒とすれば、その4段分の補正能力があったと計算できる。
岐阜基地航空祭でフライトするF-15DJ戦闘機。2機編隊での離陸直後、左右にブレイクするタイミングだ。機動飛行を撮影するにあたりα9 II、α7R IVと試したが、α9 IIの電子シャッターによるブラックアウトフリーはファインダーでの追随が比較的容易で、本レンズとの組み合わせはズーミングによる画角変化も手軽に行え、自由度が随分と上がる印象だ。
太陽を大きく写せる超望遠での撮影は、太陽そのものの表情、周りに入る遠景の細かさ、そんなものを引き出せば、その場で見た夕刻の空気感を上手く伝えられる。神奈川の西部、箱根の山の向こうへの落日は大涌谷の水蒸気も写した。強い太陽光線は時にフレアやゴーストも画面内に写してしまうが、この画を見る限り、逆光耐性は十分に備わると思える。
もっと大きく太陽を写そう。三脚に据えた本レンズに2倍テレコンバーター(SEL20TC)を組み合わせ、APS-Cクロップにして1,800mm相当とした。この季節は太平洋側で乾燥する日が多く、そんな日の太陽は沈む直前まで白く輝く。地平が迫り霞の層に入ると、橙のグラデーションが現われた。羽田空港に滑り込む767型機が横切ると同時に、さらに西をR44と思われるヘリが南に向かっていった。
熊本空港の滑走路25から滑走を開始した767型機を三脚に据えて捉える。APS-Cクロップで焦点距離は換算750mm相当にした。圧縮された筒状の機体質感、側面に反射するアンバーのグラデーションを狙った。ジェットエンジンの後流と、滑走中とあって解像は緩めではあるが、火の灯った旅客機が放つ巨体の存在感を表現できたと思う。
陽が落ちると風が肌に冷たい晩秋の夕暮れ。満月が東北東の地平から昇り始めて30分、羽田から離陸したA321が通過した。仰角10度に満たない月は、写真的には暗く、表面ディテールもまだハッキリしない。マンフロットの大型フルード三脚にレンズを置き、横切る直前の機体にマニュアルフォーカス。
機体の動きに合わせレンズを振るか、レンズは月に向けたまま固定するか、ギリギリまで考えた挙句、1/500秒で機体の動きより僅かに遅くレンズを動かした。滑らかにパーンする雲台があれば、機体シルエットを重視しつつ、ISO感度をなるべく上げたくない時の撮影手段が使える。
まとめ
私はこのミラーレスαシステムと他社の一眼レフシステムを併用している。それぞれに一長一短、向き不向きがあるからだ。そんな中で一眼レフでの撮影を選ぶいくつかの理由に、αが最大400mmの焦点域しかカバーしていなかったことや、一眼レフ用に廉価ながらなかなかの描写をするサードパーティー製150-600mmレンズの存在が挙げられる。
そんなタイミングで現れたこの200-600mm。主要レンズの一本となってミラーレスαの使用頻度を上げていくことになるか、そんな視点を持ちながら発表会を訪れた。まずは焦点域の問題が解決されたと、待ちわびた気持ちで使用感を確かめた。
さらに後日、あらためて行った陸上競技撮影で、α9と組み合わせたトラッキンAFの動作、インナーズームゆえの使い易いズーミングに、あらためて好感触を覚え、明るささえあればスポーツシーンをはじめ数々の場面で通用するレンズと思えた。夕方や夜間などの低輝度時のAFでは他社の従来の一眼レフに分があるミラーレスαだが、このレンズの登場後は、様々なシーンで撮影を重ねていくこととなり、一眼レフの使用頻度は下がっていった。この一本が、ミラーレスαの存在感をまた一つも二つも膨らませたのだった。
協力
関東学生陸上競技連盟
東関東ホースプロジェクト
航空自衛隊・入間基地、小牧基地、岐阜基地