特別企画

ソニーの新望遠レンズで陸上競技を撮影!プロスポーツカメラマンが体験してみた

「FE 600mm F4 GM OSS」「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」、それぞれの使い勝手は?

撮影体験会に参加した井上六郎さん。手に持っているのがFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS。足元のレンズがFE 600mm F4 GM OSS。

ソニーは交換レンズの新製品「FE 600mm F4 GM OSS」「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」の撮影体験会を都内で実施。スポーツカメラマンの井上六郎さんに参加していただいたので、そのときの作品とインプレッションをお届けする。(編集部)

※短時間の使用および限られた状況での撮影であり、さらにグランドから出る陽炎の影響もあったため、画質に関するインプレッションは控えています。

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FE 600mm F4 GM OSS

撮影体験会の当日は国際格式の大会も行える陸上競技場で、幅跳び、高跳び、ハードル種目の競技経験者が集結。FE 600mm F4 GM OSSとFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSを手渡された参加者は、実戦さながらに動く彼らの姿を撮影できた。

FE 600mm F4 GM OSSをホールドした瞬間、まずはその軽さに感心した。重量は3,040g。弟分ともいえるFE 400mm F4 GM OSSは2,895gであり、このクラスのレンズとしては、ともにかなり軽く感じる。そのおかげもあり、1時間弱の撮影中、十分に手持ち撮影が行えた。縦位置グリップ付きのα9とのバランスも実に良好だ。

陸上競技、特に今回のようなグランドレベルからの撮影になると、焦点距離600mmはやや長めだ。しかし、観客席やトラック外からインフィールドを狙わざるを得ないこともある。そんな場合は、400mm F2.8ではなく600mm F4の出番となる。今回は養生中の芝以外は自由に移動できたため、そのようなことも想定し、実際の大会撮影を意識した位置取りも再現してみた。

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ハードルの選手を追うこの場面、微妙に左右へカメラを振ることになるため、OSSスイッチを流撮りのモード2とした。

α9 / FE 600mm F4 GM OSS / マニュアル露出(1/4,000秒・F4) / ISO 400 / フォーカスエリア=トラッキング:拡張フレキシブルスポット / AF被写体追随感度=5(敏感) / AF-C時の優先設定=レリーズ優先

AFがスタートすると同時に顔認識AFが働き、左側選手の顔を追い始める。ハードルを越えるたびに選手の頭が上下するが、それでも顔認識は外れない。上下の動きをフォローするため、一眼レフカメラの位相差AFだと、顔からお腹にかけての広い範囲をフォーカスエリアに設定したくなる場面だ。連写画像の中には後ピンになるカットもあったが、概ね良好な結果になった。

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同じくハードル選手のシーン。このアングルなら、ハードルのブリッジ部分を参考に置きピンで撮るのが安全策だが、焦点距離600mmでかつ被写体までの距離は20m先と近い。被写界深度がかなり浅い上、せっかくの撮影体験会でもあるのでAFで撮影してみた。

α9 / FE 600mm F4 GM OSS / マニュアル露出(1/400秒・F6.3) / ISO 100 / フォーカスエリア=トラッキング:フレキシブルスポットM / AF被写体追随感度=2(やや粘る) / AF時の顔優先=入

横に流れる動きを少しだけ表現しようと、やや遅めのシャッタースピード1/400秒を選択。手持ちでもファインダー像を安定させたいので、OSSはモード2にした。

少し流れた新緑の背景から赤いユニフォームの選手が浮かび上がり、ブリッジを越える瞬間を狙えた。これも約20コマ/秒の連写、AF追随性能、手ブレ補正のアシストあってのことだろう。

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助走から縦へのジャンプ、そして背面へとひっくりかえるハイジャンプのシーン。単なるAFでも顔認識AFでも、カメラにとっては少々厳しい状況となる。

α9 / FE 600mm F4 GM OSS / シャッター速度優先AE(1/2,500秒・F4・-0.7EV) / ISO 200 / フォーカスエリア=トラッキング:拡張フレキシブルスポット / AF被写体追随感度を=5(敏感) / AF-C時の優先設定=レリーズ優先

これも本来ならバーを基準にして置きピン、そして選手の全身と着地マットをカバーする、ややルーズめの被写界深度で撮るのが定石だ。しかし、もちろんそれでは新製品の撮影体験会として面白くない。

背中がバーを丸め込み、顔がこちらへ向いた瞬間にAFをON。1/2,500秒のシャッタースピードでも被写体ブレが若干出たが、概ね思い通りのアングルで撮影できた。

FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS

100-400mmクラスよりも望遠側を意識したこのカテゴリーのレンズは、タムロンやシグマ、そしてニコンがラインナップしている。

上記他社の製品と違い、本レンズはズーミングで全長が変わらないインナーズームを採用している。そのため撮影前はやや全長が長く感じられる。しかし、実際に手に取ると思いのほか軽く、グリップ付きα9とのバランスは絶妙。1日中持ち歩いても今の自分には苦にならないと感じた。目に見える可動部分が少ないことも、剛性を感じさせる要素だ。

EVFを覗くと、一眼レフカメラだと避けられない高倍率望遠ズームレンズ特有のファインダーの暗さがないことにも気づく。直前に使っていた単焦点F4レンズとの差がないことに気づき、増々このレンズの可能性を感じた。

