新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III(実写編)

フラッグシップ機のエッセンスを凝縮した1台

OM-D E-M5 Mark IIのコンパクトで軽量なボディを受け継ぎながら、有効2,037万画素Live MOSセンサーを搭載。像面位相差AFや121点測距、画像処理エンジンTruePic VIII、4K30p動画など、同社フラッグシップ機の一翼であるE-M1 Mark II並みのスペックを持ったE-M5シリーズの三代目だ。実際に使用した印象はどうだろうか。

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新製品レビュー:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III(外観・機能編)

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ニュース:オリンパス、上位機の撮影性能を受け継ぐ「OM-D E-M5 Mark III」

使用したレンズは、レンズキットのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II。35mm判換算で28-300mm相当の高倍率ズームだ。とても300mm相当をカバーしているとは思えないほど小さく、マイクロフォーサーズらしさが感じられる。

今回は専用外付けグリップECG-5を試せなかったのが残念だが、しかしE-M5 Mark IIIを手にしてすぐにわかるのが、本体のグリップ形状が変わって指の掛かりが向上したことだ。E-M5 Mark IIでは指は掛かるものの、やや物足りなさを感じていた。そのため望遠レンズや大柄なレンズを装着する際はパワーバッテリーホルダーHLD-8を装着した方が持ちやすい。E-M5 Mark IIIは見た目以上にグリップ感が良く、14-150mmレンズの150mm側で構えていても安定していた。またボディを片手で握りながら街を歩く際にも指が疲れにくい。これだけでE-M5 Mark IIIは別物に進化したのを実感した。

レンズキットの14-150mmは高倍率ズームとは思えないほど小型で、E-M5 Mark IIIにフィットする。街の何気ないシーンを素早くとらえることができた。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (49mm) ISO 200 F5.6 1/200秒

現在、筆者はE-M1 Mark IIを使っているため、E-M5 Mark IIIのAFには全く違和感がない。ところが先代となるE-M5 Mark IIを手にしてみると、測距点の違いを大きく感じる。E-M5 Mark IIIはシビアなピント合わせがより扱いやすくなった。AF速度じたいはE-M5 Mark IIのコントラストAFより劇的に速い、という印象はなく、街のスナップや風景では大差ない。ただし動体を狙っていると、追従性の高さを感じる。それはF1.2などの大口径レンズを絞り開放でAF追従撮影した際のピント精度にも有利だ。

像面位相差AFになって動体に強くなった。カモが水浴びをしているところを150mm側で狙う。水しぶきが上がった瞬間にシャッターをレリーズ。E-M5 Mark IIIはレスポンス良く撮影できる。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (150mm) ISO 200 F5.6 1/1,600秒
測距点は81点から121点になり、より細かくピント合わせが行える。タッチパッドAFでファインダーを覗きながら測距点を右上に移動させ、植物の葉にピントを合わせた。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (90mm) ISO 200 F5.6 1/60秒

筆者は普段からE-M5 Mark IIやE-M1 Mark IIを使っていて、シャッター音が静かなことが気に入っている。E-M5 Mark IIIも同様にメカシャッターでも非常に静かだ。ミラーレスカメラなので、ミラーの駆動音がないのもあるが、防塵・防滴構造で密閉性が高いのも要因かもしれない。ボディ内にこもるような音は、好みもあるが筆者には快適だ。狭い路地のような静かな場所でもシャッター音を気にせず撮影できる。もちろん電子シャッターにすれば無音撮影はできるが、メカシャッターの方が「シャッターを切っている」という実感が湧く。

室内に置かれた古びた椅子に西日が当たる。シャッター音も静かなE-M5 Mark IIIは、その場の空気を乱すことなく撮影に集中できた。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (52mm) ISO 200 F5.6 1/320秒
バリアングル液晶モニターは、ローアングルやハイアングルでの撮影に欠かせない。ここでも地面スレスレのローアングルで自転車を狙った。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (14mm) ISO 400 F8 1/20秒

撮像素子と画像処理エンジンもE-M1 Mark IIと同じなので、得られる画質も同じだ。まだ一眼レフカメラのフォーサーズや、マイクロフォーサーズシステムが登場したばかりの頃は、撮像素子が小さいのは画質に不利というイメージが強かった。しかし現在は極端なトリミングや大きなレタッチをしなければ、システムがコンパクトなメリットに加え、通常の使用では解像感の高い画質が得られる。しかも高感度も決して弱くはなく、ISO 3200やISO 6400もよほど拡大しなければ実用のレベルだ。筆者自身、E-M1 Mark IIでISO 3200は頻繁に使っている。しかも5.5段分になったボディ内手ブレ補正も活用すれば、暗所でも手持ち撮影が楽に行える。

5.5段になったボディ内手ブレ補正機構。1/6秒のスローシャッターで水の流れを強調した。もちろん三脚は使わず手持ちだ。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (31mm) ISO 200 F22 1/6秒
E-M1 Mark IIと同じ2,037万画素は、A3ノビのプリントも余裕の高精細。ここでもビルの細かい部分も解像している。さらに解像力を求める場合は、M.ZUIKO DIGITAL PROレンズやPREMIUMレンズシリーズがおすすめだ。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (14mm) ISO 200 F8 1/320秒
ISO 6400に設定。拡大するとレンガの細かい部分はややディテールが失われているが、それでもA4サイズのプリントやWeb用なら十分実用的だ。色調も崩れていない。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (14mm) ISO 6400 F5.6 1/20秒

E-M5 Mark IIIは、E-M5 Mark IIのコンパクトなボディと、E-M1 Mark IIのAFと画質を合体させたカメラだ。というと、E-M1 Mark IIを狙っていた人は迷ってしまうかもしれない。たしかにAF機能や画質は同様だが、E-M1 Mark IIはAF/AE追従で18コマ/秒の連写ができ、SDカードがダブルスロットで、バッテリーホルダーが用意されていることやシンクロターミナルを装備しているなどの違いもある。さらに撮影可能枚数はE-M5 Mark IIIの約310枚に対し約440枚だ。やはりE-M1 Mark IIはプロがメインに使うカメラなのがわかる。

対するE-M5 Mark IIIは、小型軽量を活かして街のスナップやポートレートなど、機動力のある撮影に向いている。また、本格派のカメラは使いたいが、体力的に大柄で重い機種は苦手、という女性や年配の方にもおすすめしたい。もちろんフラッグシップのE-M1 Mark IIおよびE-M1Xと併用したい人にも最適。今回はキットレンズのみで試用したが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROやM.ZUIKO PREMIUMレンズのシリーズなど、コンパクトで高性能なレンズと組み合わせても楽しめる。

水面に太陽の光が反射しているため、露出アンダーになると予想。しかし324分割デジタルESP測光は露出補正なしで適正露出が得られた。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (25mm) ISO 200 F8 1/500秒
コンパクトで高い機動力を持つOM-D E-M5 Mark IIIは、街のスナップが軽快に撮れる。グリップの握り心地も良く、小さなボディでも安定して構えられた。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (14mm) ISO 200 F8 1/640秒
お馴染みのアートフィルター。ポップアートIに設定して、落ち葉の色を強調した。またアートエフェクトでフレーム効果を追加している。アートフィルターを積極的に活用して、表現の幅を広げるのも楽しい。
OM-D E-M5 Mark III  M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II (63mm) ISO 500 F5.6 1/125秒

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。