交換レンズレビュー

SIRUI Sniper 33mm F1.2

カラーバリエーションに白・銀も APS-Cセンサー対応の大口径F1.2標準レンズ

SIRUIの「Sniper 33mm F1.2」は、APS-Cサイズ対応のミラーレスカメラ用レンズ。「Sniperシリーズ」には、33mmに加えて16mm、23mm、56mm、75mmも用意されていますが、今回紹介するのは、33mm(35mm判換算で50mm相当)の大口径標準単焦点レンズです。今回のマウントは富士フイルムXマウント用ですが、他にもソニーEマウント用とニコンZマウント用が用意されています。

標準単焦点レンズでF1.2の大口径と言いますと、高価な純正レンズか日本のサードパーティー製レンズの独壇場で、それ以外ではマニュアルフォーカス(MF)レンズというのがほとんどでしたが、本レンズはオートフォーカス(AF)機構も搭載しています。

それでいて格安な値段の本レンズですが(Amazonで5万8,000円)、実用性と言う意味ではどの程度のものなのか見ていきたいと思います。

外観と操作性

本レンズの全長は92.2mmで、質量は400gとなっています。最大径については公表されていないのですが、特段大きいというわけではなく、開放絞り値がF1.2の大口径レンズとしては、かなり小型で軽いレンズだと思ってもらって問題ないかと思います。

SIRUI Sniper 33mm F1.2をFUJIFILM X-H2Sに装着

フォーカスリングが備えられている以外に、リング類やボタン・スイッチ類の搭載はまったくなく、至ってシンプルな操作系と言えるでしょう。ただ、本レンズはAPS-CセンサーのXマウントにおいては35mm判換算で50mm相当の標準レンズですので、それほど複雑な操作を必要とするシーンはあまりないと思います。

「花型」のレンズフードが同梱されています。遮光効果やレンズ本体の保護効果は高いと思われますので、ぜひ装着して使いたいところです。

カラーバリエーション

こちらの「SIRUI Sniper 33mm F1.2」には、カラーバリエーションが用意されており、ここまでで紹介しましたブラックの他に、シルバーとホワイトの計3色から選べます。

写真だと、ちょっとシルバーとホワイトの違いが分かりにくいかもしれませんが、実際に装着してみると違いはよく分かります。

「FUJIFILM X-H2S」と組み合わせた、シルバーモデルおよびホワイトモデルの装着状態は以下の通りです。

解像性能

大口径の単焦点標準レンズとなると、解像性能はいかほどのものか気になります。

というわけで、絞りを開放のF1.2にして撮影したのが下の写真になります。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/9,000秒、F1.2、+0.3EV)/ISO 160

特段に優れているというわけではありませんが、画面中心部は低価格な大口径というわりにはなかなかに高い解像感があると思います。画面周辺部はそれなりに解像感が低下するのですが、本レンズの価格を考えれば比較的妥当な程度ではないでしょうか。ポートレート撮影など、強いシャープネスよりも柔らかさが求められるようなシーンでは、むしろ使い出があるかもしれません。

ただ、周辺部の解像感低下は絞り込んでいったとしても、なかなか解消してくれません。F2.8やF4程度では解像感の均質化はおぼつかず、F5.6でようやく概ね解消。周辺部まで完璧な解像感の均質性を得るには、F8まで絞り込む必要がありました。風景写真などで使う場合には気を付けた方がよいかもしれません。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/50秒、F8.0、−0.3EV)/ISO 160

ボケ

F1.2ともなると、絞り開放での大きなボケを楽しみたいと言う人も多いのではないでしょうか。ボケ味については本レンズ独特の良さがありましたので、少し紹介してみます。

前後のボケ量は相応に大きく、溶けるようなボケのなかに被写体を浮き上がらせるといった演出が得意なことは確かです。そして、そのボケ味は、思った以上に自然で美しい。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F1.2、+0.3EV)/ISO 400

被写体との位置によっては2線ボケが発生することもありますが、それほど目立つわけでもありません。軸上色収差がとり切れていないからか、シアンのフリンジがボケの周囲に発生することもありますが、パープルに比べればやはり極端に気になるほどでもありません。少々あるクセを上手く使いこなせば、大口径レンズならではの写真表現を楽しめるのではないかと思います。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/2,900秒、F1.2、−1.3EV)/ISO 400

作例

AFは速く静粛で、十分に実用的なものがあります。仕様は明らかでありませんが、ステッピングモーター内蔵のレンズと同程度といった印象でした。今回は「X-H2S」との組み合わせで使いましたが、もちろん被写体検出AFも機能しますので、ピント合わせは非常に楽です。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/50秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 400

今回は黒、シルバー、白の3色のレンズをレビュー用にお借りしましたが、試写に使ったのはやはり無難なところの黒でした。スナップ撮影などではあまり目立ちたくありません。しかし、ポートレートなど、被写体とのコミュニケーションが大切な撮影では、案外シルバーや白の方がウケがいいかもしれません。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/400秒、F1.8、−0.7EV)/ISO 160

周辺の解像感はやや甘めみたいなことを先に述べていますが、実際にスナップ撮影などの目的で日常を撮り歩いている限りは、画質について不満を覚えるようなことはほとんどありませんでした。平面的なものを撮って厳密に解像感を確認する機会はそうそうないということでしょう。そういう意味では結構実用性の高いレンズなのだなと思います。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/300秒、F4.0、−0.7EV)/ISO 160

絞り開放F1.2の明るさには、F1.4やF2では味わえない表現の奥深さがあると、本レンズを使ってみて改めて実感しました。高価な純正レンズが素晴らしいことはもちろんですが、多くの人が手を出しやすいクラスで、AF搭載の大口径レンズを実現したというのは嬉しいことです。

富士フイルム X-H2S/SIRUI Sniper 33mm F1.2/33mm(49.5mm相当)/絞り優先AE(1/1,250秒、F1.2、−0.3EV)/ISO 160

まとめ

SIRUIと言えば、少なくとも日本では三脚メーカーというイメージが強いのですが、写真用レンズの設計・製造もできるのかと、まず驚いたのが正直なところ。搭載されたAF機能も実用的なレベルで実現しているのですからなおのことです。

樹脂を多用した外装にちょっとチープ感を覚えてしまうところですが、価格を考えればかなり頑張っている方なのではないでしょうか。

肝心の画質や使用感だって、決して悪いものではなく、むしろ実用性では相当に健闘していると言えます。

近頃は本レンズのように、実用性を備えた手の届きやすい現実的なレンズが増えてきているように感じます。多くの人が深みのある写真を撮る楽しさを享受できる可能性がある、と言う意味では歓迎すべき存在だと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。