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幅跳びシーンを選手前方から撮影する。この競技は選手の跳躍の恰好がそれぞれ違う。例えば、上に高く跳ぶ選手、手を上にする選手、手を横に開く選手など。そのため単焦点レンズでは画角から手や足がはみ出ることがあるのだ。こんな時こそズームレンズが活躍する。

α9 / FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS / 481mm / シャッター速度優先AE(1/1,600秒・F6.3・±0.0EV) / ISO 400 / フォーカスエリア=トラッキング:拡張フレキシブルスポット / AF被写体追随感度=5(敏感) / AF-C時の優先設定=レリーズ優先

助走を始める前、助走中、縦への跳躍、つま先を突き出して、そして着地……と、最初から最後まで顔認識が作動した。これに安心して秒20コマで連写をし続けていたカットの内、腕が上がり脚を蹴りだすタイミングのカットを抜き出した。20コマ連写中まずまずの追随性を見せてくれた。

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連写中にズーミングを行うことで、コマごとに画角が変化するズームレンズならではの撮影方法を試した。200m競争のスタートを模し、スターティングブロックを使って選手にスタートから50mほどを流してもらった。

α9 / FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS / 452mm / シャッター速度優先AE(1/1,600秒・F6.3・-0.3EV) / ISO 500

スタート地点より約30m前方から選手にレンズを向ける。はじめは600mmで捉え、徐々にワイド側へとズーミング。迫りくる選手が画角からはみ出さないように注意する。このカットはそのズーミング最中、452mmになった頃のものだ。最終的は200mmのワイド端まで追れた。

近年のズームレンズの中には、ズーミングに機械的なカムではなく、モーターで構成レンズを動かすものがある。そのためモデルによっては、ズーミング中にAFが追随しない製品も見られる。しかし、本レンズはズーミング中でもAFが駆動しなくなることはなく、良好な結果を見せてくれた。

α9が発売された当初、FEレンズの一部でズーミング中のフォーカス駆動が止まる現象があった。その後、レンズのファームウェアアップデートで改善されたが、こうしたシステム全体のケアもフルサイズEマウントαの魅力の一つだ。

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FE 600mm F4 GM OSSと同じくハードルシーンをレーン横から撮影。厳しい条件を作ろうと、FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSに1.4倍のテレコンバーターを装着、あわせて774mmでハードルを越える際の眼差しに迫ってみた。

α9 / FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS + 1.4xテレコンバーター / 774mm / シャッター速度優先AE(1/2,500秒・F9.0・-0.7EV) / ISO 2500

選手はバーのギリギリを通過し、飛び跳ねることで生じるタイムロスを何とか縮めようと、上半身を屈めてジャンプに臨む。跳び越えるというより、自身の膝が顎付近まで上がり、ハードルを跨ぐ姿勢になる。

露出設定はシャッタースピード優先。選手を止めるため、シャッター速度を1/2,500秒に上げた。絞りは開放のF9。オートにしていたため、感度はISO 2500まで上がった。

FE 600mm F4 GM OSSに比べて明るさで不利、さらに1.4倍のテレコンバーターを装着することで、F値の差は倍以上となる。そのため、像面位相差AFの追随力にどう影響するかを試してみた。

しかしこの日は晴天とあってコントラストもたっぷりとあり、EVFだけあってファインダー内の見えの差もない。F4レンズとの差を感じることはなく、合焦結果も充分なものだった。

撮影を終えて

プロのスポーツ撮影の現場で、標準レンズともいわれるのが400mm F2.8。その400mm F2.8と並び、要となるレンズが600mm F4だ。競技エリアが広大であったり、観客席からの撮影で選手に近づけない場合は400mm F2.8の「標準」に対して、600mm F4が「望遠」レンズとなる。400mm F2.8にテレコンバーターをつけることもあるが、もちろん画質やAF速度の面でプラスにはならない。残すべき画像・映像作品のために、写真家や媒体は最良の機材で臨むべきだと常々考えている。

様々な場面での最良の機材とは何か。そんなスポーツ撮影の現場の問いに、ソニーはFE 400mm F2.8 GM OSSと今回のFE 600mm F4 GM OSSで応えた。特に600mm F4は飛びぬけて本数の出るレンズではないが、これをラインナップさせて撮影体験会を行ったことは、スポーツ撮影に自信を持っていることの現れだろう(編集部注:撮影体験会に参加したのは、午前の部が主にカメラ・モノ系メディア、午後の部が主に新聞社所属のカメラマン、フリーのプロスポーツカメラマン)。

そしてFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS。タムロン、シグマの牙城であった超望遠ズームのレンジを自社製品で揃えるあたりは、ユーザーの要望を誠実に汲み取る姿勢が見える。飛行機、野鳥など動物の撮影を気軽に楽しみながらも、確実な結果を残したいαユーザーには打って付けのレンズになるだろう。

この日、ソニー関係者は言った。「本格的なスポーツ報道に向けて、これで第3コーナーを回りました」と。残るは最終コーナーとホームストレート。この先に何があるのか、期待したい。

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタント、出版社のカメラマンを経てフリーランスに。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。この4月「今すぐ使えるかんたん 飛行機撮影ハンドブック」を技術評論社より刊行。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。